通名

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通名(つうめい)とは、通称名の略。現在、一般に「通名」とは外国籍の者が日本国内で使用する通称名を指す。法規等の文中などでは「通名」ではなく「通称」と表記される。日本人の通称名については通称参照。

概要[編集]

本名ではなく、一つ、もしくは複数の通称名を名乗って生活することには、法律的な規制がない。通称名で有効な法律行為を行うことは原則としてできないが、在日外国人の通名は、居住する区や市町村に登録することで、住民票に記載され、法的効力を持つ。登記などの公的手続に使用することが認められ、契約書など民間の法的文書にも使用できる(単なる自称では、詐欺罪文書偽造罪などに問われる場合がある)。印鑑登録証明書運転免許証には、本人の申請により本名に加え、通名の併記が可能である(例:氏名 金 美淑(木村 淑子))。

日本国籍の者は通名を登録できない。しかし日本国籍を取得したが改名していない場合など、日本国籍者でも通称名を使用することがある。その場合、その名称を法律的に有効なものとするためには、家庭裁判所で改名する必要がある。判例によれば「その通称名で生活している実態があること」は、改名の理由となる。[1]

犯罪の被疑者が通名を使用している外国籍の者であった場合、一部報道機関(NHK・朝日新聞毎日新聞など)は、民族名ではなく通名(日本名)のみで報道することもあり[2]。その報道姿勢に対しては一部から批判もある。

法的根拠[編集]

歴史的経緯[編集]

1940年2月11日に創氏改名制度が施行されたが、内地ではそれ以前から朝鮮人などが「通称」として「日本名」を名乗るものが多かった[3]。創氏改名施行以後、朝鮮や内地在住の朝鮮人なども日本風の「氏名」を名乗る[4]ことになった。これは法的な「本名」であり、この日本名で各種届出や証明書類の交付、また登記などの公的手続が行われた。一方戸籍上は従来の「姓」と「本貫」も残ったが、これらは「本名」ではなくなった[5]。だが1945年以降、38度線の南では「朝鮮姓名復旧令」(1946年10月23日)により、また北でも「北朝鮮に施行する法令に関する件」布告により[6]、創氏改名の根拠となった朝鮮総督府令は失効し、朝鮮人の創氏改名による日本名は遡及無効となって法的根拠を喪失した[7]

しかし、日本名でいったん公的に取得・蓄積された在日韓国朝鮮人の各種の公的記録を一挙に無効とすることは、事実上困難であった。そのため行政が選択したのは、法的な根拠を欠く在日韓国朝鮮人の日本名使用を運用上は有効とする政策であった。

平成24年6月以前[編集]

外国籍の者に、本名ではない「通称」の使用を認める根拠法は、2009年(平成21年)7月以前には存在していなかった。通称使用の根拠となっていたのは、法務省入国管理局長通知の「外国人登録事務取扱要領」である。同通知は「外国人の社会生活上の利便性を考慮し」外国人登録原票の記入に際し、本名に加え通称を併記することを認めていた。そしてこの原票を基に、2012年(平成24年)6月までは通称併記の外国人登録証明書が発行されていた。つまり、通称使用を条文で認めた法律は存在しておらず、行政が運用上認めていたに過ぎなかった。

刷新[編集]

2012年(平成24年)7月以降、法務省と市区町村が別々に行っていた外国人管理業務の一本化などを目的に、従来の外国人登録制度を基本とした外国人管理制度が刷新されることとなった。住民基本台帳法が改正されて、外国人(短期滞在者等は除く。以下同じ)も日本人と同一の住民票に記載されるようになると共に、外国人登録法は廃止された。また通称が併記された外国人登録証明書も廃止となった。

改正後住民基本台帳法第7条第14号の「政令で定める事項」の一として、同法施行令第30条の25第1号により、外国人は氏名(本名)による住民票に、通称を併記登録することができる。通称の登録は「住民票に記載されることが必要であることを証するに足りる資料を提示しなければならない。」とされるものの[8]、地方自治体ではいわゆる特別永住者の通称登録について、従来保持していた外国人登録証明書に通称が記載されていたという理由で引き続き受け付けているケースが多い。ただし外国人が住民票の写しや住民基本台帳カードを取得する場合は、氏名(本名)が記載されており、通称のみの住民票の写しや住民基本台帳カードは発行されない。

外国人登録証明書に代わり、外国人在留者には「在留カード」が、特別永住者には「特別永住者証明書」と書かれたカードが発行されることになった。これらには通称は表記されない[9][10]

登録[編集]

通名の届出や変更は、市町村が窓口である。登録可能な通名は一つのみで、国籍の限定はなく、したがっていかなる国籍の外国人も、通名登録が可能である。住民票への通名記載を申し出る際には、「当該呼称が居住関係の公証のために住民票に記載されることが必要であることを証するに足りる資料を提示」すると共に、申出書に「記載を求める呼称が国内における社会生活上通用していることその他の居住関係の公証のために住民票に記載されることが必要であると認められる事由の説明」を記載する必要がある。(同法施行令第30条の26第1項[8]、同法施行規則第45条第1項[11]

立証資料としては「不動産登記簿謄本、勤務先の給与明細、在職証明書、社員証、健康保険証、金融機関の預金通帳又はキャッシュカード、通学先の学生証、学校生活で使用する名札、運転免許証、国家資格の証明書、ガス・水道・電気の請求書、固定電話・携帯電話の契約書、アパートの契約書、通称名で受領している郵便物」などが例示されており自治体によって異なる[12][13][14]。登録した通名を変更できる回数や頻度については統一的な法規定がなく、各市町村での判断事項であるが、2013年11月15日、総務省は結婚や養子縁組等の場合を除き、原則として通名変更を許可しない旨の通達を出した[15][16][17]

外国人の通名が住民票の記載事項になったことで、他の事項と同じく第三者の閲覧が可能になった(ただし、個人情報保護の観点から、全ての者に対し無制限に閲覧が認められるわけではない)。また市町村を越えて自治体を転出・転入した場合に、元の市町村が発行する「転出証明書」にも氏名(本名)のほか登録された通名が記載されているため、転出・転入があっても氏名(本名)とそれに付随する通名は他自治体へ引継がれる。

一方、入国した外国人に発行される在留カードには、通名は(法律上も運用上も)記載されない[18]ため、通名の使用を証明するためには、本人の住民票の写しや住民基本台帳カードの提示(提出)によるしかない。また、外国人登録制度の当時は、各市町村において管理・保管していた外国人登録原票も、制度改正と同時に法務省に返納することとなったため、平成24年の制度改正前に使用していた通名の証明が必要な場合は、本人が直接法務省に、従前の外国人登録原票の写しを請求する必要がある[19]

また、いわゆる特別永住者には、在留カードに代えて特別永住者証明書(市町村が発行)が交付される。この特別永住者証明書には通名は記載されない[18]

なお、従前の外国人登録証明書が発行されていた外国人については、移行措置として、当面はその外国人登録証明書が在留カードまたは特別永住者証明書とみなされるが、通名の変更があってもそれには反映されない(外国人登録証明書に記されたものと、住民票に記されたものが相違している可能性がある)ことに留意すべきである。

通名制度に対する評価[編集]

批判[編集]

通名の制度は、いわゆる在日特権である、もしくは見直すべき制度であるとして、その問題点が批判されている。

在日特権を許さない市民の会は、複数の通名で作成した金融機関口座架空口座の存在を助長して脱税マネー・ロンダリングを容易にするとして、また、犯罪容疑者が本名で報道されないことで、在日韓国・朝鮮人が社会的制裁を免れると指摘して、通名の存在を在日特権であるとして批判している[20]竹田恒泰は、讀賣テレビ放送たかじんのそこまで言って委員会』への出演時に、この在特会の主張に賛同する意見を述べている[21]

東京都荒川区議会議員の小坂英二は、「東京23区内で、1人が最高で32回の通名変更を行った」事があるとして、頻繁な通名変更は別人に成り済ますことが可能として、通名制度を犯罪と不信の温床であると主張している[22]

2013年11月には、韓国籍の男が6つの通名を使用して、携帯電話など約160台を契約し、契約後に転売。料金などの月々の支払いを免れていた事件が起きている[23][24]。通称を悪用した犯行を組織犯罪処罰法での立件は全国初の事例となる。

この事件に関する取材を受けて、片山さつきは、「日本人が改名するには、家庭裁判所の許可が必要だが、外国人の場合、届けるだけで通名を変えられる。これはいかにもおかしい。」「戦後生まれの人は、通名を持つ意味は少ない。日本名を名乗りたければ帰化すればいい。」と主張し、通名制度の見直しを主張している。片山は、尖閣諸島防空識別圏問題が発生した後に在日中国大使館が在日中国人に緊急事態に備えて連絡先を登録するよう呼び掛ける通知を出したこと[25]を挙げ、尖閣有事の際に在日中国人が国防動員法に基づいて蜂起する可能性を上げて、日本の安全保障の観点から懸念を示している。また、通名制度を是正することで、通名を隠れ蓑にした外国人の政治献金の防止ができることを挙げている[17]

批判に対する反論[編集]

一方、在日本大韓民国民団は、「1人の人が2つも名前を持っているのは、確かにおかしい」としながらも、「本名を名乗ることで就職が難しくなる」という「日本の閉鎖性」を挙げ、「通名を使うのはいけないというのは、問題のすり替え」と反論している[15]。また、通名変更の原則禁止の通達を出した総務省自治行政局外国人住民基本台帳室も、通名をすぐに廃止することについては「創氏改名から通名が使われ続けてきた経緯があり、現在も不動産登記などに使われていること」「本名だと読み方が難しい名前があること」を理由に否定的である[15]

脚注[編集]

  1. ^ 日本名を持つ日本国籍者が、民族名である「金」を通称として使用していた例。子供のころ帰化し改名した在日朝鮮人が、成人後民族名を取り戻そうと、家庭裁判所に「金」姓に変更するよう申し立てた。裁判所は「通称名(金)が申立人の氏として社会的に定着している」という理由でこの申立てを認めた(京都家審1987年(昭和62年)6月16日)。
  2. ^ 2009年3月に起きた八千代銀行への右翼団体に所属する韓国籍の総会屋による利益供与要求事件では、朝日新聞だけは容疑者を通名のみで報道したことが明らかにされている。http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=49106&thread=04 本名・通名・民族名・日本名・・・] 統一日報2009年7月1日、八千代銀に利益供与要求総会屋を逮捕 産経新聞2009.6.26。
  3. ^ 水野直樹『創氏改名——日本の朝鮮支配の中で』岩波書店、2008年、192頁。
  4. ^ 創氏の届出がなされなければ従来の朝鮮風の姓がそのまま「氏」とされた。水野前掲書、45、48-49頁。
  5. ^ 水野直樹『創氏改名——日本の朝鮮支配の中で』岩波書店、2008年、47-48頁。
  6. ^ 水野直樹『創氏改名——日本の朝鮮支配の中で』岩波書店、2008年、223-225頁。
  7. ^ なお1940年以降に生まれた者は「日本名」しか持っていないため、届出をしない限り「日本人風の名」のまま残った。水野前掲書、224頁。
  8. ^ a b 住民基本台帳法施行令
  9. ^ 新しい在留管理制度がスタート! 法務省入国管理局
  10. ^ 特別永住者の制度が変わります! 法務省入国管理局
  11. ^ 住民基本台帳法施行規則
  12. ^ 通称名および併記名の登録について
  13. ^ 新座市役所公式サイト-外国人住民の登録制度
  14. ^ 通称の登録・削除/伊勢市
  15. ^ a b c 在日外国人の通名変更禁止を明確化 ケータイ転売事件がきっかけだった J-CASTニュース 2013年12月10日
  16. ^ 通名制度を見直し 変更数十回など不正の温床となるケースも 片山さつき議員 (1/2ページ) zakzak 2013年12月9日
  17. ^ a b 通名制度を見直し 変更数十回など不正の温床となるケースも 片山さつき議員 (2/2ページ)
  18. ^ a b 日本に在留する外国人の皆さんへ2012年7月9日(月)から新しい在留管理制度がスタート! 入国管理局
  19. ^ 外国人住民の登録制度が変わります(2012年7月9日から) 墨田区
  20. ^ 在日特権を許さない市民の会 - 第04話 通名編
  21. ^ そこじゃないでしょ?ヘイトスピーチ!Part3 頑張れ日本!全国行動委員会
  22. ^ 犯罪と不信の温床「通名(廃止すべき)」の実態 日本創新党 荒川区議会議員小坂英二の考察・雑感
  23. ^ 埼玉新聞:名前変え携帯契約 容疑の韓国籍の男を逮捕/県警
  24. ^ MSN産経ニュース:「通称」悪用して端末不正売買 容疑の韓国人を逮捕 埼玉
  25. ^ 「日本に手を出すのか」「開戦か」書き込み相次ぐ 在日中国人に登録呼びかけ 防空識別圏設定と関連か 産経ニュース 2013年11月25日

関連項目[編集]