系譜学

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系譜学(けいふがく)あるいは系図学(けいずがく、英語:genealogy)とは、家族の家系を明らかにし家系図を作成する学問をいう。趣味的活動としても盛んである。日常的な言い方ならば家系調査、系図作成、先祖探しといったものに当たる。縁戚者名の収集・確認、種々の証拠(洗礼簿や過去帳などの個人記録、公文書、史料、苗字地名、また近年はDNA鑑定による遺伝的証拠も)に基づくそれらの関係の確定、さらに系図の作成を含む。

なお家族史(family history)と重なる部分が多く、同義に用いられることもあるが、各個人の生涯よりも個人間の関係を重視する点で区別される。

他の分野との関係[編集]

系譜学は他のいろいろな分野とつながりがある。系譜学は民族学でも重要な方法である。個人の家系を明らかにすることは社会組織の面からも(常に縁戚者とともに生活しているような社会では特に)重要であり、また法律的な要請(遺産や相続)もある。

系譜学は広範囲の歴史(政治、法制、社会、移住などに関する)とも深いつながりがあり、逆に系譜学的研究から歴史がより明らかになる場合もある。個人レベルでは、知らなかった親戚とのつながりができたり、秘密にされていたことが暴露されたりすることもある。

フィクションでは背景を面白くするため登場人物に複雑な家系を与えることが多く、こうしたものを趣味として研究する人も多い。

源流と発展[編集]

元来、系譜学は王侯貴族を対象としたものであり、ヨーロッパでは紋章学と重なる部分が多かった。むろん日本を含む東アジア中東などでも古くから同様のものが発達している。皇帝や文明創始者の子孫を称する例は洋の東西を問わず数多い。現代にまで関係しているものでも、天照大神の子孫を称する日本の皇室や、エリザベス女王ウェセックス王の子孫であり、(アングロサクソン年代記作者によれば)ゲルマン神話の最高神ウォーデン(オーディン)の子孫ということになる。また日本の「源平藤橘」のように位の比較的低い者が自らを高貴の家柄に結び付ける傾向もある。これらの家系の多くは創作と考えられており、ヨーロッパではこれら古い系譜学より実証的な系譜学が19世紀になって発展した。

系譜学は旧世界では歴史も古く趣味としてもポピュラーである。移民が圧倒的に多いアメリカ合衆国ではやや事情が異なり、1970年代後期、特にアレックス・ヘイリーが自身の家系を物語化した『ルーツ』に触発されて爆発的ブームになった。またモルモン教では「死者に対する洗礼」を行っており、アメリカではこれも系譜学への関心のきっかけとなっている。ユダヤ系や、東アジアの祖先崇拝のように、宗教との関係が重視されることもある。欧米ではFamily history societyなどの名で活動が盛んであり、アマチュアやボランティアが中心となって活動している。

日本で類似のものとしては太田亮が設立した系譜学会、丹羽基二の日本家系図学会、丸山浩一の家系研究協議会などがあり、生涯学習として家系図作成を指導している者としては岸本良信などがいる。

近年のインターネットの発展で情報源(たとえばに書いてある氏名や昔の国勢調査記録など)も爆発的に増えるとともに、国際的な交流も容易に行えるようになり、ますます盛んになった。ここ数年、一部の系図サイトでは容易にアクセスできないほどのブームとなっている。

ボランティアによるGenWeb Project(系図データベースプロジェクト)がアメリカを中心に行われ、その延長に世界的な活動としてWorldGenWebが立ち上げられ、日本でも日系人の先祖探しなどを目的にJapanGenWebが活動している。

遺伝的調査[編集]

DNAは祖先から子孫へ比較的変化せずに受け継がれ、家系を忠実に表す指標である。親子など近い血縁関係の有無を調べるのにはすでにDNA鑑定が広く使われているが、さらに古く遡る家系調査にも使われるようになってきた。特に2種類のDNA、Y染色体(父系)とミトコンドリアDNA(母系)が重視される。前者は男性だけが持ち、父親から息子へ受け継がれ、父系の調査に有効である。後者は全ての人間が持っており、母親からのみ受け継がれ、母系の調査に有効である。いずれも他の染色体との組み換えがなく、ごくわずかな突然変異が起こるだけで子孫に伝えられる。DNA鑑定により、2人の人がある時間経過の範囲内(数百年以内)で血縁関係にあるかないかを高い確度で知ることができる。個々の鑑定結果をまとめて比較的最近の共通祖先の子孫かどうかを(直接的に母系または父系から)わかるようにしたデータベースが多数作られている(Sorenson Molecular Genealogy Foundation[1]など)。

この方法で最近アメリカ社会に話題と波紋を巻き起こした例に、第3代大統領トマス・ジェファーソンの子孫の問題がある。ジェファーソン家の女奴隷サリー・ヘミングスの子供の一部の父親がジェファーソンではないかと彼の生前から取り沙汰されており、彼の弟ランドルフやその他の親族も怪しいといわれてきた。彼らの男系子孫とされる男性たち (ジェファーソンには正式の息子はいなかったので親族の子孫のデータからの推測になるが)を対象としてY染色体を用いた研究が20世紀末に複数行われた。確定的な結論は出ていないが、サリーの長男トマス(子孫はジェファーソンの子と信じている)はジェファーソンと直接関係なく、末子エストンはジェファーソンまたはランドルフの子あるいは孫の可能性があるといわれている。

もっと長い時間経過(千年から数万年程度)では、人類の移住パターンと民族の起源を研究するために遺伝学的な方法が用いられている。このようなプロジェクトは究極のプライバシーともいえる遺伝情報を対象とするものだから、参加は自由意志によって行われている。似た研究として、遺伝データを直接用いるのでなく数学的モデルを用いて現生人類の共通祖先の生存年代を見積もるものがある。

情報技術によるデータの共有[編集]

研究者間のデータの共有はインターネットを利用して盛んになっている。ほとんどの系譜学ソフトウェアはGEDCOMフォーマットによって個人とその関係についての情報を出力できるようになっており、データベースのほかeメールやインターネットフォーラムで共有でき、GED2HTMLPhpGedViewPhpmyfamilyなどのオンラインツールでウェブサイト用に変換することができる。系譜学用アプリケーションも多数開発され情報の共有に役立っている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]