アマチュア無線

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shack(シャック)の一例。「shack」は本来は「あばら小屋」を意味する語であるが、転じて、アマチュア無線の世界では、アマチュア無線家が無線機を置いている場所のことを指すようになった。つまり、いわゆる無線室のことである。
無線局の一例
食卓に小さな無線機を一台置いただけでも立派な無線局である。
アンテナ空中線)の一例
同じことが好きな者同士、話もはずむ。それもアマチュア無線の楽しみのひとつ。

アマチュア無線(アマチュアむせん)とは、金銭上の利益のためではなく、無線技術に対する個人的な興味により行う、自己訓練や通信、また技術的研究のことである[1][2]

アマチュア無線の通信(アマチュア無線業務)を行うアマチュア無線技士(アマチュア無線家)を一般的に「ハム」と呼ぶが、誤用としてアマチュア無線自体の事をそう表現される事がある(後述)。

目次

概要[編集]

通信で使用する周波数はその性質から「人類共通の財産」とされており、ごく微弱なものを除き、電波を利用する者(電波利用者)は、全世界の人々と分け合って利用するものとされている。従って電波利用者に使用可能な周波数を割り当て、監理する(周波数を割当・監理する)のは各国の主官庁すなわち中央政府であり、また各国間の周波数割当調整も行う。

アマチュア無線とはその割り当てられた周波数を利用する通信、すなわち各国でそれぞれ区分される各種無線業務における「アマチュア業務」のことであり、学究無線業務のひとつである。なお通信において「アマチュア」とは「私的学究」を意味し「素人」の意味はない。→#非営利・自由な私的学究無線

アマチュア業務を行おうとする者は、各国主官庁の実施する技術・技能認定試験(無線従事者試験)に合格し、所定の無線従事者免許を受けた後、各国主官庁にアマチュア業務を行う無線局=「アマチュア局」の開設を申請・許可を受けなければならない。なお、アマチュア業務を行う無線従事者 amateur radio operator は特に「ham ハム」と呼ばれることがある。

電波利用、無線業務の区分は国によってまちまちであるが、アマチュア業務については、航空無線船舶無線などと同じく、国際的にほぼ共通したものとされ、他国との通信を制限あるいは禁止している国のアマチュア局を除き、基本的に各国のアマチュア局は全世界のアマチュア局との通信が認められている国際無線局である。

国際法、すなわち国際電気通信連合憲章に規定する『無線通信規則』においてアマチュア業務とは「金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務(第1条第78項)」と定義され、日本の電波法施行規則においても「金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう」と定義されている。→#条約・法律上の規定・定義

非営利・自由な私的学究無線[編集]

今日の電波利用は「営利」「非営利」のふたつに大別され、例えば米国であれば、Commercial radio、Non-commercial radio とされているが、アマチュア無線は後者である。電波利用の歴史的経緯より、Non-commercial radio の代表として各国でアマチュア無線は法的に明確に分類、定義されている。

さらに日本の場合、電波利用は日本国憲法を最上位主根拠として三大別(これを「三大電波利用」と呼ぶ。)されているが、その内訳は日本国憲法第23条学問の自由の下にある「アマチュア業務」、同第21条、表現の自由の下にある「放送業務」、通信の自由の下にある、アマチュア、放送業務以外の「業務用無線」である[3][4]

電波利用は、公共の福祉増進のためにおこなわれる(日本では電波法第1条)ものであり、本来、金銭利益目的にされるものではないとされている。このため、学究、金銭利益を目的としない(してはならない)ことが明文化されているアマチュア無線、アマチュア局は国際的にあらゆる点で優遇される、自由度の高い無線局である。日本ではともすれば空中線電力といった点で、商業用無線局などとの比較をされがちであるが、他の無線局の場合、一つの周波数の割当を受けるだけでも多くの手続きなどを必要とし、空中線の性能にまで細かく制限を受ける。送信機から空中線まで自由で通信・サービスエリアなどの制限もなく、かついわゆる「よく飛ぶ」周波数を「帯域」として広く自由に利用できるのは、今日、私的学究目的のアマチュア無線だけである。また商業用無線局が大電力となるのは「よく飛ばない」周波数の割当を受けているためであることがほとんどである。

多くの電波(周波数)を相当自由に利用するアマチュア業務、例えば2011年現在、トータルで携帯電話会社5社分ともいわれるほどの周波数帯域を、たった一人でも自由に利用することが許されているアマチュア業務の性格上、ゆえにこれに従事する者の責任は重大である。アマチュア業務とは、あくまで公に「電波研究者」として認められた者がその「個人的研究」のために電波を利用するものであり、そのレベルは、国際法、国内法に定められるところを満たす必要なものでなければならない。

このことから、アマチュア無線をはじめようとする者は全て、まず自らの望むアマチュア業務を行うに足りる、無線従事者免許を受けなければならない(日本では電波法第39条の13規定)。

基本的に技術操作、通信操作に分けられ、限られた周波数を利用する商業用無線局の業務に従事する場合、必ずしも従事する者全員に無線従事者免許は要求されない、あるいは全く要求されないこともあるのに対し、数多くの周波数の全てについて、ゼロからの無線設備の設計・製作、これを用いての全ての通信操作が認められているアマチュア無線の場合、所定の無線従事者免許を所有しない者は、アマチュア業務に従事することはできない。これが「アマチュア無線技士」である。日本のアマチュア無線技士は第1級~第4級の4つに区分されており、「従免」と略称される。なお日本国内では一部の商業用無線従事者免許をもってアマチュア業務をおこなうことができるが、いずれも「アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作」とされる日本国内のみでの特例であり、海外でその無線従事者免許をもってアマチュア局を開設・運用しようとすると当該国より拒否されることがある。

アマチュア無線技士はその後、当該国の無線局免許(アマチュア局免許)を受け「免許人」となってアマチュア業務を開始する。アマチュア無線の世界ではこれを「局免」などと呼ぶ。商業用無線局などの場合、免許人は必ずしも無線従事者である必要はなく、法人そのもの、あるいは経営責任者(代表取締役社長)などが免許人となり、開設する(している)無線局の業務を行うのに必要な無線従事者を「確保」(無線従事者が必要な場合には「排他的に確保すること」とされていることが多い。すなわち従業員として雇用するなど)することが多い。

条約・法律上の規定・定義[編集]

国際法及び各国の法律で、アマチュア無線は「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」と規定されている。

国際電気通信連合憲章[編集]

国際電気通信連合憲章に規定する『無線通信規則』」における規定

アマチュア業務 
金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務(第1条第78項)

各国[編集]

日本[編集]

アマチュア業務について、日本の電波法施行規則には、次のように定義されている。

金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。
--- 電波法施行規則・第三条十五項
アマチュア局 
金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の興味によつて自己訓練、通信及び技術的研究の業務を行う無線局をいう。(施行規則第4条第1項第24号)

歴史[編集]

世界の初期[編集]

無線通信の黎明期、すなわち電波の商業・軍事などへの利用開始前、グリエルモ・マルコーニに代表される個人の研究者が自らの技術的興味を満たすために無線機器を作って無線通信を行っていた。つまり、すべての無線通信がアマチュア無線であった。スコットランドジェームズ・クラーク・マクスウェルにより、理論的に予想されていた電磁波(電波)の存在が確認されたのは1888年ハインリヒ・ヘルツの実験によるが、この時点ではまだ電波は通信用として利用されるものとはなっておらず、具体的に用いられるようになったのは1895年ロシアアレクサンドル・ポポフ 、同年イタリアのグリエルモ・マルコーニの無線電信実験の成功以降である。 その後急速に電波の商業・軍事などへの利用が始まり、各国で電波利用に関する法が制定され、アマチュア無線もその下に置かれるようになった。初期の商業・軍事無線通信などには長・中波帯域が大電力で使われ、混雑した状況となり[5]、アマチュア無線家には当時あまり使用価値がないと思われていた短波長の電波利用しか認められなくなった[5]。しかしアマチュア無線家らは緻密な計画や訓練によって短波の有用性を見出し、1923年11月27日に小電力による大西洋横断通信を成功させた[5]。 この功績などが無線界で認められたことをきっかけとして[5]、その後の周波数分配会議などにおいてアマチュア無線に周波数が割当されるようになった[5]タイタニック号事件を契機として国際的な電波管理の枠組みが構築され、電波の国家管理が始まった後の時代においても、アマチュア無線の保護には格別の配慮が図られ、幅広い周波数の利用が認められ、今日でも中波からマイクロ波までの様々な周波数がアマチュア無線に割り当てられている[3][6]

日本の初期[編集]

日本では1925年ころから東京、大阪、神戸で活動が始まり、1926年6月には38人によって日本アマチュア無線連盟JARL)が設立された[5]

法的に認められたというのを条件にするならば[5](電波利用に関する法制定と電波の国家監理(当時は主に国家掌握であった)開始後からというのを条件にするならば)、日本でのアマチュア無線の始まりは大正末期の1927年である[5]。日本でのアマチュア局は「私設無線電信無線電話実験局」として許可された[5][3]。これは、東京放送局(JOAK, NHKの前身)のラジオ放送開始よりも数年先行している。当時、日本の電波は日本政府の完全掌握下にあり、無線局の全ては「官設」「私設」の二分類、当時の日本の電波関連法には「放送局」のカテゴリーはなく、NHKの放送局といえども「私設局」のひとつで、アマチュア局と同等扱いであった。日本でアマチュア無線が完全に「非営利私的学究無線」と位置付けられ、その活動そのものに権力の介入を許さないものとして独立、「アマチュア無線」の呼称になったのは、太平洋戦争後、新たに制定された現行電波法からである[3]

大東亜戦争[編集]

昭和になり日本では、私設無線電信無線電話実験局は国家総動員体制に組み込まれていき、各地で「無線義勇団」「国防無線隊」が結成された。私設無線電信無線電話実験局は、1941年にはおよそ330局になっていたが[5]1941年昭和16年)12月8日太平洋戦争開戦に伴い、同日をもって、私設無線電信無線電話実験局の電波発射は禁止された。以降、アマチュア無線家はその技術・技能ゆえに、最前線の通信隊あるいは国内での軍用通信機の設計・製作に終戦まで従事させられ、少なからぬアマチュア無線家が帰らぬ人となった。

大東亜戦争後[編集]

大東亜戦争が終戦すると、日本ではすぐに、生き残ったアマチュア無線家によるアマチュア無線の再開運動が始められた[5]八木秀次といった著名な科学者・技術者も行った)が、国の完全掌握下にあった日本の電波の全てはそのまま直ちに占領軍の完全掌握下とされ、アマチュア業務用の周波数についても占領軍およびその関係者のアマチュア業務用として占有された。GHQは、日本語で行われる通信内容の検閲が困難、対立、朝鮮戦争といった理由より再開を認めず、日本のアマチュア無線はサンフランシスコ平和条約が発効し、国際法上、連合国との戦争状態が終結し、日本が完全に主権を回復した1952年にようやく再開された。(1950年に日本で施行された電波法で「アマチュア局」という名称が初めて使われ、資格制度や国家試験の内容も定められたのであるが、実際には1952年になるまで再開できず、ようやく1952年に30局で再開したのである[5]。)

当時から国際条約によって、電波監理は主権国家によって行われること(これは、今日の国際電気通信連合憲章にも残されている)、国防に関し、軍用無線設備について国家は完全な自由を保有するという内容があり、国家間軍事対立の間にあり、かつ主権を喪失、さらに終戦まで国により全ての電波が掌握されていた日本では結局、独立を回復するまで再開できなかったのである。これは同じ敗戦国であるイタリアでは直後、西ドイツでも1949年に再開されたのとは大きな違いであり、アマチュア無線に限らないが、この教訓は戦後新たに定められた電波法やその関連法に反映され、現在に至ることになった。

かつては外国の武力侵入があった際に、放送・商業通信が全て統制された中で、政府当局の厳しい監視をかいくぐり、スパイさながらに事件を世界中に伝えたこともあった(チェコ事件)。

日本では、1959年に電信級・電話級の初級資格が設置され、1966年にはこれが養成課程講習会の修了試験合格者にも与えられる、というようにハードルが低くなったためにアマチュア無線家の爆発的な増加をもたらした[5]。その後、高度経済成長と、科学技術に対する国民の高い関心を背景として、日本のアマチュア無線は発展し、1970年代には「趣味の王様」と呼ばれるほどのブームとなり、1980年代には米国を抜いて世界最大のアマチュア無線人口を擁するに至った[3]

現代[編集]

今日のアマチュア無線は直接的に広く実用できる新しい無線通信技術などを次々と開発して世界に提供するという部分での役目は終えている。しかし、しばしば争奪戦が繰り広げられるほど貴重な資源である周波数のうち、多くの周波数が今日においても、自由に使うことのできる「周波数帯」としてアマチュア無線に割当されているのは、学究目的であるアマチュア無線が、今日でも科学技術に従事する人材の継続的育成に大きな役割を果たし続けているということにある。事実、電気・情報分野の第一線で活躍している科学者技術者には、現役あるいは元アマチュア無線家が多く、大規模な商用無線通信業務を行っている会社ですら、アマチュア無線クラブを擁していることが多い。(電話会社や各放送局のアマチュア無線クラブなどは、その規模も大きい。)[7]

米国では、公共サービスとして地域パレードでの通信を担うなど、趣味の範囲を超えて運用されることがある。米国では開拓時代から現代までボランティアが大きな役割を果たしており、ボランティア活動にアマチュア無線が貢献してきたことから、国際法でのアマチュア無線の定義の範囲を超える運用(臨時に・無償で公衆網を接続し有線通信の無線中継局とするなど)を国内法で認めている。ちなみに米国のアマチュア無線家の全国団体はアメリカ無線中継連盟 (ARRL: American Radio Relay League) というが、これはボランティア活動のための通信を中継して広い国土に伝えるために、アマチュア無線家を組織化したことに由来する。

アマチュア無線局の現状[編集]

日本の現状[編集]

1995年を境に日本のアマチュア局は減少に転じた。1995年には約135万局あったものが2009年には約47万局と激減しており、2009年現在でもなお減少傾向にある[8]。この原因として以下のような理由が挙げられている[9]

  • 少子高齢化による自然減。
  • 公衆電気通信網(商業通信)を利用するのと異なり、元来、全くその目的の異なるアマチュア局の通信については多くの制限があり、通信の内容は軽微で公衆電気通信網に依らない私的事項に限るとされ、営利目的のもの、第三者のためのもの、また暗語などの使用も禁じられている。従って通常の電話のような利用はできず、その目的を達する、どこでも誰でも簡単に使うことのできる商業無線電話、つまり携帯電話の登場と普及により、この登場以前にアマチュア無線を簡単な電話代わりとしていたアマチュア無線家が廃局した。
  • 無線通信には目的を達するためにそれなりの設備が必要で、遠距離通信を達成しようとすればするほど大がかりで複雑なものとなる。これはアマチュア無線についても同じであり、特に広い私有地を確保し難い日本では、個人で高能率の大掛かりな空中線を所有・管理することが難しい。また大出力とすると、近隣電波障害対策、電波の強度に対する安全施設の構築が難しくなるため、手軽に多目的に使えるインターネットの登場と普及により、見知らぬ相手や外国人と交流したい人は、その掲示板チャット機能などを利用するようになった。
  • 上記のことにより、本来の学究的なアマチュア無線が復興してきた結果、秋葉原を中心に日本各地に存在したアマチュア無線関連の専門店が多数閉店し、家電販売店も収益の上がらないアマチュア無線部門から撤退(あるいは開店当初から扱わず)、結果、機器を購入したり、目にする場が減った。またアマチュア無線用機器の生産・販売数が減ったことから、必要な機器価格が上昇しており、アマチュア局開局のハードルが高くなった。

世界の現状[編集]

  • 対してアメリカ合衆国のアマチュア局数は、1990年頃から一時、漸減傾向となり、1994年には約65万局となっていたが、その後再び漸増傾向に転じ、2009年現在、約69万局と過去最高数になっている。また米国では2005年以降、10代を中心とした若年アマチュア無線家の増加がはっきりしてきていることなどから、ARRLでは2011年現在、「静かなブームになっている。」と分析している。
  • またヨーロッパ各国の状況も、横ばいか漸増傾向にある[10][11]

免許制度[編集]

アマチュア無線、すなわちアマチュア業務を行おうとするためには、自らの望むアマチュア業務を行うに足りる無線従事者免許と、そのアマチュア業務を行う国などで、アマチュア無線局の免許を受ける必要がある。なお、どちらも国によって制度に違いがある。

概ね、アマチュア業務を行うために必要な無線従事者免許は「アマチュア無線技士」などとして他の無線従事者免許と独立しており、アマチュア業務を行うに必要な基本概念の理解と基本知識の取得を証明する試験に合格した者に与えられる[12]。他の無線従事者免許でこれを満たすならば、その無線従事者免許をもってアマチュア業務を行うことができるとしている国もある。(日本の制度もそうなっている。)

電波監理はそれぞれの国家単位で行うものであることから、国によってアマチュア業務に従事するための無線従事者免許は異なっている。また日本のように無線従事者免許と無線局免許が完全に分けられている場合もあれば、ワンセット、すなわちアマチュア業務を行うための相当な設備を所有または所有でき、アマチュア無線局を開設することを条件にその無線従事者免許を与える場合もある。なお、後述する相互運用協定国間で、日本のアマチュア無線従事者免許は有効である[13]

各国の免許制度[編集]

アマチュア無線
英名 Amateur radio
実施国 世界の旗 世界
資格種類 国家資格
分野 無線
試験形式 筆記試験
認定団体 各国の電波を管理する主管庁
後援 国際電気通信連合
根拠法令 国際電気通信連合憲章
国際電気通信連合条約
公式サイト Amateur services page(英語)
ウィキプロジェクト ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル ウィキポータル 資格
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日本[編集]

アマチュア無線に限らず、日本で無線の免許と言われるものは、

  • 必要な技術・技能・法律知識を持っている人に与えられる無線従事者免許証
  • 必要な技術基準を満たしている無線設備に与えられる無線局免許状

の二つがあり、無線局免許を与えられた無線設備を、所定の無線従事者免許を所有する者が運用あるいは監理するといったことが求められる。商業用無線局の場合、無資格の者でも無線設備の操作などが認められる(今日の身近な例としては携帯電話がある。携帯電話も無線局の一つであるが、誰でも使用できる。)が、アマチュア局の場合、所定の無線従事者免許を所有する者以外には一切、認められない。

日本のアマチュア無線技士の資格は、下位資格から次の種類に分かれている。自らの望むアマチュア業務を行うに足りる必要な資格を取得しなければならない。なお日本の場合、下位資格から順に取得することは求められていない。

  • 第四級(旧・電話級)アマチュア無線技士
  • 第三級(旧・電信級)アマチュア無線技士
  • 第二級アマチュア無線技士
  • 第一級アマチュア無線技士

日本国内では、総合無線通信士など一部の商業用無線従事者の資格保有者は、アマチュア無線技士と同等の技術・技能・法知識を持っているとみなされ、その無線従事者免許をもってアマチュア業務をおこなうことができる(無線従事者を参照)。

従来、第三級以上はモールス信号解読の技能試験(電気通信術)が課されていたが、国際電気通信条約との整合性の点より、2005年10月1日から第三級では廃止されて符号及び通信略号に関する知識を問う筆記設問に変わり、また第二級・第一級にあってもその聴き取り速度が軽減された(ノーコード・ライセンスを参照)。これに伴い、申し出により、二級免許を取得した者は一級の電気通信術が、また電気通信術試験の廃止前に実施された国家試験に合格または養成課程修了により三級免許を取得した者は二級・一級の電気通信術が、それぞれ免除される。

日本においては、アマチュア無線に限らず無線従事者の受験資格に年齢制限はない。そのため小学生のアマチュア無線技士の誕生もしばしば話題になる。しかし無線従事者試験に合格し、アマチュア無線技士になったとしても、法的に日本のアマチュア局は「国際無線局」であり、無線局としては最上位にある[14]。電波利用の本姿の一つであるアマチュア無線であることから、アマチュア局開局の手続きなどは今日、ずいぶん簡略化されてはいるものの、そうは言ってもいわば「本式の」国際無線局であるアマチュア局の開局、また本式の運用や監理を要求されるアマチュア局の免許人となるのはハードルが高い[15]

一方で、アマチュア業務に用いるための送信機は、免許がなくても購入できるため、不法なアマチュア局の開局が後を絶たない。これら不法局に対しては、全ての無線局から徴収された電波利用料を元に、各地区の総務省総合通信局が取り締まりに当たっている。また購入の際“アマチュア無線機を使用する場合は免許が必要”などと注意する「指定無線設備の販売における告知」が販売店において行なわれている。

ノーコード・ライセンス[編集]

日本のアマチュア無線の免許制度の特徴として、入門級である第四級(旧電話級)はモールス符号の技能試験がないノーコード・ライセンスであることが挙げられる。かつて国際電気通信条約では短波帯を運用する無線従事者にはモールス符号による通信技能を求められていたにもかかわらず、日本政府はアマチュア局に許可する空中線電力が小さいことを理由に、短波帯の運用を電話級にも認めた。

また米国などと異なり、日本の場合、アマチュア局に許可される最大空中線電力は事実上1kWまでであり、併せて米国などと異なり入門級と上級の差が少ない、つまり上級無線従事者資格取得のモチベーションを下げているといったことも取り沙汰されるが、これは特に「アマチュア局であるから」という理由からではなく、日本の場合、地理上、また地形的条件より、小さな空中線電力であっても、近隣諸国との間で複雑で難しい混信の問題が発生する「物理的根拠」による制限であり、他の陸上無線局に許可される空中線電力や実効輻射電力の細かな制限と同じである[16]。その分、使用できる周波数帯の制限を緩くしているのが日本のアマチュア無線の制度であり、日本では早くからノーコード・ライセンスが実施されている。

なお、現在ではアマチュア無線や一部の軍事用無線などを除き、商業用無線などではモールス符号による通信が廃止され、その重要度が低下したため、国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則からモールス符号による通信技能要求は削除されている。そのため、日本と同様のノーコード・ライセンスを導入する動きが各国に広がっている。

個人局と社団局[編集]

日本のアマチュア局の無線局免許には

  • 個人が開設するアマチュア局に与えられる個人局
  • 団体が開設するアマチュア局に与えられる社団局

の二つがある。社団局は、学校や職場、地域などのアマチュア無線クラブが開設する。博物館などの科学教育施設や、福祉施設などにも社団局が設置されていることもある。

呼出符号(コールサイン)[編集]

アマチュア局には呼出符号(コールサイン)が割り当てられる。アマチュア局は国際通信をおこなう無線局であることから、コールサインは世界でひとつになるように割り当てられる。

日本のアマチュア無線局の識別信号/呼出符号(コールサイン)は、基本的には「JA1A××」のように、JA+(地域番号)+Aから始まる2または3文字のアルファベットから構成される。ただしSOSやXXX、Qから始まるものでQ符号に当てはまるものは除かれる。JA+(地域番号)の部分をプリフィックス、その後に続くA××の部分をサフィックスと呼ぶ。電話(音声)交信の際には、アルファベットのみでの聞き取り誤り(例えばジーかジェーかなど)を防ぐため一般にフォネティックコード(通話表)で確認する。また場所や指名についても同様に確認する。

JAにあたる部分は、JA-JSまでのうちJB、JCを除くもの、また関東では7K-7N(小笠原はJD1)が割り当てられている。7Jは相互運用協定に基づく外国人有資格者へ割り当てられていたが、現在はJA-JSのプリフィックスが割り振られている。特別局(記念運用)に8J-8Nが使われる。記念局以外は、希望の文字列の付与はしない。記念局の例として、ハムフェアなどでJARLが運用する 8J1A、最近(2007年)では、月面反射通信 (EME)を目的とした 8N1EME、FISノルディックスキー世界選手権札幌大会・特別記念局 8J8WSC、8N8WSE などがある。日本初の記念局は大阪万博会場に設置されたJA3XPOである。

地域番号は、無線局の所在地である、北海道(8)、東北(7)、関東(1)、信越(0)、北陸(9)、東海(2)、近畿(3)、中国(4)、四国(5)、九州(6)の10の各地方総合通信局及び沖縄総合通信事務所の管轄により指定される。ただし、関東総合通信局管内においては変則的・例外的に地域番号が使用され、7K-7Nのプリフィックスについては1から4までが使われている。

また、旧長野県(信越)山口村は現在岐阜県(東海)中津川市に越県合併したことにより地域番号は0から2に変わったが、合併時に開設されていた局に指定されていた呼出符号はそのまま使用する事が認められたため、東海総合通信局管轄内に例外的に地域番号「0」が存在することとなった。

サフィックスが2文字の場合は、個人であればOT(オーティー、Old Timerの略で、戦後アマチュア無線が再解放された直後の時期に開局した超ベテラン)であり、JRの2文字局はレピータに割り振られている。沖縄総合通信事務所管内では、米国統治下でのKR8 2文字局が復帰時にJR6に振り替えられたため異なる。またY、Zで始まる3文字局は社団局であるが、JPプリフィックスはレピータに割り振られている。

従来、一度アマチュア局に交付された呼出符号は、その廃局後でも、新たに別のアマチュア局に交付されることはなかったが、特に関東、東海、近畿、九州で呼出符号が不足するようになり、新たに別のアマチュア局に交付されるようになった。またあわせて、アマチュア局の免許をうっかり失効させたような場合でも、その間に、旧呼出符号が別のアマチュア局に交付されていなければ、再び同一免許人が交付を受けることができるようになっている。

ゲストオペレータ制度[編集]

この制度は、アマチュア業務をおこなうことができる無線従事者資格を持っている者(ゲスト)が、一定の条件下で他人(ホスト)のアマチュア局の運用をすることができる制度である。電波法施行規則第5条の2に基づく告示が改正され、1997年2月24日付の官報掲載をもって同制度は即日施行された。

一定条件とは、下記に示す条件であり、これらのすべてを満たしていなければいけない。

  • ゲストがアマチュア局の操作が可能な無線従事者資格を有していること。
  • 操作する設備が、ホスト無線局免許の範囲内であること。

例として、第一級アマチュア無線技士(ゲスト)が、第四級アマチュア無線技士(ホスト)の無線局を運用する場合、10MHz帯、14MHz帯、18MHz帯およびモールス電信の運用はできない。

  • 操作する設備が、ゲストが保有する無線従事者資格の範囲内であること。

例として、第四級アマチュア無線技士が、第一級アマチュア無線技士の無線局を運用する場合、 10MHz帯、14MHz帯、18MHz帯およびモールス電信による運用はできない。 また、空中線電力10Wを超える無線設備で30MHz以下、20Wを超える無線設備で30MHzを超える周波数の電波を使用するとして免許された無線設備は、出力を低く設定しても使用できない。

  • 運用の際に、必ずホスト局の免許人(社団局の場合は代表者または構成員)が立ち会うこと。
  • 運用の際には、ホスト局のコールサインを使用すること。

法令には規定されていないが、必ずゲストのコールサインまたは名前を送出して、ゲストによる運用であることを示すことが、JARLを中心にマナーとして指導されている。この制度により、無線局免許(コールサイン)を持たない者による、無線局の操作・運用ができるようになった。

日本が「相互運用協定」を締結している国(アメリカ・ドイツ・カナダ・オーストラリア・フランス・韓国・フィンランド・アイルランド)のアマチュア局の免許またはアマチュア局を操作することができる資格を持っている人であれば、この制度によりゲスト運用が可能である。

アメリカ合衆国[編集]

アメリカ合衆国では、下位資格から順に次の種類に分かれている。所管は連邦通信委員会 (Federal Communications Commission, FCC)。

  • ノビス級(廃止)
  • テクニシャン級
  • ゼネラル級
  • アドバンスト級(廃止)
  • アマチュア・エクストラ級

ノビス級、アドバンスト級の区分は廃止されたが、これは新制度下においてこれらの試験および新規の資格付与を行わないという意味での廃止にとどまる(したがって、この新制度の施行後においては、たとえば現にゼネラル級の資格を有する者がアドバンスト級の操作の範囲に属する操作だけを行おうとする場合でも、アマチュア・エクストラ級を取得する必要がある)。また、新規の資格付与を行わないだけであるから、当該廃止対象の資格を既に取得している者には影響を及ぼさず、その資格の更新も可能である。

かつてはすべての区分にモールス符号の試験が課されたが、現在ではいずれの区分もノーコード・ライセンスとなっている。日本では自信があれば初めから最上級資格に挑戦できるが、アメリカでは最下位資格から受験し、順にステップアップする制度となっている。

試験はElementと呼ばれる単位に分かれており、それぞれの対応は以下のようになっている。

  • Element 1(モールス)(廃止)5語/分の速度で送信されるモールスを聞き取り、その内容に関する質問に10問中8問の正解、または25文字連続の正確な聴き取りで合格。
  • Element 2(テクニシャン級)35問中26問で合格。
  • Element 3(ゼネラル級)35問中26問で合格。
  • Element 4(エキストラ級)50問中37問で合格。

テクニシャン級を取得するのにはElement 2のみに合格すればよい。ゼネラル級以上を取得する場合には対応するElementの合格が必要となる。つまりいきなりエクストラ級を取得したい場合は、Element 2からElement 4のすべての試験に合格せねばならない。また、かつてはElement 2に合格し、かつElement 1に合格した場合には限定的に上位資格で許可される帯域の一部において運用できた。この資格を以前はテクニシャン・プラス級と呼称していたが正式な名称はなくなり、「Technician with HF」などと呼称された。(現在はElement 1の廃止により、この運用範囲はテクニシャン級に組み込まれている。)

試験はVolunteer Examiner (ボランティア試験官、VEと略される)と呼ばれるVolunteer Examiner Coordinator(ボランティア試験官コーディネーター、VEC)により認定を受けた3名以上のアマチュア無線資格者により実施される。試験は米国外でも実施されており、米国で郵便を受けられる住所がある限り、全世界で受験可能である。[17]

試験問題約1700問は全てインターネット上に公開されており、新問出題は多くはないので、これらを勉強して受験すれば合格は比較的容易である。[18]

日本と比べて初級資格でも比較的大電力の空中線電力を扱える(級を問わず最大1.5kW)一方、周波数帯の制限は厳しく、日本の局がFCCの監視局から郵政省(当時)を通じて周波数逸脱を警告された例もある。資格区分によってコールサインが変わり、また資格者の情報はデータベース化されていて誰にでも参照できるので、資格外運用を容易に判別できる。そのため、上級資格を取得するモチベーションを刺激される制度である。ただし、資格区分によるコールサインの変更は資格保持者の任意であるため、コールサインのみでの資格の判断が困難な場合がある。[19]

また、日本でいう無線従事者免許証と無線局免許状が一体となった包括免許方式であるため、資格内での運用である限り無線機の登録などは必要なく、しかも資格の取得の定義が「FCCデータベースに入力された時点」なので、無線機が手元にあれば、登録確認次第、すぐに運用を開始することができる。

相互運用協定[編集]

アマチュア局は、電波の発信する場所の中央政府の規制を受ける為、原則として当該国のアマチュア無線の許可(ライセンス)を受ける必要があるが、一部の国々との間では、相手国のアマチュア資格を自国で受け入れる代わりに、自国のライセンスで相手国でも運用ができるように、政府同士が相互運用協定を締結している場合がある。

日本から見た相互運用[編集]

日本は以下の国と相互運用協定を締結している。日本は相手国のアマチュア無線資格を持つ者に日本での運用を認め、相手国は日本のアマチュア無線資格を持つ者に相手国での運用を認めている。

日本の制度による免許を所持する者が日本国外から電波を発信しようとする場合は、原則として当該国のアマチュア無線の許可(場合によっては試験を受けて)を受ける必要があるが、一部の国々との間では、相手国のアマチュア資格も日本で受け入れる代わりに、日本の資格でも当該国で運用ができるように政府が相互運用協定を締結している国がある。条件や規定が国によって異なるが、二カ国間や、多カ国間で締結された協定によって、アマチュア無線従事者は国境を越えてアマチュア局の運用をおこなうことができる。外国での運用は、その国の規定に従う必要があるが、事前にアマチュア局の運用を行おうとする国の担当官庁などに申請、許可を得る必要のある国があるので注意が必要である。

日本のアマチュア局は、上記国中、アメリカとフランス、そしてオーストラリアでは、アマチュア局の運用にあたって特段の許可を得る必要はない[20]。ただし呼出符号、バンドプラン・最大空中線電力などについて、当該国の規定に従わなければならない[21]。他の国については事前の手続きが必要である。

なお、相互運用協定を締結していない国でも、恒常的に日本の資格を認めて運用を許可が下りたり、発展途上国の場合は、許可に関する規定が整備されていないことも多く、交渉により特別に許可を出してくれる場合もあるが、基本的に事前に申請し許可証を受ける必要がある。あくまで書類の審査のみで、試験は課されないことが殆どである。例として、パラオ共和国は、日本のアマチュア無線技士免許を受けていれば、日本での級に関係なく最上級ライセンスが1年間認められ、持ち帰ることを条件に無線機の持ち込みも可能で、中華人民共和国では、無線機の持ちこみはできないが、中国内にあるグループ運用局に訪問しゲストとして運用を2年間許される。あるが、あくまで相互運用協定が締結されている訳ではないので、逆にこれらの国々の人が日本で運用することは原則できず、また、あくまで好意で受け入れられていることから、次、許可が出ることを保証されている訳ではない。

通信方式[編集]

アマチュア無線で使われる通信方式には以下のようなものがある。

電話通信[編集]

音声による通信(電話
短波帯では占有帯域幅が狭く遠くまで電波の届くAM・SSBが、VHF以上では音質の良いFMが使われることが多い。また自作が容易なことから、周波数に余裕のある50 MHz帯や28 MHz帯ではAMも愛好者を中心に使用される。デジタル変調方式による音声通信も一部で行われはじめている。

電信通信[編集]

電信方式の通信で、モールス信号を打つための電鍵(キー)の一例。接点が2つある高速入力用。
符号による通信(電信
手送りのモールス符号 (CW)
モールス符号による通信は、デジタル技術に取って代わられ、他業務では一部の海事や軍事用途を除いて廃止されているが、アマチュア無線では熱心な愛好者が多い。
  • 最大占有周波数が500Hz程度しか必要としないため、混信に非常に強い。
  • 同じ理由で、電波が弱くても明瞭に通信ができる。
  • 最低限、世界共通の略符号やQ符号を並べて打電するだけで交信が成立することから、外国語が苦手でも海外との交信にあまり困らない。
  • 50音となっている和文モールスを使うと普通の日本語文の伝文になる。ベテラン層に和文モールスによる通信愛好者が多く、国内との通信が主体となる3.5・7・144・430 MHz帯の利用が多い。
印刷または画面表示によるラジオテレタイプ (RTTY)
印字通信である。古くは機械式のテレタイプ端末と、これを無線装置に接続する変復調器などによって構成されていた。今日ではパソコンのサウンド入出力端子に簡単なインターフェイスを介して無線装置を接続し、ソフトウェアMMTTYなど)でRTTYの送受信ができるシステムが作られ、日本語の文字通信も可能なPSK31といった通信方式も登場したことにより運用しやすくなっている。

特殊モード通信[編集]

コンピュータによるデータ通信(パケット通信
パソコン通信インターネットが利用されている。
アマチュアテレビ (ATV)
テレビ放送と同一規格の映像をやり取りするものと、SSTV(低速度走査=スロースキャンテレビ)と呼ばれるものがある。前者は周波数帯域を広く(最大占有周波数6 MHz)必要とするため、1200 MHz以上の周波数で行われる。後者は「テレビ」という名称が付いてはいるが、実際には1枚の静止画像を30秒かけて送信するものである。ただしその分、必要とする使用する周波数幅は音声と同程度(2.5 kHz程度)であるため、短波帯を使用して海外局とのやり取りも楽しめる。近年ではパソコンのサウンド入出力端子に無線装置を接続し、ソフトウェアのみでSSTVを実現するシステムなどが作られている。
アマチュアFAX
古くからあるが事例は少ない。近年では、パソコンのサウンド入出力端子に無線装置を接続し、ソフトウェアのみでアマチュアFAXを実現するシステムなどが作られている。

楽しみ方[編集]

アマチュア無線にはさまざまな楽しみ方があり、各アマチュア無線家によって楽しみ方は無数にある。以下にその代表的なものを紹介する。

交信を楽しむ[編集]

ラグチュー[編集]

いわゆる雑談である。英語の「Chew the rag(チュー・ザ・ラグ=ぼろ切れを噛む)」を語源とし、転じて、くだらない話や他愛も無いお喋りを止めどなく続けることを指す。 アマチュア無線では、国内、国際法ともに重要な内容(例えば絶対的に秘密を守らなければならないような内容)を含む通信を禁じているので、基本的に第三者に聞かれてもよい程度の世間話、すなわち「友人同士の雑談」のみであり、また見知らぬ友人を求める趣味でもあることから、ラグチューはアマチュア無線の基本のひとつということになる[2]携帯電話の登場と普及前、友人とのラグチューを目的としてアマチュア無線を始める者も少なくなかった。

遠距離通信 (DX)[編集]

DXとは、短波帯においては海外、VHF以上では見通し距離外の局などとの通信を目指す、遠距離通信のことをいう。なお「DX」とはもともと、英語の"Distance X"を無線用語のようにしたものであるが、米国などでも通じる言葉である。1937年には既にARRLがアワード(賞)「DXCC」を制定している(後述)。

特にトランシーバの場合、単に空中線電力を上げるだけでは受信がおぼつかなり、交信が成立しなくなることもあるため、高利得の空中線が必要となる。またトランシーバではなく、送受信機を別とし、空中線もまた送信・受信で独立させるといった高度なシステムと運用も必要になる。良好な電波伝搬を得るため、適した場所に移動して運用することもある。国外に設備とキャンプ装備一式を担いで行き、無人島や定住アマチュア無線家のいない地域から電波を発射して全世界からの交信リクエストに応える「DXペディション」(DX+Expedition、冒険)というものもある[22]

海外のアマチュア無線家と親しくなると、相手と直接面会することもある。アマチュア無線家が民間外交官と呼ばれる所以である。なお、無線で話しをしている人同士が、直接面会して話すことをアイボールQSO(目玉で交信を意味する)という。インターネットのオフラインミーティングと同じものであるが、アマチュア無線のアイボールQSOは国境を越えることが珍しくない[23]

コンテスト[編集]

コンテストとは、主催者が定める規約に従い、参加者同士で得点を競う競技の一つである。規定の時間内に、より多く、より遠くの交信を行う事を競い、交信証明としてコンテストナンバーを交換した交信局数×交信地域数を得点とするルールが多い。日本アマチュア無線連盟 (JARL) が主催する主なものとして、より多くの市町村に位置する無線局との通信を目指す全市全郡コンテストなどがある。また、全世界の参加者を対象とする大規模なコンテストも年に何回か開催され、DX愛好家が腕を試すチャンスとなっている。国内で行なわれるコンテストは一日の電波伝搬状況を知るための意味もあり24時間、世界的に行われるものは48時間が多いが、2時間~半日のスプリント、1週間~一か月に亘るマラソンコンテストもある。

一般に「CQ」(全局呼び出し)を発し、呼び出されるのを待つ局(ホストなどと称される)となるか、「CQ」を追いかけて呼ぶかのどちらかになる。時に前者は複数の後者の呼びかけがいくつも重なる状態となる。これを「パイルアップ」と呼ぶ。CW, SSB, AMの場合には、同時に重なった複数局の呼びかけでも把握できるため、ホストは、重なった呼びかけを把握し、相手局を順次選択して次々に交信を成立させていく。お互いの交信が確認できた場合「QSL」(交信成立)を交換する。FMの場合には、時間差で複数局の呼びかけを多数聞き取ることがポイントとなる。短時間でより多くの局と交信すること、その中で珍しい局と交信ができること、電波伝播の状態によって交信可能エリアが刻々と変化し、短時間でAJD, WAJA, JCC-100(後述)などが達成できることがコンテストの醍醐味である[24]

アワード[編集]

アマチュア無線のアワード(賞)は、積み重ねた交信が決められた条件を満たしたときに与えられる賞である。ただ漫然と交信するのではなく、ある目的を持って通信するための方法を模索するきっかけや、長期的なハムライフの目標として愛好されている。アワード取得のために交信の難しい地域と交信するために設備を増強したり、あるいは自ら交信を達成しやすい場所に行って移動運用することもある[24]

発行団体は、各国のアマチュア無線家の団体のほか、企業や公共団体などが記念事業として発行する場合もある。以下に、JARLが発行するアワードを紹介する[24]

  • AJD (All Japan Districts Award):日本国内の10コールエリアと交信する。
  • WAJA (Worked All Japan Prefectures Award):日本国内の1都1道2府43県と交信する。
  • JCC-100~700, JCG-100~500:日本国内の異なる市ないし郡と交信した数を、100刻みに表彰する。JCC, JCGはそれぞれ日本の市、郡を示すコードの名称(市郡区番号を参照)。

また、ARRLが発行するアワードにDXCC (DX Century Club) がある。これは、全世界の陸地を「エンティティ」(主権国家及びその海外領土、独立地域、帰属国未定地。1980年代まではカントリーと呼ばれていた)と言われる約300(2006年現在330)の地域に分け、100エンティティ以上と交信すると取得できるアワードである。賞状はこのクラブの会員証を兼ねている。以降、交信エンティティ数が増すごとに上位の認定を受けることができる。現存エンティティ完全制覇まで残り10地域を切るとオナーロールメンバー(名誉会員)登録がされる。交信エンティティの多さはDX愛好者のステータスシンボルでもあり、一生をかけて追いかける目標として愛好されている[25]

QSLカード[編集]

アマチュア無線家には、交信をすると、その記念となるQSLカード(交信証明書)を交換する慣習がある。発行の有無は無線局長の判断であり、発行は任意である

アマチュア無線の定義さえもなかった黎明期からの慣習であるが[3]、当初から、電波がどのくらいの距離をどの程度伝搬したのか交信者同士で検証・確認する目的があったようである。交信証明書をはがき(カード)にするという考えは何人かのアマチュア無線家によってそれぞれ独自に考案されたようであり、検証されている最も古いQSLカードは、1916年、米国ニューヨーク州バッファローの8VXから ペンシルベニア州フィラデルフィアの3TQへ送られたカードである。

交信確認のための記載内容を統一し、QSLカードの原型を完成させたのは、1919年、米国オハイオ州アクロンのC.D.Hoffman(8UX)のようである[26]。QSLカードを収集すること自体がアマチュア無線家にとって大きな楽しみのひとつであるほか、アワードの申請に必要な証明書類としてQSLカードの提出を求められることもある[27]

しかし、QSLカードに執着するあまり、本質である「交信」を忘れた運用などがしばしば問題視される。

自作を楽しむ[編集]

アマチュア無線は技術研究を楽しむ趣味であるため、法的にも無線設備を全て自分で作り、検査に合格して運用することが許されている。アマチュア無線の黎明期、アマチュア無線家は無線設備のおよそ全てを自作して無線通信を行っていた[3]

今日では検査に係る無線設備本体(無線機本体)などは市販品を用い、空中線や電源などの検査に関わらない周辺機器を必要に応じて自作するというのが一般的であるが、敢えて検査に係る無線機本体(送信機本体)の自作に挑戦し、検査をパスして運用するアマチュア無線家もかなりいる。これは例えば市販のパソコンを買えば用が足りるのに、あえてパソコンを自作するパワーユーザーに似ている。

外に出ることを楽しむ[編集]

アマチュア無線は無線機を使って他者と対話するものであるため、ともすれば自宅などのシャック(無線室)にこもりがちである。しかし街や野山に無線機やアンテナを持ち出す移動運用にも格別の楽しさがある。

モービル[編集]

モービルとは、自動車オートバイに小型の無線機とヘッドセットや特殊な送受システムを組み込み、移動して通信実験を行うことを指す。運転しながら通信操作を行うことを考え、安全運転のために様々な研究が重ねられてきたが、携帯電話やカーナビゲーションシステムの登場とこの運転中の使用等による交通事故が問題となり、道路交通法第71条第5号の5によって併せて規制対象となった。しかし規制前よりヘッドセットや各種分割型ワンタッチスイッチなどがモービルでは研究・実現されており、規制後の今日でも、モービル通信法のノウハウとともにこれらはそのまま使用可能である[28][29]

フォックスハンティング[編集]

受信機を手に目標物を探すARDFの競技者
ARDF世界大会(2004年チェコ)にて

隠れている電波発信源(発信器)を探し出すことである。通常、小型で鋭い指向性を有する空中線を高感度の受信機にセットし、これを用いて発信器を探し出す。古くからアマチュア無線家の間でフォックスハンティングは競技として行われてきた。競技においては、決められたエリア内に置かれた複数の発信器を全て探し出すまでの速さなどを競う。通常、発信器は物陰などに隠す、あるいは何かに偽装して置かれるが、競技の趣旨によっては運営スタッフが通行人に扮し、発信器を所持して移動するといったことも行われる[30]。信号を発しているポールを求めて、これをオリエンテーリングに似たルールで競技化したものがARDF (Amateur Radio Direction Finding)である。ARDFは自分の足で野山を走り回るハードなスポーツであるという点で、他のアマチュア無線の楽しみ方と大きく異なる。過去、ARDFは旧共産圏の諸国を中心に盛んに行われてきたが、今日では全世界に広まり、世界大会が開かれている。日本でも毎年のように全国大会が開催されている[31][32]

なお、2点以上の場所から電波の到来方向を調べることにより、無線局の位置を特定できる。このことから従来、沿岸地域にある複数のアマチュア無線局が、海難信号を送出している船の位置を協力して探索し、救助に協力することなどもされてきた。また身近には、テレビ・ラジオなどに受信障害を発生させている電波発信源の発見と除去に、アマチュア無線家が自らのフォックスハンティングの技術をもって協力することもある[33]

自然物・自然現象を利用して通信する[編集]

自然物・自然現象を利用した通信は不安定であるため、絶対安定した通信が条件となる商業通信では嫌われるのであるが、これに敢えて挑み、この不安定さやこれを排除する方法を見出し、「使い物にならない」と考えられていた周波数を、ついには商業通信に利用できるようにしたことなどの歴史的業績がある。今日でも熱心に研究を続けているアマチュア無線家は多い。

電離層反射通信[編集]

特に短波は上空の電離層と地表との間で反射を繰り返しながらよく伝搬する性質がある。そこでこの性質を用いて遠距離通信を行うものが電離層反射通信である。電離層には下層から順にD層、E層、F層という名前がつけられており、各層の性質を利用して通信を行う。初夏から夏にかけ、局地的にE層付近にスポラディックE層(Eスポ)と呼ばれる高密度の電離層が局地的に発生することがある。これはVHFまでの電波を反射するため、ラジオやテレビにとっては混信原因となる迷惑者だが、アマチュア無線家にとっては普段交信できない地域と交信するチャンスである。Eスポが発生するかどうかはある程度予測可能であり、また太陽活動の変動に伴い「当たり年」となることもあるため、これを狙って通常その周波数帯では不可能な遠距離通信を試みることができる。なお太陽活動はほぼ11年周期で変動しているが、その程度にはむらがあるため、特にSSN(Sun Spot Number, 太陽黒点指数)が太陽活動の状況を知るためのものとして重視されている。

流星散乱通信[編集]

宇宙空間の微細な塵が大気に突入する際に大気中の原子を電離させると、一時的に微小な電離層が発生したようになり、そこで電波を反射することがある。通常の電離層と異なり存在する場所が限定されるため、反射された電波を受信できるのは短時間であるが、テキスト通信として実用化もされている。年に何度かある流星群の時期にはある程度連続して現象が発生するためこの時期を狙ってアマチュア無線の交信を試みることもある。通信手法の確保の観点から流星バースト通信 (Meteor Burst Communication, MBC) と呼ばれることも多い。

月面反射通信[編集]

人工衛星ではなく、電波を中継する相手としてよりを選ぶのが、月面反射通信 (EME=Earth-Moon-Earth) である。スタックした八木アンテナ、またはパラボラアンテナを月に向けて大電力を送信、月面で電波を反射させ、相手局が受信する。反射する電波は微弱であり、かつ月は移動するため、通信をしない電波天文に比べて大がかりな設備(大出力の送信機、高感度の受信機、指向性の高いアンテナ)を必要とし、またモールスによる、交信用の特別な単文字符号が用いられる。

小電力通信に挑む[編集]

日本のアマチュア無線家の間ではこれを「QRP」などと呼ぶ。QRPとはQ符号の一つで、空中線電力を下げることを意味するが、法にある「必要最小限度」ではなく、「限りなく小電力で」遠距離通信に挑むことを指す。

電波の有効利用の点から、無線通信においてできる限り空中線電力を低く抑えることは重要である。すなわち混信を減らし、少ない周波数で多くの通信を成立させるのに役立つためである。また、送信装置を小型化し、消費電力を抑えることから、小型・軽量な持ち運びのできる無線装置を実現しやすくなり、運用の自由度が増すといった利点がある。このことからアマチュア無線家の間で、古くから行われてきたのがQRPである。今日では、技術研究のみならず、通信技術の練磨、すなわち微弱な信号を聞き分ける高度な通信技術を身につける楽しみのひとつとして行われることも多い[34]

勘違いされがちなのであるが、過去、アマチュア無線家が短波帯を開拓したことはQRPに他ならない。すなわち遠距離無線通信に100kWを超える大空中線電力を必要としていた当時、電離層反射を利用することにより、わずか1kW程度の空中線電力で全世界との無線通信を成立させたのは、革新的なことであった。また、指向性空中線のおよそ全てが省電力化と混信の軽減を目標として開発されたのは言うまでもないことである。また、SSB方式の開発などもQRPの一つであった[3]

中継設備を利用する[編集]

個人が開設しているものから、日本アマチュア無線連盟が開設しているものまで、様々な中継設備が運用されている。これにより通信可能な範囲が広がる。

アマチュア衛星通信[編集]

宇宙空間にはアマチュア無線家によって製作された、アマチュア無線のための通信衛星であるアマチュア衛星が打ち上げられている。現在ではアマチュア通信用の衛星は常時10基以上運用されているので、アマチュア無線家にとっては身近なものとなっている[35]。衛星には通信を中継する機能や、地上から送信された信号を一定時間記憶し再送出する機能が搭載されており、電話・電信で直接交信するほか、コンピュータを用いてデータ伝送を行ったりする。ただしアマチュア衛星は静止軌道には投入されておらず、通信中はアンテナで衛星を追尾する必要があるため、ある程度の慣れと設備を必要とする。

レピータ[編集]

アマチュア無線のための中継設備は地上にもある。見晴らしのいい山頂やビルなどにレピータ(レピーター、リピータ)と呼ばれる中継局が設置されており、その中継局を介して通話をすることができる。レピータを使用すると、見通し距離を大きく超える遠距離通信を安定的に実現できる。レピータは多数のアマチュア無線家が使用するため、短時間で要領よく通信を行うことが求められる。いわばアマチュア無線用の“無料公衆電話"。主にUHF(430・1200 MHz・2400 MHz)帯で運用されている。 また、長距離レピータとして29MHzやSHF以上の周波数のレピータ5.6GHzや10GHzのレピータも一部で立っている。 最近はD-STAR(Digital Smart Technologies for Amateur Radio)方式を使ったレピータも各エリアで運用されはじめている。

ホーンパッチ[編集]

中継に有線通信を用いるのがホーンパッチ(フォーンパッチ)である。通信の途中に電話回線インターネットによる中継を挟むことで、直接電波が届かない地域との通信を実現する。有線用の電話機から公衆回線を通じてアマチュア無線に接続する形態、つまり電話機側の人が無線家でないこともあり得るものである。欧米では古くから実用化されており、特にアメリカでは普及していたが、日本においては近年まで全面禁止されていた。しかし日本でも法改正により、一定の範囲内でアマチュア無線機と商用通信網の接続が認められるようになった。有線回線を中継して互いが無線機を用いるD-STARケンウッドアイコムとJARLで推奨)やWiRESバーテックススタンダードで提唱)、EcholinkeQSOIRLP(いずれもフリーソフト)がある。

パケット通信[編集]

アマチュア無線を用いたデータ通信である。OSI参照モデルに基づき、各階層でのプロトコルやサービスが開発されている。データリンク層プロトコルとしてはパケット交換方式であるAX.25が事実上の標準規格であり、このことからパケット通信と呼ばれるようになった。上位層では、RBBS (Radio BBS) が運用されているほか、TCP/IPを実装してインターネットと接続することも行われている。

アパマンハム[編集]

アパートマンションなどの共同住宅のベランダや屋上にアンテナを設置するアマチュア無線家のことを「アパマンハム」と呼ぶ。一軒家による運用と比べると、隣家(隣室)との距離が短く、共同資産もある事から、それらに対する配慮がさらに必要となる。小型・高性能・安全なアンテナが要求されるため、その技術的研究が盛んに行われており、個人的に、また専門の書籍にそのアイデアを公開している[36]ケースも多い。

この造語は日本では便利で一般的である一方、日本国外でも同様のアパマンハムがいる。例えば、Hidden Stealthなどの形容詞、Apartment Dweller, Antenna Restriction, CC&Rなどの規制、制限条件などから具体的なカテゴリーや表現を用いるが、「限られたスペースでいかにアンテナを動作させるか」という同義での研究が盛んである。また、日本のマンションと日本国外のマンションの定義も異なり、むしろ日本でいうところのマンションもアパートのカテゴリーと定義できる。更には、アパートでの接地条件が垂直系アンテナの効率に大きく影響するため、接地条件が不良なケースでの研究対象やアンテナの展開の仕方、材料なども論議されている。このように広義なアパマンハムにとり、技術的には車や移動運用で使用するアンテナを応用、活用できるという共通部分も少なくない。また、戸建所有者にあっても、地面がなく、密集地であったり、ベランダのみでの運用を余儀なくされるなどの住宅事情から、その研究テーマや条件はアパマンハムと共通であることが多い。

社会貢献[編集]

科学技術の発展に対して、アマチュア無線が果たしてきた役割は大きい。だがアマチュア無線の社会貢献はそれだけではない。

非常通信[編集]

アマチュア無線の社会的貢献が報道などされるものとして、災害時など非常時の通信が挙げられる[1]。日本での例として、2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震では、中山間地で孤立した集落や山中の行楽客からのアマチュア無線を活用した通報により、多数の孤立者が迅速に救助され、人的被害の拡大を防いだことなどが挙げられる。携帯電話やインターネットが広く普及した今日にあっても、アマチュア無線の災害時対応などについて社会から期待されている[37]

国際的にも、アマチュア無線による災害時対応などについて期待されており、2004年に発生したインド洋大津波を契機に国際条約の整備を目指した国際会議が発足し、各国関係主管庁への働きかけが進められている。先進的な法整備がなされている米国では、災害時など非常時の通信を主目的とするアマチュア無線による非営利の公共業務 (public service) を従来のアマチュア業務に加え、これを推進するための関連法を整備している[37]

なお、日本におけるアマチュア局の非常通信の取り扱いについては議論がある。詳しくは日本でのアマチュア無線をめぐる諸問題を参照されたい。

社会福祉[編集]

障害者、特に視覚障害者にとっては、アマチュア無線は社会参加の有力な手段の一つである。そのため、社会福祉施設などにクラブ局が設置され、アマチュア無線の交信を通じて社会参加を図る場面が見受けられる。

特殊な場所のアマチュア無線局[編集]

アマチュア無線従事者資格を持つ、特殊な環境下で観測などの業務を行っている科学者や技術者が、業務時間外の余暇を利用してアマチュア局を運用することがある。過酷な環境下に居る当該運用者の精神衛生を保つといった効果、また通信の機会の少ない場所との通信に価値があると考えるアマチュア無線家などにとって魅力的なものである。

国際宇宙ステーション[編集]

国際宇宙ステーションでは、アマチュア無線局ARISS (Amateur Radio on the ISS) が運用されている。各宇宙飛行士が余暇時間を用いて運用を行う。通常の通信の他に教育を目的として、あらかじめ特定の学校と日時を決めて通信を行う、スクールコンタクトと呼ばれる運用も行われている。上級資格を持つアマチュア無線家の監督の下、特例として児童生徒が送信ボタン操作のみの無資格運用を許される。コールサインにはNA1SSとRS0ISSが用いられている。他にスペースシャトルミールでも同様の運用実績があり、それぞれSAREX, MIREXと呼んだ。

昭和基地[編集]

南極にある日本の昭和基地には、観測隊員によるアマチュア無線局8J1RLが開設されている。また、ドームふじ観測拠点にも2003年に8J1RFが開設された。

南鳥島[編集]

南鳥島には一般人は上陸できない。海上自衛隊・海上保安庁・気象庁の職員が駐在している。社団局JD1YAA気象庁HAMクラブが開設されている。アマチュア無線の大陸区分においては、南鳥島はオセアニア (OC) に含まれる。

富士山測候所[編集]

富士山測候所2004年夏を以って観測員常駐が廃止され、アメダス測候に切り替えられたが、測候所職員によるアマチュア無線社団局が運用されていた。

イベント(博覧会など)[編集]

大きなイベント、特に国際的なイベントの際には記念局が開設されることがあり、来訪するアマチュア無線家が運用する。局はアマチュア無線連盟直轄の社団局として扱われ、連盟会員であれば会員証と免許証を提示の上で誰でも運用できる。

アマチュア無線の交信は最もわかりやすい民間レベルの国際交流であるため、地球が狭くなった現代でも国際的なイベント(万博オリンピックFIFAワールドカップなど)には記念局が積極的に開設される。記念局の運用はもちろん、記念局との交信も、アマチュア無線家にとって文字通り記念になる。

日本初の記念局は、1970年大阪万博会場に設置されたJA3XPOであり、万博開催期間中に運用された。その後の日本で開催された万博では、1985年科学万博(8J1XPO)、1990年花の万博(8J90XPO)、2005年の愛知万博でも8J2AIのコールサインで記念局が開設された。

他に、1972年1998年冬季オリンピック札幌長野)、2002年のFIFAワールドカップ日韓大会(会場となった地区)でも記念局が開設された。

アマチュア無線家[編集]

アマチュア業務をおこなう無線従事者のことを一般に「アマチュア無線家」(radio amateur)という。

アマチュア・コード[編集]

アマチュア無線はあくまで趣味であるため、本業がおろそかにされてはならない。アマチュア無線家たちが本業をおろそかにし、アマチュア業務にのめりこむことへの戒めとして、日本アマチュア無線連盟1959年に法人化された際、アマチュア無線家が社会人市民として守るべき以下の5つの徳目を定めた。これが「アマチュアコ-ド」である。

  • アマチュアは善き社会人であること
  • アマチュアは健全であること
  • アマチュアは親切であること
  • アマチュアは進歩的であること
  • アマチュアは国際的であること

「ハム」の由来[編集]

アマチュア無線家 (radio amateur) のことをハム (HAM) とも呼ぶが、この言葉の由来には諸説ある。

  • amateurの最初の2文字をとり発音しやすいようにhをつけたもの
  • いわゆる“大根役者”(アマチュア)のことを英語でhamと言うことから
  • アマチュア無線の黎明期に有名だったアマチュア無線局のコールサインから
  • 電源交流の回りこみやアンプの低周波の発振によるブーンというノイズをハムノイズ、略してハムとも言い、往年のアマチュアの機材ではよくこれが電波に乗ったところから来ているという説。しかしその綴りは hum である。

また日本では「アマチュア無線」そのものもハムと呼ぶが、これは日本独特の呼び方である。英語圏では、アマチュア無線のことは、"amateur radio" または "ham radio" といい、"ham" とだけ言うことはない。"hammy"(ハミー)と呼ぶことはある。

アマチュア無線に用いられる用語[編集]

他の無線通信業務と同じく、定められた無線用語Q符号通話表)が使われるが、その他、他の無線通信業務と同じく、アマチュア業務に適した用語が用いられている。ただしアマチュア業務において暗語の使用は禁止されている(日本では電波法第58条)。これはアマチュア局の通信の相手方が「全世界不特定のアマチュア局」であるということからである。他の無線通信業務においても通信の相手方が同様のものについては暗語の使用は禁止されている。一方で特定二者間通信などを行う無線通信業務などにおいては、逆に暗語の使用が義務付けられている[38]

通信内容[編集]

アマチュア無線は法律上、発信者の身元保証や通信内容について厳格に規定されており(虚偽の通信の禁止と罰則規定―電波法第106条)、通信内容の正確性が担保されているとされる。なお無線局運用規則第259条により、非常通信などを除いて、第三者の依頼による通報はできない。

アマチュア無線が引き起こす問題[編集]

他の機器などへの電波障害[編集]

他の無線局などと同じく、アマチュア局はその近隣に電波障害を与えることがある。テレビ・ラジオ・パソコン・無線LAN[39]、医療機器[40]あるいは他の無線装置などにアマチュア無線の電波が妨害を与えることがあるため、アマチュア無線家の周囲に住む人々などから問題視されることがある。原因は他の無線局などの場合と同様にさまざまである。

アマチュア局は、自局の発射する電波が他の無線局の運用または放送の受信に支障を与え、または与えるおそれがあるときは、すみやかに当該周波数による電波の発射を中止しなければならない[41]。アマチュア局はそのような状態を避けるため細心の注意を払うよう法令に定められている。

電波の人体に与える影響[編集]

他の無線局などと同じく、無線機やアンテナの選択や設置状況によっては電波、すなわち電磁波が、それを運用しているアマチュア無線家自身のみならず、周囲の人々の健康に悪影響を及ぼしている、あるいは及ぼしている可能性があるとされることがある。

2011年現在、電磁波の生体に与える影響は病理学的に明確ではなく研究途上にある。諸説あり、また周波数によって生態影響は異なるとされる。日本では、周波数と輻射電力などによって防護策を講じることがアマチュア局についても暫定的に定められている。どのくらいのレベルの電磁波から規制するかは、国によって差がある[42]

国際非電離放射線防護委員会ガイドラインや総務省の電波防護指針の示すところを基にして、磁界強度だけでなく電界強度まで考慮すると、例えば磁界放出型のループアンテナ(周波数14 MHz、送信電力10 Wと想定)などは、人体から2 m以上の距離を確保しなければならない[43]

アマチュア無線を題材にした映画[編集]

アマチュア無線を題材、あるいは物語の重要な要素に取り上げた映画として、『復活の日』(1980年・日本)、『コンタクト』(1997年・アメリカ)、『オーロラの彼方へ』(2000年・アメリカ)、『リメンバー・ミー』(2000年韓国)など多くの作品がある。また、スキーヤーに一時的にアマチュア無線が普及した契機として、邦画『私をスキーに連れてって』(1987年)があった。しかし免許を受けずに使用され、地元のアマチュア無線の運用に影響を与えた事例もあった。『ミッドナイトイーグル』で登場したリアルな無線室を作り上げたのはバーテックススタンダードである。

参考文献[編集]

  •  日本アマチュア無線連盟編『アマチュア無線のあゆみ ―日本アマチュア無線連盟50年史―』(CQ出版社) 

脚注・出典[編集]

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  1. ^ a b JARD 「アマチュア無線ってなあに?」
  2. ^ a b JARD アマチュア無線の楽しみ方
  3. ^ a b c d e f g h 日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみ 日本アマチュア無線連盟50年史』 CQ出版社 1976年
  4. ^ 『放送ハンドブック:文化をになう民放の業務知識』 日本民間放送連盟編、東洋経済新報社、1992年3月16日(原著1991年5月23日)ISBN 4492760857
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 『世界大百科事典』平凡社 1988, vol.1, p.437「アマチュア無線」、小室圭五 執筆
  6. ^ 日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみⅢ 日本アマチュア無線連盟70年史』 CQ出版社 1997年
  7. ^ 日本アマチュア無線連盟編 『アマチュア無線のあゆみⅢ 日本アマチュア無線連盟70年史』 CQ出版社 1997年
  8. ^ (社)電波産業会『電波産業年鑑2010』 2010年
  9. ^ (社)電波産業会『電波産業年鑑2010』 2010年
  10. ^ "New FCC Licenses Issued 2005 Through 2009”ARRL 2010
  11. ^ "The ARRL Letter 2011”ARRL 2011
  12. ^ International Telecommunication Union, Minimum Qualifications For Radio Amateurs
  13. ^ Amateur radio licensing in Thailand - sect. Equipment license”. The Radio Amateur Society of Thailand 7 August 2010. 2011年2月13日閲覧。
  14. ^ 通信の相手方は「アマチュア局」とされる。ここに「通信相手国」等の制限はなく、全世界の不特定アマチュア局との通信が許可される。他の無線局の場合、そのほとんどが通信の相手方を限定されており、多くは国内局である。放送局の場合でも、いわゆる「サービスエリア」として地域を限定される。
  15. ^ 簡略化されてはいても「流れ」は他の無線局、すなわち無線従事者を必要とする無線局と全く同じであり、開局、運用にあたっての各種要求も全く同じである。例えば「完全自作、1kW送信システムでの開局」とする場合、無線従事者試験をパスするくらいの技術、法知識レベルではおよそ及ばず、さらに自ら勉強してからのものになる。なお俗に「本式」「簡易」の無線局の区別は、より厳密には無線従事者による通信操作、技術操作を必要とする無線設備か否かに依り、例えば日本では、電波法施行規則第33条の規定に基づく「無線従事者の資格を要しない簡易な操作」(郵政省告示第二百四十号)の範囲で済む無線局が「簡易な無線局」に該当する。アマチュア局の場合には、もとより電波の質に係る広範な技術操作や広範な通信操作が認められていることから該当しない。2012年現在の総務省見解においても、アマチュア局の無線設備は「そもそも簡易な取り扱いのできる無線設備ではない」とされており、特例のある日本でも、他の商業用無線従事者免許をもってアマチュア局を開設、アマチュア業務に従事できるのは、総合無線通信士など、アマチュア局の運用範囲を包含する一部所定の無線従事者に限られている。なお日本の場合、そのものずばり「簡易無線局」なるものがある。これは無線従事者は必要としないが無線局の免許は必要である。
  16. ^ アマチュア局に許可される最大空中線電力は他の無線局と全く同じ扱いであり、その使用周波数帯より2012年現在、1kWまでである。これを超えようとする場合、混信排除のための国際調整(政府主管庁間会議)の対象となり、日本国政府の裁量のみで免許できなくなる。中・短波帯は久しく500Wまでであったが、近年の国際会議の結果、1kWまでは日本国政府のみの裁量で免許できるようになり、日本の中波ラジオ放送局(主に中継局)などでも500Wから1kWへの増力が相次いだ。国際調整は近隣諸国の同意を得るものであり、アマチュア局であれば、例えば短波領域の学究のため、1kWを超える空中線電力がどうしても必要であるという正当で明確な理由が生じ、これを近隣諸国も認めて同意すれば許可されるが、無論これは周波数割当が可能である、すなわち近隣諸国のアマチュア局や他の無線局の運用に有害な混信などを与えないことが前提となるため、2012年現在のアジア太平洋地域での混雑した周波数利用の状況ではまず不可能である。日本は世界3電波地域区分、Region3の北端にあり、Region1と接していることから、Region3諸国のみならず、Region1諸国との調整も必要になるため、より条件は厳しい。
  17. ^ 郵便が受けられるという条件なので、米国内の私書箱や友人などの住所でも構わない。
  18. ^ http://www.arrl.org/question-pools
  19. ^ 例えば、上位資格者に限定されているコールサインであればコールサインからの資格の推定は可能になるが、その逆は困難である。
  20. ^ 相互認証の合意がある国での運用(JARL)
  21. ^ 日本で免許された局の、アメリカでの制約(例)
  22. ^ CQ出版社編 『DXハンドブック』 CQ出版社 昭和43年
  23. ^ CQ出版社編 『DXハンドブック』 CQ出版社 昭和43年
  24. ^ a b c 日本アマチュア無線連盟アワード委員会編 『アマチュア無線のアワード』 日本アマチュア無線連盟
  25. ^ ARRL DXCC
  26. ^ 中国放送「受信報告にみるラジオ親局移転前後の夜間聴取エリアの変化」 映像情報メディア学会 平成16年2月20日発表。
  27. ^ ARRL DXCC
  28. ^ 道路交通法第71条第5号の5 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。)に表示された画像を注視しないこと。
  29. ^ CQ出版社編 『ダイナミック・ハムシリーズ3 モービルハム ハンドブック』 CQ出版社 昭和55年
  30. ^ 西本陸雄著 『フォックスハンティング入門』 山海堂 昭和49年
  31. ^ ARDF
  32. ^ ARDF日本
  33. ^ 例えば日本では、総務省受信環境クリーン協議会の各年度報告にJARLの活動としてその対応数などが報告される。
  34. ^ JARL QRPクラブ編 『QRPハンドブック』 CQ出版社 1996年
  35. ^ 『電波伝播ハンドブック』Realize SE, 1999, ISBN 489808012X, p.384
  36. ^ アパマン・ハム・ハンドブック
  37. ^ a b 上野勝利・森 篤史・中野 晋・吉田 敦也「中山間地の孤立対策へのアマチュア無線の活用」第30回土木学会地震工学研究発表会論文集
  38. ^ なお、特定二者間で行われる無線通信業務などについては今日、高い秘匿性を確保できるデジタル変調方式への移行が進められ、完了したものから順次、暗語の使用義務付けが撤廃されている。暗語の使用は日本国憲法やその他諸国の憲法などにある「通信の秘密保持」規定からのものであり、無線局の種別を問わず、デジタル変調方式などのより確実な手段が確立・実用化されれば撤廃される。アマチュア局の場合、全世界不特定のアマチュア局と通信できなければその目的を達成できないことがあり、特に多くの方式によることができるデジタル変調方式などについては、なかなか全世界共通の方式とすることができず、許可も難しい。不特定多数の人が視聴する放送などでも同じで、例えば中波ラジオ放送のデジタル化は2012年現在、進んでいない。
  39. ^ ブルース・ポッター『802.11セキュリティ』O'Reilly Japan, 2003, ISBN 4873111285 p.25
  40. ^ 野島俊雄「電磁波障害の実際」(医器学 vol.69, No.2, 1999)http://ci.nii.ac.jp/naid/110002515749/
  41. ^ 無線局運用規則第 528 条。
  42. ^ 総務省「電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査」平成18年度 海外基準・規制動向調査報告書 平成19年3月。
  43. ^ 三浦正悦『電磁界の健康影響 工学的・科学的アプローチの必要性』東京電機大学出版局、2004, ISBN 4501324007 p.236

関連団体[編集]

関連項目[編集]

電波関連[編集]

外部リンク[編集]