月面反射通信
月面反射通信(げつめんはんしゃつうしん、英語:Earth-Moon-Earth、略称:EME)は、地上のアマチュア無線局同士が、地球から往復約75万km離れた月に対してアンテナを向け電波を輻射し、その反射を利用して行う通信。
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EME通信の技術 [編集]
月面の反射係数が非常に低く(最大で12%、通常7%程度)、そして往復約77万km以上の極端な経路損失(パス・ロス)(VHF-UHFバンドを使用し、変調形式およびドップラー偏移結果に依存するが約250〜310dB程度)であるため、ハイパワー(100W以上)および高利得アンテナ(20dB以上)が使用される事が多い。
実際、上記の理由でEME通信はVHF以上の周波数を使用します。
EME通信が成立するためには、月が地平線上にある必要があります。
EMEパス・ロスに影響する次の要素を知る必要がある。
- 送信所および受信所から月までの距離。
- 送信側の出力数、これは実効放射電力(ERP)として表現されます。[簡易には、送信機出力(から給電線(フィードライン)・ロスを引いたもの) x アンテナ利得]。
- 受信局側利得(フィードライン・ロス、x アンテナ利得を引いた実際のレシーバー利得)。
- 送信機および受信機で使用する周波数帯。
EME経路損失計算には、標準レーダー方程式を用いるのが一般的です。
ここで
は受信電力(received power)、
は送信電力(transmitted power)、
は送信側アンテナGain、
は送信側アンテナGain。

これはdBで示すと次の式になります。

ここで F = MHz, d = km
表面の反射率(ここでは6.5%で計算)の要素を含ませると、次の式になります。
ここで F = 周波数(MHz).d = 距離(m)。
ここで
は月の直径
月の直径は約3500kmなので、次になります。
これら送信側と受信側のパワーやゲインを除くと、次の式を得ることができます。
ここで F = MHz, d = km
この経路損失(パスロス)を考慮し、運用する電波形式やモードで通信が成立するために必要な実効放射電力を備えた通信設備と受信設備を整えることになります。相手側の設備能力にも依存するということです。
注記:月の軌道が完全な円ではないため、地球と月の距離が変わることに注意してください。それは、平均半径が240,000マイルの多少楕円な軌道です。
これは、遠地点(最大の距離)や近地点(最短距離)があることを意味します。
また、軌道面は18.6年の主要周期で歳差運動する。
近地点は、わずか356400kmですが、遠地点は406700kmです。
- 遠地点と近地点での距離の差が、経路損失で2.25dBの差として現れます。
- 地球から月への平均距離は384,400kmとして与えられます。
- これらの計算は、月が反射器としてわずか7%の効率であるという事実から、レーダー方程式(それは2ウェイの経路損失モデルを定義する)および月が球状の反射器であるという仮定を使用しています。
EME通信の今 [編集]
アマチュア無線家は、EMEを双方向通信に利用します。
EMEは、低い出力で通信することに興味を持つアマチュア無線家にとって、目標のひとつになります。
EMEは、地球上で利用できるあらゆる双方向通信の中で地球上の2局の経路(パス)が最長の通信のひとつでしょう。
アマチュアのオペレーションはVHF、UHFおよびマイクロ波振動数を使用します。
50MHzから47GHzまでのアマチュアの周波数帯はすべて利用できます。しかし、ほとんどのEME通信は、2mや70cmあるいは23cmのバンドで行われています。
アマチュアによって利用される主な電波形式は、モールス符号、デジタル(JT65)、まれに音声です。
ジョゼフ・テイラー等がデジタル信号処理を進歩させ、small station(例えば100Wシングル八木アンテナのような)でもデータ通信で、EME通信を可能にしました。
条件(相手方のゲインが高いなど)が整えば50Wでの通信も可能との報告があります。
通信の方法および特質 [編集]
通信自体は通常のCQ呼び出しではなく、スケジュールQSOの形式となり、減衰が激しいためEME通信専用のモールス符号を用いて行われる。
EMEが許可される周波数帯は50MHz帯、144MHz帯、430MHz帯、1200MHz帯、2400MHz帯、5600MHz帯、10.4GHz帯である。各周波数帯の特徴はアマチュア無線の周波数帯を参照のこと。
EME通信を行うために、総務省訓令「電波法関係審査基準」の範囲を超える空中線電力(通例50MHz帯で1kW、144MHz帯以上で500W)を必要とする場合、総務省総合通信基盤局の許可(いわゆる「本省決裁」)を要する。また、電波防護計算書等の提出、予備免許を受け近隣への電波障害の確認などした後に落成検査する手間など、準備期間がかかる。
周波数帯別の電波形式 [編集]
- CW
- JT65A
- JT65B
歴史 [編集]
- 1928年 アメリカ海軍研究所 (NRL) で月面反射エコー検出の試み [1]
- 1946年3月 アメリカ陸軍信号軍団がレーダーの月面反射波を確認 [2](111.5MHz、3kW、24dBのアンテナ使用 [3])
- 1951年10月21日 NRLはメリーランド州スタンプネックの地形固定67 × 80 m楕円パラボラから198MHzにて10マイクロ秒のパルスを750Wで送信。受信はレーダーアンテナ。予想より受信パルスの変形が小さく、月の1/10の直径の範囲(直径338km)からのみの反射と推定。 [4]
- 1953年 アマチュア無線局W4AOとW3GKPによる144MHz電波の月面反射波検出。[5]
- 1954年7月24日、初めての人声によるEMEループ通信がNRLのJames H. Trexlerによって成功する[6]
- 1955年11月29日太平洋標準時23時51分、NRLはスタンプネックのパラボラアンテナ施設から301MHzで送信したテレタイプ信号の、サンディエゴでの受信テストに成功。[7]
- 1956年1月23日、NRLはオアフ島ワヒアワにて300MHz、10kWのテレタイプ信号をSK-2レーダー受信機で受信。[8]
- 1960年1月 米海軍のCommunication Moon Relay通信システム正式稼動。1月28日には開所セレモニーでホノルルからワシントンDCへ空母ハンコック上の人文字の航空写真が月経由で送信された。送信所はメリーランド州アナポリスとオアフ島オパナで直径28mの可動パラボラアンテナに400MHzの100kW送信機。受信所はメリーランド州チェルテンハムとオアフ島ワヒアワ。モードは写真ファクシミリとテレタイプ(16台並列60 words / min)。[9]
- 1960年7月17日 W1BUとW6HB間でアマチュア無線による初めてのEME通信。局はカリフォルニア州サンカーロスのEimac Radio Club、W6AYとマサチューセッツ州のRhododendron Swamp VHF Society、W1BU[10]。周波数は1296MHz。
- 1960年 エコー (人工衛星)
- (1960年前後) NRLがウエストバージニア州シュガーグローブの海軍施設に直径600フィートの月面反射可動ディッシュアンテナを企画。1980年代に部材が通信衛星傍受施設に転用された。同時期にはロケットで酸化アルミニウムと硝酸セシウムを散布して反射波により電波情報を得る人工流星バースト通信実験が米国南西部で実施され1時間反射が得られた (ISBN 0-385-49908-6)。
- 1961年12月15日 NRLの情報収集船Oxford号は初めて月面反射通信を受信した船舶となった [Bamford]。直径5mの可動パラボラアンテナ使用。1962年には1kWへの出力増強で双方向通信が可能となった [11]。実際にはシステムは実用に耐えなかったという (ISBN 0-385-49908-6)。
- 1962年 テルスター衛星、リレー1号ケネディ暗殺時の画像を中継した衛星。中継地上局だったKDDI茨城衛星通信センターは2007年3月16日に閉鎖されその直後32mディッシュが8N1EME臨時運用に使われた。ケネディ画像に使われたのは22m。[12])。
- 1963年11月22日 Oxford号の後継Muller号はケネディ大統領暗殺の日にもMoon Relayシステムを使用した (ISBN 0-385-49908-6)。
- 1964年 シンコム3静止通信衛星(東京オリンピックの画像を中継)
- 1965年 OSCAR-3 能動型アマチュア無線衛星
- (1960年代) 国防高等研究計画局資金補助で建設されたアレシボ天文台を使用してNSAがソ連のレーダー電波を月面反射で受信 (ISBN 0-385-49908-6)。
- 1967年 直径16フィートの月面反射通信アンテナを備えた情報収集船リバティー号がイスラエル軍に攻撃されたリバティー号事件。月面反射装置は故障の連続で殆ど稼動しなかった (ISBN 0-385-49908-6)。
- 2007年12月9日 協定世界時16時26分、アマチュア無線局DF2ZCとDH7FBの間でEarth - International Space Station - Earth CW QSO。国際宇宙ステーション表面の受動反射による交信。144MHzで出力300W、21dBd八木アンテナと、750W、20dBd八木アンテナ使用。[13]
EME通信に影響を及ぼす他の要素 [編集]
ドップラー効果 - 300 Hz 月の出から月の入りまでに
月の出では、月面から反射して戻ってくる信号は、地球と月の間のドップラー効果によりおよそ300Hz高く変わる。
月が南の空を横断する時、ドップラー効果はありません。
月の入り月の入り時刻では、300Hz低くなります。
ドップラー効果は、月の動きに自動追尾する場合、多くの問題を引き起こします。
イベント [編集]
- ビッグディッシュプロジェクト (big dish project) →訳 「大きなお皿計画」
外部リンク [編集]
- 「ビッグ・ディッシュ・プロジェクト」情報
- EME申請をしたアマチュア局 (JH2CLV) の例
- BAMFORD, James. "Body of Secrets" Anchor, New York ISBN 0-385-49908-6, 2002.引用ページリスト
ここで
は受信電力(received power)、
は送信電力(transmitted power)、
は送信側アンテナGain、
は送信側アンテナGain。


ここで F = MHz, d = km
ここで F = 周波数(MHz).d = 距離(m)。
ここで
は月の直径
ここで F = MHz, d = km