IP電話

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アバイア IP電話 9640

IP電話(アイピーでんわ)は、広い意味では電話網の一部もしくは全てにVoIP技術を利用する電話サービスである。音声のみのものが多いが、動画も利用できるテレビ電話サービスなども可能である。

狭い意味では、VoIP技術を加入者回線に利用するもののうち電気通信役務として規制されるものをさす。多くの国では、公衆交換電話網と相互接続されるものが該当する。電気通信事業者のIP加入者線を利用した電話番号の割り当てられるもの、インターネットをアクセス回線として利用した電話番号の割り当てられるもの、インターネットを利用した電話番号が割り当てられず発信のみのものに大別される。

また、一般的にはIP電話との認知は無いまたは薄いが、中継網にVoIPを活用している中継電話もある。IP電話とVoIPを区別せずに記述することもある。また、IPセントレックスなど内線電話のVoIP化として利用も増えている。

この項では、狭い意味でのIP電話サービスに関して述べる。その余については関連項目を参照。

なお正式名称は、ビル・ゲイツが名づけた「インターネットプロトコル (Internet Protocol) 電話」だが、本項では一般的な呼称である「IP電話」で記述する。

固定電話との比較[編集]

固定電話と比較して、以下のような特徴がある。

  • 家庭用のものではアクセス回線にはFTTHADSLなどといった、いわゆるブロードバンド回線を利用する。音声をデータ圧縮符号化してIPパケットに分割し、比較的安価なIPネットワークによりリアルタイム伝送する(この技術は一般的にVoIPと呼ばれる)。
  • 電話交換機(高価で有資格者による工事や煩雑な保守を必要とする)の代わりにIP電話サーバを使用する(以下はSIPの場合)。
    • IP電話加入者データを元に通信を制御する「加入者系呼制御サーバ」(SIPサーバ)、IP電話と他のIPネットワークとの通信を制御する「中継系呼処理サーバ」(CAサーバ)、これらを連携させる「呼処理サーバ」(SIP連携サーバ)の他、従来の電話網側には「相互接続用関門交換機」が設置されている。
  • プレゼンス管理・ボイスメール・電話会議・テレビ電話サービスなどその他の付加価値をつけたものも存在する。
  • ネットワーク構成の自由度を生かして、電話の音声帯域を拡張し ( - 7KHz、G722) 高音質化を図ったものも一部にある。

注意点として以下の点があげられる。

  • 停電時に局給電による電話が使えない(停電を補償するにはUPSが必要)。
    • 対照的に、ISDNではTA (Terminal Adapter) に乾電池を装備したり、局給電に対応したTAを使用することにより、停電時でも電話は使用可能。また、基本的にIP電話回線は特定の物理的回線には依存しない(ADSL/CATV/FTTH/FTTx/専用線と多様)ため、停電時の問題解決も一様ではない。
    • ただし近年は広く普及した携帯電話PHSにより代替すれば良く、災害時の長期・大規模停電を除いては、重要な問題とは言えなくなっている。
  • 発展途上の技術であるので、標準化が完全でない部分がある。
  • 障害発生時の原因の特定・回復に時間がかかる場合がある。
  • 緊急通報や特殊通話が出来ない場合や、通信できない電話番号がある。
  • 電話の付加サービスが無いか仕様が異なる場合がある。

IP電話網間の相互接続[編集]

ITSP(IP電話事業者)間で、IP電話網間のVoIPレベルでの相互接続を行っている。主にセカンダリIP電話の相互接続について以下述べる。

ITSP間の相互接続の組み合わせ{}_n{\rm C}_{m}となり複雑である。相互接続には、通話料が無料のものと、有料のものがある。

無料相互接続の場合は、ITSP間でVoIP規格や機器ベンダーなどが同一のため、通話のトラフィックをそのままIPレベルで流して、VoIP端末同士でP2Pの通話を行っている(もちろんセッション管理サーバの仲介はあるが、通話トラフィック自体はP2P)。

有料相互接続の場合は、ITSP間でVoIP規格や機器ベンダーなどが異なるため、通話のトラフィックをVoIPゲートウェイなどを通して相互に変換している。通話中はゲートウェイの資源を消費するなどの理由により、通話料は有料となっている。

IP電話網間の相互接続をしていない場合もあり、そのような場合には、公衆交換電話網を利用して通話する。公衆交換電話網は、殆どのIP電話網と相互接続している事が多い事を利用している。

なお、プライマリ電話の相互接続については、直収電話のそれと同様のものと見られる。

法的位置付け[編集]

2007年現在、各国で法的位置付けが異なる。

  1. 基本的に情報サービスの位置付け
  2. 電気通信役務として規制するかどうか議論中
  3. 特定の機能を持つものを電気通信役務として規制、その他は情報サービスの位置付け
  4. 基本的に電気通信役務として規制
  5. 固定電話 - 固定電話間のサービスを禁止。その他を部分解禁

また、公衆交換電話網 (PSTN) と同様に基礎的電気通信役務として位置付けるかについても差異がある。

インターネットで国際的に接続している限り、政府による規制は難しい面がある。しかし、一部の発展途上国では、VoIPパケットを国際関門ルーターでブロックしたり、インターネット電話のアカウントの取得を制限していることもある。Skype#その他の国々も参照。

アメリカ合衆国[編集]

2005年5月19日連邦通信委員会が公衆交換電話網と相互接続を行うIP電話サービスの提供プロバイダに対して、緊急通報911をダイヤルした場合に地元の緊急対応機関に接続し、所在地情報を緊急オペレーターに提供するように義務付けた。11月28日以降は条件を満たさないIP電話の新規加入の受付を停止することとなった。非対応のサービスを継続して提供する場合は、利用者に緊急通報が不可能であることをわかりやすく説明して同意を得ることとなっている。

法執行機関による通信傍受、障害者の利用を可能とする、消費者保護などの社会的規制、アクセスチャージ・ユニバーサルサービス基金など経済的な分担については、2007年現在引き続き議論が行われている。

カナダ[編集]

公衆交換電話網と相互接続されるものは、電気通信役務として規制される。

ユニバーサルサービス基金の分担もある。

欧州連合[編集]

欧州連合では、枠組み指令により次の3種類に分けられる。

電子通信サービス
通常は有償で提供されるサービスであって、専らまたは主として電子通信ネットワーク上の信号を伝送すること。企業の内線電話など。
公衆電子通信サービス
一般消費者に直接提供される電気通信サービス。消費者保護などの一般的な規制が適用される。
公衆に利用可能な電話サービス
公衆交換電話網と相互接続される音声通信サービス。緊急通報・国際電話番号計画への対応が求められる。

また、無料で提供される場合は他の電気通信サービスを妨害しないこと、消費者に不利益を与えないための最低限の条件のみを定めることとなっている。

南アフリカ[編集]

公衆交換電話網が整備されていない地域で、部分的な自由化を行う。

大韓民国[編集]

2008年から固定電話の番号がそのままIP電話で使えるようになる。

日本[編集]

日本電気通信事業法電気通信役務の届出区分では、インターネットを使用した電話番号の割り当てられないものも含め、電気通信役務として規制される。また、提供サービス・通話品質等を利用者に分かり易く広告などで契約前に提示し、苦情受付を誠実に行うこととなっている。

電気通信役務#日本の電気通信事業法における利用者保護を参照のこと。

ユニバーサルサービス基金の分担もある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]