ARDF

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
3.5MHz帯の競技を行う韓国の選手。右手に持っている物はループアンテナ付きの受信機。
中指にSIカードを装備している。

ARDFAmateur Radio Direction Findingアマチュア無線方向探知)とは屋外のフィールド内に5つ設置された、TX(無線送信機)を、小型受信機を用い探し出す競技で、オリエンテーリングに類似しているが、無線機を使う点で大きく異なる。またフォックスハンティングとも類似しているが、こちらは多くの場合設置されずに特定のルートを移動するので異なる。競技の制限時間は100~140分でフィールドの地形に応じ審判長が決定する。ほとんどの競技者は空中線にHB9CV型アンテナ、八木アンテナを用いた受信機を使用する。受信機は市販のものを使用する他、自作もできる。また改造をし、指向性を鋭くすることなどもできる。そこが他の競技にはない醍醐味といえよう。競技者は、「アマチュア無線技士」等の免許は一切必要ない。

受信機は自作できるが、TXの自作は難しい。購入するにしても高価で、現在海外でしか製造していないので、個人で購入する競技者はほぼ皆無である。ただし、熱心な競技者がお金を出し合って自前で購入するケースはある。

目次

[編集] 歴史

ARDFの起源は1926年の"Wireless World"(雑誌)に「隠された送信機を探索する」という記事が掲載されたことが始まりといわれる。 またオリエンテーリングの盛んな北欧、特にスウェーデンでは1948年に最初の競技会が開催された。 ただ当時は無線機が現在のように軽くなく、持ち運びも不便だったため、自転車自動車などの乗り物を利用した。

冷戦時代には中国ソ連からARDFを広め「無線電測向」という名称で競技が開催されていた。これは同国でアマチュア無線が解禁される前である。

日本ではJARL1981年より中国に訪中団を派遣、1985年3月号のJARL NEWSにはARDF国際ルールの記事が掲載された。 国際ルールに則って日本で競技が行われたのは、1985年4月28日群馬県で開催された競技大会であり、1989年にはJARLの主催となった。また、1990年には従来の「FOXテーリング」という呼称から、国際的に通用する「ARDF」という名称に変更された。 2005年9月19日から23日まで、日本ではじめてとなる国際競技大会、「第6回IARU第3地域ARDF選手権大会」が新潟県阿賀野市において開催された。


[編集] JARLによる競技ルール

JARLによる競技ルールは下記の通りであるが、このルールは日本の国土地形にあうように国際ルールから若干変更されているものである。従って国際大会の場合は競技ルールが異なる。また、あくまでもJARL制定のルールであり、このルールを準用していれば、審判長の判断により、ルールを変更してもよい。その場合は参加者に事前に(少なくとも競技開始前の審判長注意事項説明までに)通知しなければならない。

[編集] 部門・クラス

ARDFの競技部門は、3.5MHz帯部門と144MHz帯部門があり、さらにそれぞれが下に示す9つのクラスに分けられるが大会により細分化や統合がされる事がある。また、クラスにより探索するTXが異なる。なお、年齢は大会開催年の12月31日現在で計算する。

  • 男性競技者
クラス 年齢制限 除外TX
M19 19歳以下 TX4
M21 年齢制限なし 除外なし
M40 40歳以上 TX5
M50 50歳以上 TX2
M60 60歳以上 審判長が指定する2つを除外


  • 女性競技者
クラス 年齢制限 除外TX
W19 19歳以下 TX2
W21 年齢制限なし TX4
W35 35歳以上 TX1
W50 50歳以上 審判長が指定する2つを除外

M21、及びW21クラスは年齢制限がない。よって、例えば男性60歳の競技者がM21クラスにエントリーすることはルール違反ではない。

[編集] フィールド

競技が行われるフィールドは、競技者の健康を害する虞がなく、探知に著しく影響を及ぼす物がない場所で、且つ高低差が200m以下でなければならない。

[編集] TX

送信機(TX)を探し出した選手。
2009年ブルガリアにて。
SI電子カードとSIステーション

TXは直線で互いに400m以上離し、スタート地点から750m以上離して設置しなければならない。TXの周辺半径2m以内には、そのTXに到達した事を記録するためのパンチャーとTXの番号が記された紅(オレンジを含む)白の三角柱(オリエンテーリングのポストが用いられることが多い)がおかれる。また付近には審判員がつきTXに到達した競技者のゼッケンや順番などを記録している(小規模の競技会では、いない場合が多い)。

電波の型式は、3.5MHz帯はA1A、144MHz帯はA2AまたはF2A(最近の競技大会ではA2Aが多い)が使用され、空中線電力は、3.5MHz帯は3~5W、144MHz帯は0.25~1.5Wの範囲内と決められている。アンテナは水平方向に指向性がなく、偏波面は、3.5MHz帯で垂直偏波、144MHz帯で水平偏波でなければならない。各TXにはモールス信号による識別符号がありTX1がMOE(-- --- ・)、TX2がMOI(-- --- ・・)、TX3がMOS(-- --- ・・・)、TX4がMOH(-- --- ・・・・)、TX5がMO5(-- --- ・・・・・)である。これらの電波はスタート地点において標準的な受信機で受信できなければならないこととされている。TXの送信は同一周波数である。各TXの送信時間は1分間とし、各TXの送信切替時間の誤差は5秒以内にしなければならない。

ゴールには(正確にはゴール走行コースの入り口)ビーコンが設置されゴール地区を示す。周波数はTXと異なるものを使用し、MO(-- ---)を送信する。ビーコンも第6番目のTXと考えて、他のTXと直線で400m以上離し、スタート地点から750m以上離して設置することが望ましいとされている。(国際ルールではビーコンはTXと見なされる場合があるため、注意が必要である。)

従来は防水性のパンチカードが用いられており、指定された枠内にパンチャーで穴を開ける方式が採られていた。現在では各TX及びゴール地点にSIとよばれる小型カードを用いることが多くなった。このSIカードはオリエンテーリングで用いられている物と同じである。

[編集] 競技者

受信機は競技者が持参し、その他に方位磁針、筆記用具、飲料水等がある方がよい。受信機と空中線には制限はないが、受信機から副次的に発する電波は、受信機から10m離れた場所において、3.5MHz帯及び144MHz帯に混信を与えるものであってはならない、と決められている。

競技前には競技者に対し、地図(スタート地点、ビーコン設置点等も記載されている)、ゼッケン、チェックカード(電子パンチャーの場合は代わりに電子チェッカー)が配布される。地図は競技開始10分前に配布される。

受信機は一度指定の受信機置き場に置くことになる。この際、一旦受信機置き場に置いた受信機には触れてはならない。また、スタート後「受信開始地点」と明記された場所まで、TXの電波を受信してはならない。受信開始地点までは受信機の電源を切り、ヘッドフォンなどはプラグを外すか、耳にかけないようにすることが望ましい。

競技者はいくつかのスタートグループに分けられ審判長が決定した順番で5分毎にスタートする。

[編集] 審判員

審判員は以下の条件を満たす者でなければならない[1]

  • 申請時に満18歳以上の者
  • ARDF審判員講習会を履修し証明書を有する者、又はこれと同等以上の知識及び経験を有する者とARDF委員会が認めた者。
  • A級審判員についてはJARLの会員であること(資格者証の更新の際、JARL会員名簿に記載されていなければならない。記載されていない場合は、B級審判員に降格される)

資格の有効期間は5年であり、資格者証の有効期限までに以下のいずれかの条件を充足する必要がある。

  1. 競技大会の審判員業務に従事し主催者から証明を受ける
  2. 講習会を受講する
  3. JARLの課す更新試験に合格する(前2項のいずれの機会にも恵まれなかった場合に限る)

審判員にはA級審判員とB級審判員の2種類があり、区別は以下の通りである。

  • A級審判員:B級審判員として2回以上競技大会の審判員として従事した者。競技大会における審判員、審判長及び裁定長に従事できる。
  • B級審判員:上述の審判員たり得る者。競技大会の審判員、公認・支部・地方競技大会の審判長・裁定長に従事できる。
  • C級審判員:A級審判員資格者証を有するものが行うC級審判員養成教育を受講し、その受講証明書を有するもの(18歳以上の制限はない)。A級又はB級審判員の監督の下に行う業務に従事できる。

このほか、実行委員会を設けることもある。なお、TXを管理する審判員は第三級アマチュア無線技士以上に相当する無線従事者免許を所有しなければならない(モールス信号による電波の発射を行うため)。

[編集] 順位

順位は探索したTXの個数が多いほうが上位になり、同数の場合は所要時間が短い方が上位となる。つまり、競技者Aが2つで1時間00分、競技者Bが3つで1時間30分、競技者Cが2つで1時間30分ならば、順位はB、A、Cの順になる。

[編集] 失格事項

競技中に次の事項のいずれかに該当した競技者は失格となり順位はつかない。

  • 競技制限時間を超えた場合。
  • ゴール走行ラインを途中から進入した場合、また反対側からゴールした場合。
  • TXを全く探索できなかった場合。
  • 援助を受ける、若しくは他の競技者を妨害する。
  • 乗り物を利用した場合(あらかじめ審判長から許可を受けた場合は除く)。
  • 他人の所有物に損害を与えた場合。
  • 電波を発射した場合。
  • 競技者の間で会話を行った場合。
  • 他の競技者を追従(ついじゅう)して探索を行った場合。
  • 主催者が配布する地図以外の地図を使用した場合。
  • 立入禁止区域に立入った場合(私有地を含む)。
  • 主催者の定めた競技実施方法に従って競技を行わなかった場合。

なお、最近では上記の失格事項が複雑化している。

  • 携帯電話の所持・使用 - 携帯電話は基地局と常に通信を行っていることから、電波の発射を行っているとし、失格とするかどうかである。最近では持っている競技者も増え、緊急事態に連絡がつかなかったらどうするのかという懸念がある。また、ケガをして動けなくなった場合など競技続行不能でリタイヤする際に主催者への連絡手段という、ライフライン的な役割もある。さらに最近はスマートフォンの普及で、GPS機能を用い主催者が配布する地図以外を使用ができる、メールを用いて選手間での情報交換が出来てしまう、等の様々な問題点がある。
以上を勘案してできるだけ柔軟な対応をとる必要がある。最近の競技大会では、配布地図に審判の携帯電話番号が記載されることが多い。競技者もできるだけ紛らわしい行動(携帯電話を開くなど)はしないことが望ましい。
  • GPS記憶装置の所持・使用 - GPSロガーと称されるものについては即時に自分の居場所が分かり便利であり、あとからの振り返り等で便利であるが、地図が表示される物については、「主催者が配布する地図以外の地図を使用した場合。」に抵触する恐れがある。これらの装置を競技中持参する場合は失格事項を確認し、審判長の許可、指示に従うのが望ましいとされる。

[編集] 主な審判員注意事項

  • フェアに行動し、いかなる場合も競技主催者の指示に従うこと。
  • 自己の安全及び健康には、自らの責任で行動すること。競技中に健康に不安を持ったり、事故があった場合は、直ちに競技主催者、又は審判員にその旨を申し出ること。
  • 自然を傷つけたり、耕作地や囲いの中に入らないこと。
  • 送信機及びそのアンテナなどの設備には触れないこと。
  • ゴールした選手は競技主催者の指示に従って行動すること。

[編集] 主な地図記号

競技用地図に記載される地図記号は、一般の地図記号に加え、以下の通りである。

  • △印 - スタート地点
  • ◎印 - ゴール地点
  • W印 - 給水ポイント(実際はWに薄く十字が記載される。ただし、競技大会によってはマークが違ったり、給水ポイント自体がない場合もある)

給水ポイントには審判員や実行委員が配置され、水やスポーツドリンクが用意されている。

[編集] 日本における主な競技大会

日本におけるARDF競技大会は下記の通り[2]である。なお、地名については開催当時の物である。

[編集] FOXテーリング全国大会

この競技は、全日本ARDF競技大会の前身である。当時はJARL後援となっていた。

1989年よりJARL主催の大会となる。

[編集] ARDF全国競技大会

ARDF全国競技大会に名称変更された。

[編集] 全日本ARDF競技大会

現行の「全日本ARDF競技大会」に名称が変更された。

一般社団法人日本アマチュア無線連盟としての開催

[編集] 国際競技大会

[編集] 出典

  1. ^ ARDF競技の審判員に関する規約 (PDF) 日本アマチュア無線連盟。
  2. ^ 「JARLメールマガジン第139号(2011年10月5日号)」日本マチュア無線連盟 2011年10月5日。
  3. ^ 一般社団法人日本アマチュア無線連盟 『JARL NEWS 2012年春号』 一般社団法人日本アマチュア無線連盟、2012年、16頁。
  4. ^ 一般社団法人日本アマチュア無線連盟 『JARL NEWS 2013年冬号』 一般社団法人日本アマチュア無線連盟、2013年、36頁。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク