ISDN

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ISDN(アイエスディーエヌ、Integrated Services Digital Networkサービス総合ディジタル網[1][2])とは交換機・中継回線・加入者線まで全てデジタル化された、パケット通信回線交換データ通信にも利用できるデジタル回線網である。ISDNはモデムで接続する既存の公衆交換電話網 (PSTN) をデジタル化することで、高速で高品質な回線サービスを提供する。ITU-T(電気通信標準化部門)によって世界共通のIシリーズ規格として定められている。

声は、0.3 - 3.4kHzを64kbpsの回線交換でISDN網内を伝送しているため、VoIPよりも音声品質が安定している。また北米・日本μ則、その他の国々ではA則PCM非直線符号化に使用されているため北米・日本側の関門電話交換機で変換している。

電話番号[編集]

電話番号は、通常の市外局番のものがDチャネル1つあたり1つ割り当てられる。また「ダイヤルイン」や「i・ナンバー」を申し込むことにより、電話番号の追加が有料で可能である。ダイヤルインを利用した番号の追加はDチャネル毎に与えられた1つの番号を含めて最大で9999番号、i・ナンバーを利用した番号の追加はDチャネル毎に与えられた1つの番号を含めて最大3番号で番号の利用は回線につながったISDNターミナルアダプタに番号を設定する事でIインターフェースに2チャネルあるBチャネルと1チャネルあるDチャネルで自由に利用することが出来る。また、ダイヤルインやi・ナンバーの電話番号は通常の市外局番の電話番号以外にフリーダイヤルの0120や0800で始まる番号や情報提供料を発信者に課金するダイヤルQ2の0990で始まる番号、#ダイヤル(着信短縮ダイヤルサービス)の番号などの割り当てを受けることも可能。

ISDN相互間の通信の場合、サブアドレスという付加番号を電話番号の後に付け同じ電話番号の中から特定の端末を指定しての呼び出しが可能である。またサービスクラスと呼ばれる可能な通信方法を呼び出し時に知らせる機能により、ファクシミリからの発信の場合にファクシミリのみ応答させるといったことが可能である。

かつてはINS回線と通常のアナログ加入電話回線では加入者線が収容される交換機が異なるために、移行時には必ず電話番号が変更となった(このため、市内局番の枯渇が生じたため、一部の市内局番の収容局番の少ないところを他の収容局で利用する嚆矢となった。例として秋田市の岩見三内収容局で使われていた883・884局は、何れも下4桁が2000番台しか当該収容局で使われていなかったため2000番台以外の一部を前者は秋田大町収容局のISDN番号用、後者は新棟秋田収容局のISDN番号用に転用された。代わって、岩見三内収容局のISDN用番号は881-2xxxが割り当てられた)。

アナログ回線からINS回線への変更時に同番移行が全国で可能になったのは1997年4月末のことである[3]。この後もINSからアナログへの同番移行はアナログ→INS同番移行を行なった回線をアナログ回線に戻すときのみ可能であったが、2002年9月2日に全回線で可能となった[4]

余談だが、かつてのVodafone 3GからISDN回線に発呼した場合、呼び出し音が異なっていたことがある(ソフトバンクモバイルとなってからしばらくして、この現象はなくなっている)。

料金[編集]

回線交換方式の場合、接続時間と通信地点間距離とで課金される。日本では、アナログ電話網と同じ料金である(離島特例通信を除く)。

バーチャルコール方式のパケット通信の場合、接続時間に関係なくパケットの長さと数のみで定まるデータ量課金である。

月額基本料金は、アナログ電話回線2回線分より安く設定されている。

機器の接続[編集]

日本では一般的な基本速度TCM-ISDNはヨーロッパアジアの基本速度Euro-ISDNと加入者線インタフェースが異なるため、回線終端装置 (DSU) の互換性は無い。また、一次群速度加入者線インタフェースについても地域によって異なっている。

DSU以外の部分は、ソフトウエアの変更のみで各国対応となる機器が多い。

S点インタフェース機器[編集]

基本インタフェースのNTの端末側(S点・T点)は終端された4線式のバス配線であり、ポイント・マルチポイント構成と呼ばれる1本当たり最大8台の端末の接続が可能である。

次の2種類がある。

短距離受動バス配線
最大ケーブル長が200m以下の配線であり、任意の場所に端末接続用のモジュラージャックを設置できる。
延長受動バス配線
最大ケーブル長が500m以下の配線であり、末端部付近に集中して端末接続用のモジュラージャックを設置できる。

また端末接続用のモジュラージャックはバス配線に直接取り付けるか、長さ1m以内のスタブを介して取り付ける。モジュラージャックから端末までのコードは原則は10m以内に制限されているが、ポイント・ポイント構成の場合に限り25mまで延長できる。

一次群速度インタフェースのNTの端末側(S点・T点)は4線式の配線であり、ポイント・ポイント構成と呼ばれる1本当たり1台のみの端末の接続が可能である。

伝送路から伝送された信号を回線終端装置 (NT1) でS点インタフェースに変換し、超高速伝送の可能なルータG4 FAXなどのS点インタフェース機器 (TE1) を接続する。また、構内交換機 (NT2) などを使用し内線通信などを可能にすることもある。

|TE1|--S点--|NT2|--T点--|NT1|-- (LI) U点--加入者線

アナログ電話回線機器など[編集]

S点インタフェースが複雑なために実際にS点インタフェースを備えた端末機器(G4 FAXやISDN対応電話機)は少なく、ターミナルアダプタ (TA) で変換して従来のアナログ電話機・ファクシミリ (TE2) やLANコンピュータ機器を接続して利用する形態が一般的に行われている。

ターミナルアダプタは、ISDN回線からの給電のみでは動作しない。そのため、乾電池などで停電補償を行うものがある。

|TE2|--R点--|TA|--S点--|NT2|--T点--|NT1|-- (LI) U点--加入者線

NT2とTAの機能を持ったターミナルアダプタの場合   

|TE2|--R点--|TA + NT2|--T点--|NT1|-- (LI) U点--加入者線

また、NT1、NT2、TAの機能を全て備えたターミナルアダプタの場合は以下のようになる。

|TE2|--R点--|TA + NT2 + NT1|-- (LI) U点--加入者線

機能群[編集]

NT1
回線終端装置 (DSU: Digital Service Unit) - 加入者線の終端・Iインタフェースへの変換・端末機器などへの給電を行う。
NT2
端末制御装置・構内交換機 (PBX: Private automatic Branch eXchange) - 端末装置間の通信手順制御・交換・多重化・集線などを行う。
TE1
S点インタフェース端末装置
TE2
S点インタフェース以外の端末装置
TA
ターミナルアダプタ

参照点[編集]

(LI) U点
伝送路インタフェース規定点 - 基本速度インタフェースの場合はNT1のRJ-11の電話用6極モジュラージャックまたはねじ止め部分、一次群速度インタフェースの場合は、NT1の光コネクタ部分である。
T点
ISDNユーザー網インタフェース規定点 - 基本速度インタフェースの場合はNT1のRJ-45の8極モジュラージャックまたはねじ止め部分、一次群速度インタフェースの場合は、NT1のねじ止め部分である。
S点
NT2のRJ-45の8極モジュラージャックまたはねじ止め部分である。
R点
TEの電話用6極モジュラージャック部分である。

分界点[編集]

端末設備と電気通信回線設備との最初の接続点が分界点となる。具体的には基本速度インタフェースの場合は保安器または主配線盤の端末側ねじ止め部分、一次群速度インタフェースの場合は配線盤の光コネクタ部分である。

回線構成[編集]

ISDNにはBとDの2つのチャネルがある。

  • Bチャネル - データ用(64kbpsが2チャネル)。データリンク層のプロトコルはLAPD。
  • Dチャネル - 信号・制御用(パケットデータ通信にも利用可能、16kbps、64kbps)。データリンク層のプロトコルはPPP、HDLC。

Bチャネルを束ねたチャネルも定義されている。

  • H01チャネル - Bチャネルを6個束ねたもの。
  • H11チャネル - Bチャネルを24個束ねたもの。
  • H12チャネル - Bチャネルを30個束ねたもの。

基本速度インタフェース[編集]

基本速度インタフェース (BRI: Basic Rate Interface) は64kbpsの2個のデータチャネルと16kbpsの信号チャネルから構成され、2B+Dなどと表記される。基本速度インタフェースはSOHO、個人、バックアップ回線として利用される。ISDNには、基本速度インタフェースと一次群速度インタフェースの2種類がある。

加入者線伝送方式として、アナログ電話回線と同じ2芯ツイストペアケーブル通信線路が使用されることが多い。電話局設置の電話交換機からDSUの動作と音声通話に必要な最低限の給電が行われる。

伝送方式は、地域や電気通信事業者によって異なっている。

TCM-ISDN[編集]

TCM-ISDNは、日本NTT東日本西日本の「INSネット64」で使用されている。

ピンポン伝送とも呼ばれる時分割方向制御方式 (Time Compression Multiplexing) でAMI符号化によるベースバンド伝送を行っている。使用する周波数帯域が広くなるが、伝送装置が単純となる。また加入者線間でタイミングを合わせて送受信を切り替えるため近端漏話が無く遠端漏話のみとなり、細い加入者線で長距離伝送が可能である。

周波数帯域が重なってしまうためADSL回線と加入者線(ISDN回線)の同時使用は不可能である。また相互干渉を抑えるAnnex C規格の採用や同じより対線の組にISDNとADSLを収容しないようにする収容代えが必要であるなど、日本国内の一部からはADSL普及を阻害したと批判されたこともあった。

Euro-ISDN[編集]

日本におけるEuro-ISDNは、電力系通信事業者のISDNにて使用されている。また平成電電のISDNサービスもEuro-ISDNを採用していた。

ヨーロッパアジア諸国で使用されているEuro-ISDNはエコーキャンセラを用い、上り下りを同じ周波数帯域のデジタル変調で伝送している。使用する周波数帯域が狭くなるが、伝送装置が複雑となる。

Annex B のADSLと加入者線の同時使用が可能である。

一次群速度インタフェース[編集]

一次群速度インタフェース (PRI: Primary Rate Interface) は、より多くのチャネルから構成される。企業やプロバイダの回線として利用される。

構成は、地域によって異なっている。

北米及び日本(NTTの「INSネット1500」)
23B+D (64kbps)(他の回線とDチャネルを共用する場合は24Bも可能)で、通信速度は1.544 Mbit/s (T1)
ヨーロッパ、及びオーストラリア
30B+D (64kbps) で、通信速度は 2.048 Mbit/s (E1)

加入者線伝送方式として、2芯の光ケーブルが使用されることが多い。給電が行われないため、加入者側で電源の確保が必要である。

B-ISDNインタフェース[編集]

一次群速度インタフェースよりも高速な回線インタフェースである。

開発や試験サービスが行われていたが安価な常時接続で定額料金のIP加入者線サービスが提供されるようになり、一般家庭向けの商用サービス化は行われなかった。

歴史[編集]

日本での歴史と現状[編集]

三鷹市・武蔵野市でISDNの実用化試験で使われていたDM1021形電話機 特仕7988号2版 Yインタフェース回線のISDN回線で動作する為、現在のISDN回線では利用することはできない。

日本電信電話公社によって1970年代から独自の研究が行われていた。高度情報通信システム (INS=Information Network System) と呼ばれ1984年三鷹市武蔵野市で現在のものと互換性のないYインタフェースで実用化試験が行われた。ちなみにYインタフェースでのINS (ISDN) 回線は回線構成が1B+1Dで通話と同時にFAXの送受信が行えないなど不便があったため、デジタルで通信を行う以外は旧来の電話と機能に変化が無いため現行のIインタフェースのISDN回線では回線構成が2B+Dになったらしい。

1988年4月19日に旧NTTによって「INSネット64」「INSネット1500]」の商標でIインタフェースによる商用サービスが開始され、1998年のNTT再編後はNTT東日本西日本から提供されている。大阪市中央区淡路町にあるNTTのビルには「明日への通信 INS発祥の地 昭和63年4月」の石碑がある。また、2000年代に入り他の電気通信事業者のサービスも開始された。

登場当初はバーチャルコール方式パケット通信 (INS-P: INS-Packet switching service) による、大型コンピュータなどのパケット通信網 (DDX-P: Digital Data eXchange Packet switching service) へのアクセスなどから利用された。間欠送信であるクレジットカード信用照会 (CAFIS) などに、パケット通信特有のデータ量による課金体系であることを生かして使用された。

また「INSネット1500」1回線で23本の回線が取れることを生かして、インターネットサービスプロバイダダイヤルアップ接続アクセスポイントの拡充に使用された。

NTT-MEのMN128 SOHO

1995年12月に、低価格のターミナルアダプタ「MN128」(NTT-TE東京(現NTT-ME)とビー・ユー・ジーの共同開発)が発売されたことが引き金となり、翌1996年に入ると日本電気オムロンなどから低価格のターミナルアダプタの発売が相次ぎ価格が急速に低下。さらに深夜時間帯の市内・隣接地区の特定番号への通話が定額となる「テレホーダイ」サービスの開始もあり、それに伴いインターネットへのダイヤルアップ接続用途で個人や中小企業向けに一気に普及した。

しかし2000年代に入るころから2線の銅線の加入者線で高速・常時接続・定額料金のインターネット接続の可能なADSLが普及しはじめ、加入者線の共用が出来るアナログ電話回線に戻したりCATVFTTH(光回線)も含めたブロードバンドインターネット接続によるIP電話への移行が増加し個人でのISDN加入者は減少している。

また企業では構内交換機が比較的高価になるが「INSネット1500」1回線で23本、「INSネット64」1回線で2本の電話回線が取れることからアナログ電話回線を多数引き込むよりも電話加入権(施設設置負担金)や毎月の回線使用料(基本料金)が安くなるため、多数の外線電話を束ねる用途でも普及していた。しかし1990年代の公衆網と専用線との接続の自由化で外線本数が減少し、さらに2000年代に入り交換設備の維持費の問題や料金の安いIPセントレックスの普及によって非常用通信の確保のための最低限の回線以外が大企業で解約されるようになった。さらにi・ナンバーダイヤルイン電話FAXそれぞれに番号を与えて1つのISDN回線で兼用している中小事業所でも複数回線対応の0AB-J番号のプライマリIP電話への置き換えが進んでいる。

またプロバイダにおいても前述のブロードバンドインターネット接続の普及によってダイヤルアップ接続用のアクセスポイント回線がナビダイヤルを使った全国共通番号回線などの形に移行されて縮減されており、通信事業用のISDN加入も減少傾向にある。

上記の状況において、あえてISDNを利用する主な目的としては以下の事例がある。

  • 利用地域でADSLなどのブロードバンドインターネット接続サービスが提供されていない、あるいは光収容回線や集合住宅などの何らかの事情によりブロードバンドインターネット接続サービスが利用できない場合の代替定額制接続手段(フレッツISDN)。
  • 通信販売放送局などのような、大量のFAX受信を行う必要がある場合(IP回線ではG4やスーパーG3などの高速なFAX信号は正常に送受信できない場合が多い)。
  • アメダスのような、少量(数百バイト)のデータでも確実に送信する必要がある場合(16kbpsのDチャネルパケット通信を使用)。
  • ラジオの中継回線(放送線)や、データ通信回線(デジタル専用線など)のバックアップ用。

なお日本国内において遍く提供されているように思われているがINSネット64の場合(メタル線)、収容局から加入者宅までのメタル線路長が8 - 10kmを超えるような場合には、サービス提供が困難であると言う問題がある。

2010年11月、NTT(東西)は、固定電話網の基幹部分を交換機方式(PSTN)からIP方式に完全に切り替える予定を発表した。交換機の寿命を勘案したため、移行を2020年頃に開始して2025年頃に終了する予定であり、代替としては「フレッツ光ネクスト」網 + 「ひかり電話」サービスを組み合わせたサービスへの移行が例示されている[5]。また、2011年6月にはISDNからの乗り換え向けに安価なプランの「フレッツ 光ライト」が開始され[6]、2012年5月にはISDN専用電話機等をひかり電話で使えるようにするNetcommunity VG230iが販売開始された[7]

NTTグループ以外の状況[編集]

電力系通信事業者では10社中、沖縄通信ネットワーク (OTNet) を除く9社が導入したがHOTnetHTNetTOHKnetが既に撤退し、うち2社については総務省から割り当てられた市内局番も返上している。他の事業者でも一部で撤退を検討している地域もある(エネルギアコムが一部地域でのみサービスを廃止しているケースに見られる)が、現時点では正式には撤退を明言していない。

脚注[編集]

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  1. ^ 日本ITU協会によるCCITT勧告和訳本の表記による。またNTT東日本NTT西日本KDDIなどの商用ISDNサービスの解説でもこの表記を用いている。
  2. ^ シスコシステムズによるインターネットワーキング用語・略語集ではサービス総合ディジタルネットワークと解説しているなど、他の日本語表記も多く見られる。
  3. ^ 「INSネット同番移行」の提供拡大について
  4. ^ INSネットから加入電話への同番移行の提供拡大等について
  5. ^ PTSNのマイグレーションについて~概括的展望~東日本電信電話・西日本電信電話、2010年11月2日
  6. ^ 「フレッツ 光ライト」の提供開始について NTT東日本 2011年3月1日
  7. ^ 「ひかり電話」対応ISDN変換アダプタ「Netcommunity(ネットコミュニティ) VG230i」の販売開始について NTT東日本 2012年5月24日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]