ギガビット・イーサネット

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ギガビット・イーサネットは、1ギガビット/秒の仕様のイーサネットの規格。「GbE」と表記される事もある。2009年の現在では1000BASE-Tが最も普及している。

概要[編集]

ギガビット・イーサネットはIEEE 802.3zで規定される1000BASE-SX、1000BASE-LX、1000BASE-CXとIEEE 802.3abで規定されるUTPケーブルを使う1000BASE-Tの4つに分かれる。1000BASE-CXは特殊な同軸ケーブルを使うため実際にはほとんど使用されていないので3つと考えて良い。1000BASE-SXと1000BASE-LXは光ファイバーを使い伝送距離が5kmまで伸ばせるので、企業の基幹的なバックボーンLAN回線に使用される場合が多い。

1Gbpsのイーサネットでは元のデータが短い場合は「キャリア・エクステンション」と呼ぶダミーのデーター(1 - 448バイト)を付けることで、512バイト=4096ビットまで長くして100Mbpsと同じリピータ・ハブまでのケーブル長最大100m、ハブの両方向のケーブル長を合わせて200mのセグメント・サイズを実現している。

イーサネット規格として半二重通信CSMA/CDをサポートした最後の規格である。実際にはほぼ全二重通信で行われている。

拡張オプション[編集]

通信帯域、伝送効率向上などのためのオプション。

キャリア・エクステンション (Carrier Extension)
キャリア・エクステンションは、衝突検出限界の制限を緩和し、ノード間距離を長くとるための対策。
CSMA/CDで100Mbpsを超える広帯域なデータ転送が行われている環境では、従来の最小フレームサイズ(512ビット=64バイト)では、衝突を検出する前にフレームの伝送が終了してしまう「遅れ検出」が発生する可能性が高い。そのためノード間距離が非常に短く制限されてしまう。その対策として、ギガビット・イーサネットでは、最小フレームサイズを512バイト、スロット時間も512バイト時間に拡張している。伝送フレームサイズ512バイトに満たない場合、穴埋めのために無意味なデータ(パディング)を追加することで512バイトとする。この穴埋めのためのデータ部をキャリア・エクステンションと呼ぶ。
最小フレームサイズを拡張することでノード間距離を長く取ることはできるが、その一方で、小さいフレームを大量に送る場合には、キャリア・エクステンションが追加される分、伝送効率が低下する。その対策としてフレーム・バーストを用いている。
フレーム・バースト (Frame Bursting)
フレーム・バーストは、小さいフレームが連続して伝送される際に発生する伝送効率の低下を改善するための対策。通常、イーサネットでは、フレーム送出後は一旦通信を停止し、最小96ビット=12バイトのフレーム間ギャップ(またはインターギャップ、単にギャップ等)と呼ぶ間隔をあけて次のフレームを送出する。フレーム間ギャップに他の通信が発生した場合は、それが終了するのを待ってから次のフレームを送信する。大量のフレームが送出される場合はフレーム間ギャップも多くなるため、伝送経路の空きを待つ時間が増えて伝送効率は低下する。さらに、512バイトに満たない短いフレームは、キャリア・エクステンションのため転送効率が低い。
フレーム・バーストは、1つ目のフレームにキャリア・エクステンションを付加し、以後のフレームにはキャリア・エクステンションを付加せずに、連続して短いフレームを送出する。フレーム間ギャップには出力を停止せず、キャリア信号を発信し続けることで他のノードからの送信を抑制し、伝送経路を占有している。最初のフレーム伝送開始から最後のフレームの伝送終了(伝送経路の最長占有時間)は最長で8192バイト時間となる(バースト・リミット)。
ジャンボフレーム (Jumbo Frame)
イーサネットのフレーム長は通常で、ペイロード長1500byte、ヘッダを加えて1518バイトである。しかしネットワークの広帯域化に伴い、フレームヘッダ部のオーバヘッドによる伝送効率低下が目立つようになった。そのため、オーバヘッド軽減のため巨大なフレーム (Jumbo Frame) を使って一度にデータを伝送する方式がオプションとして用意されるようになった。最大フレームサイズは機器によってまちまちだが、8000byte - 15000byte程度である。ジャンボフレームに対応したノード間の通信が高帯域化されるため、LAN内でのファイルサーバー、NASなどを利用してのファイル転送などで大きな効果を発揮する。現在、IEEE 802.3による規格化はされておらず、ベンダーごとの独自実装となっている。

種別[編集]

ギガビット・イーサネットには様々な規格があり、それぞれに長所・短所を持つ。以下に一覧を示す。

1000BASE-T[編集]

1000BASE-T(せんベースティー)はスループット1Gbpsを実現する規格。現在「GbE」としては最も普及している。IEEE 802.3abとして標準化。

伝送路としてカテゴリ5 (CAT5) 以上のUTPケーブル内の4対8線のより対線を使用し、各ペアに250Mbpsのスループットを持たせる事で1Gbpsを実現する。片方向の伝送に4対すべてを使っているが、ハイブリッド回路を使用してエコーをキャンセルすることで4対すべてで同時に送受信が可能であるため全二重通信である。

電圧レベルを5値に分割し、1クロックで2ビットの情報を送るパルス振幅変調 (PAM5) を使用することで周波数を低く抑えている。

1000BASE-Tでは8B1Q4で符号化されている。8B1Q4の符号化とは元データの8ビットごとをエラー検出ビットを付加して9ビットに直す「9ビット化」を行い、さらに9ビットのデータ (0 - 511) を4対のより対線にそれぞれ「+1.0V、+0.5V、0V、-0.5V、-1.0V」の5つの電圧の組み合わせ (54=625) に割り振る「4次元5値シンボル化」によって伝送路に送出する。この符号化によって最終的な信号は約80MHzの周波数帯域に収まり、比較的低価格なUTPケーブルでもなんとか支障なく使用できる。符号化処理によって毎秒1Gbitのデータを8ビットごとに送り出しているために、「シンボル・レート」は125MHzとなる。符号化によって1000BASE-Tのように伝送に必要な周波数を下げられる場合もあるが、他にも同じ電圧が続くことで受信タイミングが判別できなくなるのを防いだり、エラー検出などに利用するという目的で行なわれる。

1000BASE-Tではイーサネット機器同士の自動認識(オート・ネゴシエーション)が義務となっており、結線時にファスト・リンク・パルス (FLP) と呼ぶ自動認識用信号を送り出してお互いのスループットや全二重/半二重を教えあい、相手が10BASE-Tや100BASE-TXではノーマル・リンク・パルスとアイドル信号というそれぞれの固有信号形式によって判別して通信設定を行なうことで下位互換性を実現している。1000BASE-T同士の場合はこのFLPをクロック・タイミングの同期の主従決定に利用している。

「キャリア・エクステンション」によってCSMA/CDを実現できても、余分なデータを送信するのは無駄であるため、1000BASE-Tでは「フレーム・バースト」と呼ばれるオプションを備えている。フレーム・バーストは、短いフレームを多く送信する場合に、合わせて最大8192バイトまでのフレームの連続送信を許して、2つ目からはキャリア・エクステンションを付けずに送信できる。このオプションを利用したフレームが送信中は、他のフレームが割り込めないというデメリットもある。

最長セグメント長は100m。 既設のツイストペアケーブルCAT5以上)との互換性が高いため一般にも普及している。規格上、フルクロスケーブルは1000BASE-T用と1000BASE-TX用で仕様が異なるため共通使用はできないが[1]、後述のとおり1000BASE-TX機器が殆ど普及していないこと、また普及している機器側でストレート・クロス自動判別機能を持たないものが殆どないため、ごく一部の特殊な例を除いては問題がない。

1000BASE-TX[編集]

1000BASE-TX対応のケーブル

1000BASE-TX(せんベースティーエックス)はスループット1Gbpsを実現する規格。TIA/EIA-854として標準化。

伝送路としてカテゴリ6 (CAT6) のUTPケーブル内の4対8線を使用し、上り専用に2対、下り専用に2対、それぞれ500Mbpsの帯域を持たせる事で1Gbpsを実現する規格。全二重通信が可能。最大セグメント長は100m。

1000BASE-Tと混同されやすいが、前述の通り1000BASE-Tとの信号的な互換性はない。前述のPAM5を使用するのは同様である。上りと下りで線を共用しないために回路がシンプルになり、1000BASE-Tよりも機器を低価格化できるとされていた。しかし、1000BASE-T機器の急速な価格低下と普及により、1000BASE-TXの価格面での優位はなくなりその存在意義を失った。対応チップも量産されなかったことから一般的なNICやHUBなどの対応製品は存在していない。そのため当初懸念されていた、1000BASE-Tとの誤表記による問題や、機器間の信号の非互換問題などは発生しなかった。現在1000BASE-TXは、規格とケーブルやコネクタ部品の対応表記上でのみの存在となっている。


1000BASE-CX[編集]

1000BASE-CX(せんベースシーエックス)は伝送路としてSTPケーブル内の2対4線使用する規格。

セグメント長が25mと非常に短かった為、あまり普及しなかった。

1000BASE-SX[編集]

1000BASE-SXの光信号と電気信号を変換するコンバータ。2本刺さっているのが光ファイバーのケーブル。上側のコネクタをスイッチないしはルーターに差し込んで接続する。

1000BASE-SX(せんベースエスエックス)は短波長レーザーを意味し、伝送路として光ケーブルを2芯使用する。波長は850nmが使われる。光ケーブルはマルチモードケーブルを使用する。IEEE 802.3zとして標準化。符号化は8b/10bを使用。8b/10bは8ビットの元データをあらかじめ決めてある10ビットに拡張する符号化である。

セグメント長は550m。

1000BASE-LX[編集]

1000BASE-LX(せんベースエルエックス)は長波長レーザーを意味し、伝送路として光ケーブルを2芯使用する。波長は1350nmが使われる。光ケーブルはマルチモードケーブル(伝送距離500m前後)、シングルモードケーブル(伝送距離5 - 10km前後)を使用する。IEEE 802.3zとして標準化。符号化は8b/10bを使用。

1000BASE-LH[編集]

1000BASE-LH(せんベースエルエッチ)は伝送路として光ケーブルを2芯使用する。基本的に1000BASE-LXのレーザー出力を高めたもので、標準化されたものではなく、1000BASE-LHと言っても互換性は保証されない。光ケーブルはシングルモードケーブルを使用する。伝送距離10 - 70km程度。伝送距離70kmの1000BASE-LHAもある。さらに出力を高め、伝送距離を最大150kmまで拡張した1000BASE-LHBもある。[2]

1000BASE-ZX[編集]

1000BASE-ZX(せんベースゼットエックス)は1000BASE-LXよりもさらに長い波長 (1550nm) のレーザを使用する。伝送路として光ケーブルを2芯使用する。光ケーブルはシングルモードケーブルを使用する。伝送距離50 - 80km。

1000BASE-PX10/20[編集]

PDS (Passive Double Star) 型トポロジー (PON : Passive Optical Network) の光ケーブルのネットワーク。GE-PON (Gigabit Ethernet PON)、EFM (Ethernet in the First Mile) とも呼ばれる。IEEE 802.3ahとして標準化。FTTHに使われる。

1000BASE-BX[編集]

下りに1490nm、上りに1310nmの異なる波長を使用することで、1芯の光ケーブルによる両方向伝送を実現している。Bは双方向bi-directionから。IEEE 802.3ahで標準化され、伝送距離10km。規格を拡張し、伝送距離を40kmにした1000BASE-BX40機器も存在する。

脚注[編集]

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