10ギガビット・イーサネット
10ギガビット・イーサネット (10 gigabit Ethernet、10GE、10GbE、10 GigE) はコンピュータ・システム同士を結ぶ通信規格の1つ。2008年現在、イーサネットの中では最新で最速の規格である。今後、LANやWAN、MANに用いられるネットワーク・プロトコルの有力候補の1つである。
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概要 [編集]
名称のとおり、物理層では最大10Gbpsの伝送速度を持つイーサネットの規格であるIEEE 802.3-2005の規格が定められたものには、光ファイバー・ケーブルを使ったものとInfiniBandのように銅ケーブルを使ったものの2つがある。また、IEEE 802.3anによる規格としてツイストペアケーブルを使った10ギガビット・イーサネットがある。
10ギガビット・イーサネットでは半二重通信とリピーター機構、そしてそれに伴うCSMA/CDをあきらめ、既に1ギガビット・イーサネットで使い慣れたLANスイッチの全二重 による便利なリンク機構を使う。
10ギガビット・イーサネットはいくつかの物理層の規格を含んでいる。デバイスのそれぞれの物理ポートは異なるLANやWANの物理層規格をサポートする多くのモジュールをサポートできる。
転送速度が非常に高く、ツイステッド・ペア・ケーブルでは必要な周波数特性が十分に確保できないため、光ケーブルの使用が多い。データの送信が終了する前に衝突を検出できない為、半二重通信とCSMA/CDをサポートせずに全二重通信だけを使用する。
- 分類
- 伝送距離による分類
- 10GBASE-T カテゴリ6 55m以下、オーグメンテッド・カテゴリ6(カテゴリ6a)及びカテゴリ7 100m以下
- 10GBASE-S 300m以下
- 10GBASE-L 10km以下
- 10GBASE-E 40km以下
普通は伝送速度と伝送距離を組み合わせて10GBASE-LRのように呼ぶ。現在標準化されている規格は次の通りである。
- 10GBASE-SR マルチモード光ケーブル 300m IEEE 802.3aeとして標準化。
- 10GBASE-LR シングルモード光ケーブル 10km IEEE 802.3aeとして標準化。
- 10GBASE-ER シングルモード光ケーブル 40km
- 10GBASE-ZR シングルモード光ケーブル 80km [1]
- 10GBASE-LX4 マルチモード光ケーブル 10km (3.125Gbps×4)
- 10GBASE-CX4 同軸ケーブル (stub) IEEE 802.3akとして標準化。
- より対線(ツイストペアケーブル) IEEE 802.3anとして2006年6月に標準化。
その他
- WAN PHY 64B/66BエンコードされたEthernetフレームをSONET/SDHのフレームへと変換する機能を持つPHY。ただし、WAN PHYをもつ10GbE機器であっても、実際にSONET/SDHと接続するには10GBASE-Wポートを持ったSONET/SDH用の光クロスコネクト装置等に一端収容する必要がある。
- LAN PHY Ethernetフレームに64B/66Bエンコードのみを行った信号を送り出すPHY。
銅ケーブル [編集]
10GBASE-T [編集]
10GBASE-Tは、IEEE 802.3an-2006規格で定められた通常のアンシールデッド、またはシールデッドのツイストペアケーブルによって最大100mまで10Gbps[2]の速度で接続する新しいイーサネット規格である。またオートネゴシエーションがサポートされることで、10GBASE-Tと1000BASE-Tの間でスムーズな移行が可能となる。2008年より複数のメーカーから半導体の出荷が開始されており[3][4][5][6]、現在ではこれらを用いたスイッチングハブ、レイヤ3スイッチや、サーバ向けネットワークカード(NIC)[7]が出荷されている。10GBASE-Tのメリットのひとつは、1000BASE-Tと兼用可能な後述のRJ-45のツイストペアケーブル(銅ケーブル)による接続であるため、光ファイバによる接続のようなケーブル以外のXENPAK、XFP、SFP+など光トランシーバのアドインが必要無い点で、比較的安価に10ギガビット・イーサネットを構築することが可能となる。
コネクタ [編集]
10GBASE-Tでは、従来規格のイーサネットで広く普及した650MHz対応のIEC 60603-7コネクタ RJ-45を使用するが、銅ケーブルと同様にコネクタにもシールドが施されている。
ケーブル [編集]
10GBASE-Tは今あるカテゴリー6(周波数特性:250MHz)のケーブルを使って最大で55mの接続が可能であるが、一般的な用途に必要な100mの接続を可能とするために新しい規格である「カテゴリー6A」(Augmented Category 6, 周波数特性:500MHz)TIA-568-B.2-10規格ケーブルを使用する。このケーブルはUTPケーブル間でのクロストーク(エイリアンクロストーク)を減少させるように設計されるものである。
- 全体シールド
- U
- 非シールド
- F
- ホイル・シールド
- S
- 網組シールド
- 要素シールド(内部の対ごと)
- UTP
- 非シールデッド・ツイスト・ペア
- FTP
- ホイル・シールデッド・ツイスト・ペア
主にワイヤの径の違いで周波数の特性が決まるため、次のようにカテゴリ7(周波数特性:600MHz)以上の1,200MHzのケーブルも販売されている。
- 0.55mm : 650MHz
- 0.58mm : 900MHz
- 0.64mm : 1,200MHz
シールド・ケーブルは正しくアースをとらないと、静電気などによって逆にノイズの発生源になってしまうことがあるため、将来の10Gイーサネットに備えてケーブルだけカテゴリ7などにして、カテゴリ5や6相当の配線シールドに配慮しないネットワーク機器を接続すると、十分な性能が発揮できず、場合によっては動作が不安定になることが考えられる。
LANケーブル内ではより (撚り) をかけることによってノイズの侵入を最小限にしているが、ケーブル両端のコネクタに接続する部分ではどうしてもよりが解かれてしまう。ある日本のケーブル・メーカーではカテゴリ5のよりが解かれる長さは12mmであり、カテゴリ7では3mmまで短くしているという[8]。
- ACR
- 減衰対クロストーク比 (ACR) とは情報工学でのS/N比に相当し、ケーブルの性能を表す。NEXTと呼ばれる近端漏話と減衰で構成される。-dBで表す。
変調 [編集]
IEEE 802.3anは、10GBASE-T用として、パルス振幅変調 (pulse-amplitude modulation、PAM) のトムリンソン-ハラシマプリコーデッド (Tomlinson-Harashima Precoded 、THP) 版のワイヤレベルでの変調を規定している。それは、16値のPAMであり、DSQ128として知られる2次元チェッカーパターンによるエンコードである。PAN-12やPAM-10、PAM-8等の、それぞれにTHP付く場合と付かない場合での、いくつかの提案がワイヤレベルでの変調に関して考慮された。PAM-5は1つ前の世代の規格である1000BASE-Tで使われている。
10GBASE-CX4 [編集]
10GBASE-CX4は片方向で4本、両方向で8本の伝送路を持ちそれぞれの伝送路で2本の銅電線を使用するため、合計16本の銅電線よりなるケーブルを使用する比較的短距離用の10Gビット・イーサネット接続の規格である。IEEE 802.3akで規格が定められ、Infinibandによく似た技術を使用している。
最長15m(49フィート)までしか伸ばせないが、10Gビット・イーサネットとしては最もポート単価が安い。10Gビット・イーサネットのモジュールに使用される通信半導体デバイスは、マルチ・ソース・アグリーメント (MSA) に従ってそのデバイスから外部コネクタまでの接続が行なわれる。XENPAK、X2、XPAKのコネクタは標準のMSAピン配列に合わせてある。CX4モジュールは少なくともXENPAKとX2には揃えてあり、XPAKにも恐らくある。これと同じサイズに作るのはより難しい。銅線で出来た各伝送路は3.125ギガボー (Gbaud) の通信容量を持つ。 802.3aeの48節のプロトコルが4本のデータ転送の管理し同期をとる。この機能はPCS (Physical Coding Sublayer) で処理される。49節でのプロトコルを使用する10GBASE-Rと比べると48節で使う8-10ビット変換ではより信号に余裕がある。一方、49節では64-66ビットの変換のため、48節に比べて余裕が無くより狭くなっている。
光ファイバー・ケーブル [編集]
光トランシーバーはホストデバイス同士を、IEEE 802.3規格の48節の4チャンネル・パラレライズド・ブリッジ、又は49節によるブリッジを結ぶ。「XENPAK」「X2」「XPAK」は48節改を、「XFP」は48節そのものを使う。
使用する光ファイバーは、大きく分けて2種類ある。主に距離や速度で使い分けられている。
- SMF(シングル・モード・ファイバー)
- 伝送距離が長いが高価である。
- MMF(マルチ・モード・ファイバー)
- 伝送距離が短いが安価である。
光ファイバを使用したイーサネットでも、物理的な信号に光を使うだけで、伝送するMACフレームは銅ケーブルのイーサネットと変わらない[9]。
物理層 [編集]
ルーターとスイッチを直接結ぶ、最も一般的な光ファイバーの種類はレイヤー1の「物理層」で規定されている。物理層では回線速度が10.3125Gbit/sで符号化方式は64B/66Bエンコーディングが使われる。ただし10GBASE-SW、10GBASE-LW、10GBASE-EWはSDH/SONETの符号化方式を使う[9]。
光ファイバーによる各規格 [編集]
- 10GBASE-SR
- 10GBASE-SR (Short Reach) はマルチモード光ファイバーを使って短距離をサポートするよう設計され、その限界距離はケーブルによって26mから82mである。また300mの使用が可能な新しい50μm 2,000MHz·km、850nmのマルチモード光ファイバーがある。
- 10GBASE-LRM
- 10GBASE-LRMは2006年に承認された802.3aqで標準化された。[10]これは、FDDIと100BASE-FXネットワーク用に1990年代初頭にインストールされたFDDI級の62.5µm マルチモード光ファイバーで最長220mをサポートする。
- 10GBASE-LR
- 10GBASE-LR (Long Reach) は波長1,310nmの光源を使い、最大10kmのシングルモード光ファイバーをサポートする 10ギガビット・イーサネットである。IEEE 802.3 49節の64B-66B フィジカル・コーディング・サブレイヤー (Physical Coding Sublayer、PCS) を使用し、シリアル伝送を行う。
- 10GBASE-ER
- 10GBASE-ER (Extended Reach) は、1,550nmを使ってシングルモード光ファイバーで最大40kmまでサポートする。
- 10GBASE-ZR
- 10GBASE-ZR は、1,550nmを使ってシングルモード光ファイバーで最大80kmまでサポートする。[11]
| 規格名 | 10GBASE-SR | 10GBASE-LR | 10GBASE-ER | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 光ファイバ形式 | MMF コア径 62.5μm |
MMF コア径 50μm |
新型MMF コア径 50μm |
SMF | SMF |
| 最大伝送距離 | 26m/33m | 66m/82m | 300m | 10km | 30km/40km |
| 波長 | 840 - 860nm | 840 - 860nm | 840 - 860nm | 1,260 - 1,355nm | 1,530 - 1,565nm |
| 符号化方式 | 64B/66B | 64B/66B | 64B/66B | 64B/66B | 64B/66B |
その他 [編集]
日本での使用例 [編集]
- IXの例
- 日本インターネットエクスチェンジ (JPIX) では都内5か所の拠点間が40km以内であるため、それぞれに置かれたスイッチの間を10GBASE-ERで直接繋いでいる。10km以内のところは10GBASE-LRで繋いでいる。最大4リンクのリンク・アグリゲーションも使っている。
- NECビッグローブの例
- 東京近郊のデータセンター間を10Gビット・イーサネットでつないでいる。距離が40km以上になる区間には、光信号を中継延長する光伝送装置を置いている[9]。
- 映像制作環境の例
- 2007年初頭段階で、都内のCGなどの映像制作会社では、単純な社内LANとして10Gビット・イーサネットを用いた映画制作が始まっている。コンポジット作業用途のクライアントPCなど、高速なディスクアクセス要求の強い場面で、10GBASE-CX4のNICをデザイナー等が使用するWindows XPなどの一般的なPCに直接装着し、10Gビット・イーサネット対応のNAS等と10GBASE-CX4の安価なスイッチ経由での運用がされている。本来この分野は、F/C接続のSANなどの守備範囲であったが、F/Cに比べて安価な点が魅力となっている。イーサネットであるがため、F/Cに劣る部分もあるようだが、ローカルのハードディスクドライブの代わりとして高速なストレージサーバをマウントすることで、共同作業者間でのTB単位の大容量データの共有、データ集約、データ保護、などが簡単に行えるため、業務の効率化を安価に実現できる簡易な方法として、広まりつつある。そうして制作された映画第一号に、映画「よなよなペンギン」がある。
次期規格 [編集]
次の高速イーサネット規格である「40ギガビット・イーサネット・100ギガビット・イーサネット」がIEEE内のHigh Speed Study Groupで規格が策定され、2010年6月に正式承認された。規格名は「IEEE 802.3ba」。現在、各機器メーカーがテスト機を使用するなどしていて、2011年6月には世界初の実証実験が行われた[12]。
詳細は「en:100 Gigabit Ethernet」を参照
関連項目 [編集]
出典と注記 [編集]
- ^ Optcore 10GBASE-ZR SFP+.
- ^ サイトによっては「正確には9.42Gbps」と記しているところもあるが、10GBASE-Tの速度は正確に10Gbpsであり、9.42Gbpsという記載は誤りである。
- ^ Broadcom 10GBASE-T PHY
- ^ Teranetics 10GBASE-T PHY
- ^ Solar Flare 10GBASE-T PHY
- ^ Aquantia 10GBASE-T PHY
- ^ Intel 10Gigabit AT2 Server Adapter
- ^ 日経NETWORK 2007年4月号 「10ギガイーサLANケーブル」 p84
- ^ a b c d 日経NETWORK 2007年10月号 「"今どき"のイーサネット プロバイダとIX」 p34-p35
- ^ IEEE Standards Status Report for 802.3aq.
- ^ Optcore 10GBASE-ZR SFP+.
- ^ 100GbEのIX実証実験に世界で初めて成功、インターネットマルチフィードなど、Internet Watch、2011年6月1日付
外部リンク [編集]
- Get IEEE 802.3
- IEEE 802.3
- IEEE P802.3ae 10Gb/s Ethernet Task Force
- IEEE P802.3an (10GBASE-T) Task Force
- Corrigendum 2: IEEE Std 802.an™-2006 10GBASE-T Correction
- IEEE P802.3aq (10GBASE-LRM) study group
- Ethernet Alliance website
- University of New Hampshire Interoperability Laboratory 10 Gigabit Ethernet Consortium