標本化定理
標本化定理(ひょうほんかていり、英: sampling theorem: サンプリング定理とも)は情報理論分野で、非常に重要な定理として知られており、アナログ信号をデジタル信号へと変換する際に、どの程度の間隔で標本化(サンプリング)すればよいかを定量的に表すものである。
ナイキスト定理、ナイキスト・シャノンの定理、シャノン・染谷の定理[1]とも呼ばれる。
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概要 [編集]
標本化とは、数学的には連続関数の値からある点の値だけを標本として取り出して離散関数に変換する操作であり、与えられた連続関数と標本化関数の積を求めることと等しい。標本化関数とは、ある離散値(連続でない、飛び飛びの値)xに対してのみg(x)=1となり、その他のxに対してはg(x)=0となるような関数である。対象となる関数f(x)と標本化関数g(x)の積を取ると、関数
が得られる。g(x)=1となるxに対してのみ
となり、その他のxに対してはh(x)=0となる。
標本化定理とは、ある関数f(x)をフーリエ変換した関数F(s)の成分(スペクトル)が、
の範囲でF(s)=0であるような関数f(x)に対して、
に相当する周期より小さい周期をもつ標本化関数で標本化したときに得られる関数は、そのスペクトルのうち
が原関数のスペクトルに一致するというものである。
工学的には、原信号に含まれる最大周波数成分を f とすると、2f よりも高い周波数
で標本化した信号は、低域通過(ローパス)フィルターで高域成分を除去することによって原信号を完全に復元することができるということを示している。たとえば原信号に含まれる周波数が最高で f=22.05kHz だった場合、
=44.1kHz よりも高い[2]周波数で標本化(1秒間に44100回超、値を取得)すれば、原信号を完全に復元することができる。原信号が復元可能な最大周波数
を「ナイキスト周波数」と言い、ナイキスト周波数の逆数を「ナイキスト周期」と言う。
標本化周波数が 2f 以下であった場合、原信号にはない偽の周波数
がエイリアス信号として、復元信号に現れる。よって、連続信号の標本化においては、ナイキスト周波数 2f よりも高い周波数で、標本化を行わなくてはならない。
なお、アナログ信号からデジタル信号への変換については、標本化のほかに量子化が必要である。
歴史 [編集]
標本化定理は1928年にハリー・ナイキスト(Harry Nyquist)によって予想され、1949年にクロード・E・シャノン(Claude E. Shannon)と日本の染谷勲によってそれぞれ独立に証明された。
標本化定理の証明 [編集]
標本化定理は、フーリエ級数を用いると簡単に証明することができる。
理想的な標本化パルス列s(t)は、Tをサンプリング周期とし、デルタ関数
を用いて、

と表される。標本化入力信号をg(t)とすると、出力信号p(t)は

であるから、

となり、明らかにg(nT)の系列となる。
ここで、出力信号p(t)の周波数成分を計算するためにs(t)をフーリエ級数展開すると、

となる。ただし、
である。
扱いを容易にするために入力信号g(t)は振幅A、周波数
の単一正弦波として次のように置く。

これに対する出力信号p(t)は、上の式より

となる。この式から周波数スペクトルの図を描き検討すると証明ができる。
抵抗と電圧のゆらぎについてのナイキストの定理 [編集]
抵抗
と電圧のゆらぎとの比例関係。導体が温度
にあるとき、その両端には電位差
が生じる。このとき
の関係をナイキストの定理という。この関係式は、角振動数
に対する電気伝導度
が
によらず
に等しい領域で成立する。これは一般の線形応答理論から基礎づけられる。これも歴史的には1つの揺動散逸定理の発見の例になっている[3]。
脚注 [編集]
- ^ ただし、実際にこの呼び方を日本国外はもとより、日本国内でも、論文や文献などで目にする機会はほぼ皆無である。テブナンの定理を鳳-テブナンの定理とごく僅かに呼ばれるのと同様である。
- ^ (注)”以上” ではない。
- ^ 『物理学辞典』 培風館、1984年
関連項目 [編集]
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