送信所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

代表的な送信所・東京タワー
ガンビアの「 Radio Syd 」で使われている 909 kHz 2.5 kW の放送機
NHK甲府の中波送信所
NHK甲府の中波送信所全景
小さな山の上にあるテレビ送信所(山梨県境川)
近景。甲府盆地をサービスエリアとしている
新潟放送本局の送信所全景。右は中波空中線 左は局舎とSTL

送信所(そうしんじょ)とは、信号を送り出す場所や施設のことであり、無線通信分野においては広義に無線局英語:radio station)のことであるが、日本電波法の範囲においては、より細かく無線局の一部、すなわち電波を発射する(送信する)ための電気的設備を主として置いた施設のことを示す。以下日本の無線局、放送局(放送を行う無線局)におけるものを中心として述べる。

目次

[編集] 概要

日本の「無線設備」および「無線局」の定義は以下の通りである。

  • 「無線設備」とは、無線電信、無線電話その他電波を送り、又は受けるための電気的設備をいう。(電波法第2条4項)
  • 「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。(電波法第2条5項)

すなわち送信所とは無線局の中で、電波を送るための電気的設備を主として置いた施設を示している。特に大電力を扱う無線局、放送局などでは他の施設と独立して設けられる施設である。またこういった無線局では受信のみを主目的として別に施設を置く場合も多く、送信所に対してこれを受信所と呼んでいる。

無線局に好適な土地を得やすい米国などでは、大電力を扱う無線局であっても必要な全ての設備を一か所にまとめて設置、一か所でひとつの無線局として送信所、受信所といった区別がなされない場合が多いのであるが、地形変化に富む日本では好適な土地を確保することは困難であり、送信所として電波を送るための電気的設備をひとまとめにして独立させ、後述の通信所や演奏所などと離れた場所に施設することがむしろ一般的である。

[編集] 一般無線局の場合

大規模な業務用無線局などの場合、その業務の性質上、巨大なアンテナと大出力送信機を必要とする場合が多い。アンテナ展張のための広大な敷地を確保し、また基本波障害(高調波ではなく送信する電波そのものによる他局への電波障害)を防ぐ意味から、人里離れた郊外にそのための施設を置く。施設の主内容は、出力数100kwの無線送信機と、高さ・全長数10mにも及ぶアンテナを張るための鉄塔である。通信であるから無線受信機を置くための施設も必要で、受信所が別に置かれている場合が多い。

現在では送信所、受信所は常時無人とされ、その操作は通信所からの遠隔操作によって行われるものが多い。通信所は通常、業務に便利な人里に設置され、ここに送信所、受信所に置かれた無線送信機、無線受信機をそれぞれ操作するための通信端末が置かれる。通信端末と無線送信機・無線受信機は専用回線で結ばれている。通信所に無線通信士が常駐、監督および通信端末を操作することにより、無線局の運用を行う。

[編集] 放送局の場合

放送は不特定多数への一方通行の情報伝達、すなわち送信のみであることから、送信所は一般無線局のものよりもはっきりしている。

放送用送信所では、演奏所からの映像・音声信号を無線あるいは有線回線によって受け取り、送信機を用いて電波としてアンテナから輻射する。なお放送用電波(放送波)の送信に用いる送信機のことを特に放送機(英語:broadcast transmitter)と呼ぶことが多い。

日本の地上波放送会社はテレビジョン、ラジオともに一般に放送区域の多くをサービスエリアとする親局と、親局でカバーしきれない地域にサービスを行う中継局を持つ。いずれも送信所ではあるが、このうち大規模な送信用設備を持つところを送信所、これ以外を中継局と呼び分けている場合が多い。(厳密に呼び出し名称を持つか持たないかによって呼び分けている放送会社もある。)中継局は送信所としての機能を持つが、入力となる回線に違いが見られ、親局と比較して概して小規模である。

なお、放送区域が法令により限定されるコミュニティ放送では、小規模なアマチュア無線局程度の設備で必要にして充分なため、送信所と演奏所が併設されている例が多い。

中波放送用の送信所などを除き、その多くはサービスエリアを見通せる山上に設置されるが、東京タワー名古屋テレビ塔福岡タワーのように平野部の市街地に数百m高の電波塔―頂点にアンテナを立てた鉄塔を建設して設置する場合もある。送信所は放送会社単独で所有する場合もあれば、複数の放送会社で共同所有する場合もある。なお、ここでは地上波放送の送信所について説明し、衛星放送の地球局(アップリンク局)は衛星放送に譲る。

[編集] 回線

演奏所から送信所への信号伝送は電気通信事業者が敷設する専用有線回線、放送会社が自社所有する無線回線(これをSTLという)などで行われる。 中継局では、放送波を受信してこれを再送信する方式、放送前の信号を有線あるいは無線の回線で受けてこれを送信する方式などがある。中継局の周波数・電力・アンテナの指向性などは必要なカバーエリアを確保し、また他の区域の放送に影響を及ぼさないよう注意深く選定されている。

[編集] 放送機

日本国内の場合、中波放送では最大500kW超短波(FM)放送では最大10kW、地上アナログテレビジョン放送では最大50kW(映像)・同12.5kW(音声)、地上デジタルテレビジョン放送では最大10kWの大電力送信が必要、かつその放送形態は「フル・エア」であることから、24時間365日のサービスに耐えられる様、すなわち装置の故障で放送が休止しないよう多重化されている。例としては2台を同時に動作させて切り替える現用予備方式、3台のうち2台を常時稼動させて出力を合成(加算)し、1台を待機させておく方式などがある。また、近年の固体化(半導体)増幅器*を用いた放送機では多数の増幅器モジュールの出力を合成しているため、1台1台の増幅器の故障があっても直ちに停波することはないが、故障した増幅器の分を他で補えるよう定格出力に余裕を持った構成をとることも行われている。

※昭和中期までは真空管を用いるのが普通だった。「終段管」の表現が現在でも使われるのはこのため。

中継局ではサービスエリアが限られる―広くする必要はないため、数100Wから、場合によっては数百mW出力程度のものまで状況に応じて様々な規模のものが用いられる。

[編集] アンテナ

送信機の出力を電波として輻射するためのアンテナは、必要なサービスエリアと送信機の出力電力に応じて適切な利得や指向性を持ったものが選ばれ、アンテナによってはティルトさせて使用されることもある。通常VHFおよびUHF帯用のアンテナは、周囲の障害物を避けるため、山や高台の鉄塔上に設置される(放送局によってはAMラジオの送信所に併設されているところもある)。また、中波・短波放送では接地抵抗が低い上(RKB毎日放送など)・海岸沿い(ラジオ関西など)・河川敷アール・エフ・ラジオ日本など)・競艇場付近(TBSラジオ&コミュニケーションズなど)・湖沼(ラジオNIKKEI千葉長柄送信所など)付近・水田地帯・湿原などに垂直型の無指向性アンテナを建設することが多い。ただし海上や海岸などは塩害の影響を受けやすく、鉄塔の寿命が比較的短い欠点がある。

[編集] その他放送局送信所にある設備

  • エアモニター(ミニサテライト局以外のテレビ送信所では必ず、テレビ受像機が置かれている。業務用のものも使用している場合もあるが、一般家庭で使用されているものがほとんどである。)
  • 非常用スタジオ(中波ラジオの送信所には大規模災害などで演奏所が使用不能になる事態に備えてスタジオを設置してある箇所もある。新潟放送では過去二回、1955年の新潟大火と1964年の新潟地震で使用されている。)
  • 自家発電装置・無停電電源装置(外部からの電源供給ができなくなった場合でも放送が続けられるように電源を確保するもの。)
  • エアコン(送信所内の温度を一定に保つために設置。特に大規模送信所に多い。)

[編集] 問題点

超短波以上の周波数で発射される送信所の多くはサービスエリアを見通せる山上に設置されるが、山上に設置することによって、送信機を保護する局舎(コンクリート製の小屋)と鉄塔、麓から送信所までの道路電線路通信線路の存在が景観を損ねている(景観破壊)問題があり、特に最近は自然環境保護を理由に自然公園内の山への設置が難しくなってきている。この為、麓に多数の送信所を設置する必要が発生(特に北海道HBCSTVHTBuhbは100局以上)・兵庫県SUNは100局以上、近畿広域4局も2府4県で約180局あり、その半数の約90局は兵庫県内)・長崎県NBCKTNは100局以上)・鹿児島県MBCKTSは100局以上))し、送信所の設置・維持・管理が高コストになり、放送局等の経営を圧迫、または放送局等の財務状況を理由に麓に多数の送信所を設置できない問題が浮上している。その影響で、平成新局を中心に難視聴地域が多くなっている。

[編集] 著名な送信所