五位

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五位(ごい)とは、仏教においてあらゆる事象を5種類の範疇(カテゴリー)に分類して、人間の精神や物質など全ての現象の要素(法, ダルマ)をまとめたもの。五法(ごほう)・五品(ごほん)などとも。

概要[編集]

五位とは、

(因縁変化を成立させる「有為法」(saṃskṛta, サンスクリタ)内の)

  • 「物質的なもの」を意味する「(しき-、: rūpaルーパ)」
  • 「心の主体となる識」を意味する「(しん-、: cittaチッタ)」
  • 「心のはたらき」を意味する「心所(しんじょ-、: caitasikaチャイタスィカ) 」
  • 「それ以外」のものを意味する「心不相応行法(しんふそうおうぎょう-、: citta-viprayukta-saṃskāraチッタ・ヴィプラユクタ・サンスカーラ)」

(因縁変化を成立させる「有為法」(saṃskṛta, サンスクリタ)以外の)

  • 「生滅変化なく、因縁によって動かないもの」を意味する「無為(むい-、: asaṃṣkṛtaアサンスクリタ)」

の5つに分類される諸法を総称したものである。

各分類の法の数は、説によって異なる。

諸説[編集]

説一切有部[編集]

倶舎論』では、色法11・心法1・心所法46・心不相応行法14・無為法3の75種(五位七十五法)と成す。

  • 有為(ういほう、saṃskṛta dharma、サンスクリタ・ダルマ)(72)
    • (しきほう、rūpa dharma、ルーパ・ダルマ)(11)
      • (げん、: cakṣusチャクシュス
      • (に、: śrotraシュロートラ
      • (び、: ghrāṇaグラーナ
      • (ぜつ、: jihvāジフヴァー
      • (しん、: kāyaカーヤ) 以上【五根】(三科を参照)
      • (しき、: rūpaルーパ
      • (しょう、: śabdaシャブダ
      • (こう、: gandhaガンダ
      • (み、: rasaラサ
      • (そく、: sparśaスパルシャ) 以上【五境】(同上)
      • 無表色(むひょうしき、: avijñapti-rūpaアヴィジュニャプティ・ルーパ) - 強力な善あるいは悪の行為が行われるとき(つまり業(身表業・語表業)が造られるとき)に、その業の余勢(表面から窺い知れない)が行為の終了後も行為者自身の上にとどまること(櫻部・上山 P122)。
    • (しんほう、citta dharma、チッタ・ダルマ)(1)
      • 心 (識・意)(しん、: cittaチッタ
    • 心所(しんじょほう、caitasika dharma、チャイタシカ・ダルマ)(46)[1]
      • 大地法(だいじほう、: mahābhūmikaマハーブーミカ)(10) - 最も普遍的な心作用。
        • (じゅ、: vedanāヴェーダナー) - 苦・楽・不苦不楽の感受(五蘊の「受」に相当)。
        • (そう、: saṃjñāサンジュニャー) - 対象を心にとらえる表象作用(五蘊の「想」に相当)。
        • (し、: cetanāチェータナー) - 心がある方向に動機づけられること(五蘊の「行」に相当)。
        • (よく、: chandaチャンダ) - ものごとをしたいという欲求。
        • (そく、: sparśaスパルシャ) - の接触。
        • (え、: matiマティ) - 分別し判断する作用。
        • (ねん、: smṛtiスムリティ) - 記憶作用。
        • 作意(さい、: manaskāraマナスカーラ) - 対象に注意を向けること。
        • 勝解(しょうげ、: adhimuktiアディムクティ) - 対象がいかなるものかを確認し了解すること。
        • (じょう、: samādhiサマーディ) - 心を浮動させず一点に集中させること。三摩地(さんまじ)ともいう。
      • 大善地法(だいぜんじほう、: kuśala-mahābhūmikaクシャラ・マハーブーミカ)(10) - すべての善心とあい伴うもの。
        • (しん、: śraddhāシュラッダー) - 心のきよらかさ。四諦三宝、およびとその報いとの間の因果性、とに対する確信。
        • (ごん、: vīryaヴィーリヤ) - 善行に対して果敢なこと。
        • (しゃ、: upekṣāウペークシャー) - 心の平静。かたよりのないこと。
        • (ざん、: hrīフリー) - 「他者の徳に対する恭敬」、もしくは「みずからを観察することによっておのれの過失を恥じること」。
        • (ぎ、: apatrāpyaアパトラーピヤ) - 「自己の罪に対する畏怖」、もしくは「他を観察することによっておのれの過失を恥じること」。
        • 無貪(むとん、: alobhaアローバ) - 貪りのないこと。
        • 無瞋(むしん、: adveśaアドヴェーシャ) - 憎しみのないこと。積極的に、欲望の対象を捨てること、他を愛憐すること。
        • 不害(ふがい、: ahiṃsāアヒンサー) - 非暴力。
        • 軽安(きょうあん、: praśrabdhiプラシュラブディ) - 適応性。心の巧みさ。
        • 不放逸(ふほういつ、: apramādaアプラマーダ) - 精励。専心して善を行うこと。
      • 大煩悩地法(だいぼんのうじほう、: kleśa-mahābhūmikaクレーシャ・マハーブーミカ)(6) - すべての悪心と有覆無記[注釈 1]心にあい伴うもの。
        • (ち、: mohaモ-ハ) - 愚かさ、無知のこと。無明(むみょう)ともいう。
        • 放逸(ほういつ、: pramādaプラマーダ) - 放恣であり善行に専心しないこと。
        • 懈怠(けだい、: kauśīdyaカウシーディヤ) - 怠惰であること、心が果敢でないこと。
        • 不信(ふしん、: āśraddhyaアーシュラッディヤ) - 心が清らかでないこと。
        • 惛沈(こんじん、: styānaスティヤーナ) - 心の沈鬱。
        • 掉挙(じょうこ、: auddhatyaアウッダティヤ) - 心の軽躁なこと、心が浮動してしずまりのないこと。
      • 大不善地法(だいふぜんじほう、: akuśala-mahābhūmikaアクシャラ・マハーブーミカ)(2) - すべての悪心とあい伴うもの。
        • 無慚(むざん、: āhrīkyaアーフリーキヤ) - 上記の大善地法「慚」の逆の心作用。
        • 無愧(むぎ、: anapatrāpyaアナパトラーピヤ) - 上記の大善地法「愧」の逆の心作用。
      • 小煩悩地法(しょうぼんのうじほう、: parīttakleśabhūmikaパリーッタクレーシャブーミカ)(10) - ある種の悪心や有覆無記心とのみあい伴うもの。
        • 忿(ふん、: krodhaクローダ) - 怒り。
        • (ふく、: mrakṣaムラクシャ) - 自己の誤ちの隠蔽。
        • (けん、: mātsaryaマートサリヤ) - ものおしみ。
        • (しつ、: īrṣyāイールシヤー) - 嫉み。
        • (のう、: pradāsaプラダーサ) - 他の諌めをいれぬ頑迷さ。
        • (がい、: vihiṃsāヴィヒンサー) - 害意。
        • (てん、: śāṭhyaシャーティヤ) - 心の邪曲。
        • (おう、: māyāマーヤー) - 欺瞞。
        • (きょう、: madaマダ) - 自己満足。おのれの性質を優れたものと考えて自己に執着する心のおごり。
        • (こん、: upanāhaウパナーハ) - 恨み。
      • 不定法(ふじょうほう、aniyata dharma)(8) - あるときは善心と、あるときは悪心と、あるときは無記心とあい伴うもの。
        • 悪作(おさ、あくさ、: kaukṛtyaカウクリティヤ)- 過去の悪い行いに対してその誤ちを悔いる心作用。
        • 睡眠(すいめん、: middhaミッダ) - 心の鈍重さ。眠(みん)とも呼ぶ。
        • (じん、: vitarkaヴィタルカ) - 推究的な粗大な心の動き。
        • (し、: vicāraヴィチャーラ) - 観察的な微細な心の動き。
        • (とん、: rāgaラーガ) - 貪り。心にかなう対象に対する欲求。
        • (しん、: pratighaプラティガ) - 憎しみ。心にかなわない対象に対する憎悪。
        • (まん、: mānaマーナ) - 慢心。おのれは他より優れていると妄想して他人に対して誇りたがる心のおごり。
        • (ぎ、: vicikitsāヴィチキッツァー) - 「四諦」の真理に対してあれこれと思いまどうこと。(櫻部・上山 P111~116)
    • 心不相応行法(しんふそうおうぎょうほう、citta-viprayukta-saṃskāra dharma、チッタヴィプラユクタ・サンスカーラ・ダルマ)(14)[2]
      • (とく、: prāptiプラープティ) - ある有情(存在)の身・心を構成する諸法や択滅・非択滅[注釈 2]を、その有情につなぎとめている働き。すべての瞬間には心および心作用のいくつかの倶生(くしょう:ともに生起する)すると考えられているが、この「得」は、それら心・心作用が倶生の関係に結びついているところに生起する法と考えられている。
      • 非得(ひとく、: aprāptiアプラープティ) - 諸法のつながりを引き離すはたらき。得と逆作用をもつ(ダルマ)。
      • 同分(どうぶん、: sabhāgatāサバーガター) - 有情の各類に共通な同類性。たとえば、それぞれの人にはすべて人として共通の、それぞれの牛にはすべて牛として共通の同類性があると考えられている。衆同分ともいう。
      • 無想定(むそうじょう、: asaṃjñisamāpattiアサンジュニサマーパッティ) - 無意識にまで至るほどな極度の精神集中。無想天に生まれることを真の解脱と誤解してそれを求める者が修する。
      • 無想(むそう、: āsaṃjñikaアーサンジュニカ) - 無想天に生まれた者のみが獲得する無意識な状態。無想果(むそうか)とも呼ぶ。
      • 滅尽定(めつじんじょう、: nirodhasamāpattiニローダサマーパッティ) - 心のはたらきが消滅した状態にある精神集中。聖者が寂静の境地を楽しもうとして修する。
      • 命根(みょうこん、: jīvita-indriyaジーヴィタ・インドリヤ) - 生命機能。体温と心のはたらきとを維持する生命力を法の一要素として見たもの。
      • (しょう、せい、: jātiジャーティ) - 生起すること。四相有為(ダルマ)は、現在の一瞬間のうちに、本項以下の生・住・異・滅の4つの相状を呈すると考えられている)の一要素。
      • (じゅう、: sthitiスティティ) - 生起した状態を保つこと。四相の一要素。
      • (い、: jarāジャラー) - 状態が変異すること。四相の一要素。
      • (めつ、: anityatāアニティヤター) - 消滅すること。四相の一要素。
      • 名身(みょうしん、: nāmakāyaナーマカーヤ) - 文すなわち音節、句すなわち文章に対して、名辞を意味する。本項以下の名・句・心の三つによって、言葉のはたらきが、それによって認識が、成立すると考えられている。名身とも呼ぶ。
      • 句身(くしん、: padakāyaパダカーヤ) - 名すなわち名辞、文すなわち音節に対して、まとまった意味を表しうる文章を意味する。句身とも呼ぶ。
      • 文身(もんしん、: vyañjanakāyaヴィヤンジャナカーヤ) - 名すなわち名辞、句すなわち文章に対して、音節を意味する。文身とも呼ぶ。(櫻部・上山 P310~311、索引頁「仏教基本語彙(1)~(10)、櫻部 P89~94)
  • 無為(むいほう、asaṃskṛta dharma、アサンスクリタ・ダルマ)(3)
    • 虚空(こくう、: ākāśaアーカーシャ) - 物の存在する場所としての空間。
    • 択滅(ちゃくめつ、: pratisaṃkhyānirodhaプラティサンキヤーニローダ) - 正しい知恵による煩悩の止滅。「択」とはに対して正しい弁別判断をなす洞察力のこと。
    • 非択滅(ひちゃくめつ、: apratisaṅkhyānirodhaアプラティサンキヤーニローダ) - 正しい知恵によらないの止滅。(櫻部・上山 P109、P142、索引頁「仏教基本語彙(1)~(10))

唯識派・法相宗[編集]

一方、唯識派やその東アジア後継である法相宗では、『成唯識論』に則り、心法8・心所法51・色法11・不相応行法24・無為法6の100種(五位百法)とする。

唯識の名の通り、こちらの教学では「心」(識) の優位性が詳細さを以て説かれるので、「心法」が冒頭に配置され、「色法」は後順に退く格好になる。)

  • 有為法(ういほう、: saṃskṛta dharma, サンスクリタ・ダルマ)(94)
    • 心法(しんほう、: citta dharma, チッタ・ダルマ)(8)
      • 眼識(げんしき、: cakṣur-vijñāna, チャクシュル・ヴィジュニャーナ)
      • 耳識(にしき、: śrotra-vijñāna, シュロートラ・ヴィジュニャーナ)
      • 鼻識(びしき、: ghrāṇa-vijñāna, グラーナ・ヴィジュニャーナ)
      • 舌識(ぜっしき、: jihvā-vijñāna, ジフヴァー・ヴィジュニャーナ)
      • 身識(しんしき、: kāya-vijñāna, カーヤ・ヴィジュニャーナ)以上【五識】
      • 意識(いしき、: mano-vijñāna, マノ・ヴィジュニャーナ) 以上【六識】
      • 末那識(まなしき、: manas-vijñāna, マナス・ヴィジュニャーナ)
      • 阿頼耶識(あらやしき、: ālaya-vijñāna, アーラヤ・ヴィジュニャーナ)以上【八識】
    • 心所法(しんじょほう、: caitasika dharma, チャイタシカ・ダルマ)(51)
      • 遍行心所(へんぎょうしんじょ、: sarvatraga, サルヴァトラガ)(5)
        • 作意(さい、: manaskāra, マナスカーラ)
        • (そく、: sparśa, スパルシャ)
        • (じゅ、: vedanā, ヴェーダナー)
        • (そう、: saṃjñā, サンジュニャー)
        • (し、: cetanā, チェータナー)
      • 別境心所(べっきょうしんじょ、: viniyata, ヴィニヤタ)(5)
        • (よく、: chanda, チャンダ)
        • 勝解(しょうげ、: adhimokṣa, アディモークシャ / : adhimukti, アディムクティ)
        • (ねん、: smṛti, スムリティ)
        • (じょう、: samādhi, サマーディ)
        • (え、: prajñā, プラジュニャー / : mati, マティ)
      • 善心所(ぜんしんじょ、: kuśala, クシャラ)(11)
        • (しん、: śraddhā, シュラッダー)
        • 精進(しょうじん、: vīrya, ヴィーリヤ)
        • (ざん、: hrī, フリー)
        • (ぎ、: apatrāpya, アパトラーピヤ)
        • 無貪(むとん、: alobha, アローバ)
        • 無瞋(むしん、: adveṣa, アドヴェーシャ)
        • 無癡(むち、: amoha, アモーハ)
        • 軽安(きょうあん、: praśrabdhi, プラシュラブディ)
        • 不放逸(ふほういつ、: apramāda, アプラマーダ)
        • 行捨(ぎょうしゃ、: upekṣa, ウペークシャー)
        • 不害(ふがい、: ahiṃsā, アヒンサー)
      • 煩悩心所(ぼんのうしんじょ、: kleśa, クレーシャ)(6)
        • (とん、: rāga, ラーガ)
        • (しん、: pratigha, プラティガ)
        • (ち、: mūḍhi, ムーディ / : moha, モーハ)
        • (まん、: māna, マーナ)
        • (ぎ、: vicikitsā, ヴィチキッツァー)
        • 悪見(あっけん、: dṛṣṭi, ドリシュティ)
      • 随煩悩心所(ずいぼんのうしんじょ、: upakleśa, ウパクレーシャ)(20)
        • 小随煩悩(10)
          • 忿(ふん、: krodha, クローダ)
          • (こん、: upanāha, ウパナーハ)
          • (ふく、: mrakṣa, ムラクシャ)
          • (のう、: pradāsa, プラダーサ)
          • (しつ、: īrasyā, イールシヤー)
          • (けん、: mātsarya, マートサリヤ)
          • (おう、: māyā, マーヤー)
          • (てん、: śāṭhya, シャーティヤ)
          • (がい、: vihiṃsā, ヴィヒンサー)
          • (きょう、: mada, マダ)
        • 中随煩悩(2)
          • 無慚(むざん、: āhrīkya, アーフリーキヤ)
          • 無愧(むぎ、: anapatrāpya, アナパトラーピヤ)
        • 大随煩悩(8)
          • 掉挙(じょうこ、: auddhatya, アウッダティヤ)
          • 惛沈(こんじん、: styāna, スティヤーナ)
          • 不信(ふしん、: āśraddhya, アーシュラッディヤ)
          • 懈怠(けだい、: kausīdya, カウシーディヤ)
          • 放逸(ほういつ、: pramāda, プラマーダ)
          • 失念(しつねん、: muṣitasmṛtitā, ムシタスムリティター)
          • 散乱(さんらん、: vikṣepa, ヴィクシェーパ)
          • 不正知(ふしょうち、: asaṃprajanya, アサンプラジャニヤ)
      • 不定心所(ふじょうしんじょ、: aniyata, アニヤタ)(4)
        • 悔 (悪作)(げ (おさ/あくさ)、: kaukṛtya, カウクリティヤ)
        • (睡)眠((すい)めん、: middha, ミッダ)
        • (じん、: vitarka, ヴィタルカ)
        • (し、: vicāra, ヴィチャーラ)
    • 色法(しきほう、: rūpa dharma, ルーパ・ダルマ)(11)
      • (げん、: cakṣus, チャクシュス)
      • (に、: śrotra, シュロートラ)
      • (び、: ghrāṇa, グラーナ)
      • (ぜつ、: jihvā, ジフヴァー)
      • (しん、: kāya, カーヤ)以上【五根】
      • (しき、: rūpa, ルーパ)
      • (しょう、: śabda, シャブダ)
      • (こう、: gandha, ガンダ)
      • (み、: rasa, ラサ)
      • (そく、: spraṣṭavya, スプラシュタヴィヤ/: sparśa, スパルシャ)以上【五境】
      • 法処所摂(ほうしょしょしょう、: dharmāyatanikāni rūpāni, ダルマーヤタニカーニ・ルーパーニ)
    • (心)不相応行法((しん)ふそうおうぎょうほう、: citta-viprayukta-saṃskāra dharma, チッタ・ヴィプラユクタ・サンスカーラ・ダルマ)(24)
      • (有)得((う)とく、: prāpti, プラープティ)
      • 命根(みょうこん、: jīvitendriya, ジーヴィテーンドリヤ)
      • 衆同分(しゅどうぶん、: nikāya-sabhāga, ニカーヤ・サバーガ)
      • 異生性(いしょうじょう、: visabhāga, ヴィサバーガ)
      • 無想定(むそうじょう、: asaṃjñi-samāpatti, アサンジュニー・サマーパッティ)
      • 滅尽定(めつじんじょう、: nirodha-samāpatti, ニローダ・サマーパッティ)
      • 無想報(むそうほう、: āsaṃjñika, アーサンジュニカ)
      • 名身(みょうしん、: nāma-kāya, ナーマ・カーヤ)
      • 句身(くしん、: pada-kāya, パダ・カーヤ)
      • 文身(もんしん、: vyañjana-kāya, ヴィヤンジャナカーヤ)
      • (しょう、: jāti, ジャーティ)
      • (じゅう、: sthiti, スティティ)
      • (ろう、: jarā, ジャラー)
      • 無常(むじょう、: anityatā, アニティヤター)
      • 流転(るてん、: pravṛtti, プラヴリッティ)
      • 定異(じょうい、: pratiniyama, プラティニヤマ)
      • 相応(そうおう、: yoga, ヨーガ)
      • 勢速(せいそく、: jāva, ジャーヴァ)
      • 次第(しだい、: anukrama, アヌクラマ)
      • (ほう、: deśa, デーシャ)
      • (じ、: kāla, カーラ)
      • (しゅ、: saṃkhyā, サンキヤー)
      • 和合性(わごうしょう、: sāmagrī, サーマグリー)
      • 不和合性(ふわごうしょう、: anyathātva, アニヤタートヴァ)
  • 無為法(むいほう、: asaṃskṛta dharma, アサンスクリタ・ダルマ)(6)
    • 虚空(こくう、: ākāśa, アーカーシャ)
    • 択滅(ちゃくめつ、: pratisaṃkhyā-nirodha, プラティサンキヤー・ニローダ)
    • 非択滅(ひちゃくめつ、: apratisaṃkhyā-nirodha, アプラティサンキヤー・ニローダ)
    • 不動滅(ふどうめつ、: āniñjya, アーニンジヤ)
    • 想受滅(そうじゅめつ、: saṃjñā-vedayita-nirodha, サンジュニャー・ヴェーダイタ・ニローダ)
    • 真如(しんにょ、: tathatā, タタター)

このように立場によって数や順序、位置づけが異なっている。

また、実体の存在を認めるか否かについても異なっている(唯識宗の根幹にある喩伽唯識では実体を認めない)。

類似概念[編集]

分別説部(上座部仏教)[編集]

なお、分別説部、すなわち現在の南伝上座部仏教では、『アビダンマッタ・サンガハ』などの記述に依り、以下の計170法を、「性質(=自性)が変わることが無い法」としての「勝義法」(第一義法、: paramattha dhamma, パラマッタ・ダンマ)として挙げる[3]

  • (しん、: Citta, チッタ)(89)
    • 欲界心(よくかいしん、: kāmāvacara citta, カーマーヴァチャラ・チッタ)(54)
      • 欲界浄心(よくかいじょうしん、: kāmāvacara sobhana citta, カーマーヴァチャラ・ソーバナ・チッタ)(24) - 無貪、無瞋、無痴などの因を含む心
        • 大善心(だいぜんしん、: mahā kusala citta, マハークサラ・チッタ)(8)
        • 大異熟心(だいいじゅくしん、: mahā vipāka citta, マハーヴィパーカ・チッタ)(8)
        • 大唯作心(だいゆいさしん、: mahā kiriya citta, マハーキリヤ・チッタ)(8)
      • 欲界不浄心(よくかいふじょうしん、: kāmāvacara asobhana citta, カーマーヴァチャラ・アソーバナ・チッタ)(30) - 「欲界浄心」以外の心
        • 不善心(ふぜんしん、: akusala citta, アクサラ・チッタ)(12) - 貪、瞋、痴などの因を含む心
          • 貪根心(とんこんしん、: lobha mūla citta, ローバ・ムーラチッタ)(8)
          • 瞋根心(しんこんしん、: dosa mūla citta, ドーサ・ムーラチッタ)(2)
          • 痴根心(ちこんしん、: moha mūla citta, モーハ・ムーラチッタ)(2)
        • 無因心(むいんしん、: ahetuka citta, アヘートゥカ・チッタ)(18) - 無貪、無瞋、無痴、貪、瞋、痴などの因を含まない心
          • 不善異熟心(ふぜんいじゅくしん、: akusala vipāka citta, アクサラ・ヴィパーカ・チッタ)(7)
          • 無因善異熟心(むいんぜんいじゅんくしん、: ahetuka kusala vipāka citta, アヘートゥカ・クサラ・ヴィパーカ・チッタ)(8)
          • 無因唯作心(むいんゆいさしん、: ahetuka kiriya vipāka citta, アヘートゥカ・キリヤ・ヴィパーカ・チッタ)(3)
    • 色界心(しきかいしん、: rūpāvacara citta, ルーパーヴァチャラ・チッタ)(15)
      • 色界善心(しきかいぜんしん、: rūpāvacara kusala citta, ルーパーヴァチャラ・クサラ・チッタ)(5)
      • 色界異熟心(しきかいいじゅくしん、: rūpāvacara vipāka citta, ルーパーヴァチャラ・ヴィパーカ・チッタ)(5)
      • 色界唯作心(しきかいゆいさしん、: rūpāvacara kiriya citta, ルーパーヴァチャラ・キリヤ・チッタ)(5)
    • 無色界心(むしきかいしん、: arūpāvacara citta, アルーパーヴァチャラ・チッタ)(12)
      • 無色界善心(むしきかいぜんしん、: arūpāvacara kusala citta, アルーパーヴァチャラ・クサラ・チッタ)(4)
      • 無色界異熟心(むしきかいいじゅくしん、: arūpāvacara vipāka citta, アルーパーヴァチャラ・ヴィパーカ・チッタ)(4)
      • 無色界唯作心(むしきかいゆいさしん、: arūpāvacara kiriya citta, アルーパーヴァチャラ・キリヤ・チッタ)(4)
    • 出世間心(しゅっせけんしん、: lokuttara citta, ロークッタラ・チッタ)(8)
      • 道心(どうしん、: magga citta, マッガ・チッタ)(4)
      • 果心(かしん、: phala citta, パラ・チッタ)(4)
  • 心所(しんじょ、: Cetasika, チェータシカ)(52) --- 心機能
    • 同他心所(どうたしんじょ、: aññasamāna cetasika, アンニャサマーナ・チェータシカ)(13) --- 協働中立的機能
      • 共一切心心所(くいっさいしんしんじょ、: sabba-citta-sādhārana cetasika, サッバチッタサーダーラナ・チェータシカ)(7) --- 一般共通機能
        • (そく、: phassa, パッサ)
        • (じゅ、: vedanā, ヴェーダナー)
        • (そう、: saññā, サンニャー)
        • (し、: cetanā, チェータナー)
        • 一境性(いっきょうしょう、: ekaggatā, エーカッガター)
        • 命根(みょうこん、: jīvitindriya, ジーヴィティンドリヤ)
        • 作意(さい、: manasikāra, マナシカーラ)
      • 雑心所(ぞうしんじょ、: pakinnaka cetasika, パキンナカ・チェータシカ)(6) --- 特殊機能
        • (じん、: vitakka, ヴィタッカ)
        • (し、: vicāra, ヴィチャーラ)
        • 勝解(しょうげ、: adhimokkha, アディモッカ)
        • 精進(しょうじん、: viriya, ヴィリヤ)
        • (き、: pīti, ピーティ)
        • 意欲(いよく、: chanda, チャンダ)
    • 浄心所(じょうしんじょ、: sobhana cetasika, ソーバナ・チェータシカ)(25) --- 善機能
      • 【共浄心所】(19)
        • (しん、: saddhā, サッダー)
        • (ねん、: sati, サティ)
        • (ざん、: hiri, ヒリ)
        • (ぎ、: ottappa, オッタッパ)
        • 無貪(むとん、: alobha, アローバ)
        • 無瞋(むしん、: adosa, アドーサ)
        • 中捨(ちゅうしゃ、: tatramajjhattatā, タトラマッジャッタター)
        • 身軽安(しんきょうあん、: kāyappassaddhi, カーヤッパッサッディ)
        • 心軽安(しんきょうあん、: cittappassaddhi, チッタッパッサッディ)
        • 身軽快(しんきょうかい、: kāyalahutā, カーヤラフター)
        • 心軽快(しんきょうかい、: cittalahutā, チッタラフター)
        • 身柔軟性(しんにゅうなんしょう、: kāyamudutā, カーヤムドゥター)
        • 心柔軟性(しんにゅうなんしょう、: cittamudutā, チッタムドゥター)
        • 身適合性(しんちゃくごうしょう、: kāyakammaññatā, カーヤカンマンニャター)
        • 心適合性(しんちゃくごうしょう、: cittakammaññatā, チッタカンマンニャター)
        • 身練達性(しんれんだつしょう、: kāyapāguññatā, カーヤパーグンニャター)
        • 心練達性(しんれんだつしょう、: cittapāguññatā, チッタパーグンニャター)
        • 身端直性(しんたんじきしょう、: kāyujukatā, カーユジュカター)
        • 心端直性(しんたんじきしょう、: cittujukatā, チットゥジュカター)
      • 【離心所】(3)
        • 正語(しょうご、: sammā-vācā, サンマーヴァーチャー)
        • 正業(しょうごう、: sammā-kammanta, サンマーカンマンタ)
        • 正命(しょうみょう、: sammā-ājīva, サンマーサージーヴァ)
      • 【無量心所】(2)
        • (ひ、: karunā, カルナー)
        • (き、: muditā, ムディター)
      • 【智慧の心所】(1)
        • 慧根(えこん、: paññindriya, パンニンドゥリヤ)
    • 不善心所(ふぜんしんじょ、: akusala cetasika, アクサラ・チェータシカ)(14) --- 悪機能
      • 【欲系】(3)
        • (とん、: lobha, ローバ)
        • (けん、: diṭṭhi, ディッティ)
        • (まん、: māna, マーナ)
      • 【怒系】(4)
        • (しん、: dosa, ドーサ)
        • (しつ、: issā, イッサー)
        • (けん、: macchariya, マッチャリヤ)
        • 悪作(おさ/あくさ、: kukkucca, クックッチャ)
      • 【痴系】(4)
        • (ち、: moha, モーハ)
        • 無慚(むざん、: ahirika, アヒリカ)
        • 無愧(むぎ、: anottappa, アノッタッパ)
        • 掉挙(じょうこ、: uddhacca, ウッダッチャ)
      • 【その他】(3)
        • 昏沈(こんじん、: thīna, ティーナ)
        • 睡眠(すいめん、: middha, ミッダ)
        • (ぎ、: vicikicchā, ヴィチキッチャー)
  • (しき、: Rūpa, ルーパ)(28) --- 物質
    • 完色(かんしき、: nipphanna-rūpa, ニッパンナ・ルーパ)(18) --- 第一義的に存在する物質
      • 四大(しだい、: mahābhūta, マハーブータ)(4)
        • (ち、: pathavī, パタヴィー)
        • (すい、: āpo, アーポ)
        • (か、: tejo, テージョ)
        • (ふう、: vāyo, ヴァーヨ)
      • 浄色(じょうしき、: pasāda-rūpa, パサーダ・ルーパ)(5) --- 五根
        • (げん、: cakkhu, チャック)
        • (に、: sota, ソータ)
        • (び、: ghāna, ガーナ)
        • (ぜつ、: jivhā, ジヴハー)
        • (しん、: kāya, カーヤ)
      • 境色(: gocara-rūpa)(4(+3)) --- 五境
        • (しき、: rūpa, ルーパ)
        • (しょう、: sadda, サッダ)
        • (こう、: gandha, ガンダ)
        • (み、: rasa, ラサ)
        • (そく、: phoṭṭhabba, ポッタッバ)
        • (ち、: pathavī, パタヴィー)・(か、: tejo, テージョ)・(ふう、: vāyo, ヴァーヨ))
      • 性色(しょうしき、: bhāva-rūpa, バーヴァ・ルーパ)(2)
        • 男性(なんしょう、: purisabhāva, プリサバーヴァ)・女性(にょしょう、: itthibhāva, イッティバーヴァ)
      • 心色(しんしき、: hadaya-rūpa, ハダヤ・ルーパ)(1)
        • 心基(しんき、: hadaya vatthu, ハダヤ・ヴァットゥ)心
      • 命色(みょうしき、: jīvita-rūpa, ジーヴィタ・ルーパ)(1)
        • 命根(みょうこん、: jīvitindriya, ジーヴィティンドリヤ)身体
      • 食色(じきしき、: āhāra-rūpa, アーハーラ・ルーパ)(1)
        • 食素(じきそ、: ojā, オージャー)滋養素、栄養素
    • 非完色(ひかんしき、: anipphannā-rūpa, アニッパンナー・ルーパ)(10) --- 完色の特殊状態
      • 分断色(ぶんだんしき、: pariccheda-rūpa, パリッチェーダ・ルーパ)(1)
        • 虚空界(こくうかい、: ākāsa, アーカーサ)分子間の隙間
      • 表色(ひょうしき、: viññatti-rūpa, ヴィンニャッティ・ルーパ)(2) --- 意思表示の際に生じる身・語の物質
        • 身表(しんひょう、: kāya-viññatti, カーヤ・ヴィンニャッティ)
        • 語表(ごひょう、: vacī-viññatti, ヴァチー・ヴィンニャッティ)
      • 変化色(へんげしき、: vikāra-rūpa, ヴィカーラ・ルーパ)(3(+2))
        • 色軽快性(しききょうかいしょう、: rūpa-lahutā, ルーパ・ラフター)
        • 色柔軟性(しきにゅうなんしょう、: rūpa-mudutā, ルーパ・ムドゥター)
        • 色適業性(しきしゃくごうしょう、: rūpa-kammaññatā, ルーパ・カンマンニャター) (+ 表色(2))
      • 相色(そうしき、: lakkhaṇa-rūpa, ラッカナ・ルーパ)(4)
        • 色積集(しきしゃくじゅう、: upacaya, ウパチャヤ)
        • 色相続(しきそうぞく、: santati, サンタティ)
        • 色老性(しきろうしょう、: jaratā, ジャラター)
        • 色無常性(しきむじょうしょう、: aniccatā, アニッチャター)
  • 涅槃(ねはん、: Nibbāna, ニッバーナ)(1)

その他[編集]

これとは別に唯識宗においては修行における5段階を五位と称する場合がある。これは、仏果(仏の境地)を得るまでに必要とする資糧位・加行位・通達位・修習位・究竟位を指し、これを「大乗の五位」とした。またこれに対して資糧位・加行位・見道位・修道位・無学位の「小乗の五位」もあるとした。

更に9世紀禅僧洞山良价が唱えた禅宗独自の五位(「洞山五位」)も存在する。これは生滅の現象を意味する正偏五位(しょうへんごい、正中偏・偏中正・正中来・偏中至・兼中到)と修行のあり方を示す功勲五位(くくんごい、向・奉・功・共功・功功)が存在する。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 善でも悪でもない「無記」の一種。正しい知恵が起こるのを妨げる種類の無記を「有覆無記(うぶくむき)」、妨げない種類の無記を「無覆無記(むぶくむき)」と呼ぶ。
  2. ^ 本項目の「無為法」を参照。

出典[編集]

  1. ^ 心所法の各梵名は次の典拠による。(説一切有部の心所説 ―仏教における心の分析
  2. ^ 心不相応行法の各梵名は右の典拠による。(村上明宏心不相応行法と無為法の関連性』、駒澤大学仏教学部論集45 、2014年10月、p.388(127) )
  3. ^ アビダンマッタサンガハ用語解説 - 日本テーラワーダ仏教協会 p3

参考文献[編集]

  • 櫻部建・上山春平 『存在の分析<アビダルマ>』 角川書店、2006年ISBN 4-04-198502-1

関連項目[編集]