中村元 (哲学者)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
Camera-photo Upload.svg 画像提供依頼中村元画像提供をお願いします。2018年7月
中村 元
(なかむら はじめ)
人物情報
生誕 (1912-11-28) 1912年11月28日
大日本帝国の旗 大日本帝国
島根県松江市殿町
死没 (1999-10-10) 1999年10月10日(86歳没)
日本の旗 日本
東京都杉並区久我山
急性腎不全
国籍 日本の旗 日本
出身校 東京帝国大学
学問
研究分野 哲学
仏教学
歴史学
論理学
倫理学
比較思想
研究機関 東京大学
東方学院
学位 文学博士
称号 松江市名誉市民
東京大学名誉教授
文化功労者
文化勲章受章者
勲一等瑞宝章受章者
紫綬褒章受章者
日本学士院会員
主な業績 『初期ヴェーダーンタ哲学史』
『東洋人の思惟方法』
『佛教語大辞典』
『中村元選集』
影響を
受けた人物
宇井伯壽
亀井高孝
ゴータマ・ブッダ
須藤新吉
ブルーノ・ペツォルトドイツ語版
和辻哲郎
影響を
与えた人物
植木雅俊
上村勝彦
釈悟震
末木文美士
副島隆彦
奈良康明
早島鏡正
藤田宏達
前田專學
学会 比較思想学会
主な受賞歴 日本学士院恩賜賞(1957年)
毎日出版文化賞特別賞(1975年)
仏教伝道文化賞(1975年)
NHK放送文化賞(1999年)
脚注
公益財団法人中村元東方研究所を設立
テンプレートを表示

中村 元(なかむら はじめ、1912年大正元年)11月28日 - 1999年平成11年)10月10日)は、日本インド哲学者、仏教学者[1]東京大学名誉教授日本学士院会員。勲一等瑞宝章文化勲章紫綬褒章受章[1]

略歴[編集]

没後[編集]

  • 2001年 (平成13年) 6月 - 『広説 佛教語大辞典』を刊行(全4巻、東京書籍、縮刷版全2巻が2010年7月に刊行)。
  • 2012年 (平成24年) -
    • 10月10日、生誕100年を記念して、松江市八束町に中村元記念館が開設される。
    • 10月、『中村元博士著作論文目録』を刊行(ハーベスト出版、公益財団法人中村元東方研究所編集)。

エピソード[編集]

博士論文は5年がかりで完成させた。その原稿はリヤカーで弟に手伝ってもらって運び込んだ。指導教授の宇井伯壽も「読むのが大変だ」と悲鳴をあげたという[5]

サンスクリット語・パーリ語に精通し、初期仏教仏典などの解説や翻訳に代表される著作は多数にのぼる。「生きる指針を提示するのも学者の仕事」が持論で、訳書に極力やさしい言葉を使うことでも知られた。その最も端的な例として、サンスクリットのニルヴァーナ(Nirvāṇa)およびパーリ語のニッバーナ(Nibbāna)を「涅槃」と訳さず「安らぎ」と訳したことがあげられる。訳注において「ここでいうニルヴァーナは後代の教義学者たちの言うようなうるさいものではなくて、心の安らぎ、心の平和によって得られる楽しい境地というほどの意味であろう。」としている。

中村が20年かけ1人で執筆していた『佛教語大辞典』が完成間近になった時、ある出版社が原稿を紛失してしまった。中村は「怒ったら原稿が見付かるわけでもないでしょう」と怒りもせず、翌日から再び最初から書き直して8年かけて完結させ、別の出版社(東京書籍)から全3巻で刊行[6]。完成版は4万5000項目の大辞典であり、改訂版である『広説佛教語大辞典』では更に8000項目が追加され、没後全4巻が刊行がされた。校正や索引作成に協力した者がいるとは言え、基本的に1人で執筆した文献としては膨大なものである。

中村が「心」をどのように捉えていたかについて、朝日新聞社刊『脳とこころをさぐる』(1990年8月20日発行)に詳しい。同書には専門書では発見できない中村の「人の『心』について」及び「21世紀以降の人類社会のあるべき大前提」についての発言が掲載されている。

なお日本以外にも、国際的な仏教学者の権威としてアメリカヨーロッパなど各地で講義・講演した。音声録音が多数残されている。NHKこころの時代』など放送番組にも度々出演した。

著作[編集]

翻訳[編集]

著書(主に現行版)[編集]

辞典[編集]

  • 『広説佛教語大辞典』(東京書籍[7]2001年、新版2010年)
  • 『新・仏教辞典』(監修)(誠信書房 第三版 2006年)
  • 『岩波・仏教辞典』(編集の一人)(岩波書店、1989年、第二版2002年)

『中村元選集』(春秋社、1988年〈第1巻〉~1999年〈別巻4〉)[編集]

  • 第1巻 『インド人の思惟方法 東洋人の思惟方法 I
  • 第2巻 『シナ人の思惟方法 東洋人の思惟方法 II
  • 第3巻 『日本人の思惟方法 東洋人の思惟方法 III
  • 第4巻 『チベット人・韓国人の思惟方法 東洋人の思惟方法 IV
  • 第5巻 『インド史 I』
  • 第6巻 『インド史 II』
  • 第7巻 『インド史 III』
  • 第8巻 『ヴェーダの思想』
  • 第9巻 『ウパニシャッドの思想』
  • 第10巻 『思想の自由とジャイナ教
  • 第11巻 『ゴータマ・ブッダ I 原始仏教 I
  • 第12巻 『ゴータマ・ブッダ II 原始仏教 II
  • 第13巻 『仏弟子の生涯 原始仏教 III
  • 第14巻 『原始仏教の成立 原始仏教 IV
  • 第15巻 『原始仏教の思想 I 原始仏教 V
  • 第16巻 『原始仏教の思想 II 原始仏教 VI
  • 第17巻 『原始仏教の生活倫理 原始仏教 VII
  • 第18巻 『原始仏教の社会思想 原始仏教 VIII
  • 第19巻 『インドと西洋の思想交流』
  • 第20巻 『原始仏教から大乗仏教へ 大乗仏教 I
  • 第21巻 『大乗仏教の思想 大乗仏教 II
  • 第22巻 『空の論理 大乗仏教 III
  • 第23巻 『仏教美術に生きる理想 大乗仏教 IV
  • 第24巻 『ヨーガサーンキヤの思想 インド六派哲学 I
  • 第25巻 『ニヤーヤとヴァイシェーシカの思想 インド六派哲学 II
  • 第26巻 『ミーマーンサーと文法学の思想 インド六派哲学 III
  • 第27巻 『ヴェーダーンタ思想の展開 インド六派哲学 IV
  • 第28巻 『インドの哲学体系 I 『全哲学綱要』訳註 I
  • 第29巻 『インドの哲学体系 II 『全哲学綱要』訳註 II
  • 第30巻 『ヒンドゥー教叙事詩
  • 第31巻 『近代インドの思想』
  • 第32巻 『現代インドの思想』
  • 別巻1 『古代思想 世界思想史 I
  • 別巻2 『普遍思想 世界思想史 II
  • 別巻3 『中世思想 世界思想史 III
  • 別巻4 『近代思想 世界思想史 IV
  • 別巻5 『東西文化の交流 日本の思想 I
  • 別巻6 『聖徳太子 日本の思想 II
  • 別巻7 『近世日本の批判的精神 日本の思想 III
  • 別巻8 『日本宗教の近代性 日本の思想 IV

CD・カセット[編集]

  • 中村元講演選集 『ゴータマ・ブッダの心を語る カセット全12巻』(アートデイズ
    • 『ゴータマ・ブッダの心を語る CD版』(アートデイズ(全11巻) 2010年、新版(上下)、2015年)
  • ブッダの言葉』『ブッダの生涯』(新潮社、新潮CD 2007年/新潮カセット 1992年)

論文[編集]

評伝・伝記[編集]

  • 植木雅俊『仏教学者 中村元 ――求道のことばと思想』、角川学芸出版〈角川選書〉、2014年7月
  • 中村元記念館編『東洋思想の巨星 「中村元物語」――世界平和を願った慈しみの思想家』、同館、2016年9月
  • 『道の手帖 中村元 仏教の教え 人生の知恵』(河出書房新社、2005年9月、新装版2012年9月)。門下生・関係者の紹介を収録

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 中村・2005年 著者紹介
  2. ^ 博士論文書誌データベースによる
  3. ^ 『比較思想論』(岩波全書)と、東京書籍刊で『比較思想事典』(監修)、『比較思想の軌跡』がある。
  4. ^ 『東方学回想 Ⅷ 学問の思い出〈3〉』(刀水書房、2000年)に収録(年譜・書誌入りで177~208頁)。
  5. ^ 植木[2014:31]
  6. ^ 1999年10月11日の朝日新聞および日経新聞の追悼記事
  7. ^ 東京書籍で編著『仏教語源散策』(三部作)がある。角川ソフィア文庫で新版再刊

参考文献[編集]

  • 中村元『龍樹講談社学術文庫、2005年7月、ISBN 4-06-159548-2
  • 植木雅俊『仏教学者 中村元――求道のことばと思想』(角川選書、2014年)。中村の生涯と思想については、数々のエピソードを交えてつづられた評伝。著者は東方学院で最晩年の10年近く中村の講義を受講した門下生。読売新聞の書評欄(2014年9月7日付)で「書かれるべき人が、書くべき人によって書かれた」と評した(評者は若松英輔)。

外部リンク[編集]