ホンダ・ドマーニ
ドマーニ(DOMANI)は、本田技研工業が生産・販売していたセダン型の小型乗用車である。
概要[編集]
コンチェルトの後継として1992年に発売され、シビックフェリオとプラットフォームを共用していた。販売はクリオ店で、いすゞ自動車へもジェミニ(4代目および5代目)としてOEM供給されていた。
初代 MA4/5/6/7型(1992-1997年)[編集]
ホンダ・ドマーニ(初代) MA4/5/6/7型 | |
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![]() 前期型 Vi フロント | |
![]() リア | |
![]() 後期型 Vi-Eフォンテーヌ フロント | |
概要 | |
製造国 |
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販売期間 | 1992年10月 - 1997年1月[1] |
ボディ | |
乗車定員 | 5人 |
ボディタイプ | 4ドア セダン[2] |
駆動方式 | FF/4WD |
パワートレイン | |
エンジン |
D15B型:1.5L SOHC(94PS) ZC型:1.6L SOHC(130PS/120PS) B18B型:1.8L DOHC(140PS) |
変速機 | 4速AT/5速MT[2] |
サスペンション | |
サス前 | ダブルウィッシュボーン[2] |
サス後 | ダブルウィッシュボーン[2] |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,620mm[2] |
全長 | 4,415mm[2] |
全幅 | 1,695mm[2] |
全高 | 1,390 - 1,410mm |
車両重量 | 1,030 - 1,140kg |
その他 | |
姉妹車/OEM |
いすゞ・ジェミニ(4代目) ホンダ・シビックフェリオ(初代) |
販売終了前月までの新車登録台数の累計 | 6万4,047台[1] |
系譜 | |
先代 | ホンダ・コンチェルト |
初代はコンチェルトの後継モデルとして新たに投入されたFFコンパクトセダンである[1]。
コンチェルトはシビックベースの高級コンパクトセダンだったが、ドマーニも同様にシビックフェリオをベースに上級路線を狙った国内専用モデルとして誕生した[1]。
ホイールベースはプラットフォームを共用するシビックフェリオと同じ2,620mmで、ボディサイズはわずかながら拡大されており、エクステリアは「スポーツシビック」の通称が与えられたシビックフェリオに対して、落ち着きのある3ボックスシルエットとなった[1]。
インテリアはオリジナルデザインとなり、疲れにくさを追求した新開発ソフトフィットシートのほか、インパネはツートンカラーが採用され、「Si-G」「Si」「Vi」の上位グレードは木目調パネルを採用するなど、上質感が追求されている[1]。
登場時のエンジンはコンパクトクラスとしてはやや大きめの排気量である1,600㏄および1,800㏄を搭載し、1,500ccを中心としたシビックフェリオに比べて、上級志向を印象付けるラインナップだったが、後に実施されたマイナーチェンジ時に1,500ccのエンジン搭載グレードも追加された。
安全面では、同クラス初の運転席SRSエアバッグシステムを全車に標準装備したほか、助手席SRSエアバッグシステムやTCS(トラクション・コントロール・システム)、4輪ABSをメーカーでオプション設定し、フルオートエアコンやオーディオシステム[3]、ボディ同色電動リモコンドアミラー[4]も標準装備されるなど、装備面でもクラスを越えた充実ぶりだった[1]。
コンパクトセダンでありながら上級路線を狙い、当時のユーザーへ向けて新たなファミリーセダン像を提示したモデルだったと言えるが、スポーティなシビックフェリオに対してデザインやキャラクターが地味だったこともあり、存在感を示せないままフルモデルチェンジを迎えた[1]。
1995年から2001年まで生産・販売されていた欧州、英国仕様シビック5ドアハッチバックおよびステーションワゴン(エアロデッキ)は、バンパーを除いた前半部の外装および内装がドマーニと共通のデザインであるが、これらは、当時提携関係にあった英国オースチン・ローバー・グループ(ARG)との共同開発であり、欧州仕様のシビック5ドアをベースとして作られたローバー・400シリーズとは姉妹関係にある。
機構[編集]
登場時のエンジンラインナップは、すべてPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)を採用した直列4気筒で、上級の「Si-G」「Si」グレードには1,800㏄DOHCが、中間グレードの「Vi」には1,600ccSOHC VTECエンジンが搭載された[2]。べーシックグレードの「Ri」とその4WD仕様である「Ri-F」は、ハイパー16バルブと呼ばれるスタンダードな1,600㏄SOHCエンジンとなる[2]。
トランスミッションは5速MTと4速ATを用意したが、1,800cc車のATには、変速プログラムにファジー理論を導入した電子制御タイプの「プロスマテック(タイプII)」を採用していた[2]。
前後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションは、シビックと同様に前後のバネレートを下げ、フロントサスのストロークを伸ばすとともに、ダンパーは「HPV(ホンダ・プログレッシブ・バルブ)」を持つ高圧ガス封入タイプとし、減衰容量が大幅にアップし、路面からの衝撃をソフトに吸収してフラットなライド感覚を実現した[2]。
ブレーキはフロントがベンチレーテッドディスク式で、リアがリーディング・トレーリング式ドラム[2]。ABS装着車はリアもディスク式ブレーキとなる[2]。
年表[編集]
- 1992年10月30日[5] - 発表。11月4日から発売された。
- 1993年9月 - 小型乗用車(ワンボックス[6]を除く)の自社開発から撤退したいすゞ自動車にジェミニとしてOEM供給が開始され、2代目の生産終了時までの7年間供給が続けられた。
- 1994年
- 1995年10月 - 2度目のマイナーチェンジを実施し、メッキ枠を施したフロントグリルや全面グリーンガラスを採用し、14インチアルミホイールキャップのデザインにも変更を加え、装備の見直しなどによって上質感と快適性の向上を図りつつ、1,600㏄グレードを中心に価格の引き下げを行った[2]。
- 1996年12月[7] - 生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
- 1997年1月 - 2代目と入れ替わる形で販売終了。
2代目 MB3/4/5型(1997-2001年)[編集]
ホンダ・ドマーニ(2代目) MB3/4/5型 | |
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![]() | |
概要 | |
製造国 |
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販売期間 | 1997年1月 - 2001年6月[8] |
ボディ | |
乗車定員 | 5人 |
ボディタイプ | 4ドアセダン[9] |
駆動方式 | FF/4WD |
パワートレイン | |
エンジン |
D15B型:1.5L SOHC(105PS) D16A型:1.6L SOHC(120PS) |
変速機 | 4速AT/5速MT/CVT[9] |
サスペンション | |
サス前 | ダブルウィッシュボーン[9] |
サス後 | ダブルウィッシュボーン[9] |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,620mm[9] |
全長 | 4,480mm[9] |
全幅 | 1,695mm[9] |
全高 | 1,390 - 1,405mm |
車両重量 | 1,020 - 1,160kg |
その他 | |
姉妹車/OEM |
いすゞ・ジェミニ(5代目) アキュラ・EL(初代) ホンダ・シビックフェリオ(2代目) ホンダ・インテグラSJ |
販売期間中の新車登録台数の累計 | 2万2268台[10] |
系譜 | |
後継 |
8代目シビック[11] フィットアリア[12] |
2代目も、基本プラットフォームやコンポーネンツをシビックフェリオと共用した小型ベーシックセダンであり、オーソドックスな4ドアセダンボディはジャスト5ナンバーサイズとされた[10]。
開発コンセプトは「ハイグレードCLASSYセダン」で、日本市場のファミリーセダンの姿を求めた結果、「一つ上の気品と基本性能」を獲得することを目指した[10]。
ホンダ独自のVTECエンジンとCVTを組み合わせることで高出力と低燃費を両立し、毎日の走りの中で、使いやすい快適性を実現し、高剛性モノコックボディや高効率クラッシャブル構造、新設計の大型ハロゲンヘッドライトで安全面にも配慮した[10]。
エクステリアはフロントマスクに大型フロントグリルとヘッドランプを採用し、大型クリアランプのリアコンビネーションランプと合わせて2リッタークラス並みの存在感を与えられ、リアビューはトランクからのバンパー、ランプに駆けて抑揚のきいたスタイリングとなり、スポーティさや上品さを演出している[10]。
インテリアもシートやドアライニングの生地に高級ジャガード織りの輸入モケット素材を採用するなど、上級志向の使用が用意され、装備面では全車に運転席&助手席SRSデュアルエアバッグシステムやCDチェンジャーコントロール機能付きカセットデッキオーディオといった上級者用アイテムを装備した[10]。
価格はシビックフェリオより若干高くなったほか、シビックフェリオに設定された1,300㏄エンジン搭載の廉価グレードは用意されていない[10]。
独立モデルだった初代からシビックフェリオの実質的な兄弟車となり、かつてのオリジナリティを失い影が薄いモデルとなってしまった[10]。上級志向を狙った割に差別化が中途半端だったことも災いし、この2代目を以ってシリーズ終了となっている[10]。
機構[編集]
搭載エンジンは、ハイパー16バルブと呼ばれる1,500㏄および1,600㏄の直列4気筒SOHC、低負荷時にリーンバーン(希薄燃焼)運転に切り替わる1,600㏄直列4気筒SOHC VTEC-Eの3機種だった[9]。
中でも1,600ccVTEC-Eは、可変バルブタイミング・リフト機構によって乗用回転域で吸気バルブを1本休止し、燃焼室内に混合気の渦(スワール)を発生させる仕組みを採用し、これによって薄い混合器でもスムーズな燃焼を実現し、パワフルさと低燃費を両立させた[9]。
トランスミッションはグレード別に4速ATの他に5速MTも設定され、1,600㏄VTEC-Eには独自のCVTホンダマルチマチックが専用で組み合わされた[9]。
サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式で、4WDの「16X」のみ、3チャンネルデジタル制御ABSを標準装備とし、他の全グレードに6万円でオプション設定した[9]。
年表[編集]
- 1997年
- 1998年2月13日[14] - マイナーチェンジを実施し、ABSを全車標準装備化し、同時に排出ガスを従来規制値の10分の1レベルまで低減したLEV(ロー・エミッション・ビークル)の「16LEV」グレードを追加[9]。
- 1999年
- 2000年
- 2001年6月 - 在庫対応分が完売し販売終了。これにより、クリオ店では2002年にフィットアリアが発売されるまで小型セダンの取り扱いがなくなる。2006年2月にホンダ車が全店全車種併売となり、シビックフェリオ後継車である8代目シビックの取り扱いが開始され、4年8か月ぶりにシビック系のセダンがクリオ店で取り扱われることになった。
搭載エンジン[編集]
- エンジン種類:水冷直列4気筒横置き
- 弁機構:SOHCベルト駆動 吸気2 排気2 VTEC-E
- 最高出力:94PS/5,500rpm
- 最大トルク:13.4kgf·m/4,500rpm
- 総排気量:1,493cc
- 内径×行程:74.0mm × 84.5mm
- 圧縮比:9.3
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
- 使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
- 燃料タンク容量:45L
- エンジン種類:水冷直列4気筒横置き
- 弁機構:SOHCベルト駆動 吸気2 排気2
- 最高出力:120PS/6,300rpm
- 最大トルク:14.5kgf·m/3,000rpm
- 総排気量:1,590cc
- 内径×行程:75.0mm × 90.0mm
- 圧縮比:9.1
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
- 使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
- 燃料タンク容量:初代D15B型を参照
- ホンダ・ZC型(VTEC仕様)
- エンジン種類:水冷直列4気筒横置き
- 弁機構:SOHCベルト駆動 吸気2 排気2 VTEC
- 最高出力:130PS/6,600rpm
- 最大トルク:14.8kgf·m/5,200rpm
- 総排気量:1,590cc
- 内径×行程:75.0mm × 90.0mm
- 圧縮比:9.2
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
- 使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
- 燃料タンク容量:初代D15B型を参照
- ホンダ・D15B型
- エンジン種類:水冷直列4気筒横置き
- 弁機構:SOHCベルト駆動 吸気2 排気2
- 最高出力:105PS/6,400rpm
- 最大トルク:13.6kgf·m/4,500rpm
- 総排気量:1,493cc
- 内径×行程:74.0mm × 84.5mm
- 圧縮比:9.4
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
- 使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
- 燃料タンク容量:45L
- ホンダ・D16A型
- エンジン種類:水冷直列4気筒横置き
- 弁機構:SOHCベルト駆動 吸気2 排気2
- 最高出力:120PS/6,400rpm
- 最大トルク:14.7kgf·m/5,000rpm
- 総排気量:1,590cc
- 内径×行程:75.0mm × 90.0mm
- 圧縮比:9.4
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
- 使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
- 燃料タンク容量:2代目D15B型を参照 / 47L(4WD)
- ホンダ・D16A型(VTEC-E仕様)
- エンジン種類:水冷直列4気筒横置き
- 弁機構:SOHCベルト駆動 吸気2 排気2 VTEC-E
- 最高出力:120PS/6,500rpm
- 最大トルク:14.7kgf·m/5,000rpm
- 総排気量:1,590cc
- 内径×行程:75.0mm × 90.0mm
- 圧縮比:9.4
- 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
- 使用燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
- 燃料タンク容量:2代目D15B型を参照
車名の由来[編集]
- イタリア語で明日、未来を意味する。
脚注[編集]
- ^ a b c d e f g h デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第58号9ページより。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第58号10ページより。
- ^ 1994年に追加されたVi-Eフォンテーヌはオーディオレス仕様であったが、1995年10月のマイナーチェンジ時に標準装備された。
- ^ 上位グレードではボディ同色電動格納式リモコンドアミラーが標準装備されていたが、Vi-Eフォンテーヌ(中期型)のみボディ同色ではなかった。
- ^ “運転席用エアバッグを全車に標準装備した、国内専用の新型ファミリーセダン「ドマーニ」を発売”. 本田技研工業株式会社 (1992年10月30日). 2023年7月3日閲覧。
- ^ ワンボックスに該当する車種はファーゴであり、同車も5ナンバー登録仕様があることから、小型乗用車として扱われていた。しかし、ファーゴも1995年秋に日産自動車からキャラバンのOEMモデルに変更された。
- ^ “ドマーニ(ホンダ)1992年11月~1996年12月生産モデルのカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月23日). 2020年1月23日閲覧。
- ^ “ドマーニ(1997年1月~2001年6月)”. トヨタ自動車株式会社 (2020年1月16日). 2020年1月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第49号12ページより。
- ^ a b c d e f g h i デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第49号11ページより。
- ^ 7代目シビック、3代目シビックフェリオはクリオ店で販売されなかった。約5年5か月の空白期間あり。
- ^ インテグラSJと統合。約1年半の空白期間あり。
- ^ “小型セダン「ドマーニ」をフルモデルチェンジ”. 本田技研工業株式会社 (1997年1月30日). 2023年7月3日閲覧。
- ^ “ガソリンエンジン低公害車「LEV」を追加するなどドマーニをマイナーモデルチェンジ”. 本田技研工業株式会社 (1998年2月13日). 2023年7月2日閲覧。
- ^ “低公害車「HONDA LEV」を拡大 ドマーニ、インテグラSJの適応タイプを増す”. 本田技研工業株式会社 (1999年1月21日). 2023年7月2日閲覧。
- ^ “「シビック」「ドマーニ」「インテグラSJ」のHONDA LEV仕様を平成12年排出ガス規制に適合させるとともに、特別仕様車を設定し発売”. 本田技研工業株式会社 (1999年7月30日). 2023年7月3日閲覧。
- ^ “「シビック フェリオ」、「ドマーニ」、「インテグラ4ドア」にお買い得な特別仕様車を発売”. 本田技研工業株式会社 (2000年4月13日). 2023年7月3日閲覧。
- ^ “ホンダ ドマーニ 1997年式モデルの価格・カタログ情報” (2021年10月23日). 2021年10月23日閲覧。
- ^ “いすゞ ジェミニ 1997年式モデルの価格・カタログ情報” (2021年10月23日). 2021年10月23日閲覧。
関連項目[編集]
- 本田技研工業
- ホンダ・コンチェルト - 先代車
- ホンダ・シビックフェリオ - 初代、2代目のベース車(プリモ店にて販売)
- ホンダ・インテグラSJ - 2代目の姉妹車(ベルノ店にて販売)
- アキュラ・EL - 2代目の姉妹車
- いすゞ・ジェミニ - 初代、2代目のOEM供給車。OEM供給開始までは自社生産されていた。
- ローバー・400
外部リンク[編集]
- Honda|今まで販売したクルマ|ドマーニ
- ホンダ・FACT BOOK - 初代ドマーニ
- ホンダ・FACT BOOK - 2代目ドマーニ
- Honda | 四輪製品アーカイブ「コンチェルト / ドマーニ」