HF120 (エンジン)

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HF120

HF120HF118としても知られる)は小型のターボファンエンジンで、GE・ホンダ・エアロ・エンジン(以下、GE・ホンダ)によって軽量ビジネスジェット機市場向けに開発された。GE・ホンダは200基以上の販売を見込む。

概要[編集]

ホンダは航空機事業の参入を目指して、当初1999年より小型クラスに属するターボファンエンジン「HF118」の自社開発に着手していた。しかしホンダは航空機エンジン分野には初参入であり、HF118は実績不足のため機体メーカーには採用されなかった。また、FAAの形式認証をホンダ単独で取得することは難しいという課題を抱えていた。しかし、大型ジェットエンジンの技術とFAA形式認証取得のノウハウを持ち、かつ小型ジェット事業に関心を持っていたゼネラル・エレクトリックがHF118に興味を示し、その結果ホンダとの共同事業化が成功、合弁会社としてGE・ホンダが設立された。その後、ホンダとGEが共同で作り上げた最初のジェットエンジンが、HF120 ターボファンエンジンである。

歴史[編集]

  • 1962年にガスタービン研究研究室が発足した[1]
  • 1971年にガスタービン搭載車を試作、その後ガスタービンの開発は一時中断する。
  • 1986年に和光基礎技術研究センター設立、航空機用小型ガスタービンエンジンの研究が再開される[1]。同年4月に耐熱性の高いセラミックを燃焼器とタービンに採用した1Xの開発に着手[2]
  • 1987年8月に1X完成、二重反転式ターボプロップの2.5Xの開発に着手
  • 1989年5月に2.5Xが完成、アフトファン式の3.5Xの開発に着手
  • 1991年に従来の二重反転式ターボプロップから通常のターボファンに路線変更[3]
  • 1992年5月に3.5Xが完成、同月にHFX-01の開発に着手[1]
  • 1995年にアメリカのモハーヴェ砂漠で飛行試験するが、再点火せずに失敗[3]
  • 1998年4月にはHF118-2の開発に着手
  • 2000年6月にHFX-01が完成[2]
  • 2002年6月にHF118-2の初の飛行試験[2]
  • 2003年12月にHF118-2を搭載したホンダジェットが初飛行に成功[3]
  • 2004年7月に航空機エンジンR&Dセンタが設立され、HF118も完成し、それを原型としてGEと共同でHF120の開発に着手[1]
  • 2013年12月13日、GE・ホンダは、HF120が米国連邦航空局(FAA)から連邦航空規則 Part33が定める型式認定を取得し、量産に向けたステージに入ったと発表[4][5][6]
  • 2014年5月19日、GE・ホンダが、HF120の出荷開始を発表[7]
  • 2015年3月、FAAから製造証明を取得[8]。FAAがジェットエンジンに対し製造証明を授与するのは23年ぶりとなる[8]
  • 2015年5月18日、HF120の型式認定取得を欧州航空安全機関(EASA)に届け出たと発表した[9]
  • 2016年05月23日、4月20日にEASAから型式証明を取得したことを発表した[10]
  • 2017年04月19日、文部科学省から「科学技術賞開発部門」を受賞[11]

設計[編集]

幅の広い後退角のあるファンを備え、低圧圧縮機は二段軸流式圧縮機、高圧圧縮機は遠心式圧縮機を採用している。燃焼室は反転式、タービンは低圧2段、高圧1段である。高圧タービンには単結晶耐熱合金が使用される[12]。同水準の推力を発生する他社のエンジンに比べて環境に配慮した設計で、小型軽量、低燃費、高耐久性、低騒音、低エミッションである[9][13]。定格推力は2,095 lbf (9.32 kN)、開発開始の2006年時点では離陸推力2,050 lbf (9.12 kN)の計画で、HondaJetにおいては2,050 lbf (9.12 kN)に調整されている[14][15]。原型機のHF118はほぼ同じサイズであったが推力は1,670lbsと小さかった。HF118から重量低減・燃費改善・推力向上を図ったことから完成は2009年までずれ込んだ[9]。推力については2,400 lbf (10.7 kN)まで強化する研究が行われている[16]

サポート[編集]

HF120の修理・オーバーホール拠点(MRO拠点)としては米国ノースカロライナ州バーリントンにあるホンダ エアロが選定されている。またGEホンダはメーカー保証期間・保証範囲を超えた定期点検・定期交換や故障時の修理・交換を保証する「エンジンメンテナンスケア」(EMC)プログラムをGEホンダ認定サービス拠点を通して提供している。プログラムには、顧客に包括的な保守内容を提供する「EMC2」と、主に部品を提供する「EMC」の2つのコースが設定されている[17]

搭載機[編集]

2017年現在HondaJetに搭載されている。他にはスペクトラム S-40 フリーダムに搭載する計画があったが、開発は中断している。

2014年10月21日にはシエラ・インダストリーズと共同でサイテーション525の中古機体のエンジンをHF120に載せ換えて機体の性能改善と価値向上を図る「サファイア・プログラム」を発表したが[17]、当のシエラが2015年11月にイノーバ・エアロスペースに買収された影響で[18]、この話は白紙となった[19]

仕様[編集]

ホンダジェットに搭載されたHF120

一般的特性

構成要素

性能


関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d ホンダ航空機エンジン開発基地を初公開!”. webcartop.jp (2014年12月23日). 2017年2月12日閲覧。
  2. ^ a b c ホンダ、Honda Jet用エンジン「HF120」試験設備など公開”. webcartop.jp (2014年12月23日). 2017年2月12日閲覧。
  3. ^ a b c 「宗一郎の夢」 ホンダジェットの開発現場に密着” (2015年4月24日). 2017年2月12日閲覧。
  4. ^ ホンダ公式サイト>ニュースリリース>企業関連ニュース>「GE Honda、ターボファンエンジンHF120の型式認定を取得」
  5. ^ “ホンダ、米GEとの折半出資子会社がターボファンエンジン「HF120」の型式認定を取得”. 日本経済新聞. (2013年12月16日). http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=351529&lindID=4 2013年12月19日閲覧。 
  6. ^ “ホンダジェットのエンジン、FAAから型式証明取得”. aviation wire. (2013年12月16日). http://www.aviationwire.jp/archives/29953 2013年12月19日閲覧。 
  7. ^ ホンダ公式サイトニュースリリース>企業関連ニュース>「GE Honda、小型ターボファンエンジンHF120の出荷開始とメンテナンスサービス施設の選定を発表」
  8. ^ a b “ホンダジェットのエンジンが型式証明を取得!いよいよ引き渡し近づく”. 日刊工業新聞. (2015年5月21日). https://newswitch.jp/p/699 2015年10月15日閲覧。 
  9. ^ a b c d ホンダジェットのエンジン、EASAの型式認定取得へ
  10. ^ GE Honda、小型ジェットエンジン「HF120」の欧州における型式認定を取得
  11. ^ ホンダ公式サイト - 「平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門」を受賞
  12. ^ ホンダジェット、[HF120エンジンの型式証明を取得]
  13. ^ GE Honda Aero Engines Company Profile Flight International
  14. ^ HF120 Environmental Performance GE Honda website (Web Archive)
  15. ^ HondaJet スペック
  16. ^ EBACE: GE Honda studies single-engine, more thrust for HF120
  17. ^ a b GEホンダ、航空機用ターボファンエンジン「HF120」のサービス体制を米国などで構築
  18. ^ INNOVA AEROSPACE BUYS SIERRA INDUSTRIES AND SABRELINER - AOPA・2015年11月19日
  19. ^ 深層断面/ホンダジェット正念場、生産計画遅れ・エンジン受注白紙 - 日刊工業新聞・2016年11月16日

外部リンク[編集]