航空用エンジン

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航空用エンジン (こうくうようエンジン、英語:Aircraft engine)または航空エンジンは、航空機に搭載され、航空機の飛行に必要な推力(推進力)を生み出すエンジンである。補助動力装置ラムエア・タービンなど電源や油圧を確保するエンジンは含まれない。

現在使われている航空機用エンジンは全て内燃機関であるが、研究用又はデモンストレーション用に電動機などを使ったものが存在する(後述)。

概要[編集]

基本構造は自動車船舶に使用されるものと同等であるが、飛行機はエンジンが停止すると墜落するため、革新的な先端技術よりも信頼性が最重要視される。また重量が性能に大きく影響するため、パワーウエイトレシオ推力重量比燃料消費率が重視される。多くの国の航空法では、一定の飛行時間ごとにオーバーホールが必要となることや、エンジンのみを性能の向上した新型と交換することも多いため、メンテナンス性も考慮される。また旅客機では空港周辺への騒音被害を軽減するため静粛性も考慮される。飛行機は中古機の売買が盛んであり、長期にわたって部品が入手できれば資産価値の低下が防がれる。

基本的に離発着は整備スタッフが常駐する定められた場所(飛行場空港)に限られ、出発時間などスケジュールも決められているため、始動や暖気に時間や手間がかかっても問題とされない。また要件が厳しいため高価であるが、コストより安全性が重視されることから容認される。

黎明期には個人や小規模な工房による製作も多かったが、安全性が要求されるようになると技術力を有する大企業が優位となり、現代ではジェットエンジン市場はGE・アビエーションロールス・ロイスプラット・アンド・ホイットニーの三大メーカーがシェアを独占している[1]レシプロエンジンライカミング・エンジンズコンチネンタル・モータースのシェアが大きい。

分類[編集]

作動流体の種類、圧縮方法、推進力を発生させる流体の種類で分類すると次のようになる。

航空用エンジンの分類
エンジンのタイプ エンジン作動流体 圧縮の方法 推進力を発生させる流体
レシプロエンジン 燃料・空気混合気 ピストンの往復運動 空気
ターボジェットエンジン タービンで駆動する圧縮機の回転 燃焼ガス
ターボファンエンジン 空気/燃焼ガス
ターボプロップエンジン 空気+タービン後排気ガス
ターボシャフトエンジン 空気
ラムジェットエンジン 飛行により生じる動圧 燃焼ガス
パルスジェットエンジン 燃焼から生じる圧力と弁の開閉
ロケットエンジン 酸化剤・燃料混合気 燃焼から生じる圧力

タービンで駆動する圧縮機により混合気を圧縮するタイプ(排気タービン過給式ピストンエンジンを除く)のエンジンを、ガスタービンエンジンと総称することもある。

歴史[編集]

レシプロエンジン[編集]

ディーゼルエンジンを搭載したDiamond DA40

ピストン機関を利用したエンジン。基本的には自動車用などと共通し、個人レベルでも製作できることから、動力付き航空機の誕生時から使用されてきた。

第二次世界大戦中に飛躍的に発展、2,000馬力超のエンジンが実用化され、3,500馬力を発揮するエンジンまで出現した[2]。しかし、ジェットエンジンの発達とターボプロップエンジンの小型化に加え、音速を超えると推力が著しく低下するので、プロペラ機は時速750km程度が限界[3] であることから、20世紀後半以降は小型機向けのみが生産されている。このため多数存在したレシプロエンジンのメーカーは廃業や統合が相次ぎ、2017年現在ではライカミング・エンジンズコンチネンタル・モータースがシェアを二分している。ウルトラライトプレーン用としてはロータックスのシェアが大きい。モーターグライダー用としてはSOLO社などが専用の小型エンジンを製造している。

初期にはロータリー式の星形が使われていたが、次第に空冷では星型液冷ではV型が主流となった。少数だがロータリーエンジンを搭載した機体も存在する。

燃料は航空用ガソリンを使用するガソリンエンジンが主流だが、より安価なJET-A1を使用する航空用ディーゼルエンジンも存在する。また代替燃料の研究も行われている。

過給器(ターボチャージャースーパーチャージャー)の有無、ガソリンかディーゼル[4] にかかわらず操縦士や整備士の資格は『ピストン』に分類される。なおピストンとなっているがロータリーエンジンも含まれる。

ジェットエンジン[編集]

操縦士や整備士の資格では、圧縮にタービンで駆動する圧縮機の回転を使うもの(ターボジェットエンジンターボファンエンジンターボプロップエンジンターボシャフトエンジン)は『タービン』に分類される。

その他[編集]

現在の航空法では航空機のエンジンはレシプロとタービンのみが想定され、これ以外の動力について法的な区分は明確にされていない。飛行させる際には実験機扱いとなり、試験飛行等の許可で個別に審査される。

ラムジェット[編集]

ラムジェットエンジンはターボジェットに比べ構造が単純で軽量であり超音速での効率が高い利点があるが、静止状態から始動できない(単独で離陸できない)ため補助用や他のエンジンと組み合わせた統合型の実験が行われている。

パルスジェット[編集]

パルスジェットは構造が単純なため量産のハードルが低かったが、性能が高度に影響されやすいなどの問題から実験のみで終了した。

構造が単純で市販レベルの材料でも制作できるため、個人の趣味や原理を学ぶための教材として製作されている。

ロケット[編集]

ロケットエンジンを利用するロケット飛行機は、航空機の黎明期に存在したが、ジェットエンジンに置き換えられた。

離陸時の補助として使うJATO用として一部に使われていた。

原子力[編集]

核エネルギーを利用するものは原子力飛行機と呼ばれ、アメリカとソ連で研究が行われていた。

X-6計画では機内に小型原子炉を搭載し、取り出した熱で原子力ターボジェットエンジン4基を駆動し推進する予定だった。またラムジェットエンジンの熱源に原子力を用いる計画も存在した。

電動機[編集]

プロペラは電動機で回転させることも可能であるため、内燃機関の代わりに電動機を使用する電動航空機の実験が行われている。

モーターグライダーには電動機でプロペラを回す機種が存在する(免許は内燃機関と共通)。超軽量動力機にも電動機を搭載することがある。

太陽電池を使用した電動機はソーラープレーンと呼ばれる。

人間[編集]

パイロットが動力となりプロペラを回転させる航空機は人力飛行機と呼ばれ、記録挑戦のための機体が多数製作されている。

搭載パターン[編集]

航空機に取り付けられたエンジンは発動機の「発(はつ)」で数え、1基は単発、2基は双発、3基以上は多発と呼ばれる。多発では左右でバランスが取れるように配置する。偶数では左右対称に、奇数では左右対称に加え胴体に1基を配置する。

プロペラ機の場合はエンジンでなくプロペラの位置で分類され、前方に配置する牽引式と後方に配置する推進式に別れる。ジェットエンジンの場合は、主翼、後部に搭載するリアエンジン、機体上部(シーラス Vision SF50など)、となる。

モーターグライダーには機体内部にエンジンを搭載し格納したプロペラを機体上部に展開する、飛行機のように機首に搭載、後部に搭載するなどの形式がある。

かつては双発機の場合、エンジンが停止した場合に備え最寄の空港から120分以上離れたところを飛ぶことが出来ず、大洋を最短経路で飛ぶことは許されなかった(ETOPS 120)。そのため、3発機は双発機ではできない長距離飛行が可能でありつつも、4発機よりエンジンを1つ少ないため低コストでなため、大型機市場でそれなりの地位を占めていた。しかし、3発機ではDC-10のように垂直尾翼の根元付近にエンジンを設けると位置が高いため整備が難しくなり、L-1011のようにS字ダクトにすると吸気効率が犠牲となる。最寄の空港から180分 (ETOPS 180) や207分 (ETOPS 207) 離れた地点を飛ぶことが可能ないエンジンが登場すると、旅客機では双発が主流となり、3発機は大きく数を減らした。

出典[編集]

  1. ^ 飛行機用エンジンの3大メーカー☆ - ANA
  2. ^ 航空情報編集部編『世界航空機年鑑1959年版』酣燈社1959年刊。
  3. ^ 木村秀正編『初歩の航空ハンドブック』山海堂1951年刊。
  4. ^ セスナ172型ディーゼル・エンジン搭載機耐空検査に合格 | Alpha Aviation

関連項目[編集]

外部リンク[編集]