プロップファン

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プロップファンは、ターボファンエンジンを改良したもので、軸流式圧縮器と同軸の外側にファンを配置したものである。アドバンストターボプロップAdvanced Turbo Prop、ATP)、アンダクテッドファンUnducted Fan、UDF)あるいは超高バイパス(Ultra-High Bypass、UHB)エンジンとも呼ばれる。ターボファンと同等の飛行速度でターボプロップ並の燃料消費率を得ることを主眼に置いて設計されている。

ギヤードターボファンエンジンや超高バイパスターボファンエンジン(UHB)との違いは、高効率にしたプロペラを用いるかエンジン先端部(ダクト)に内蔵されたファンを用いるかによる。プロップファンの場合、ターボプロップ以外に通常のプロペラ機にも応用が利くので、旅客機などとは別にその進歩が期待されるところである。

ターボプロップ式に適した飛行速度域は450mph(700 km/h)以下である。それ以上の飛行速度を求めた場合、プロペラ回転速度と飛行速度を合成したプロペラ先端の対気速度が音速を超えてしまい、衝撃波が発生して損失が増加する。このため、プロペラ先端の対気速度を音速未満で運用することがプロペラ推進の限界であると考えられて来た。

後退角プロペラ[編集]

後退角プロペラ

プロペラに後退角をつけ、ブレード数を増やした小径のプロペラを低回転数で回転させることにより、高速飛行時でも推進効率が落ちにくくすることができる。

飛行機の主翼に後退角を持たせることによって衝撃波の発生を遅らせる方法は既に第二次世界大戦時にドイツの研究者たちによって見出されていた。

若干の例外はあるにせよ、450mph以上の速度で飛行する飛行機はほとんどが主翼に後退角を有している。1970年代にNASAはプロペラにも同様の後退角を持たせる研究を始めた。従来の金属材料では後退角をつけた場合に強度を確保することが難しかったが、複合材を採用することで可能になった。

導入メリット / デメリットと需要[編集]

An-70に搭載されたプログレスD27 プロップファン

プロップファンを導入する事で従来のターボファンに比べて燃料消費率が35 %改善される事が見込まれ、また、その需要もあった。DC-9のエンジンをプロップファンに換装したところ、燃料消費率は30 %改善された。しかし、一方でプロップファンは騒音が大きく、FAAのステージIIIからIVの騒音だった。

ゼネラルエレクトリック[編集]

ゼネラルエレクトリックは、NASAでの開発とは別に独自にプッシャー式のプロップファンであるGE-36アンダクテッドファン (UnDucted Fan, UDF) の開発を進めた。GEのUDFは直結式であり、減速ギアボックスをなくして7段構成の低圧タービンから出力を取り出していた。2段あるプロペラの内、タービンからの出力軸にはひとつのプロペラだけが接続されており他方のプロペラは回転軸には接続されておらず空回りする構造だった。パワータービンは14段構成であった。

ボーイング[編集]

ボーイング社は日本との共同開発を予定していたボーイング7J7へのUDFの搭載を検討していた。

マクドネル・ダグラス[編集]

マクドネル・ダグラスMD-94Xへの搭載を検討し、社有のMD80の左側にJT8Dの代わりにGE-36を搭載してカリフォルニア州モハーヴェにて試験を行った。やがて設計に起因する振動、騒音、空力特性が明らかになった。1988年まで試験は続けられ、燃費はターボファン搭載のMD80に比べ30%優れ、騒音についてもFAAステージIIIを満足しており室内の騒音、振動も抑えられることが分かった。しかし、ジェット燃料の価格低下により燃費改善への動機が薄れたことから、マクドネル・ダグラス社は計画を打ち切った。

アリソン / プラット&ホイットニー共同[編集]

1980年代、アリソンプラット&ホイットニーと共同で578-DXプロップファンを開発した。578-DXはGE-36 UDFとは異なり通常の減速ギアボックスを低圧タービンとプロップファンの間に備えていた。578-DXはMD-80に搭載して試験が行われ良好な成績を示したものの、低燃費の利点を帳消しにするほど客室内の騒音が酷かった。

ソビエト連邦[編集]

プログレス D-27プロップファンは旧ソビエト連邦で開発された。同軸反転式のプロップファンをエンジンの前方に配置して牽引する形式である。このエンジンはアントノフが開発したAn-70輸送機に4基懸垂式に装荷されている。An-70はウクライナ空軍からの発注を受け生産が開始されている。

ロールスロイス[編集]

ロールスロイス RB3011(以前はRB2011)はロールス・ロイス・ホールディングスによって開発された試作のプロップファンエンジンである。この設計は"オープンローター"エンジンとしても知られる。


設計と開発[編集]

RB3011は180-300席の航空機(例えばボーイング 737エアバス A320)を想定して開発された。ロールスロイスplcは1995年にアリソン社を買収して1980年代に開発された578-DXを調査した。

エンジンはエンジンナセルの外側でプロペラが回転する同軸反転式で、前後どちらかに配置される。プロペラの配置が前方、後方どちらの機種もロールスロイスの15年-50年に渡る長期的展望において150席級旅客機への採用が検討されている。入手可能で成熟した技術の組み合わせにより、通常型式のエンジンと比較して燃費が15-50%削減できると想定されている[1]

オープンローターの設計においては、エンジン排気口からの騒音が含まれるため通常のターボファンエンジンよりも騒音が大きくなることが知られている。前方のプロペラは、前方のプロペラ端部からの翼端渦流の問題を避けるため後部のプロペラよりも直径が大きくなっている。出力はエンジン駆動軸から遊星歯車を介してプロペラに伝達される。この歯車群の発熱は非常に大きい。

エンジンはベッドフォードシャーベッドフォードの航空研究機構で試験中である。風洞実験はオランダのマルキネス英語版のDNWで実施された[2]

従来のターボファンよりも最大30%の燃費低減が期待されている。認証取得は2017年から2018年で、市場に出るのは2020年が予定されている。

本田技術研究所[編集]

かつて1987~1989年に本田技術研究所内航空機エンジンR&Dセンターにて「2.5X」と呼ばれたエンジンが開発された[3]

近況[編集]

1980年代にプロップファンの開発は進み、一時は実用化間近に思われた。しかし、開放型のプロペラの翼端で発生する渦流に起因する振動と騒音が燃費向上による利点を相殺するほどであり、解決には時間がかかると見られた。また、振動の為、機体の構造を強化する必要が生じ、重量が増加する事も懸念される。一方、高バイパス比のターボファンエンジンの登場(開発したのは同じメーカー)によって徐々に燃費面でのメリットが薄れていった。そのため、アントノフ An-70等、一部の輸送機に採用されるのみである。その後、石油価格が上昇するとともに、再び注目され、再び各社で開発が進みつつある[4][5][6]

アンダクテッドファン[編集]

NASA/GEが開発中のアンダクテッドファン

NASAとGEアビエーションが新型のプロップファンを開発中であり[7]、2009年初頭に風洞実験を開始する予定である。

主なプロップファン[編集]

唯一運用されているプロップファン。
1986年より開発が開始されたが、2009年に資金不足により開発が中止された。プロップファンをエンジンの前方に配置して牽引する形式であるが、ダクトがついている点が特徴的である。
ボーイング7J7マクドネル・ダグラスMD-94Xへの採用が検討されていた。
1980年代に開発された。
180-300席級の旅客機向けに1995年にアリソンを買収したロールス・ロイス・ホールディングスが上記の578-DXを調査して開発が検討された。ギヤードターボファンエンジン同様に遊星歯車機構で減速する。同規模のターボファンエンジンよりも最大30%燃料消費を減らす事が期待される。

プロップファン搭載機[編集]

注釈[編集]

  1. ^ Aviation Week & Space Technology/November 24, 2008
  2. ^ Home » DNW Aero
  3. ^ ホンダ、Honda Jet用エンジン「HF120」試験設備など公開
  4. ^ CFM Introduces LEAP-X Turbofan Program; Working in Parallel on Open Rotor Engine
  5. ^ CFM partners renew vows, launch Leap-XCFM reveals next-generation engine plans
  6. ^ CFM International Increases Open-Rotor
  7. ^ A New “Open Rotor” Jet Engine That Could Reduce Fuel Consumption | Efficient engines

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]