カップ麺

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最初のカップ麺メーカーの製品(カップラーメン)

カップ麺(カップめん)とは、乾燥麺や生タイプ麺[1]等の即席麺類のうち、食器として使用できる容器(カップ状の耐熱耐水容器等)に入れ、かやく(具材)を添付したものである。日本で生まれ、世界各地にも消費が広がっている。

規約上の正式名は「即席カップめん」である[1]。内容物がインスタントラーメンのものをカップラーメン蕎麦うどんのものをカップそばカップうどんやきそばのものをカップやきそば(インスタント焼きそば)とも言う。

調理は熱湯を注ぐだけで完了する(生麺を使用する製品については湯切りが必要とされるものもある)。この製品のカップは調理器具であると同時に食器(陳列時にはパッケージとしての役割も果たしている)でもある。海外では電子レンジで加熱調理を行うタイプも多い。

歴史[編集]

日清食品1971年9月18日に発売した「カップヌードル」が最初の製品(事前に行われた試験販売を除く)である。今では主食としても食べられているが、当初は間食としての普及を視野に入れて開発されており、欧米に即席ラーメンのセールスに行った際、ラーメン用のどんぶりが無かったため、紙コップにチキンラーメンを割り入れて湯を注ぎフォークで試食する姿からの発想だったとされている。カップヌードルが、通常の袋麺(約90~100g)よりも麺の容量が少ない(麺重量60~70g)のはその名残りである。1980年代後半までは他のメーカーもこれに追随していたが、1988年エースコックが麺の容量を袋麺と同等の90gとして「大盛サイズ」を謳った「スーパーカップ」シリーズの販売を開始し、これが大ヒットとなってからは大容量サイズ(麺重量85g以上)の商品もカップ麺の主流の一角を担うこととなっていく。後にカップヌードルも「大盛サイズ」を謳うカップ麺を製造する事になった。

あさま山荘事件の際、機動隊員が寒さの中これを食べている姿がテレビでたびたび放映されたため、カップ麺が日本全国に知られて普及したきっかけだったとするのが通説となっている。

容器[編集]

紙を使った容器

容器は通常、発泡スチロールが使われる。発泡スチロールを使うのは、保温性が良く、持ったときに熱くないという理由からである。紙製の容器の場合、容器外側を段ボール状にして、この点を克服している。代表的なものが「サッポロ一番 カップスター[2]である。最近のものはカップを二重構造にするだけで段の無い容器になっている。近年では紙製でも発泡スチロールのように紙に空間を持たせたものも存在する(日清カップヌードル系列に存在する)。紙の容器に比べ発泡スチロールの方が多彩な形状のものを作ることが可能であり初期のものはすべて発泡スチロールだが、日清食品が特許を申請した為に、後発メーカーは主に紙容器のものを作った。

乾燥麺タイプは直接容器に麺が入っているケースが殆どであるが、生タイプ麺はすべてその麺を真空パック包装した上で容器に入れた状態となっている。

発泡スチロール容器に関する問題
1998年に当時の環境庁(現・環境省)より提出されたSPEED'98リスト(「内分泌攪乱化学物質問題への環境庁の対応方針について」)により、高熱の熱湯を注ぐことで発泡スチロール製の容器から環境ホルモン(スチレンダイマー、スチレントリマー)が溶出し、スープや麺と一緒に摂取することで人体への影響があるとマスメディアからの批判を浴び、各メーカーが緊急に紙容器に切り替えるなど大きな問題となった。後に同説はカップ麺業界等により再調査され、2000年に旧通産省・旧環境庁が「内分泌攪乱作用があるとの証拠は見いだせない」「作用を否定する報告が大半」と発表したが、2006年に東京都健康安全研究センターは動物実験により、生物への影響が確認されたと発表した。これに対して、通常の10倍以上を摂取する状況下での結果であり、実際の人体への影響がどの程度かは不明であるとの反論が出された。なお発泡スチロール(ポリスチレン)は前述の通り、環境ホルモンと関連する物質の疑いが2000年11月に晴れたとされ、同リストより除外されている。しかし、2004年には当時流行した健康食品のしそ油(荏胡麻油)が、このスチロール製カップを溶かすとして話題となり、国民生活センターが調査を行った所、このしそ油をカップに入れ、100度の熱湯を注いだ際に一定の溶解が見られたため、消費者に注意を呼びかけている[3]


調理[編集]

インスタントやきそばの調理例

製品の多くは熱湯を注いで3~5分(約1~5分の幅で各種ある)程度で調理が完了する。1980年代前半の一時期、各会社より乾燥麺タイプで調理時間が1分の製品が発売されたが、食べ終わる前に麺が伸びてしまうなどの問題があったため消費者からは不評で、多くは短命に終わり、一部の焼きそばタイプで存続するに留まっている。汁を用いない焼きソバの場合は湯切の作業が必要となる。また生タイプ麺などの製品でも湯切りをし再度お湯を注ぐものもある。しかし生タイプ麺を使用したものは調理時間がやや短めの傾向である。

添え付けのスープや具材はフリーズドライ製法を用い乾燥させたものが主流だが、袋入りのインスタントラーメンと同様、高価格の製品にはスープ・具が別添のものも存在する。それらの製品では袋を取り出し、麺の上に置いてから湯を注ぐなど、製品ごとに様々な違いも見られるため、湯を注ぐ前にパッケージに記載された説明書きなどを読んでおく事が勧められる。中にはレトルト食品の具材が付属していて、その具材を湯煎する事を勧める製品も存在する。なお、カップ麺は2009年6月30日以前に発売された商品はJAS規格によって「標準」と「上級」に分類されていた。麺の重量に対して具材(かやく)が6%以上のものが標準、15%以上のものが上級、カップ焼きそばやスパゲティの場合、4%以上が標準、10%以上が上級となっていたが、2009年7月1日以降より発売されるカップ麺についてはこれらの分類は撤廃(廃止)された[4]

日本では少数であるが、電子レンジ調理専用商品(日清食品「U.F.O.」・どん兵衛「NEXT GENERATION」シリーズ等)や熱湯調理/電子レンジ調理のいずれか選択可能な商品(「カップヌードル マイ・レンジタイム〈旧・カップヌードル レンジスタイル〉」シリーズ)のように電子レンジで調理可能な商品も2000年代以降存在する[5]。それ以外のものは電子レンジ調理不可とパッケージに記載されている。米国など日本国外で販売されているものは"microwavable"(電子レンジ調理可能)と明記されたものが多く存在する。

航空便機内食用に作られたもの(日本航空の「うどんですかい」や全日本空輸の「とびっきりおうどん」など)では、気圧の低い飛行機内で沸かされた低温のお湯でも麺が戻るような特別の製法で作られている。

市場[編集]

日本全国で発売されている一部の商品では、東日本と西日本など地域別毎でそれぞれ味付けを変えているケースもある(「どん兵衛」や「赤いきつねと緑のたぬき」等)。また、地域限定発売の商品もある。

2000年前後からカップラーメンにおいてコンビニエンスストアを中心に地方色を強く出した「ご当地ラーメン」や「青葉」など有名店の味を再現・類似した「ご当店ラーメン」を取り入れるなどバリエーションが拡大し[6]、当時180円以上と区分された高品質・高価格帯の商品群が活性化した[7]

市場占有率は長いこと各社の主力ブランドである「カップヌードル」や「赤いきつね」など初期に登場したナショナルブランド(NB)商品が上位を占めてきたが、2008年に原材料費などの高騰で大手メーカー製品の売価が上がったことで、カップヌードルは値上げ前比-52%と半減した[8]。その影響で、安価で展開している大手スーパーチェーン自社プライベートブランド(PB)商品メーカー各社オープンプライス(OP)商品の種類が急増し、売上を大きく伸ばした[8][9][10]2009年はNB商品にて品質改良や積極的な販促活動が行われたことなどから、PB商品やOP商品への需要の流れが全体に落ち着き、後半にはNB商品への回帰傾向が出てきた[10][11]2010年は前半もNB商品への回帰傾向は続き、各社の主力ブランドは価値訴求を行っていることにより、堅調な需要を満たしている[11]

製品化はラーメンのほか、そばうどんそうめんきしめん焼きそばスパゲッティ冷麺春雨フォーなど麺類全般に亘っている。

カップラーメンは日本国外での生産・販売も行われている。主な生産および消費地は東アジア地域であるが、北米大陸(特にメキシコ)でもヒスパニック系住民を中心に人気がある。日本のメーカーの現地生産も行われている。

保管について[編集]

2008年10月に、日清食品製の「カップヌードル」「CO・OPヌードル」、 グループの明星食品製の「CO・OPカップラーメン」から防虫剤成分のパラジクロロベンゼンが検出され、「カップヌードル」を食べた人が健康被害を起こす騒ぎが発生した。日清食品や警察保健所などで調査の結果、工場などにパラジクロロベンゼンはなく、防虫剤の近くで保管され、成分がカップ麺に移行したものと結論された[12]。それ以降、防虫剤などと一緒に保管しないよう注意書きがなされている。

非常用食糧[編集]

電気・ガス・水道などライフラインが影響を受ける非常事ではお湯の入手が困難な場合が多く、その場合はカップ麺は役に立たない[13]。また、災害直後の火気使用はガス漏れによる火災事故を起こす危険も高く、集団避難生活では火気が使えない事が多いために調理が難しいケースもある。1989年日清食品より、発熱体により水を注ぐだけで調理できるカップ麺スーパーボイルがテスト販売された。

中期以降でも、少なくともインスタントラーメンよりは調理は簡便ではあるが、これの調理に必要な水や燃料・簡易焜炉(カセットガスコンロなど)といった他の備えが必要となる。 日清食品は非常災害用として自社工場や物流倉庫にランニングストックとして常時100万食分のカップめんを在庫しており 過去の大災害時にも随時提供されている

健康面[編集]

カップ麺の多くは塩分脂肪分などを多く含み(特にスープは高塩分、高油分である)、ビタミン繊維質、ミネラルなどが少量しか含まれていないので、栄養が偏った食品であるとされる[要出典]

主な日本のカップ麺メーカー[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 即席めんの表示に関する公正競争規約 (PDF)
  2. ^ サンヨー食品 「サッポロ一番 カップスター」
  3. ^ 発泡ポリスチレン製容器にしそ油又はエゴマ油を加えた際のお湯もれの可能性について - 農林水産省[リンク切れ]
    発泡ポリスチレン製容器にしそ油又はエゴマ油を加えた際のお湯もれの可能性について - 日本即席食品工業協会 2004年2月25日
    発泡ポリスチレン製容器にしそ油又はエゴマ油を加えた際のお湯もれの可能性について - 発泡スチレンシート工業会 ポリスチレンペーパー成型加工工業組合 食品容器成型懇話会 2004年3月3日
  4. ^ 即席めん類の日本農林規格:全部改正平成21年4月9日農林水産省告示第484号 (PDF)
  5. ^ 電子レンジ調理用カップ麺で日本国内向け商品として初めて発売されたのは、日清食品「e-noodle」シリーズ(ソース焼きそば、焼豚しょうゆ味ラーメン、醤油とんこつラーメンの3種類)とされる(日清『e-noodle』はいかが? カップ麺のIT革命 - All About 2001年3月1日)。
  6. ^ 新田太郎 戦後ニッポン「ものづくり」流行史 第8回 インスタントラーメン~戦後生まれの「国民食」(ニッポンスタイル)
    【日本発 アイデアの文化史】インスタントラーメン(下)(2/2ページ) - MSN産経ニュース 2010年5月9日[リンク切れ]
  7. ^ 2002年10月31日 <リニューアル新発売のご案内>「ジェット湯切り」を採用「日清ラ王 しょうゆ / みそ / とんこつ」 - 日清食品ニュースリリース
  8. ^ a b 「値上げ」カップめんに大異変 PB躍進、日清、明星など落ち込み - J-CASTニュース 2008年6月19日
  9. ^ 『値上げ食品の売上高減 日経調査、節約志向で自主企画品を選好』 - 日本経済新聞 2008年6月17日朝刊
  10. ^ a b 即席麺市場はNB復権へハード・ソフト両面強化 技術革新で麺質向上 - Yahoo!オンビジネス・日本食糧新聞 2009年10月14日[リンク切れ]
  11. ^ a b 即席麺市場は品質強化を推進 新たな需要拡大 - Yahoo!オンビジネス・日本食糧新聞 2010年7月28日[リンク切れ]
  12. ^ 「移り香」事案に関する警察・保健所等の調査結果について - 日清食品 2008年11月20日
  13. ^ 乾麺のまま食すことも不可能ではないが、そのままでは塩分や油分が濃いものが多く、緊急時の食料として適していない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]