冒険者カミカゼ -ADVENTURER KAMIKAZE-
冒険者カミカゼ -ADVENTURER KAMIKAZE- | |
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The Kamikaze Adventurer | |
監督 | 鷹森立一 |
脚本 | 内藤誠・桂千穂・中島貞夫 |
製作 | 本田達男・佐藤公彦 |
出演者 |
千葉真一 真田広之 秋吉久美子 |
音楽 | 槌田靖識 |
主題歌 |
フランシス・ゴヤ 「冒険者たちのメロディー」 |
撮影 | 北坂清・小川原信 |
編集 | 市田勇 |
製作会社 | 東映 |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 115分 |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
配給収入 |
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『冒険者カミカゼ -ADVENTURER KAMIKAZE-』(アドベンチャーかみかぜ[注釈 1]、英題:The Kamikaze Adventurer )は、1981年の日本映画。主演:千葉真一、監督:鷹森立一、製作:東映。カラー・ビスタビジョン、上映時間:115分。
解説[編集]
大学が不正に蓄えた億単位の金を強奪後、横取りしようと企む凶悪な犯罪組織と一進一退の駆け引きと争いを繰り広げる[3]、とてつもない冒険に人生の夢を賭ける2人の男と娘の活躍が[4]、陸・海・空とテンポよくスピーディーに展開していく、アクション・青春・冒険を描いた物語である[3][4]。これまでの千葉真一は大概、空手・拳法の達人や探偵・刑事・ヤクザ・暗殺者・スナイパー・剣豪・自衛官・忍者などを演じてきたが、本作では元オリンピック選手ではあるものの、今はショボクレた大学職員でごく普通の市民である主人公に扮した[5]。そのため格闘技は意識的に避けており、乗馬・スキューバダイビング・水上スキー・器械体操と、複葉機・グライダー・ハンググライダー・モーガン・ジープなどを駆使し、スピーディーかつ迫力あるシーンが展開されている[6]。もっともスタントは従来通り取り入れられ、千葉と真田広之は吹き替えなしで演じた。彼らに秋吉久美子が演じるヒロインを加えて、一度人生に挫折した壮年男性・若者・妙齢の美女が再び夢を抱き、ストーリーに冒険・ロマン・ユーモアが盛り込まれ、過去の東映活劇とは異なる仕上がりの稀有な作品となっている[5][6]。
ストーリー[編集]
かつてオリンピック日本代表の器械体操選手で今は東西大学総務部所属の神風大介は、休みをとっては複葉機でひたすら飛んでいた。そんなある日、飛行中に機が不調をきたし、煙を吐きながら墜落していく途上、乗馬をしていたジョッキー志願の娘・金城ケイを驚かせて、落馬させてしまった。大介も傷だらけになるものの、何とか無事に生還。そんな時、大介の彼女・立花みどりから、至急帰るよう電話があった。一方ケイは馬をケガさせて牧場をクビになり、行く宛てもなく彷徨っていたが、偶然にも帰宅する途中の大介と知り合う。大介はケイに迷惑をかけた詫びに後日相談に乗ると約束し、一旦別れた。
東西大学では巨額の裏金で入学させた不祥事が明るみに出て、対象となる学生を次々と退学させ、星野明もその一人であった。卒業者は除籍され、大介も不正入学者であったことから、みどりの電話は大学から一方的な解雇通知であった。大学は不正入学者を退学・除籍にすることで世間の批判をかわそうとし、一方で裏金は大学に蓄財されたままのため、痛くも痒くもない状態であった。明とバンド仲間はそのやり方に立腹し、億単位の入学金を強奪しようと気勢を上げていた。一方、総務部所属だった大介は、大学の現金輸送ルートを知っていたことから、みどりと除籍された後輩の海野九三と共に、入学金強奪の計画を立てていた。ケイは2グループの強奪戦に、ひょんなことから巻き込まれてしまう。不正な金の存在を嗅ぎつけた凶悪な犯罪組織が、横取りしようと有無を言わせず襲撃してきたことから、大介・明・ケイの冒険が始まる。
キャスト[編集]
- 神風大介(東西大学職員・パイロット) - 千葉真一
- 神風の関係者
- 星野の関係者
- 仁科ミチコ(東西大学生・明の仲間) - 矢島由紀
- マリオ水原(東西大学生・明のバンドメンバー) - 和泉一弥(クロコダイル)
- ポール三波(東西大学生・明のバンドメンバー) - 高橋淳一(クロコダイル)
- ジャッキー村田(東西大学生・明のバンドメンバー) - 竹田敏(クロコダイル)
- 東西大学生(明のバンドメンバー) - 五十嵐博明(クロコダイル)
- 東西大学生(明のバンドメンバー) - 丸山普司(クロコダイル)
- 堂島興業
- 堂島有三(社長) - 岡田英次
- 珠美(愛人) - 江月美穂
- 塚田剛(幹部) - 曽根晴美
- 黒木(幹部) - 成瀬正
- 日高(子分・白服) - 新海丈夫
- サブ(子分・死神) - 河西健治
- ゴリラ - スーパー力
- 金沢 - 鳥井敏彦
- 大林 - 高橋利道
- その他
スタッフ[編集]
- 企画: 日下部五朗
- プロデューサー: 本田達男、佐藤公彦(サニー千葉エンタープライズ)
- 脚本: 内藤誠、桂千穂、中島貞夫
- 撮影監督: 北坂清
- 撮影: 小川原信
- 照明: 海地栄
- 録音: 平井清重
- 編集: 市田勇
- 美術: 山下謙爾
- 助監督: 比嘉一郎
- 記録: 梅津泰子
- 装置: 太田正二
- 装飾: 窪田治
- 擬斗: 菅原俊夫(東映剣友会)
- 衣裳: 山崎武
- 美粧結髪: 東和美粧
- 背景: 西村三郎
- 演技事務: 藤原勝
- スチール: 中山健司
- 水中撮影: 舘石昭、望月昭伸(水中造型センター)
- スタント飛行指導: 高橋淳
- 音響効果: 永田稔
- 整音: 荒川輝彦
- 宣伝: 丸岡艦(京都)、茂木俊之、小田和治(以上本社)
- 進行主任: 山本吉應
- テーマ曲: フランシス・ゴヤ 「冒険者たちのメロディー」(ロンドン・レコード)
- 音楽: 槌田靖識
- 音楽プロデューサー: すずきまさかつ
- 協力:
- 東映俳優センター
- サニー千葉エンタープライズ
- ジャパンアクションクラブ (JAC)
- 諏訪市グライダー協会
- ハンググライダー UPスポーツ
- トヨタ自動車
- シーレックス サングラス
- 合同酒精
- ゴールドウイン
- ジャックスポーツ
- 三協商事
- 口葉パラダイス
製作[編集]
プロデューサーの日下部五朗から「好きな映画を作っていい」と言われた千葉真一は[6][7]、フランス映画『冒険者たち』をオマージュし、アメリカ映画『明日に向って撃て!』、『スケアクロウ』のテイストを加えた企画を提出[6]。『冒険者たち』を観るたびに「こんな映画を作れたらなあ…」と思い、若者(アラン・ドロン)と壮年(リノ・ヴァンチュラ)のコンビの一方を演じて映画化したいと長年暖めていた構想だった[6]。愛弟子・真田広之がコンビを組めるまでに成長したのでようやく映画化できると考え、迷うことなく提案して実現に至っている[6]。秋吉久美子は結婚して男児を出産[8]。その直後に復帰したばかりで、日本映画『の・ようなもの』、『さらば愛しき大地』(翌年公開)に続いてのクランクインだった[8]。
クラシック・ギターでフランシス・ゴヤが奏でるテーマ曲は、封切り公開される数年前に千葉真一がヨーロッパの街中で耳にし、ありとあらゆる手立てを使って探し、ようやくオランダで見つけた[6]。鷹森立一も気に入り[6]、もの悲しさがある旋律に映像を組み合わせ[6][9]、ロケ現場の教会からテーマ曲を流しての撮影など[9]、センシティブな演出をしている[5]。ロケーション撮影は長崎県の式見港と沖合いの軍艦島・長野県諏訪市の霧ヶ峰高原などで撮影が行われ、この期間に21歳の誕生日を迎えた真田広之のために、千葉・秋吉・川津祐介ら俳優とスタッフが心のこもった楽しいバースデイ・パーティーを開いて祝った[9]。
興行[編集]
もともとのタイトルは千葉真一、その部下でサニー千葉エンタープライズから出向したプロデューサーの佐藤公彦、真田広之の3人で命名した『冒険者たちのメロディー』で主題歌のタイトルと同じだった[10]。しかし岡田茂は「フランス映画の真似」として認めず、『爆発! カミカゼ野郎』に変更しようとする[10]。千葉が異を唱えるものの岡田は自らのタイトルにしようとしたため、「“カミカゼ”を残す替わりに“爆発”は外す」と妥協案を示し、佐藤からも「アドベンチャー」と英語を加えるよう口添えし、本作のタイトルが出来上がった[10]。千葉は「フランシス・ゴヤの音楽で出演者やスタッフ皆が盛り上がってたのに…。タイトルは大事なんですけどね」と語っている[7]。
日本では1981年11月7日から公開されたが、一部地域の封切りは『ぶっちぎり横浜銀蠅』と同時上映され[注釈 2]、配給収入は2億円だった[1]。
脚注[編集]
- 注釈
- 出典
- ^ a b 竹入栄二郎「アイドル映画 データ分析」『キネマ旬報』1983年(昭和58年)8月下旬号、キネマ旬報社、1983年、41頁。
- ^ 「
冒険者 カミカゼ」(パンフレット)『冒険者カミカゼ -ADVENTURER KAMIKAZE-』、東映株式会社映像事業部、1981年11月7日、1頁。 - ^ a b “冒険者カミカゼ”. 東映チャンネル. 2012年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年12月11日閲覧。
- ^ a b “冒険者カミカゼ”. 日本映画製作者連盟. 2011年12月11日閲覧。
- ^ a b c 保科幸雄、ハート・ウォームな夢追いロマンを!、8 - 9頁。
- ^ a b c d e f g h i 保科幸雄、高鳴る!冒険者たちのメロディ 燃える夢喰い男・千葉真一、4 - 5頁。
- ^ a b 杉作J太郎、植地毅『トラック野郎 浪漫アルバム』徳間書店、2014年、220頁。ISBN 978-4198637927。
- ^ a b わたなべ宏(映画評論家)、ちょっとハート・ウォームな女(レディ)に 秋吉久美子、15頁。
- ^ a b c 初秋の霧ヶ峰高原にテーマ曲「冒険者たちのメロディー」を流してロケ撮影、12 - 13頁。
- ^ a b c 高平哲郎『話は映画ではじまった PART1 男編』晶文社(原著1984-8)、132頁。
- ^ ぴあ映画チラシ、2015年2月25日閲覧