殺人拳シリーズ
『殺人拳シリーズ』(さつじんけんシリーズ、The Street Fighter series )は、日本映画のシリーズ。主演 : 千葉真一、製作 : 東映。
概要[編集]
空手・拳法の達人が活躍するストーリーで、第三作までは主人公が剣琢磨になっており、最終作のみ設定が入れ替わっている。極真空手有段者・器械体操選手でもある千葉真一の繰り出す突き・蹴りとアクロバティックな宙返りや後方転回が[1]、スクリーンで表現されており、日本国内だけでなく海外でも大ヒット[1][2]。海外で千葉真一はSonny Chiba という異名で呼ばれ、同シリーズは『The Street Fighter series 』のタイトルで興行された[1][3]。
全作品[編集]
激突! 殺人拳[編集]
- 出演 - 千葉真一・中島ゆたか・山田吾一・石橋雅史・鈴木正文
- 監督 - 小沢茂弘
- 脚本 - 高田宏治・鳥居元宏
- 製作 - 東映
- 公開 - 1974年2月2日(
日本)、1974年11月12日(
アメリカ合衆国)
殺人拳2[編集]
- 出演 - 千葉真一・市地洋子・石橋雅史、クロード・ガニオン、山城新伍・田中浩・鈴木正文
- 監督 - 小沢茂弘
- 脚本 - 高岩肇・小沢茂弘
- 製作 - 東映
- 公開 - 1974年4月27日(
日本)、1975年(
アメリカ合衆国)
逆襲! 殺人拳[編集]
- 出演 - 千葉真一・池玲子・和田浩治・山城新伍・鈴木正文・志穂美悦子
- 監督 - 小沢茂弘
- 脚本 - 高田宏治・志村正浩・小沢茂弘
- 製作 - 東映
- 公開 - 1974年11月22日(
日本)、1979年2月(
アメリカ合衆国)
子連れ殺人拳[編集]
製作[編集]
第三作まで脚本を担当した高田宏治は、本シリーズを千葉真一の代表作として挙げ、製作にまつわる秘話を明かした[4]。
娯楽映画中心の東映の中では驚くほどハードボイルドで、千葉真一という素材が本シリーズに完璧にハマり、千葉のための千葉にしかできない映画であり、一緒に仕事をした作品の中で一番印象に残っている。その理由として千葉のアクションには、“血の滾(たぎ)り”があり、相手を本気で殴打し、本気で殺してやろうというガチンコ感が突き抜け、全シーンに真剣勝負で臨んでいた。撮影中の千葉は役に入り込むあまり、「エキストラ100人集めてくれ」など無理なアイデアを次々出す。言う通りにしていたら予算がパンクしそうになり、収益に一切忖度しない役者バカの典型だった。そうして作った本シリーズは、空手の徒手空拳が新鮮だったこともあり、海外興行でも成功した。—高田宏治、[4]
興行[編集]
岡田茂は「ショウ・ブラザーズが千葉真一の空手映画を購入してシンガポールで非常に当たっている[5]。東南アジア映画祭でジャカルタへ行ったときも、抜群の動員力と人気を上げていた[5]。千葉くんの空手が入って、東南アジア全域で当たり、すごい人気だ[6]。東洋でナンバーワンなんだから、あのアクションをやらせたら世界に(千葉真一以外)いないんじゃないかな[6]。松竹の城戸四郎さんへ挨拶にいったら、外国部長から『ミラノでも大変人気でしたね』といきなり言われた[7]。アメリカではかなり出て、いい商売しているし、南米では1本3万ドル以上で売れている。ミラノでも買い殺到で[7]、フランシス・フォード・コッポラが千葉真一くんとアル・パチーノとの共演作を作りたいとオファーしてきた[8]」と世界各地の人気・商況・反響を語っている。
影響[編集]
同シリーズの熱狂的ファンにクエンティン・タランティーノ[9]、キアヌ・リーブス[10]、リュ・スンワンがいる[11]。
クエンティン・タランティーノが脚本を手がけたアメリカ映画『トゥルー・ロマンス』では、主人公と彼女がデートで本シリーズ第1作目を映画館で観ているシーンがある。
キアヌ・リーブスは「(本シリーズから)アクションと芝居を学んだ。僕は映画用のカンフーならできるけど、サニー千葉は実際に人をボコボコにできる。情熱を感じる」と受けた影響を語っており、主演映画『ジョン・ウィック』のプロモーションで来日した2015年10月に千葉真一と待望の対面を果たした際には、" Oh my god! " を連発、固い握手を交わし、「ハジメマシテ、マエストロ(巨匠)!」と挨拶[10]。「あなたはキャラクターを演じるだけでなく、そこにアクションを盛り込んだ。屈強なキャラクターにもあなたが演じると心が感じられる」と身振り手振りを交えながら、終始嬉しそうに大はしゃぎの様子だった[10]。
リュ・スンワンは『仁義なき戦い 広島死闘篇』のDVDに千葉真一からサインをしてもらったが「今日はDVDを持って来られなかったのですが、千葉さんの『激突! 殺人拳』が本当に好きなんです。僕があまりにも見ているので、うちの子供たちもテーマ曲を口ずさむことができる。お会いできて光栄です[11]」、「暴力的なシーンが出てきても、暴力的だと感じるのではなく、すごい快感が沸き上がる。登場人物たちの行動に妥当性があり、観客たちがその人物を応援したくなるからです。そこから僕も影響を受けていると思います[11]」と本シリーズを評している。
脚注[編集]
- ^ a b c “本家ブルース・リーをしのぐ千葉真一”. 報知新聞. (1974年12月27日)
- ^ 高平哲郎 (2011年5月18日). “JJサニーちば、真面目さと優しさに溢れ…”. ZAKZAK. 夕刊フジ. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “Lifetime Achievement Award Tribute: Sonny Chiba” (英語). Singafest 2011: LA's Newest International Asian Film Festival (2011年8月31日). 2015年7月29日閲覧。
- ^ a b “脚本家が語る千葉真一さんの凄さ「ガチンコ感が突き抜けていた」”. NEWSポストセブン. 小学館. p. 1 (2021年9月1日). 2021年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月4日閲覧。
- ^ a b 「千葉の空手は断然強い」、66頁。
- ^ a b 「『新幹線』も海外で人気」、67頁。
- ^ a b 「『新幹線』も海外で人気」、67 - 68頁。
- ^ 「『新幹線』も海外で人気」、68頁。
- ^ “殺人拳2”. 日本映画製作者連盟. 2015年9月29日閲覧。
- ^ a b c “千葉真一初対面でキアヌ大興奮、熱いリアクションに「かわいい」の声。”. ナリナリドットコム. ZIP! (Narinari.com). (2015年10月6日) 2015年10月6日閲覧。
- ^ a b c 佐藤結「『ベテラン』 対談 リュ・スンワン[監督]× 千葉真一 韓国・日本 両国の映画を愛する漢たちの語らい」『キネマ旬報 2015年12月下旬号 No.1705』通巻2519号、キネマ旬報、2015年12月4日、71頁、2015年12月19日閲覧。
参考文献[編集]
- ※異なる頁を複数参照をしている文献のみ。発表年順。
- 文化通信社 編「映像多角化の縦深展開で収益拡大」 『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』指田洋・渡邉裕二・大川仁志(初版)、ヤマハミュージックメディア (原著2012-6-15)。ISBN 4636885198。
関連項目[編集]
- 主演・モチーフが同じ