唄ひ手冥利〜其ノ壱〜

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唄ひ手冥利〜其ノ壱〜
椎名林檎カバー・アルバム
リリース
録音 2002年
ジャンル J-POP
時間
レーベル 東芝EMI/Virgin Music
プロデュース 井上うに(DISC1・2)
工藤雅史(DISC1)
チャート最高順位
  • 週間1位(オリコン
  • 2002年6月度月間1位(オリコン)
  • 2002年度年間46位(オリコン)
椎名林檎 アルバム 年表
勝訴ストリップ
(2000年)
唄ひ手冥利
〜其ノ壱〜

(2002年)
加爾基 精液 栗ノ花
(2003年)
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唄ひ手冥利〜其ノ壱〜』(うたいてみょうり そのいち)は、2002年5月27日にリリースされた椎名林檎カバーアルバム。発売元は東芝EMI(現・EMIミュージック・ジャパン)/Virgin Music

初回限定盤には「カラオケBOX『唄ひ手冥利』1号店 虎の巻」抽選プレゼント応募券封入。

概要

本作は椎名の妊娠・出産、そして約1年間近くの活動休止期間を経てリリースされた1年2ヶ月ぶりの作品で2枚組のカバーアルバムである。本作リリースには経緯がある。当初東芝EMI側は、活動再開の兆しが見えない中、契約期間中に消化する枚数をクリアするためベストアルバムをリリースする予定だった。しかし椎名が頑なに断ったため、代わりに2枚組のカバーアルバムをリリースすることに決定した。

今までの椎名の音楽に多大な影響を与えているアーティスト・歌手にオマージュを捧げるアルバム。普段は専ら自作曲を歌う椎名は本作では「唄ひ手」に徹し、編曲にはベーシスト亀田誠治キーボーディスト森俊之が携っている。本作の収録曲はどれも椎名が幼少時に聴いてきた曲で、収録曲のセレクトは全て椎名自身による。それらの曲を2人のアレンジャーに対し「あなたが今までやってみたかった編曲のしかた、『自己実現』を行って下さい」などと、FAX用紙数メートルにわたる文章で発注した。

本作のディスクの表記は「DISC1」等の表記ではなく、亀田誠治が手がけたディスクは「亀(かめ)パクトディスク」、森俊之が手がけたディスクは「森(もり)パクトディスク」と呼び、アレンジに関しても2人が得意とする楽器中心の構成になっている。「亀パクトディスク」では今までのアルバムの手法「バンド演奏による一発録り」、「森パクトディスク」ではバンド編成だが「これからの椎名林檎」として多重録音やプログラミング等を用いて表現されている。後に発売する3枚目のオリジナルアルバム『加爾基 精液 栗ノ花』でこの手法が生かされることになる。

本作のデザインはシンメトリーに構成されている。手がけたのは今まで担当したデザイナー木村豊ではなく、椎名本人と現在の事務所のスタッフ太田有美の2人で手がけ、ブックレットの写真・イラストも椎名本人が担当、デザイン文字は椎名本人と長岡亮介が、手・足などの部分的モデルとして元NUMBER GIRLのギタリストの田渕ひさ子が担当。また曲順も両ディスクの収録曲がシンメトリーで統一され、字数もさる事ながら、「枯葉」の対は「小さな木の実」、「黒いオルフェ」の対は「白い小鳩」等細かい演出がされている。タイトルが日本語のものと英語のものを交互に収録し、タイトルが英語の曲は全て小文字で統一されている。

なお、それぞれのディスクには2人のゲストボーカルが参加し、初回・通常盤にかかわらず「特別感謝」名目で、椎名林檎本人のアレンジでのボーナストラックが1曲ずつ収録されている。

また、同じ発売日に実兄である椎名純平がカバーアルバム『discover』をリリースしている。

収録曲

亀パクトディスク

亀田誠治がアレンジを手がけたディスクで、昭和歌謡曲と洋楽のカヴァーをギターストリングス中心の弦楽器アレンジで構成され、ゲストボーカルはスピッツのボーカリスト草野マサムネ松崎ナオが参加。なおギター担当は椎名と離婚した弥吉淳二で、彼が最後に関わった作品が本作である。

  1. 灰色の瞳
    作詞:チト・ヴェレス 訳詞:加藤登紀子 作曲:ウニャ・ラモス
    南米アンデス地方の民族音楽1974年に加藤登紀子と長谷川きよしがデュエットソングとして発売し大ヒットした作品。長谷川きよしの歌唱パートは草野マサムネが担当している。
  2. more
    作詞:マルチェロ・チョチョリーニ/ノーマン・ニューエル 作曲:リズ・オルトラーニ/ニーノ・オリヴィエロ
    グァルティエロ・ヤコペッティ監督の作品「世界残酷物語」の主題曲のカヴァー。フランク・シナトラも過去に歌っている。
  3. 小さな木の実
    作詞:海野洋司 作曲:ビゼー
    ビゼー作曲のオペラ「美しきパースの娘」のセレナードに、海野洋司が詞を付けたもの。NHKの番組「みんなのうた」で広まった童謡の一つ。
  4. i wanna be loved by you
    作詞:ハート・カルマー 作曲:ハリー・ルビー/ハーバート・ストッタート
    女優マリリン・モンローの主演映画「お熱いのがお好き」の劇中内で披露した曲。過去に椎名はライヴイベントでゆらゆら帝国と対バンした際披露している。
  5. 白い小鳩
    作詞:山上路夫 作曲:都倉俊一
    R&Bシンガー朱里エイコの代表曲の1つ。1974年発売。
  6. love is blind
    作詞・作曲:ジャニス・イアン
    椎名が尊敬し敬愛しているアメリカのシンガーソングライター、ジャニス・イアンの曲。過去に坂口良子主演のドラマ「グッドバイ・ママ」の主題歌に起用されている。
    下剋上エクスタシー」では、「恋は盲目」というタイトルで歌われている。
  7. 木綿のハンカチーフ
    作詞:松本隆 作曲:筒美京平
    歌手太田裕美の代表曲。1975年発売。本作では歌詞中の都会に行った彼のパートを椎名、田舎に1人残った彼女のパートを松崎ナオが担当したデュエットソングにアレンジ。間奏部分でピアノが野薔薇のフレーズを奏でる。
  8. yer blues
    作詞・作曲:ジョン・レノン/ポール・マッカートニー
    ビートルズの曲。1968年発売の2枚組アルバム『ザ・ビートルズ』の収録曲。
    〜特別感謝トラック〜
  9. 野薔薇
    作詞:ゲーテ 作曲:シューベルト 編曲・演奏:椎名林檎
    ドイツの詩人ゲーテの詩にシューベルトが1815年に作曲したリート(歌曲)。本作では椎名本人が演奏、エレキギターリズムボックスのみのアレンジを行い、原語のドイツ語で歌っている。

収録曲セレクト:椎名林檎 自己実現(編曲):亀田誠治 録音:井上うに(M1.2.5.7)/工藤雅史(M3.4.6.8.9)

演奏バンド「虐待グリコゲン(ぎゃくたい~)」

亀田誠治エレキベース
弥吉淳二:エレキギターアコースティックギター
皆川真人ピアノオルガン鍵盤ハーモニカシンセサイザータンバリン
村石雅行ドラムカウベル
中山信彦(サポート):マニピュレータープログラミング(M2.3)
金原千恵子(サポート):ストリングス(M6)
虐待グリコゲンと椎名林檎と他アシスタント数人:ハンドクラップと足音(M3)

森パクトディスク

こちらはキーボーディストの森俊之が担当した、鍵盤楽器全般・プログラミング中心のアレンジで構成されていて、こちらのセレクト曲は全て洋楽である。ゲストには宇多田ヒカル椎名純平が参加している。余談だがこちらのブックレットには録音担当のエンジニア井上うにの写真が掲載されている。

  1. 君を愛す
    作詞:アンデルセン 作曲:グリーグ
    ノルウェー作曲家グリーグが、歌手である婚約者のために1863年に作曲した歌曲。作品5-3。詩は童話作家のアンデルセンが片思いの女性に捧げたもの。
  2. jazz a go go
    作詞:ロベール・ギャル 作曲:アラン・ゴラゲール
    1960年代のフランスのアイドル、フランス・ギャルの曲。この曲の間奏部分は東京事変のアルバム『大人』収録のM2「喧嘩上等」の間奏部分に引用されている。
  3. 枯葉
    作詞:ジャック・フレヴェール 作曲:ジョセフ・コスマ
    イブ・モンタン、そしてエディット・ピアフが歌った事により普及したシャンソンの曲。なおこの曲は2003年に行われた椎名林檎のコンサート「賣笑エクスタシー」と現在のファンクラブ「林檎班」のイベント「第一回林檎班大会」にて斎藤ネコアレンジ・指揮によるオーケストラで披露された。
  4. i won't last a day without you
    作詞:ロジャー・ニコルズ 作曲:ポール・ウィリアムス
    アメリカのポップス・デュオ、カーペンターズの有名な楽曲を宇多田ヒカルとデュエットしてカヴァー、この曲は東芝EMIのイベントで宇多田ヒカルと一夜限りのユニット「EMIガールズ」として披露している。
  5. 黒いオルフェ
    作詞(葡語詞:アントニオ・マリア/アラウジ:デモライズ 仏作詞:フランソワ・ルナ/マルセル・カミュ 英訳詞:ルイジ・クリエター/ヒューゴ・ペレティ/ジョージ・デヴィット・ワイス) 作曲:ルイス・ポンファ
    ボサノヴァの一曲。同名の映画の主題曲。本作では原曲より大幅にキーを下げたアレンジ。この曲は全国ツアー「雙六エクスタシー」で披露。
  6. mr. wonderful
    作詞・作曲:ジェリー・ボック/ラリー・ホロフセナー/ジョージ・デヴィット・ワイス
    元はミュージカル劇中歌であったのを本作ではボサノヴァアレンジで収録、この曲も「雙六エクスタシー」で披露。
  7. 玉葱のハッピーソング(原題:the onion song
    作詞・作曲:ニコラス・アシュフォート/ヴァレリー・シンプソン
    実兄の椎名純平とのデュエットソング。後に発売するシングル『この世の限り』でも共演。いずれの曲も2008年の10周年記念ライブ「椎名林檎 (生)林檎博'08 〜10周年記念祭〜」でゲストの椎名純平とともに披露した。
  8. starting over
    作詞・作曲/ジョン・レノン
    かのジョン・レノンの有名な楽曲を大胆にアレンジ。
    〜特別感謝トラック〜
  9. 子守唄
    作曲:ショパン(引用) 作詞・編曲・ピアノ・ガラガラ:椎名林檎 チェロ:斎藤孝太郎
    ショパン作曲の「華麗なる円舞曲 イ短調 作品34の2」の一節を引用し椎名林檎が歌詞を書き下ろして収録。オリジナル曲に近い作品。この曲はPV集「性的ヒーリング〜其ノ弐〜」収録のおまけCMの曲として使われている。

収録曲セレクト:椎名林檎 自己実現(編曲):森俊之 録音・:井上うに

演奏バンド「冒涜ヴァイタミン(ぼうとく~)」

森俊之:プログラミング全般、鍵盤楽器全般、シンセベースエレキギター(M1)
渡辺等:ウッドベースエレキベース
沼澤尚ドラムタンバリン
井上うに、他(サポート):両指パッチン(M3)