ブタ

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ブタ
ブタ
ブタ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ウシ目(偶蹄目) Artiodactyla
亜目 : イノシシ亜目 Suina
: イノシシ科 Suidae
: イノシシ属 Sus
: イノシシ S. scrofa
亜種 : ブタ S. scrofa domesticus
学名
Sus scrofa domesticus
和名
ブタ
英名
Pig
豚の剥製
岐阜市畜産センターのビジターハウス内に展示)
子豚
岐阜市畜産センターにて)
仔豚に母乳を与える豚
豚小屋で飼育されている放牧豚

ブタ、学名:Sus scrofa domesticus、英名:pig)とは、哺乳綱ウシ目(偶蹄目)イノシシ科の動物で、イノシシSus scrofa)を家畜化したものである。

学名は「Sus scrofa domesticus仮名転写:スース・スクローファ・ドメスティクス)」。

生物学的特徴

野生のイノシシと同様土中の虫や植物球根を掘り返して食べるため、他の家畜と違って硬い鼻先と強大な背筋を備えており、木製の柵では横木を鼻先で押し上げて壊してしまう。オスのも強い背筋を生かせるよう上向きに生えており、人間のような丈の高い動物を敵と認識すると、突進して鼻先を股ぐらに突っ込み、頭部を持ち上げながら強くひねる。野生時代の名残ともいえるこの行動を「しゃくり」といい、まともにしゃくられると大人でも数メートル飛ばされ、腿の内側の静脈を切って大出血することがある。日本で小規模養豚が多かった時代には、年に数人はこれによる死者が出ていた。

肥満者への蔑称として使われることが多いが、豚の体の大半は筋肉であって、脂肪ではない。一般的に肥満させて育てる食用ブタでも体脂肪率は14パーセント、多くても18パーセント程度にとどまる。ガツガツと食事を取る人物を指して「ブタのように食べる」、散らかり汚い部屋を「豚小屋」などと形容することがあるが、ブタの生命力が強いため荒れた飼育環境でも飼育できることや、容貌から来る偏見である。ブタは知能が高く(教え込めば芸も覚え、自分の名前も認知する)清潔を好む生物であり、ガツガツ食事をしたり、自分の居場所を汚くすることもない。排泄をする場所は餌場や寝床から離れた決まった一ヶ所に決める習性がある。ブタの知能はイヌと同等か、それ以上とする研究者もいる。犬は高い忠実性を持つが、事実上の知能ではブタの方が上であることが認識されている。類人猿、イルカ、ゾウ、カササギヨウムに加えてブタも鏡の存在を認知できる「鏡映認知」が確認された数少ない動物である(詳細はのリンク先を参照[1]

ブタは類人猿以上に体重や皮膚の状態、内臓の大きさなどが人間に近い動物である。そのため現在、異種間移植の臓器提供用動物として、研究が続けられている。

ブタの鳴き声は、日本語では「ブー」、「ブヒッ」、英語では「oink(オインク)」と表記される。

家畜としてのブタ

家畜としてブタを飼育することを養豚といい、仕事としての養豚を養豚業、また養豚業に従事する人々のことを養豚業者という。ウシウマヒツジヤギといった家畜は原種が絶滅、またはかなり減少してしまっているが、ブタは、原種であるイノシシが絶滅せず生息数も多いまま現存しているという点が特徴的である。免疫力が強く、抵抗性だけでなく環境への適応性にも富んでいるため飼育は容易。豚肉脂肪を食用とするために世界中で飼育されている。使えないのは「鳴き声だけ」と言われるほど、人間の利用箇所に富んだ「経済動物」である。

高級食材で知られるトリュフを掘り起こすのに、かつてはメスブタが使われていた。トリュフにはオスブタの持つフェロモンと同じ成分が含まれており、トリュフの匂いを嗅ぎつけ興奮したメスブタが掘り返すのである。メスブタがトリュフを食べてしまうことも多いため、最近ではイヌを用いるようになってきた。アメリカの砂漠地帯では除けのためにブタを飼っている家もある。

オセアニアではブタの牙を切らずに飼っている例が多い。牙が伸び、湾曲して円形になったものは、アクセサリーや貨幣として用いられることもある。

ブタを数える際の単位は、頭または匹と、かなりあいまいである。同じ新聞で、ブタに関することで発行された記事においても、頭表現した例と、匹表現した例がある。

家畜としてのブタの一生

子取り用雌豚

繁殖候補として選ばれた子取り用雌豚(繁殖用雌豚)は管理しやすいようにストール(閉じ込め枠)飼育される。(日本の農場では83.1パーセントでストールが使われている。そのうち常時ストール収容が32.7パーセント)ストールの面積は1頭あたり1平方メートル前後である[2]。個体識別繁殖の管理のため、子取り用雌豚は耳刻や入墨が入れられる。雌豚は、生後八ヶ月で初めて交配される。豚は自然交配のほうが受胎率が高いことから、人工授精率が牛に比べて低い。牛の人工授精率99パーセントに対し、豚は40パーセント程度[3]。 妊娠した雌豚は、約114日の妊娠期間を経て、1回につき10数頭の子豚を産む。母豚による子豚の圧死を防ぐため、母豚は、分娩から離乳まで、行動範囲を制限する分娩柵を両側に取り付けられた分娩豚房に移される。分娩後約1ヶ月で次の交配が行われ、2年間で6 - 7回ほど分娩する。繁殖用として役目を終えた雌豚(平均3歳)は、「飼い直し」をしても肉質の向上が見られないため、ソーセージなどの加工品に利用される。

新生子豚

外科的処置

  • 歯切り
    • 新生子豚には8本の鋭い歯が生えており、母豚の乳頭の取り合いをする際に、他の子豚や母豚の乳房を傷つける可能性がある。また、母豚が乳頭を噛まれ授乳を拒否したり、急に立ち上がったりすることにより、子豚のけがや圧死の原因となる可能性もある。歯切りは、このような事故等を防止するための手段の一つと考えられている[4]。日本の農家の88.1パーセントが歯切りを実施しており、そのうち8割はほぼ根元から切断される。歯切りは生後7日以内に無麻酔で行われることが一般的である。またその道具として日本の農家の9割以上がニッパーを使用している[2]
  • 断尾
    • 77.1パーセントの農家で断尾が実施されている[2]。豚舎での過密飼い・換気の不備・梅雨時期の多湿や夏場の高温等、豚がストレスを受けた場合に、他の豚の尾をかじる行動や、耳や腹を噛む等の行動が見られることがある。特に、尾かじりの行動が起きた場合には、その行動は群内にすぐに広まる。尾かじりを受けた豚は、ストレスにより飼料の摂取量や増体量が低下したり、けががひどい場合には死亡したりすることがある[4]。断尾も一般的に生後7日以内に無麻酔で実施される。
  • 雄豚の去勢
    • ほぼ100パーセントの雄豚に無麻酔で実施される[2]。これは食肉とされたときの雄独特の雄臭を防ぐためである。雄臭のため、去勢していない豚は食肉格付評価が下がる。去勢は生後8日以上後に実施されることが多い。

新生子豚は、21日 - 24日の授乳期を経て1ヶ月程度で離乳させる。その後、主に配合飼料を給餌し、豚舎内で群飼肥育される。豚の寿命は10年から15年ほどだが、食用豚は6 - 7ヶ月で105 - 110キロ・グラム程度に仕上げられ、屠蓄される。

種雄豚

繁殖用の種雄豚は、8年前後、種付けに用いられた後に廃用され、雄臭が強いため、主に皮革や肥料などとして利用される。

アニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方に対応した諸外国の豚ガイドライン・法規制

  • EU
    • 歯切りは子豚が他の子豚や母豚を傷つけた場合のみ生後7日以内に実施すること。断尾・去勢を生後7日以降に行う場合は麻酔下で実施すること。また、雌豚のストール飼育は2013年に禁止される。
  • アメリカ
    • 歯切りは生後24時間以内に歯の先端部分のみ実施すること。断尾は子豚のストレスにならない方法で出生直後に実施すること。また、雌豚ストール飼育はフロリダ州で2008年に禁止、カリフォルニア州では2013年に禁止される。
  • カナダ
    • 断尾は生後24時間以内に尾の後部から3分の1のみ切断すること。

ブタの飼育史

中東

イノシシの家畜化は8,000年以上前からユーラシア大陸の東西で行われ、各地で独立に家畜のブタが誕生したと考えられている。今はイスラム圏となった古代オリエント古代エジプトでも豚を食用としていた。古代エジプトではブタを飼う民は賎民とされていたことが、エジプトを脱出した古代イスラエル人と、その宗教を受け継いだユダヤ人ユダヤ教カシュルート、およびユダヤ教の影響を受けて誕生したイスラム教においては、豚肉肉食食のタブーとなった原因とする説がある。実用上の理由としては、過去に生の豚肉を食べて食中毒になる人が多かったからという説がある。宗教上の理由は、ブタは人間がイノシシとネズミを合わせて作り出した[要出典]不浄な動物とされるからである。補給の都合上、イスラエル軍やイスラム国家の軍でも糧食として用いられる例があるが、豚肉のみの専門の食器を使い、食後は全て破棄している。

ヨーロッパ

古代ローマ人も豚を食べなかったわけではないが、ブタの飼育が発達したのは北方森林地帯のゲルマン人ケルト人の食文化においてだった。日照時間が短く寒冷で、土壌のやせたヨーロッパでは、穀物の生産性が低いため、秋になるとナラオーク)の森にブタを放してドングリを食べさせて太らせ、それを屠蓄して食塩硝石で処理して主要な保存食にしたのである。後にアメリカ大陸からジャガイモトウモロコシがもたらされると、土地あたりの収穫量が多いそれらが飼料として利用されることになる。ドイツスペインイタリアなどのハムベーコンソーセージはこういった伝統を受け継ぐ。

アジア

東アジアでは中国新石器時代からブタは家畜化されていた。中国南部を発祥地とするオーストロネシア語族南太平洋にまでブタを連れて行く。満州人の先祖である挹婁人、勿吉人、靺鞨人は寒冷な満州の森林地帯に住んでいるので、ブタを盛んに飼育し、極寒時にはブタの脂肪を体に塗って寒さを防いでいた。豚は中国でもよく食べられ、中華料理のメイン・メニューとなっている。中国語で単に肉といえば豚肉を指すほどで、牛肉は農耕用に使われた廃牛を利用するのが中国における牛肉であったため、食用としては硬すぎたり筋張ったりし、それほど好まれなかった。韓国では、縁起のよい動物とされている。漢字の「」を韓国語読みした「トン(ローマ字転写:don)」が、「お金」を意味する韓国語と綴りが同じためである。ブタ型の貯金箱に人気があり、ブタの夢を見るとお金がたまるといわれ、宝くじを買ったりする。韓国語で「豚」は「テジ(돼지)」といい、イノシシは「メッテジ(멧돼지)」というが、日本を除く東アジア漢字文化圏では、原則として亥年は「豚年」である。

  • 中国語では、「ブタ」は「(=繁体字)/(=簡体字)」と表記される。西遊記に登場する猪八戒はブタに天蓬元帥の魂が宿った神仙で、「猪(豬)」は「朱」(中国ではよくある姓)と音が通じるためにこの名にされた。しかし明代皇帝の姓が「朱」であったため、これを憚ってもとの意の通り「猪(豬)」を用い、猪八戒となった。

オセアニア

南太平洋諸島の文化において、ブタは唯一の大型食用家畜として重要視された。もともとこれらの島々にはブタは生息していなかったが、紀元前1000年ごろから開始されたオーストロネシア語族の広域拡散に伴いブタも生息域を拡大していき、メラネシアポリネシアの多くの島々で重要な家畜となった。一方で、オーストラリアニュージーランドイースター島ツアモツ諸島などのようにブタが持ち込まれなかった島々も存在する。また、ミクロネシアの一部諸島のように、いったん持ち込まれたブタが何らかの理由によって絶滅したところも存在する[5]。ブタの飼育された島々においてブタは儀式の際などに屠られる特別な食料となり、またバヌアツなどにおいてはブタのが富の象徴とされた。この際、ブタの牙はできるだけ長く伸びているものほど珍重され、高い価値を持った。長く伸び円弧を描いたブタの牙は、富の象徴としてバヌアツの国旗にも描かれている。

日本

縄文時代にはシカ・イノシシ主体の狩猟が行われているが、イノシシ骨では飼養段階の家畜利用を示す家畜化現象の骨が出土していることが指摘され、日本列島における家畜化の可能性も考えられているが、イノシシ飼養はいずれも限定的なもので疑問視する見解も見られる。弥生時代に入ると、大陸から移入されたブタの利用が行われていたと考えられている。大分県下郡桑苗遺跡において1989年に行われた発掘調査によってイノシシ類頭蓋骨3点が確認されたことを1991年西本豊弘が報告し、直良信夫も弥生時代におけるブタ利用を報告している。これを機に出土イノシシ類骨の再検討が行われ、現在では九州地方から関東地方にかけて弥生ブタの存在が確認され、弥生文化との関わりが論じられている。

縄文時代にはシカ・イノシシ骨の出土割合は同等であったが弥生時代にはイノシシ骨の出土量が急増し、続く古墳時代の遺跡からもブタの骨は出土している。『日本書紀』、『万葉集』(萬葉集)、『古事記』に猪飼、猪甘、猪養という言葉があり中国では猪はブタの意味でありブタが飼われていた。奈良時代仏教が国教化したことによって、ブタの飼育も途絶えてしまった。イノシシが採れる山間部では猪肉がぼたん鍋と称してわずかに食べられることもあった。

沖縄県では、古来からブタの飼育や食用が行われており、沖縄料理は「豚に始まり豚に終わる」ともいわれる。しかし肉食がそれほど盛んではない昔は「ハレの日」の料理として扱われていた。第二次大戦前の沖縄では、豚肉料理が食べられるのはせいぜい年に数回であり、普段はラードが豚肉の代用としてよく使われていたという。

1385年に渡来したという黒豚のアグー(島豚、シマウヮー)が有名で、現在の沖縄料理では最も重要な食材となっている。17世紀以前は牛肉も同様の座を占めていたが、羽地朝秀の改革によりウシの食用が禁止され、その後冊封使節団を接待するため王府によりブタの大量生産が奨励されたことなども相まって、牛肉に代わる存在となっていった。

長崎においても、鎖国中の唯一の外交窓口であることから、駐在する中国人の食用として豚が飼育されていた。一部は日本人の食用としても供給され、司馬江漢がこれを食べた記録がある。多くの日本人にとっては忌み嫌われ、中国人の豚好きを揶揄した「楊貴妃は きれいな顔で 豚を食い」という川柳がある。

薩摩地方でもブタを飼って食べており、佐藤信淵著『経済要録』(1827年)には薩摩藩江戸邸で豚を飼って豚肉を売っていたと記録されている。江戸幕府最後の征夷大将軍徳川慶喜は父徳川斉昭島津斉彬から豚肉を送られていた(1845年5月2日(6月6日)の書簡)ためか、豚肉を好んで食べたので豚一様(好きの橋様)と呼ばれた。新選組西本願寺駐屯時に松本良順のすすめで神戸から子豚を持ち込み養豚していた。解体は木屋町の医者南部精一の弟子に頼んでいた。

明治維新以後肉食は一般化していくこととなるが、普及したのは牛鍋などにみられるように牛が圧倒的で、豚肉の需要はそれほど伸びなかった。豚の飼育は伸びていくものの、これは東京近郊の農家が肥料を得ることを目的としたものであり、食用ではなかった。しかし、大正元年(1912年)にコレラの流行が起きると、警視庁がコレラの流行を食い止めるためにの生食を制限し、火を通すことが前提である肉食を奨励した。この際、上述のとおり豚が多く飼育されていた東京や関東圏において安価であった豚肉の使用が注目された。これによって、それまで牛肉が主であったカツレツが豚に置き換えられてトンカツが誕生するなど豚肉料理がこの時期に多く誕生し[6]、豚肉の需要が急増して、ブタも日本各地で再び飼われるようになった。特に関東大震災後に関東地方で養豚ブームとなり供給量が増え安価になった。島豚は1902年にバークシャー種、ハンプシャー種が入り純粋種はなくなったが名護市や奄美大島などで復元されている。

品種

主な品種 (breeds) に大ヨークシャー種、高座豚富士幻豚に代表される中ヨークシャー種、ランドレース種、デュロック種、黒豚に代表されるバークシャー種、ハンプシャー種などがある。近年では、これらの品種の二つか三つ(三元交配)を掛け合わて肉豚を生産することが多い。肉質の良い品種、子豚を多く生む品種を使いハイブリッド豚も作られている。黒豚と中ヨークシャー種は肉が特に美味だとされるが、小柄で肥育に日数を要する(アメリカ系バークシャー種を除く)。純粋な中ヨークシャー種を肉用に肥育することは少ない。日本においては「黒豚」と表示して販売できるのはバークシャー純粋種のみとされている[7]。ブタとイノシシは生物分類学上同じ種 (species) である。実際相互に交配可能であり、生まれてくる仔はイノブタといわれる。

イギリス

アメリカ

デンマーク

スペイン

ハンガリー

沖縄

中国

ベトナム

ブタの品種については、養豚#品種の項を参照。

ブランド豚

ブランド豚には明確で客観的な品質評価基準がないので、銘柄豚(ブランド豚)だからといって全てが良い豚肉であるとは限らない。現在のブランド豚全頭が均一にいい豚肉になることはなく、肉質が普通の豚より落ちるものもある。これは品種・飼料・飼育方法・飼育環境にこだわって、肉質・脂質や味は二の次になる銘柄豚もあるからである。豚肉は工業製品ではないので、全部が全部、均一に良いということはない。1頭の豚の右半身と左半身でも全く肉のつき方や肉質の異なることさえある。1頭1頭で脂のしまり方、熟成の期間も違う。したがって、現在のブランド豚を買ってもすべてが消費する段階で良いというわけではない。消費者に届く段階まで、1頭1頭ごとの熟成の管理はされていないことがある。

洋種系

  • かごしま黒豚・鹿児島黒豚 - 明治時代より在来の黒豚とイギリスから導入したバークシャー種を掛け合わせて改良された。ただし現在の黒豚は、純粋なバークシャー種。
  • 富士幻豚(ふじげんとん)- 中ヨークシャー種の掛け合わせ二元交配豚
  • 高座豚
  • TOKYO X(トーキョーエックス) - 東京都が系統造成した。生産拠点は多摩地区のほか、周辺の他県にもある。枝肉が上規格のみをTOKYO Xとして認定している。
  • イベリコ豚
  • 白金豚(はっきんとん)
  • 茶美豚(チャーミートン)
  • 平牧三元豚 - ランドレース種とデュロック種を掛け合わせ、それとバークシャー種を掛け合わせた三元交配豚。山形の特産品。当初は「平牧黒豚」という名称で販売していたが、食肉公正競争規約第4条-5、第10条-5及び、規約に基づく食肉公正競争規約施行規則にあわせて現在の名称に変更した。
  • 桃豚 - 秋田の特産品
  • 杜仲豚とちゅうとん) - 秋田県大仙市の特産品
  • 幻霜ポーク(げんそうぽーく) - 広島県産。ランドレース種と大ヨークシャー種とデュロック種を掛け合わせた。
  • 元気豚(げんきぶた) 千葉県多古町の特産品-チバザポーク銘柄豚の1つ
  • ローズポーク 茨城県が全国に先駆けて系統造成し1979年に認定されたランドレース種系統豚「ローズL」を使ってできた銘柄豚。さらに大ヨークシャー種、デュロック種の系統豚を掛け合わせて生産している。
  • おおいたL07 - 大分県が系統造成したランドレース種系統豚。2007年登録。
  • シルクポーク - 秋田市平鹿郡の特産品
  • ひょうご雪姫ポーク - 兵庫県の近年開発された新ブランド。一般的な三元交配豚でありながら、赤身に脂肪サシが入るのが特徴。
  • 愛媛甘とろ豚 - 中ヨークシャー種純粋交配豚に、愛媛県産裸麦を与えた新ブランド。
  • 和豚もちぶた - ランドレース種×ラージホワイト種にデュロック種を掛け合わせた豚。独自配合の飼料を使う。獣臭がなく、きめが細かく脂身がさっぱりしている。
  • αのめぐみ(アルファのめぐみ) - 石川県の産学官が共同開発したブランド豚。一般的な豚と比べ「α-リノレン酸」の含有量が多いのが特徴。

沖縄種系

  • アグー - 沖縄の在来豚。
  • 今帰仁アグー(ナキジンアグー) - 沖縄県今帰仁村産。琉球在来豚アグーともう一つの在来種(アヨー)の掛け合わせ。
  • あぐー - JAおきなわの登録商標。アグーの血を四分の一以上継ぐ交配豚の生産業者に対して与えられる。

中国種系

ミニブタ

ベトナムに生息していた小型のブタをヨーロッパで改良した小型のブタはミニブタとして愛玩動物とされる。体重が概ね100キログラム以下で、もともと家畜として飼われていたブタの小型のもの(中国南部、東南アジアのものが多い)と交雑によって作られた種類とがある。交雑種は主に実験動物用に開発されたものである。アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、日本などでペットとして飼われているミニブタは、ほとんどがベトナムを起源とし、ヨーロッパ→アメリカ→日本に移入された「ポットベリーピッグ」であり、ドイツで開発された「ゲッティンゲン」の血を引くものと思われるものもある。実験動物としてのミニブタは、世界各地で開発され現在数十種あると思われ、そのほとんどがポットベリーと他の小型種や経済豚との交雑によって得られている。 ポットベリーPIGまたは、ポットベリーSWINEと言う場合、ベトナム在来種の1種の育種を表している場合と、ベトナムおよびシナイ半島に生育した太鼓腹形状の小型在来種のグループ全体を表す場合がある。ポットベリーと呼ばれるベトナム近郊の小型太鼓腹形状在来種は、現地調査によれば、約14種ほど、発見されている。日本に輸入された、キース・コネル (Keith Conell) 系統やキース・リーヴィット (Keith Leavitt) 系統の交雑種が、これらベトナム古来在来小型太鼓腹グループである意味のポットベリーのどの品種の交雑種(育種)なのかは、今のところ詳しく判明していない。

ミニブタの餌

実験用ミニブタ専用のものがある。ペット専用のものは、国内では、販売されていない。経済豚の肥育豚のえさは「6か月で効率的に成長させるもの」であり、繁殖豚のえさは「効率的に子豚を生産する」ためのものである。15年程度健康に飼育するペットのミニブタのえさとは発想が異なる。ミニブタは実験動物として飼育されるところから、健康的でなくてはならないため、いたずらに肥育させないよう考慮し、動物実験に適したえさが開発されている。日本では飼料メーカー数社が生産している。ミニブタようの餌としてドッグフードはミニブタ用の餌に近いといわれるが、雑食性のブタにとっては足りない栄養素もあり適さない。ドッグフードを長期にわたって与え続ければ、人間の生活習慣病のような病気を発症する可能性もある。特に、元々肥満系であるポットベリー種のミニブタでは循環器、脚の関節への影響は甚大である。実験動物のような閉鎖的環境で飼わないペットブタは、フード以外にも野菜や果物などを適宜与えることが望ましい。 

ポットベリーのペットとしての歴史

アメリカを主としてミニブタがペットとして愛玩されている。ほとんどは「ポットベリード・ピッグ」(Potbellied Pig、日本語で言えば『太鼓腹のブタ』)と呼ばれる小型のブタである。この種のブタは、1950年フランス人がベトナムからヨーロッパに運び、動物園で初めて展示された。その子孫の18頭が1985年、カナダ人のキース・コネル (Keith Conell) によりカナダに輸入されてからこれらの子孫がアメリカ合衆国に輸入された。これらの子孫はコネル系統と言われる。その後数年間にわたって若干の他のポットベリーのグループが、中国・イギリス・スウェーデン・ドイツから輸入された。その中でキース・リーヴィット (Keith Leavitt) の輸入したグループはリー (Lea) 系統と言われ、この2系統が今日アメリカにおいて血統が証明される2大系統である。コネル系統は鼻が短くパブ顔をしており、リー系統は鼻がやや長かったと言われている。

日本のペットのミニブタは20年前にアメリカから輸入されたもので、日本で最初に飼われていたのは徳島県で、『あわわ』という徳島県のタウン情報誌の他、メディアを通じ全国的に広まった。体型から見るとコネル系統とリー系統及びその交雑種と思われるだけでなく、いずれにも似ていない個体も散見される。中にはゲッティンゲン(ドイツ・ゲッティンゲン大学で創出された実験用小型ブタ)と称して販売されているミニブタも存在するが、血統書もなく真偽は不明である。

ミニブタの所轄官庁

ミニブタの所轄官庁はあいまいであり、農林水産省の広報によると「法定伝染病にかかれば農林水産省の管轄になりますが、正直な所、豚をペットで飼うことは考えられなかった」という。愛玩鶏の飼育・繁殖については「養鶏」の扱いになるが、ミニブタの飼育については官公庁によってあいまいである。都道府県においても和歌山県畜産課が、県内畜産統計で家畜とした例があるが、自治体によって扱いは異なる。

野生ブタ(野ブタ)

アメリカフロリダ州ケープ・カナベラルの先祖返りしたブタ

ブタが豚舎等から逃げ出し野生化すると、全身に剛毛が生え、牙が伸び(正確には家畜のブタも牙が生えるが、安全のために切っている)、先祖返りしてイノシシ化することがある。イノシシの牙よりブタの牙の方が曲がっているため、これで区別をつける。ブタは西欧諸国により植民地化された大洋に散在する離島に食料として狩るために放され、ハワイなどでも見かけることがある。イノシシとの混血をイノブタと呼ぶ。野生の猪は85パーセントが野生化したブタとの混血であるイノブタであることが判明している[要出典]

ブタを含むことわざ・慣用句・隠語

  • 豚に真珠」 - 価値のわからない者に貴重なものを与えても意味がない、という意味。聖書マタイによる福音書7章6が言葉の由来。同義に日本独自の言葉として「猫に小判」、「馬の耳に念佛」。
  • 豚は太らせてから食え
  • 英語で「When pigs fly(ブタが空を飛んだら)」は、「ありえない」という意味で使われる。
  • 猪(しし)食った報い」 - 悪いことをした報い。中世日本で禁忌とされた肉食を悪事になぞらえている
  • 豚を盗んで骨を施す」 - 大きな悪事の償いに小さな善行をすること。
  • 遼東の豕」 - 世間ではありふれていることを知らずに自分一人で得意になること。遼東では白頭の豚が珍しかったことから。
  • ブタもおだてりゃ木に登る」 - おだてられて調子にのっている人間を揶揄する言葉。福島県会津地方の慣用句だったのが、アニメ『ヤッターマン』放映をきっかけに全国で使われるようになった。
  • 豚児」- 自分の息子をへりくだって言う言葉で、愚息と同意語。現在では使用されることは少ない。
  • メスブタ」-性的にふしだらな女を罵る言葉。女側から自称する場合もある。
  • その他太っている人の代名詞としてブタが用いられるが、豚は体脂肪率が低いため、本来は間違いである。

ブタにちなんだ言葉・事物

  • ブタの貯金箱は、“Pygg”という種類の粘土があったため、陶器職人が“Pig”とのしゃれで作った。
  • おいちょかぶでは「0」のことを、ポーカー等では役が全くないクズ手のことを、それぞれ「ブタ」と呼ぶ。
  • 荷物がたくさん入ったを俗に「ブタカバン」という。

ブタを主人公またはモチーフにした作品

豚は民話西遊記等の古典小説、寓話童話アニメーション等に、擬人化されたキャラクターとしてよく登場する。

  • 小沢正は、擬人化されたブタを主人公とした児童文学を多数発表している。詳細は小沢正を参照。
テレビ番組のマスコットに起用した例
  • あさイチNHK総合2010年-)番組開始当初は本物のミニブタ(名前は「ぶーちゃん」)をマスコットキャラクターとして起用した事がある生活情報番組。
  • SONICMANIA』 tvk2008年-) 本物のミニブタがメインMCを務める音楽情報番組。

脚注

  1. ^ 豚にも自己意識がある?:鏡像を理解できることが判明 原文:WIRED.jp 2009年10月8日掲載
  2. ^ a b c d 社団法人 畜産技術協会調査
  3. ^ 独立行政法人 動物衛生研究所 講演要旨より
  4. ^ a b 国産畜産物安心確保等支援事業 「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」より抜粋
  5. ^ 「オセアニアを知る事典」平凡社 p250 1990年8月21日初版第1刷
  6. ^ 「天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線」野瀬泰申 新潮文庫 p174-176 平成21年3月30日発行
  7. ^ 食肉公正競争規約第4条-5、第10条-5及び、規約に基づく食肉公正競争規約施行規則

関連項目

外部リンク