バーチャルアイドル

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バーチャルアイドル(virtual idol)とは、コンピュータグラフィックスなどの手段で形作られ、インターネットを含む仮想的な場でアイドル歌手グラビアアイドルなど)のように活動を行うキャラクターを表す和製英語である[1][2]仮想アイドルとも呼ばれる。また、特に姿形に3DCGを用いているものについては、CGアイドル[3]バーチャル・リアリティ・アイドル(VRアイドル)[4][5]などと呼ばれたこともある。

概要[編集]

バーチャルアイドルという言葉が知られるようになったのは1990年代からである[6]。同時期はバーチャルリアリティという概念が一般に知られるようになった頃であり、元々の英語バーチャル(virtual)の意味とは異なり、日本では「バーチャル=存在しないもの」と理解され、実在しないアイドル、アニメやゲームに登場する美少女キャラクターを意味する造語としてバーチャルアイドルという言葉が生まれた[7][注 1]。そして同時期、美少女キャラクターをバーチャルアイドルとして育てようという動きも始まり[8]、1996年には芸能事務所による3DCGを使用したバーチャルアイドルも登場した。1990年代末から2000年代初頭にかけてはパーソナルコンピュータの高性能化に伴い、個人のユーザーレベルでShadeなどの3DCGアプリケーションソフトウェアを利用することしてバーチャルアイドルを作り上げようという動きも見られた。2007年には、バーチャルアイドル歌手をプロデュースするというコンセプトの歌声合成ソフト初音ミクが登場し、2013年現在にいたるまで大きな人気を集めている。

歴史[編集]

前史[編集]

バーチャルアイドルという存在が注目されるようになる以前に生まれたキャラクターでも、アニメ『超時空要塞マクロス』(1982年〜)のヒロイン「リン・ミンメイ」や、ラジオ番組「伊集院光のオールナイトニッポン」から生まれた芳賀ゆいなどが、バーチャルアイドルに類する存在として挙げられる場合がある[9][10]。「リン・ミンメイ」は、映像はセル画・声は声優が担当し、作中でこのキャラクターがアイドル歌手として自分の持ち歌(主にポップソング)を振り付きで歌っている。作中で使用された曲が一般の歌謡曲としても販売され、オリコンチャート入りを果たした他、作中に登場する「歩くミンメイ人形」が実際に発売されたり、ミンメイがDJを担当する作内のラジオ番組という設定のLP盤がリリースされるなど、後のバーチャルアイドルのマーチャンダイジング展開を先取りするような様相であったという[11]。「芳賀ゆい」は伊集院光が「『歯がゆい』という名前のアイドルがいたら面白い」というフリートーク内の発言から端を発し、リスナー達のネタハガキによって基本設定や目撃情報を構築していき、理想のアイドル像を作り上げたものである。現実での活動は歌担当、写真媒体担当、握手会の手の担当など複数の女性が行った。その方法論やノウハウは、その後のバーチャルアイドルの商品展開などにも影響を与えている[注 2]

また、SF作品には作内でバーチャルアイドルを描いていると評されたものあり、そうしたものとしてはウィリアム・ギブスンの小説『あいどる』(1996年)、『フューチャーマチック』(1999年)に登場する「投影麗」、アニメ『メガゾーン23』(1985年)に登場する「時祭イヴ」[注 3]、アニメ『マクロスプラス』(1994-95年)に登場する「シャロン・アップル」等が挙げられる[14]

登場初期[編集]

1993年にコナミが、コンピューターゲームツインビーシリーズのヒロイン「ウインビー」をバーチャルアイドルとして育てようという企画「ウインビー国民的アイドル化計画」を始め[8]、1994年にCDも発売された。1994年にコナミが発売した恋愛シミュレーションゲームときめきメモリアルは、メインヒロイン藤崎詩織などがバーチャルアイドルとして人気を呼び、バーチャルアイドルという言葉が世の中に浸透し始めた[15][16]1996年ホリプロ伊達杏子を登場させ、中には声優の麻績村まゆ子[(後に[おみむらまゆこ]]に改名)のように、実体を持たないバーチャルアイドル声優として登場ながら、途中から実体を持つ普通のアイドル声優に路線変更したというケースもあった。

3DCGによるバーチャルアイドル[編集]

1998年には漫画家くつぎけんいちがインターネットでテライユキを発表し、ブームとなった。従来はコンピュータグラフィックス専用に設計されたコンピュータで生成されていたコンピュータグラフィックスが、徐々にパソコン上で生成できるようになっており、インターネット上で個人製作のバーチャルアイドルが多数発表された[3][3]。1999年にはリアル路線の飛飛が発表されて人気となった。

DTMソフトのバーチャルアイドル[編集]

DTMソフトウェアから生まれたのバーチャルアイドルとして、クリプトン・フューチャー・メディアからキャラクター・ボーカル・シリーズの第1弾として2007年8月31日に発売された『初音ミク』がある[17]。このDTMソフトのキャラクターの初音ミクは、声優の藤田咲の音声データーベースを元に、ユーザーが歌詞とパラメーターとしてのMIDI楽曲データを指定し、これをDTMソフトが解析して「歌を歌う」というもので、製作元ではこういう初音ミクのようなキャラクターを『ボーカル・アンドロイド=VOCALOID(ボーカロイド)』と呼んでいる。この初音ミクはDTMソフトとしては異例の販売数となった[18]

初音ミクの人気は新聞やTV番組などのメディアで特集が組まれたり、社会現象として経済界などからも注目を集めた[19]。また、歌手として市販ソフトのイメージソングを単独で歌う[20]、シングル曲のコーラスとして起用される[21]、『現代用語の基礎知識』に収録される[22]、スクリーン上のアニメーションや3次元コンピュータグラフィックスなどによるライブなどもした。

作品・キャラクター[編集]

関連項目[編集]

注釈[編集]

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  1. ^ 1994年から1997年にかけて徳間書店インターメディアが発行していたゲーム雑誌『Virtual IDOL』ではバーチャルアイドルという言葉をゲームに登場する女性キャラクターを指すために使用しつつも、言葉としてはアニメに登場する女性キャラクターを含むと説明している[7]。1999年にアスキーが出版した「Virtual idol collection」との副題を持つ書籍『幻想美少女コレクション』は、アニメやゲームに登場する女性キャラクター達を紹介するものとなっている。
  2. ^ 後にホリプロのバーチャルアイドル「伊達杏子」のプロデュースを担当する堀義貴は、芳賀ゆいの企画にも途中から係わっており、その経験が生かされたとしてる[12]。また、コナミの「ウインビー国民的アイドル化計画」についても、芳賀ゆいの影響を伺わせるとの指摘もある[13]
  3. ^ キャラクターデザインはリン・ミンメイを生み出した美樹本晴彦が手がけている

参考文献[編集]

  1. ^ バーチャルアイドル とは”. デジタル大辞泉. コトバンク. 2013年5月19日閲覧。
  2. ^ バーチャルアイドルとは (Virtual Idol)”. IT用語辞典バイナリ. 2013年5月19日閲覧。
  3. ^ a b c “まさに"この世のもの"とは思えない!!「CGアイドル」の魅力に迫る!”. 週刊!エキサイト (エキサイト): p. 2. (2004年7月13日). http://media.excite.co.jp/News/weekly/040713/topics_p02.html 20113-03-25閲覧。 
  4. ^ 「バーチャル・リアリティ・アイドル 伊達杏子 DK-96 デビュー」、『TVぴあ 関東版』第217号、ぴあ1996年5月25日、 26-29頁。
  5. ^ 『レプリカント. v.6』 竹書房、2000年6月、96-100頁。ISBN 4-8124-0623-4
  6. ^ “コナミ、ゲームソフトからアイドル”. 日刊工業新聞 (日刊工業新聞社): p. 13. (1996年2月1日) 
  7. ^ a b 「”バーチャルアイドル”とは何なのか?」、『Virtual IDOL』第2号、徳間書店インターメディア1995年1月、 76頁。
  8. ^ a b 「美少女アイドルスターの誕生」、『Virtual IDOL』第2号、徳間書店インターメディア1995年1月、 81頁。
  9. ^ 『現代用語の基礎知識. 2007』 自由国民社、2007年、1527頁。ISBN 4-426-10125-5
  10. ^ 中森明夫「初音ミクと「存在しないものの美学」」、『ユリイカ』560(臨時増刊)、青土社、2008年12月、 180頁。
  11. ^ 「虚構と現実の狭間に出現したアイドル」、『メガミマガジン』第3号、学習研究社、1999年、 37頁。
  12. ^ “日本初のCGアイドル 私は「DK96」16歳 来月デビュー”. 読売新聞 (読売新聞社): p. 5. (1996年4月13日) 
  13. ^ “「合い言葉はBee!」へ至る道のり――「ツインビー」”. ITmedia. (2006年3月23日). p. 2. http://www.itmedia.co.jp/games/articles/0603/23/news003_2.html 20113-05-20閲覧。 
  14. ^ 「ミライのクルマー未来派からミクへ」、『S-Fマガジン』第52巻第8号、早川書房、2011年8月、 45頁。
  15. ^ “元祖デジタルアイドル伊達杏子は何度でも蘇る!?”. サイゾー. (2008年7月). http://www.cyzo.com/2008/07/post_679.html 2013年5月19日閲覧。 
  16. ^ “あこがれの君はCG画像 バーチャル・アイドル、タレント並人気”. 読売新聞 (読売新聞社): p. 25. (1996年3月13日) 
  17. ^ 公式ページ
  18. ^ ITmedia News (2007年10月10日). “異例の売れ行き「初音ミク」 「ニコ動」で広がる音楽作りのすそ野”. 2007年11月18日閲覧。
  19. ^ ITpro 吉川日出行 (2007年10月19日). “「初音ミク」に注目すべき理由を考えてみた”. 2007年11月21日閲覧。
  20. ^ CNET Japan (2007年11月17日). “日本一ソフトウェア、PS2用ソフト「トリノホシ」のイメージソングに、初音ミクを起用”. 2007年11月18日閲覧。
  21. ^ bounce.com (2007年11月16日). “Saori@destiny、12月5日に“My Boy”でデビュー。同時収録曲に初音ミクも参加”. 2007年11月18日閲覧。
  22. ^ ITmedia News (2007年11月14日). “「アサヒる」「初音ミク」「ローゼン麻生」、現代用語の基礎知識に”. 2007年11月21日閲覧。

外部リンク[編集]