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'''グリーンランド'''({{lang-kl|'''Kalaallit Nunaat'''}}「人の島」の意、{{lang-da|'''Grønland'''}}「緑の島」の意)は、[[北極海]]と北[[大西洋]]の間に位置する[[世界一の一覧|世界最大]]の[[島]]である(日本の面積の5.73倍)<ref>岸上伸啓 2014年 『グリーンランド写眞帳-ヌーク-篇』 札幌:風土デザイン研究所</ref>。[[デンマーク]]の旧[[植民地]]。現在はデンマーク本土、[[フェロー諸島]]と対等の立場で[[デンマーク王国]]を構成しており、独自の自治政府が置かれている<ref>[http://www.minpaku.ac.jp/sites/default/files/museum/exhibition/thematic/greenland20140904/encyclopedia_greenland.pdf encyclopedia_greenland.pdf]:グリーンランド百科事典([http://www.minpaku.ac.jp 国立民族学博物館] - [http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/thematic/greenland20140904/exhibition 企画展「未知なる大地 グリーンランドの自然と文化」|展示概要 | 国立民族学博物館])</ref>。
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大部分が[[北極圏]]に属し、全島の約80%以上は[[氷床]]と[[万年雪]]に覆われる。巨大な[[フィヨルド]]が多く、氷の厚さは3,000m以上に達する所もある。居住区は沿岸部に限られる。現在、予想よりも早い速度で氷床の融解が進んでおり<ref>{{Cite web|title=グリーンランドの氷消失、予想より速く進行 研究|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3259068|website=www.afpbb.com|accessdate=2020-09-07|language=ja}}</ref>、環境や経済の面で大きな影響が考えられる<ref>{{Cite web|title=氷河が溶け続けるグリーンランド 地球温暖化で「砂ビジネス」に恩恵も?|url=https://forbesjapan.com/articles/detail/36570|website=Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)|date=2020-08-22|accessdate=2020-09-07|language=ja}}</ref>


[[カナダ]]との国境線上にある[[ハンス島]]の領有をめぐって、カナダとデンマークの間で係争中である。
[[カナダ]]との国境線上にある[[ハンス島]]の領有をめぐって、カナダとデンマークの間で係争中である。
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=== 米国による購入計画 ===
=== 米国による購入計画 ===
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2019年8月、[[アメリカ合衆国]]の[[ドナルド・トランプ]]大統領はグリーンランドの購入について「戦略的に興味深い」と発言した<ref>{{Cite web|url=https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-19/PWGIJQT1UM0Z01|title=トランプ氏、グリーンランド購入「興味深い」-デンマークは売却排除 |date=2019-08-19 |work= |publisher=bloomberg.net |accessdate=2019-08-21}}</ref><ref>{{Cite news|title=「グリーンランド買いたい」「売らない」 トランプ氏、デンマーク訪問を中止|url=https://www.bbc.com/japanese/49416875|work=BBCニュース|accessdate=2020-09-07|language=ja}}</ref>。しかし、デンマークの[[メッテ・フレデリクセン]]首相は「グリーンランドは売り物ではない」として拒否している<ref>{{Cite web|url=https://www.yomiuri.co.jp/world/20190821-OYT1T50284/|title=デンマーク首相「グリーンランドは売り物ではない」…トランプ氏との会談延期|accessdate=2019年8月21日|publisher=読売新聞(2019年8月21日作成)}}</ref>。それをうけトランプ大統領は9月に予定されていたデンマーク訪問を取りやめた<ref>{{Cite news|title=「グリーンランド買いたい」「売らない」 トランプ氏、デンマーク訪問を中止|url=https://www.bbc.com/japanese/49416875|work=BBCニュース|accessdate=2020-09-07|language=ja}}</ref>。


なお、アメリカによるグリーンランド購入計画は過去にもあり、1946年に当時の[[ハリー・S・トルーマン]]大統領がデンマークに対し、1億ドル相当の金<ref>2019年現在の価値で約13億ドル、日本円で約1400億円。</ref>での購入を打診していた<ref>{{Cite web|url=https://www.businessinsider.jp/post-196843|title=グリーンランドを買いたいトランプ大統領…… だが「売り出し中」ではないし、そうだとしても高額に|accessdate=2019年8月21日|publisher=BUSINESS INSIDER JAPAN(2019年8月20日作成)}}</ref>。
なお、アメリカによるグリーンランド購入計画は過去にもあり、1946年に当時の[[ハリー・S・トルーマン]]大統領がデンマークに対し、1億ドル相当の金<ref>2019年現在の価値で約13億ドル、日本円で約1400億円。</ref>での購入を打診していた<ref>{{Cite web|url=https://www.businessinsider.jp/post-196843|title=グリーンランドを買いたいトランプ大統領…… だが「売り出し中」ではないし、そうだとしても高額に|accessdate=2019年8月21日|publisher=BUSINESS INSIDER JAPAN(2019年8月20日作成)}}</ref>。
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** 機械類、食料、石油製品など。
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== 歴史 ==
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本国のデンマーク人に対する意味での[[先住民族]]は[[カラーリット]]であるが、彼らの入植はグリーンランド史においては比較的浅い方である。[[アメリカ先住民]](インディアン)に近縁と思われる入植者の波が数度にわたってあり、その後[[アイスランド]]の[[ヴァイキング]]が、最後にカラーリットが入植した。



2020年9月7日 (月) 21:29時点における版

グリーンランド
Kalaallit Nunaat(グリーンランド語)
Grønland(デンマーク語)
グリーンランドの旗 グリーンランドの紋章
地域の旗 地域の紋章
地域の標語:なし
地域の歌:Nunarput utoqqarsuanngoravit(グリーンランド語)
祖国よ、汝はいと星霜重ねり
グリーンランドの位置
公用語 グリーンランド語
主都 ヌーク
最大の都市 ヌーク
政府
女王 マルグレーテ2世
高等弁務官英語版 ミカエラ・エンゲル英語版
自治政府首相キム・キールセン
面積
総計 2,166,088km211位
水面積率 83.1%
人口
総計(2018年 55,877人(N/A
人口密度 0.028人/km2
GDP(自国通貨表示)
合計(2005年 102億デンマーク・クローネ
GDP(MER
合計(2005年17億ドル(N/A
1人あたり xxxドル
GDP(PPP
合計(2001年11億ドル(190位
1人あたり 20,000ドル
自治開始1979年5月1日
通貨 デンマーク・クローネDKK
時間帯 UTC±0〜-4 (DST:+1〜-3)
ISO 3166-1 GL / GRL
ccTLD .gl
国際電話番号 299
地図

グリーンランドグリーンランド語: Kalaallit Nunaat「人の島」の意、デンマーク語: Grønland「緑の島」の意)は、北極海と北大西洋の間に位置する世界最大である(日本の面積の5.73倍)[1]デンマークの旧植民地。現在はデンマーク本土、フェロー諸島と対等の立場でデンマーク王国を構成しており、独自の自治政府が置かれている[2]

大部分が北極圏に属し、全島の約80%以上は氷床万年雪に覆われる。巨大なフィヨルドが多く、氷の厚さは3,000m以上に達する所もある。居住区は沿岸部に限られる。現在、予想よりも早い速度で氷床の融解が進んでおり[3]、環境や経済の面で大きな影響が考えられる[4]

カナダとの国境線上にあるハンス島の領有をめぐって、カナダとデンマークの間で係争中である。

政治

一院制の議会(ランスティング)は31人の議員で構成されており、4年に一度住民からの直接選挙で選出される。ただし解散が認められている。主要政党進歩党連帯党イヌイット友愛党など。また、デンマーク本土の議会(フォルケティング)にも2議席が割り当てられており、グリーンランド議会とは別に選挙で議員が選出される。

議院内閣制が採用されており、議会から選出された自治政府首相が行政府を率いる。北欧理事会に加盟している。

EUとの関係

デンマーク欧州連合(EU)の前身である欧州共同体(EC)に加盟した際、グリーンランドもその一部として加盟した。しかしその後、グリーンランド自治政府は高度な自治権を獲得し、1985年にECを離脱した。

グリーンランドの住民は、EUに加盟するデンマーク本国の国籍市民権を持つため、グリーンランド自体はEUに属さないながらも、EUの市民権を自動的に持つことになる。ただし、EUでの選挙権欧州議会等の選挙権)はグリーンランド全体が選挙区外となっており、行使できない。

独立への動き

本国デンマークとは地理的にも文化的にも離れており、中国の資源開発計画を背景に独立を求める声が高まっている[5]

デンマークによる植民地支配が長く続いたが、1979年5月に自治政府が発足し高度な自治権を獲得した。2008年11月、グリーンランドで自治拡大を問う住民投票が行われた。開票の結果、賛成75.54%、反対23.57%で承認された。投票率は71.96%だった。エノクセン首相は「遠くない将来に完全独立が実現することを望む」と語った。これにより公用語をグリーンランド語と明記し、警察と司法、沿岸警備などの権限が中央政府から自治政府に移譲されることとなった。また、これまで本国と二分していた地下資源収入について、7500万デンマーク・クローネまでを自治政府の取り分として、残りの超過分を本国と折半することが盛り込まれている。2009年6月21日に施行された。

グリーンランドは、島内のほとんどの土地が厚い氷に覆われており、地下資源の採掘が困難であった。しかし、地球温暖化の影響で少しずつ氷が溶解しており、今後採掘のスピードが速まると予想される。グリーンランド周辺には大規模な油田が存在するとされており[6]、地下資源収入が経済的にグリーンランドを支え、デンマークからのグリーンランド独立が容易になるとも指摘される。特にレアアースは世界最大規模の鉱床であるクベーンフェルド英語版があり、中国企業の盛和資源がグリーンランド・ミネラルズ英語版の筆頭株主になって採掘を行っている[7]

米国による購入計画

2019年8月、アメリカ合衆国ドナルド・トランプ大統領はグリーンランドの購入について「戦略的に興味深い」と発言した[8][9]。しかし、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は「グリーンランドは売り物ではない」として拒否している[10]。それをうけトランプ大統領は9月に予定されていたデンマーク訪問を取りやめた[11]

なお、アメリカによるグリーンランド購入計画は過去にもあり、1946年に当時のハリー・S・トルーマン大統領がデンマークに対し、1億ドル相当の金[12]での購入を打診していた[13]

軍事

グリーンランドの防衛はデンマーク軍が担当している。なお、グリーンランドの住民は徴兵制の対象とされておらず、兵役義務が免除されている[14]

地方行政区分

地理

沿岸部を除く島の大部分が氷床に覆われている。

グリーンランドは北アメリカ大陸の北、北極海と北大西洋の間、カナダの北東に位置する。世界最大の島で、領域は北緯59度50分から83度37分の範囲に広がる。経度では西経10度から70度の範囲を占め、島の大半が北極圏に位置する。北西部では約30km離れたカナダのエルズミーア島ネアズ海峡をはさんで隣接し、南東約300kmにはデンマーク海峡をはさんでアイスランドがある。

気候区分は北極圏から準北極圏に属し、涼しい夏と寒い冬を特徴とする。地形はほぼ平坦だが、沿岸部以外は氷床に覆われる。最北部は空気が乾燥しているためが降らず、に覆われていない。もしグリーンランドの氷床が全て融けたならば、現在よりも7.2mほど海面が上昇するという[16]。最高峰は東部のアイスランド対岸にあるギュンビョルン山(Gunnbjørn)の3,694m、全北極圏で最も高い場所である。資源は鉱物と海産物である。亜鉛氷晶石石炭モリブデンプラチナウランなどが採掘され、魚介類アザラシクジラなどが捕獲される。

オーストラリア大陸とグリーンランドの比較

なお、メルカトル図法の地図では極地に近いほど実際の面積比率より拡大表示されるため、グリーンランドはオーストラリア大陸に比べ面積が大きく見える。実際のグリーンランドの面積はオーストラリア大陸の約29%で両者には500万平方kmもの差があり、その違いは歴然としている。

面積2,166,086平方kmの81%である1,755,637平方kmを氷床が覆う。氷の厚さは沿岸近くで1,500m、内陸部で3,000mに達する。氷の重さで島の中央部の地面は海面より300mも低い。氷は中央部から周囲の海岸へゆっくり流れている。海岸線の長さは39,330kmに及び赤道の長さに匹敵する。

町や居住地は氷が無いところに存在する。人口は島の西海岸に集中している。内陸部のほとんどは厚い氷で覆われている。北東部は世界最大の国立公園である北東グリーンランド国立公園となっている。

民族

民族構成(グリーンランド)
カラーリット
  
88%
デンマーク人
  
12%

カラーリットが85 - 90%で、このうち約1万1000人が先住のイヌイット。その他、カラーリットと北欧系の混血デンマーク人など。

言語

公用語はグリーンランド語であり、主に3つの方言に分かれている。独立志向が強まっていることを受けて、2009年にデンマーク語は公用語から外されたものの全人口の12%の母語であり、行政・教育等で使われ、ほぼ全ての住民が理解できる準公用語的な言語となっている。

経済

主要産業は漁業とその加工業で、これらのみで輸出の87%を占める。特にエビはその半分以上を占めており、日本向けにもロイヤル・グリーンランド社を通じて多くのエビが輸出されている。そのほかに更なる成長が期待される産業に観光業があげられる。ただし、観光に適する季節が限られること、旅費がかさむため敬遠されがちなことが難点となっている。

鉱物資源の探査も進行中である。多量の原油埋蔵可能性が指摘されており[6][17]、石油資源等の開発のために国営石油NUNAOILが設立されたが、生産開始にはまだ当分時間がかかる。鉱物資源開発の国営Nunamineralは新たに始まった金鉱開発への投資を募るためコペンハーゲン株式市場に上場した。金属価格が上昇しているため、ウランアルミニッケルプラチナタングステンチタンなどにも関心が集まっている。

デンマーク本国からの多額の助成金もグリーンランド経済を支えており、2005年には約31億クローネに上っている。

  • GDP成長率 2.0%(2005年)
  • インフレ率(CPI)2.3%(2006年1月-2007年1月)
  • 輸出24億クローネ(f.o.b/2005年)
    • 魚介類とその加工品など。
  • 輸入36億クローネ(c.i.f/2005年)
    • 機械類、食料、石油製品など。
南部の農場
900年、1100年、1300年、1500年時点での、アイスランド、グリーンランド、ラブラドル半島、ニューファンドランド島、その他カナダの北極圏の島における民族の移り変わりの推定図。緑がドーセット文化、青がトゥーレ文化、赤がノース人、黄色がイヌ(Innu)、オレンジがベオスック. 緑:ドーセット (Dorset culture) 、黄:インヌ (Innu) 、青:トゥーレ、橙:ベオサック (Beothuk) 、茶:ノース.

歴史

近年のゲノム解析により約4000年前に、シベリアからグリーンランドへ古エスキモーの人々が移住したことが明らかになった[18][19]。サッカック時代の遺跡のほとんどの発見は、サッカクの遺跡を含むディスコ湾の周辺で行われ、その文化にちなんで名付けられた。次のドーセット文化は、西海岸と東海岸の両方のグリーンランド沿岸地域全体に広がった。

本国のデンマーク人に対する意味での先住民族カラーリットであるが、彼らの入植はグリーンランド史においては比較的浅い方である。アメリカ先住民(インディアン)に近縁と思われる入植者の波が数度にわたってあり、その後アイスランドヴァイキングが、最後にカラーリットが入植した。

982年赤毛のエイリークがグリーンランドと命名し、入植が始まった。しかし、15世紀ごろにヴァイキングの入植地は全滅し、住民はカラーリットのみとなり、西洋の歴史から一時姿を消した。

16世紀半ばに再発見され、18世紀ゴットホープ植民地が作られた。同時に布教も行われた。1917年以降はデンマークの支配が全島に及び、1953年本国の県と同様の自治権を得た。1973年デンマークのヨーロッパ共同体(EC)加盟と共に、ECの漁船操業と漁獲高に関する規定がデンマーク本国とその領土に適用されたが、グリーンランド住民は反発し自治を要求。1979年5月に自治政府が発足し、グリーンランドはデンマークの自治領となった。1985年グリーンランド政府はECを離脱した。

「グリーンランド」の由来

デンマーク語ではグレーンランド(Grønland)と発音し、「緑の島」を意味する。

エイリークはグリーンランド上陸より前、アイスランドを発見していた。彼が命名したアイスランドは、その名称故に入植希望者が現れなかった。そこで彼はこの地に入植希望者が多数現れることを願い、「緑の島」と名付けた。

その他にもGruntland(グラウンドランド)が訛ったという説、あるいは氷河に覆われていない南部海岸地帯がエイリークの頃の中世の温暖期には緑にあふれていたという説もある。

赤毛のエイリーク

ヴァイキングによる入植の先駆けとなったのはノルウェー生まれのアイスランドヴァイキング・赤毛のエイリークである。982年頃殺人を犯したエイリークは3年間国外追放とされる。「赤毛のエイリークのサガ」によると、彼はこの3年間でグリーンランドの海岸を探索することとなった。

アイスランドに戻ってからはグリーンランドについて吹聴する。985年には西海岸に2つの植民地が作られる。その一方が現在の首都ヌークである。

スポーツ

サッカーは、グリーンランドの国技である。トップリーグはコカコーラGM (Coca Cola GMと呼ばれる。気候の関係で天然芝が使用できないため、人工芝などが使用されている。過去にUEFA加盟を計画したこともあったが、現在グリーンランドサッカー協会 (Football Association of GreenlandFIFAUEFAには加盟せず、国際フットボール連合スペイン語版に加盟しているため、サッカーグリーンランド代表FIFAワールドカップ予選に参加していない。2007年にFIFAが国際試合で人工芝の使用を許容する決定を下し、2009年6月21日にグリーンランドがそれにあわせた規約変更を行ったことで、FIFAが加盟申請を受諾する可能性があり、地域的にはUEFAとCONCACAFのどちらかに加盟することが考えられる[誰?]

また、グリーンランド代表はFIFIワイルドカップエルフカップ (ELF Cupに参加した。

ハンドボールの分野では、グリーンランドハンドボール連盟1998年国際ハンドボール連盟に加盟、ハンドボールグリーンランド代表が2001年より世界選手権に出場している。2007年世界男子ハンドボール選手権に参加し、24チーム中22位で競技を終えた。

グリーンランドは2年に一度開催されるアイランドゲームズ (Island Games北極圏冬季体育大会 (Arctic Winter Gamesに参加している。

グリーンランドの都市の一覧

(※太字は首都)

氷山とグリーンランド

西グリーンランド

東グリーンランド

北グリーンランド

南グリーンランド

交通

島内外との最も重要な交通手段は航空機である。グリーンランドの主要空港は、カンゲルルススアークにあるカンゲルルススアーク空港である。最大の島外路線は、カンゲルルススアーク-コペンハーゲン線である。2007年5月にエア・グリーンランドがカンゲルルススアークとアメリカのボルチモアを結ぶ季節便を就航させたが[20]、赤字のため2008年3月に路線が廃止された[21]。 これらの路線以外の島外路線は、ナルサルスアーク-コペンハーゲン線、レイキャヴィーク-イルリサット線、東海岸のクルスク-レイキャヴィーク線、ケプラヴィーク-ヌーク線である。グリーンランド島内路線のハブ空港はカンゲルルススアークである。

船舶による旅客と貨物の輸送は、アークティック・ウミアック・ライン(AUL)が運航する沿岸フェリーによって行なわれているが、片道80時間かかる往復路線が週1便あるだけである。

島内の都市間を結ぶ陸路はない。フィヨルドが非常に多く陸路の整備は困難である。

環境

海洋汚染

1993年から1994年にかけての調査で、人体へ蓄積した有害物質濃度が測定されている[22]

  1. 人体の皮下脂肪組織中のポリ塩化ビフェニル濃度は、脂質1kg中17mg[23]
  2. 人体の皮下脂肪組織中のΣDDT濃度は、4052µg[24]
  3. 人体の皮下脂肪中のヘキサクロロベンゼン濃度は、692µg[25]
  4. 各臓器に蓄積されている水銀およびそこに含まれる括弧つきのメチル水銀濃度は、臓器1kg中µgでそろえて、腎臓で600(50) 肝臓で400(80) 脾臓で60(30)[26]

グリーンランドには、汚染源となるような化学工場がないため、北大西洋海流に流されてきた汚染物質が沖に溜まり、生物濃縮された魚介類を食べていることが原因とみられる。1. 2. 3. 4. に挙げた以外には、セレンも摂取している。

地球温暖化

地球温暖化の影響で、島内の氷床の融解が進んでいる。氷床の末端は、川の流れのような溢流氷河を形成して海へ向けて長い時間をかけて移動するが、溢流氷河の移動は融解が進むにつれ速度を増す傾向にあり、1000年後にはグリーンランドから氷床が消えてしまうとするデータも公表されている[27]

日本との関わり

冒険家の植村直己は、グリーンランドのシオラパルクに9か月滞在し、犬ぞり操作や狩猟の技術を学び、北極点に単独到達などを成功させた。大島育雄は、シオラパルクに住み、1974年にグリーンランド人と結婚しハンターとして生きている[28]

脚注

  1. ^ 岸上伸啓 2014年 『グリーンランド写眞帳-ヌーク-篇』 札幌:風土デザイン研究所
  2. ^ encyclopedia_greenland.pdf:グリーンランド百科事典(国立民族学博物館 - 企画展「未知なる大地 グリーンランドの自然と文化」|展示概要 | 国立民族学博物館
  3. ^ グリーンランドの氷消失、予想より速く進行 研究”. www.afpbb.com. 2020年9月7日閲覧。
  4. ^ 氷河が溶け続けるグリーンランド 地球温暖化で「砂ビジネス」に恩恵も?”. Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (2020年8月22日). 2020年9月7日閲覧。
  5. ^ グリーンランドで独立目指す動き-中国資本活用計画が背景”. ブルームバーグ (2013年2月25日). 2019年8月26日閲覧。
  6. ^ a b 布施 哲史, 金原 靖久, 佐藤 隆一、「氷海域の石油探鉱 -グリーンランドとカヌマス・プロジェクトの例」 『石油技術協会誌』2015年 80巻 1号 p.27-37, doi:10.3720/japt.80.27
  7. ^ US enticed by Greenland’s rare earth resources”. ファイナンシャル・タイムズ (2019年8月20日). 2019年8月26日閲覧。
  8. ^ トランプ氏、グリーンランド購入「興味深い」-デンマークは売却排除”. bloomberg.net (2019年8月19日). 2019年8月21日閲覧。
  9. ^ 「グリーンランド買いたい」「売らない」 トランプ氏、デンマーク訪問を中止」『BBCニュース』。2020年9月7日閲覧。
  10. ^ デンマーク首相「グリーンランドは売り物ではない」…トランプ氏との会談延期”. 読売新聞(2019年8月21日作成). 2019年8月21日閲覧。
  11. ^ 「グリーンランド買いたい」「売らない」 トランプ氏、デンマーク訪問を中止」『BBCニュース』。2020年9月7日閲覧。
  12. ^ 2019年現在の価値で約13億ドル、日本円で約1400億円。
  13. ^ グリーンランドを買いたいトランプ大統領…… だが「売り出し中」ではないし、そうだとしても高額に”. BUSINESS INSIDER JAPAN(2019年8月20日作成). 2019年8月21日閲覧。
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  24. ^ 1983年の調査で、アメリカ1670、フィンランド330、カナダ2630。1988年の調査でアメリカ357
  25. ^ 1983年の調査でアメリカ31 カナダ10 フィンランド20
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  28. ^ 国立民族学博物館グリーンランド特別展掲示物

参考文献

  • ジャレド・ダイアモンド 『文明崩壊 —滅亡と存続の命運を分けるもの—』 草思社、2005年12月21日。ISBN 4794214642
  • 岸上伸啓 『グリーンランド写眞帳-ヌーク篇-』風土デザイン研究所、2014年9月10日。ISBN 978-4-9905024-5-4 (C1039)

関連項目

外部リンク

  • Naalakkersuisut:グリーンランド自治政府 (グリーンランド語)(デンマーク語)(英語)
  • https://www.vestnordisk.is:Vestnordisk Råd 西北欧理事会 (アイスランド語)(グリーンランド語)(フェロー語)(英語)