エスキモー

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イヌイット から転送)
イヌイットの家族
(1917年の雑誌"National Geographic Magazine"より)
イグルー内部

エスキモー (Eskimo) は、北極圏シベリア極東部・アラスカカナダ北部・グリーンランドに至るまでのツンドラ地帯に住む先住民族の総称である。

目次

[編集] 生活と文化

で造ったイグルー等に居住し、魚や海獣を捕って生計をたて、カヤックイヌぞりによる移動生活をおくっていた。イグルーは移動するときに使うもので、常に住んでいるわけではない。

[編集] 食生活

伝統的なエスキモーでは、食生活は狩猟によって得た生肉が中心であった。獲物は漁を中心とするエスキモーはアザラシクジラ等、また陸での猟をするエスキモーはカリブー(トナカイ)などである。生肉の他は、ツンドラの原野に自生するコケモモの実などを食することもあるが、農業は不適な土地なので穀類を食べることはなかった。 また、極寒の土地であり発酵食品を含む)はエスキモーには存在しないという定説が以前はあったが、グリーンランドのイヌイットでは海鳥の発酵物キビヤックを食する習慣があることがわかり、この定説は過去のものである。

かつては入手が不安定で極めて限られた食料による極限的生活を送っており、生産労働に従事できない老人病人は遺棄することが一般に行われた。現在ではその様な習慣はない。

現在では、アメリカの食文化が流入しており、伝統的な食文化は破壊されつつある。この結果、伝統的な食事からは得られていたビタミン類などの栄養成分が不足してしまうという問題も起きている。

いくつかのイヌイットの町ではアルコール類を購入するのにポイント制度を導入している。これは酒類を飲み過ぎてトラブルを起こすイヌイットが大勢いる事などから対策として考え出された制度である。成人は1ヶ月間につき30ポイント分のアルコール購入券を受け取る。酒を買いたい時は店へ行き現金を払うと共にそのアルコール購入券も一緒に店に渡してアルコール類を購入する。アルコール購入券がなくなるといくら現金があっても店は客にアルコール類を売らない。この制度の導入により過度の飲酒によりトラブルを起こす者がかなり減ったと言われる。なお、このポイントは、ビール1缶1ポイント、ワイン1本5ポイント、ウィスキー1本10ポイント、等となっている。

[編集] 宗教

現在のエスキモーは、ほぼ全員がクリスチャンである。伝統的エスキモーは、シャーマニズムを信仰していたが、1920年代1930年代改宗が進んだ。改宗が進んだ原因として、キリスト教宣教師がシャーマンによる医術のでたらめを暴露し、西洋医学で病人を治療することにより、民衆の信望を集めたとする説が有力であるが、当時としては特段の理由があったわけではなく、キリスト教が単なるファッションとして受けたとする説も有力である。なお、エスキモー・クリスチャンは一枚岩ではなく、宗派により対立することが知られている。

[編集] 民族・部族

なお、エスキモーとは単一の民族を指す言葉ではなく、大きくはアラスカ北部以東に住むイヌイット(Innuit)系(東部集団)とアラスカ中部以西のユピク(Yupik)系(西部集団)に分けられる。なおグリーンランドでは、カラーリットと呼ばれている。

総人口約9万人のうちグリーンランド人住民が最も多く、4万1,000人。アラスカ3万2,000人。カナダ1万2,000人。シベリア1,200人を数える。

[編集] 言語

[編集] 捕鯨への圧力

エスキモーには国際捕鯨委員会(IWC)から先住民生存捕鯨の枠が認められている。シベリアのエスキモーの住む地域では食料事情が悪く捕鯨は必要不可欠である。しかし先進国からは伝統的な方法での捕獲を求められており、環境保護団体から捕鯨そのものへの批判がある。

[編集] 呼称

「エスキモー」という言葉は、東カナダに住むクリー族の言葉で「生肉を食べる者」を意味する語であるとよく言われるが、これは民間語源である。「エスキモー」とは、アラスカエスキモーと居住域が隣接していた亜極北のアルゴンキン系インディアンの言葉で「かんじきの網を編む」という意味である。

カナダでは1970年代ごろから「エスキモー」を差別用語と位置づけ、彼ら自身の言葉で「人々」を意味する「イヌイット[1]が代わりに使用されている。カナダでの動きを受け、日本のマスコミ・出版界でも「エスキモー」は差別用語であるとの認識が広がり、「イヌイット」に置き換えられるようになった[2]

しかし、アラスカにおいては「エスキモー」は公的な用語として使われており、使用を避けるべき差別用語とはされていない。本人達が「エスキモー」と自称している場合は置き換えないマスコミも多い。

[編集] 「エスキモー」呼称の問題

「エスキモー」という呼称はある時期においてしばしば侮蔑的に使用された。これには、生肉を食べる行為[3]を野蛮であるとみなす人々の偏見などが背景にある。しかし、現地語にはそのような意味はまったくない。

[編集] 「イヌイット」呼称の問題

「イヌイット」は、本来北方民族のうち最大数を占めているカナダのバフィン島グリーンランド方面に住む集団(東部集団)についての呼称である。このため、北方民族の総称としての「エスキモー」を単純に「イヌイット」に置き換えると、置き換えの結果としての「イヌイット」なのか、原意の「イヌイット」なのか区別が付かない。

イヌイット以外の集団への呼称について、正確を期す場合には、アラスカエスキモーは「イヌピアト」(Inupiat)、シベリアセントローレンス島に住む集団は「ユーピク」(Yupik)と呼ぶ。この観点からは、別の集団の呼称である「イヌイット」の名で彼らを呼ぶことは明らかな間違いである。

また、「イヌイット」という呼称は、本来「人々」を意味する言葉でもなかったとされている。先住民運動の高まりの中で、これまで他者から「エスキモー」と呼ばれてきた集団が自らを指す呼称が必要となり、「イヌイット」という言葉を採用したのである[4]

[編集] 補注

  1. ^ 彼らの言語に促音は存在しないので「イヌイト」のほうがより正確である。
  2. ^ この置き換え主張自体は1920年代にもあった。
  3. ^ 植物の育たない極地において、生肉食はビタミン類などの必須栄養素を摂る唯一の手段である。
  4. ^ スチュアート・ヘンリ「民族呼称とイメージ―「イヌイト」の創成とイメージ操作」『民族学研究』第63巻2号、1998年9月

[編集] 外部リンク

「業績一覧」におけるレポートが詳しい。