鬼平犯科帳 (テレビドラマ)

鬼平犯科帳 > 鬼平犯科帳 (テレビドラマ)

『鬼平犯科帳』（おにへいはんかちょう）は、池波正太郎の同名時代小説を原作としたテレビ時代劇である。NET（現：テレビ朝日）系とフジテレビで放送された。

解説

池波正太郎原作のテレビ時代劇。東宝及び松竹が制作し、NET系とフジテレビ系で放映された。主人公・長谷川平蔵を八代目松本幸四郎、丹波哲郎、萬屋錦之介、二代目中村吉右衛門が演じている。NET版は開始当初モノクロで、第1シリーズ第27話（1970年4月7日放送）からカラー放送となった。

TV作品における最初の長谷川平蔵役は歌舞伎役者の八代目松本幸四郎で、このTVシリーズは「原作のイメージそのまま」という高い評価を受けた。これは幸四郎の演技力もさることながら、原作者の池波が長谷川平蔵の人物像を構築する際に、劇作を通じて親交があった幸四郎の面持ちや人となりを少なからずモデルにして書いたため。後年テレビ版で4代目の長谷川平蔵を演じた幸四郎の次男・二代目中村吉右衛門はインタビューなどで、「あて書きなんだから親父は素のまま演じれば良かったが、自分はそういうわけに行かないのでそう簡単にはいかない」といった心境を告白している。

その吉右衛門は最初のTVシリーズで平蔵の息子・辰蔵を演じ、親子共演している。彼は実父そっくりの風貌を理由に、2作目のTVシリーズを作成する際、是非長谷川平蔵をと懇願されたが、実際の平蔵に比べ若過ぎることを理由に断っている。そして4作目のTVシリーズになって、長谷川平蔵が火付盗賊改方に着任した頃とほぼ同じ年齢になったため、ようやく演じることになったという経緯がある。なお吉右衛門によれば、原作者の池波からも吉右衛門が平蔵と同年代になれば演じて欲しい（幸四郎は実際の平蔵に比べてかなり年上だった）と当初から言われていたのだともいう。 原作を使い切ったらドラマは終了する、つまり原作に基づかないドラマは制作しないという原作者との取り決めによって、中村吉右衛門版が全作品（池波の死によって未完となった遺作は、エンディングをシナリオライターが補った）をドラマ・映画化した2001年の第9シリーズを最後にシリーズは一旦終了となった。ただし幸四郎の時代に、当時連載中だった原作の小説が数量的にドラマの放送回数に間に合わなくなるという事態が起こり、窮余の策として『鬼平犯科帳』以外の池波作品から転用できるものを池波の諒承を得たうえで書き換えたドラマ・オリジナル脚本が数作あり、これが吉右衛門版でも再使用されている。これとは別に、吉右衛門の時代には数篇の原作をひとつにまとめたスペシャル版を制作することがよくあった。

こうした手法を使うことにより、鬼平ファンからの放送復活を望む強い声に応えるかたちで、2005年から年1作程度のペースで鬼平犯科帳スペシャルが制作されている。

各シリーズ

各シリーズ名は以下のとおり：

• 『鬼平犯科帳』 （制作：東宝、主演：八代目松本幸四郎）
• 『新・鬼平犯科帳』（制作：東宝、主演：八代目松本幸四郎）
• 『鬼平犯科帳』 （制作：東宝、主演：丹波哲郎）
• 『鬼平犯科帳』 （制作：東宝、主演：萬屋錦之介）
• 『鬼平犯科帳』 （制作：松竹、主演：二代目中村吉右衛門）

八代目幸四郎版

スタッフ

• 原作：池波正太郎
• プロデューサー：宮崎慎一（NET）、市川久夫（東宝）、香取雍史（第2シリーズでは協力プロデューサー）
• 音楽：山下毅雄
• 制作：東宝
• 放送：NET系

キャスト

• 長谷川平蔵：八代目松本幸四郎
• 久栄：淡島千景（第1シリーズ）→風見章子（第2シリーズ）
• 辰蔵:二代目中村吉右衛門（第2シリーズのみ）
• 天野甚蔵：平田昭彦（第1シリーズのみ）
• 佐嶋忠介：黒川弥太郎
• 酒井祐助:竜崎勝
• 木村忠吾:古今亭志ん朝
• 彦十:河村憲一郎（第2シリーズ）
• 粂八:牟田悌三（第1シリーズ）→寺尾聰（第2シリーズ）
• おまさ:富士真奈美
• 伊三次：堺左千夫
• 五鉄の三次郎:江戸家猫八
• 岸井左馬之助:加東大介
• 沢田小平次:長谷川明男
• 村松忠之進:砂塚秀夫（第1シリーズ）→北川陽一郎（第2シリーズ）
• 山田市太郎:池田駿介
• 竹内孫四郎:市川五百蔵（第1シリーズ）→武田昌之（第2シリーズ）
• 山崎国之進:北川陽一郎
• 小柳安五郎:小鹿敦（第1シリーズ）→高瀬敏光（第2シリーズ）

• 語り:中江真司

各話のタイトル

第1シリーズ（1969年10月7日～1970年12月29日、NET系 火曜21時台時代劇枠）

話数	放送日	サブタイトル	脚本	監督	ゲスト
1	1969年 10月7日	血頭の丹兵衛	柴英三郎	高瀬昌弘	市川中車、亀井光代、山本耕一
2	10月14日	四度目の女房	野上龍雄	小野田嘉幹	林与一、林美智子
3	10月21日	谷中いろは茶屋	井手雅人 永井素夫		神田隆、春川ますみ
4	10月28日	蛇の眼	田坂啓		西村晃、小池朝雄、川口小枝、鶴見丈二、梅津栄
5	11月4日	怪談さざ浪伝兵衛	野上龍雄	小林恒夫	市川五百蔵、白石奈緒美、菱見百合子
6	11月11日	本所・桜屋敷	井手雅人	高瀬昌弘	浜木綿子
7	11月18日	暗剣白梅香	小川英		山吹まゆみ、江原真二郎
8	11月25日	密偵（いぬ）	井手雅人	小野田嘉幹	近藤洋介、片山真由美、中谷一郎、横森久
9	12月2日	唖の十蔵	下飯坂菊馬		田中邦衛、浜田寅彦、小笠原良智、赤沢亜沙子
10	12月9日	女掏摸（めんびき）お富	新藤兼人	吉村公三郎	加藤武、宇津宮雅代、田代信子
11	12月16日	老盗の夢	井手雅人	渡邊祐介	山形勲、根岸明美、大友純
12	12月23日	妖盗葵小僧	柴英三郎	高瀬昌弘	早川保、市村俊幸、中井啓輔、山田芳夫
13	12月30日	埋蔵金千両	池田一朗	古川卓巳	市川五百蔵、菅井一郎、左時枝、玉川伊佐男
14	1970年 1月6日	お雪の乳房	新藤兼人	吉村公三郎
15	1月13日	むかしの女	安倍徹郎	高瀬昌弘	沢村貞子、本間文子、江見俊太郎
16	1月20日	駿州宇津谷峠		古川卓巳	三上真一郎、田中春男、池田忠夫
17	1月27日	熊五郎の顔	田坂啓	小林恒夫	沢りつお、土屋嘉男、磯村みどり、小池明義
18	2月3日	市松小僧始末	小川英		川口小枝、柴田侊彦、森山周一郎、石井宏明
19	2月10日	霧（なご）の七郎	池田一朗	小野田嘉幹	井上昭文、松風はる美、河原崎次郎、北村和夫
20	2月17日	山吹屋お勝	野上龍雄		藤田進、久我美子、中村敦夫、平井昌一
21	2月24日	浅草御厩河岸	安倍徹郎	高瀬昌弘	西沢利明、木村俊恵、香川良介、灰地順
22	3月3日	血闘	小川英	船床定男	山本耕一、巌金四郎、天本英世
23	3月10日	罪（つみ）	桜井康裕	野長瀬三摩地	弓恵子、宮坂将嘉、稲垣隆史
24	3月17日	八丁堀の女	柴英三郎	高瀬昌弘	石濱朗、柏木由紀子、郡司良
25	3月24日	男の毒	桜井康裕	土居通芳	藤木悠、矢野潤子、稲吉靖、木田三千雄、平田昭彦
26	3月31日	井筒屋おもん	安倍徹郎		小鹿敦、桑山正一、川合伸旺、水上竜子、松原光二
27	4月7日	五年目の客	井手雅人 服部一久	小野田嘉幹	小川真由美、織本順吉
28	4月14日	縄張り	早坂暁		松本染升、松下砂稚子、船戸順
29	4月21日	麻布ねずみ坂	松本昭典	久松静児	田崎潤、井上孝雄、高須賀夫至子
30	4月28日	盗法秘伝	井手雅人 永井素夫	渡邊祐介	北川めぐみ、花沢徳衛、永井柳太郎
31	5月5日	女の毒	小川英	古川卓巳	戸田皓久、佐原健二、小鹿敦
32	5月12日	まじめの新助	井手雅人	小野田嘉幹	本郷淳、野口ふみえ、吉行和子
33	5月19日	鬼坊主の花	田坂啓	渡邊祐介	三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗、白石奈緒美
34	5月26日	むかしの男	安倍徹郎	土居通芳	浜田晄、田島義文、徳大寺伸
35	6月2日	情炎	桜井康裕		青沼三郎、勝部演之、赤座美代子
36	6月9日	白痴（こけ）		小野田嘉幹	東野孝彦、小瀬朗、森健二、佐藤友美
37	6月16日	おみね徳次郎	安藤日出男	小松幹雄	垂水悟郎、稲野和子
38	6月23日	敵（かたき）	廣澤榮	小野田嘉幹	新田昌玄、金井大
39	6月30日	猿（ましら）の銀次郎	米谷純一	小松幹雄	多々良純、渚まゆみ、水沢有美
40	7月7日	かわうそ平内	小川英	小野田嘉幹	有島一郎、山本勝、草薙幸二郎
41	7月14日	白浪看板	桜井康裕	久松静児	中村竹弥、五月晴子、清川新吾、見明凡太朗、三條美紀
42	7月21日	恋文	下飯坂菊馬	小野田嘉幹	小林昭二、中山克己、葉山葉子、楠侑子、館敬介
43	7月28日	うんぷてんぷ	棚田吾郎	久松静児	加賀邦男、しめぎしがこ
44	8月4日	おみよは見た	桜井康裕	小野田嘉幹	高津住男、川島育恵、穂積隆信、福山象三
45	8月11日	夜鷹殺し		小松幹雄	佐田豊、長浜藤夫
46	8月18日	報復（しかえし）	小川英		岸田森、岩本多代、山田圭子、北見治一、伊藤久哉
47	8月25日	運の矢	桜井康裕 米谷純一	高瀬昌弘	幸田宗丸、夏圭子、戸上城太郎、勝呂誉
48	9月1日	密通	井手雅人 名倉勲	小野田嘉幹	加藤嘉、椎名勝巳、小瀬格、八木昌子
49	9月8日	神田明神裏	佐々木武観	高瀬昌弘	水村泰三、川合伸旺、森秋子
50	9月15日	かまいたち	中沢龍太		名古屋章、佐々木功、真屋順子
51	9月22日	艶婦の毒	新藤兼人	吉村公三郎	浜木綿子、葦原邦子、瀬良明
52	9月29日	乞食坊主	安倍徹郎		永井智雄、武内亨、山崎直衛
53	10月6日	おせん	安藤日出男	小松幹雄	草野大悟、潮万太郎、堀井永子、原ひさ子
54	10月13日	色と欲	小林健司	野長瀬三摩地	和崎俊哉、増田順司、香川良介、戸部夕子、松木路子
55	10月20日	深川、千鳥橋	柴英三郎	小松幹雄	森塚敏、三条泰子
56	10月27日	金太郎そば	田坂啓	小野田嘉幹	見明凡太朗、大塚国夫、宮本信子
57	11月3日	お菊と幸助	下飯坂菊馬	吉村公三郎	赤沢亜沙子、森山周一郎、中村敦夫
58	11月10日	雨の湯豆腐		小野田嘉幹	井川比佐志、町田祥子、宇奈山宏、岩崎信忠
59	11月17日	おっ母ァ、すまねえ	小川英	野長瀬三摩地	稲垣美穂子、高木均、高角宏暁、亀谷雅彦
60	11月24日	罠（わな）	棚田吾郎 佐藤昌子	田中徳三	鈴木瑞穂、松風はるみ、石山雄大、寺田路恵
61	12月1日	あほうがらす	安倍徹郎		加藤武、山崎猛、藤田みどり
62	12月8日	罪ほろぼし	伴田充	吉村公三郎	小栗一也、馬渕晴子、中山克己、植村謙二郎
63	12月15日	女賊の恋	滝沢真里	古川卓巳	高須賀夫至子、垂水悟郎、津野哲郎
64	12月22日	女の一念	米谷純一	小松幹雄	村井国夫、二階堂有希子、二見忠雄、納谷悟朗
65	12月29日	おしろい猫	安藤日出男	小野田嘉幹	工藤堅太郎、高津住男、磯村みどり

第2シリーズ（1971年10月7日～1972年3月30日、NET系 木曜22時台時代劇枠）

話数	放送日	サブタイトル	脚本	監督	ゲスト
1	1971年 10月7日	剣客	小川英	小野田嘉幹	金井大、垂水悟郎、佐々木孝丸
2	10月14日	猫じゃらしの女	安倍徹郎		藤田弓子、小林昭二、青野平義、石濱朗
3	10月21日	兇族	安藤日出男	若林幹	曽我廼家五郎八、安部徹、市村昌治、正司歌江、堀井永子、石橋雅史
4	10月28日	狐火（前篇）	野上龍雄	田中徳三	岸田森、草野大悟、武田昌之、浜村純、江見俊太郎
5	11月4日	狐火（後篇）			岸田森、草野大悟、武田昌之、浜村純、江見俊太郎
6	11月11日	おしげ	安藤日出男	若林幹	殿山泰司、川島育恵、青沼三郎
7	11月18日	夜狐		高瀬昌弘	高橋長英、加賀邦男、三條美紀
8	11月25日	兇剣（前編）	新藤兼人	小野田嘉幹	北村和夫、浜田寅彦
9	12月2日	兇剣（後編）			北村和夫、浜田寅彦、河村祐三子、橋本功
10	12月9日	隠居金七百両	安倍徹郎		菱見百合子、加藤嘉
11	12月16日	女賊	下飯坂菊馬		渡辺美佐子、池田秀一
12	12月23日	鈍牛	安倍徹郎	吉村公三郎	東野孝彦、菅野忠彦
13	12月30日	雨乞い庄右衛門	井手雅人	小野田嘉幹	木村功
14	1972年 1月6日	平松屋おみつ	下飯坂菊馬	吉村公三郎	宇津宮雅代、松本克平
15	1月13日	下段の剣	安倍徹郎	田中徳三	高松英郎、土田早苗
16	1月20日	掻掘のおけい	星川清司	吉村公三郎	津坂匡章、稲野和子、武藤英司
17	1月27日	のっそり医者	小川英	野長瀬三摩地	中村竹弥、戸島和美、伊藤久哉
18	2月3日	情事	桜井康裕		左時枝、工藤堅太郎、平井昌一
19	2月10日	刃傷以后		若林幹	森秋子、原田大二郎
20	2月17日	裏道の男たち	小川英		和田文夫、高原駿雄、浜田寅彦
21	2月24日	あいびき	下飯坂菊馬	吉村公三郎	吉行和子、峰岸隆之介、三井弘次
22	3月2日	殺しの掟	小川英		高橋悦史、磯村みどり、須藤健
23	3月9日	泥鰌の和助始末	安倍徹郎	若林幹	大坂志郎、中山克己、小倉雄三
24	3月16日	大川の隠居	野上龍雄	丸山誠治	進藤英太郎、山岡徹也
25	3月23日	礼金二百両	安藤日出男	山本迪夫	川辺久造、高野浩幸、戸浦六宏、山田はるみ
26	3月30日	はさみ撃ち	井手雅人	小野田嘉幹	柳永二郎、佐山俊二、八木昌子、佐原健二

NET系 木曜22時台
前番組	番組名	次番組
ちん・とん・しゃん	新・鬼平犯科帳	世なおし奉行

丹波哲郎版

詳細は「鬼平犯科帳 (丹波哲郎)」を参照

萬屋錦之介版

詳細は「鬼平犯科帳 (萬屋錦之介)」を参照

二代目 中村吉右衛門版

詳細は「鬼平犯科帳 (中村吉右衛門)」を参照

派生作品

詳細は「鬼平外伝 夜兎の角右衛門」を参照

詳細は「鬼平外伝 熊五郎の顔」を参照

詳細は「鬼平外伝 正月四日の客」を参照