鳴門秘帖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
鳴門秘帖
(なるとひちょう/なるとひじょう)
著者 吉川英治
発行日 1927年3月10日(前編)
1933年11月(後編)
発行元 大阪毎日新聞社
東京日日新聞社
ジャンル 伝奇小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 単行本
ページ数 438頁(前編)
公式サイト 吉川英治歴史時代文庫 2
吉川英治歴史時代文庫 3
吉川英治歴史時代文庫 4
コード ISBN 4-06-142005-4
ISBN 4-06-142006-2
ISBN 4-06-142007-0
ISBN 4-06-146303-9
ISBN 4-06-196502-6
ISBN 4-06-196503-4
ISBN 4-06-196504-2
Portal.svg ウィキポータル 文学
[ Wikidata-logo-en.svg ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

鳴門秘帖』(なるとひちょう/なるとひじょう)は、吉川英治長編小説である。1926年8月11日から翌年10月14日まで、「大阪毎日新聞」に連載された。

謎に囲まれた阿波に潜入しようとする青年隠密と、それを阻もうとする阿波藩士の戦いに、青年隠密を恋い慕う女性の恋情を組み入れたものである。

中里介山大菩薩峠』、白井喬二富士に立つ影』と並ぶ、大衆文学を開拓した作品で、伝奇小説黎明期の傑作である。

作品解説[編集]

当時毎日新聞の学芸部長は、病のため薄田泣菫の代わりに、阿部眞之助が務めていた。阿部は当時「サンデー毎日」の代表作家白井喬二に目をつけ執筆を依頼しようとしたが、編集長に断られてしまう。のち白井は「報知新聞」に『富士に立つ影』を連載、これに対抗しようと考え講談社に作家の調査を依頼、そこで指名されたのが吉川英治であった。

執筆にあたり、伊上凡骨の案で阿波に興味を示し、司馬江漢の随筆『春波桜筆記』にヒントを得た作品である。蜂須賀重喜は30代で蟄居を命じられ、72歳まで生きた。作者は重喜の蟄居の裏には大きな謎があるとふみ、伝奇時代小説の伝統を踏まえつつ、宝暦事件で敗れた竹内式部明和事件で敗れた山県大弐といった公卿の存在を鍵に、重喜が幕府転覆の黒幕であるという想像を盛り込んでいる。

読者からの人気は高く、当時の大衆小説の代表的作品となった。新聞連載中に映画化、後にも映像化されている。 なお本文中のルビは「ひじょう」となっているが、「ひちょう」と呼ばれて流通している。

あらすじ[編集]

江戸時代中期、幕府打倒の陰謀が発覚した(宝暦事件)。幕府は、黒幕を阿波の徳島藩主たる蜂須賀重喜とにらみ、甲賀隠密世阿弥を潜伏させる。しかしそれから10年、阿波は鎖国し、世阿弥は行方が知れず、その仲間の中には真実を知るために阿波潜入を試みる者たちがいた。

虚無僧姿に身を包む隠密法月弦之丞(のりづき げんのじょう)もその一人である。世阿弥の娘であるお千絵は弦之丞に想いを寄せるが、弦之丞は隠密である関係上、その願いはかなわない。

見返りお綱はスリによって、意図せず俵一八郎の阿波潜入の計画を挫いてしまう。彼の意思を継いだ法月弦之丞だが、その行く手を阿波藩士らが阻もうとする。天堂一角、お十夜孫兵衛、旅川周馬らは、弦之丞を亡き者としようとし、江戸からつき狙う。反省し、スリをやめた見返りお綱は、目明かしの万吉と共に江戸から法月弦之丞を追うが…

登場人物[編集]

  • 法月弦之丞 - 主人公
  • 甲賀世阿弥 - 隠密組宗家。阿波に捕らわれている。
  • 見返りお綱 - 江戸のスリ。
  • お千絵 - 世阿弥の娘。弦之丞に想いを寄せる。
  • 蜂須賀重喜 - 黒幕とされる徳島藩第10代藩主。
  • 天堂一角 - 阿波の原士[1][2]
  • お十夜孫兵衛 - 辻斬り。元阿波川島の原士。ソボロ助広の大刀を使う。常に、風呂に入る時も、お十夜頭巾をかぶっている。
  • 旅川周馬 - お十夜孫兵衛、天堂一角と共に法月弦之丞をねらう。お千絵に横恋慕しており、江戸の屋敷に監禁する。総髪でニキビ顔。
  • 俵 一八郎 - 天満組同心宝暦の変の黒幕が蜂須賀家ではないかと進言し、阿波の内情を探っている。鳩使い。
  • 常木鴻山 - 元天満与力。俵一八郎の上役。宝暦の変の黒幕が蜂須賀家ではないかと進言し、阿波の内情を探っている。
  • 万吉 - 目明し。鴻山や俵の部下。十手持ち。
  • 平賀源内 - 作品では讃岐出身の医師として活躍する。
  • 竹屋三位卿有村 - 徳島藩に居候している公家。行動的で頭も回り、武芸も得意である。宝暦事件の首謀者であった。
  • 三輪と乙吉 - 角兵衛獅子の姉弟。

書誌情報[編集]

  • 永井荷風 ほか 『編年体大正文学全集』第15巻(大正15年)、鈴木貞美 編、ゆまに書房、2003年5月。ISBN 4-89714-904-5
  • 『鳴門秘帖』前編、大阪毎日新聞社・東京日日新聞社、1927年3月10日NDLJP:1191530
  • 『鳴門秘帖』後編、大阪毎日新聞社・東京日日新聞社、1933年11月
  • 『現代大衆文学全集(吉川英治集)』第9巻、平凡社、1928年1月。 - 著者の肖像あり。
  • 吉川英治全集』第9巻 鳴門秘帖(前篇)、平凡社、1931-1933。
  • 『吉川英治全集』第10巻 鳴門秘帖(後篇)、平凡社、1932-1933。
  • 『鳴門秘帖』 平凡社〈大衆文学名作選 第1巻〉、1935年
  • 『鳴門秘帖』上卷、新潮社、1939年2月。
  • 『鳴門秘帖』中巻、向日書館、1948年
  • 『鳴門秘帖』上巻、向日書館、1952年
  • 『鳴門秘帖』中巻、向日書館、1952年
  • 『鳴門秘帖』下巻、向日書館、1952年
  • 『鳴門秘帖』第1巻、同光社、1956年
  • 『鳴門秘帖』第2巻、同光社、1956年
  • 『鳴門秘帖』第3巻、同光社、1956年
  • 『鳴門秘帖』上、光風社、1959年
  • 『鳴門秘帖』下、光風社、1959年
  • 『鳴門秘帖』上巻、中央公論社、1962年
  • 『鳴門秘帖』下巻、中央公論社、1962年
  • 吉川英治全集』第2巻(鳴門秘帖)、講談社、1966年
  • 『鳴門秘帖』 六興出版、1970年
  • 『昭和国民文学全集』1(吉川英治集)、筑摩書房、1973年
  • 『鳴門秘帖』1、講談社〈吉川英治文庫 5〉、1975年ISBN 4-06-142005-4
  • 『鳴門秘帖』2、講談社〈吉川英治文庫 6〉、1975年ISBN 4-06-142006-2
  • 『鳴門秘帖』3、講談社〈吉川英治文庫 7〉、1975年ISBN 4-06-142007-0
  • 『鳴門秘帖』上、六興出版、1977年1月、新装版。
  • 『鳴門秘帖』下、六興出版、1977年1月、新装版。
  • 吉川英治全集』3、吉川英明 責任編集、講談社、1980年12月。ISBN 4-06-146303-9 - 付録(8p):鳴門秘帖の旅。
  • 鳴門秘帖』1、講談社〈吉川英治歴史時代文庫 2〉、1989年9月。ISBN 4-06-196502-6
  • 鳴門秘帖』2、講談社〈吉川英治歴史時代文庫 3〉、1989年9月。ISBN 4-06-196503-4
  • 鳴門秘帖』3、講談社〈吉川英治歴史時代文庫 4〉、1989年10月。ISBN 4-06-196504-2

原作[編集]

  • 『NHK金曜ドラマ』鳴門秘帖 上、吉川英治 原作、石山透 脚本、重金碩之 構成、日本放送出版協会、1977年5月。
  • 『NHK金曜ドラマ』鳴門秘帖 下、吉川英治 原作、石山透 脚本、重金碩之 構成、日本放送出版協会、1977年12月。

映像化作品[編集]

映画[編集]

テレビドラマ[編集]

KRT NEC劇場
前番組 番組名 次番組
鳴門秘帖
(1959年版)
NET系列 火曜21時枠
かわいい魔女ジニー
(21:00 - 21:30)
涙の歌謡曲
(21:30 - 22:00)
鳴門秘帖
(1966年)

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 市場町の民家 郷土研究発表会紀要第25号 徳島県立図書館
  2. ^ 原士とは/原士堀北家控帳 阿波市立図書館 ADEAC
  3. ^ 美しすぎる剣士・田村正和さん『鳴門秘帖』続々発掘!”. NHK番組発掘プロジェクト通信. NHKアーカイブス (2015年8月7日). 2018年3月20日閲覧。
  4. ^ 山本耕史さん主演「鳴門秘帖」制作開始!”. NHK (2018年1月25日). 2018年3月20日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • 『鳴門秘帖』前編、大阪毎日新聞社・東京日日新聞社、1927年3月10日NDLJP:1191530
  1. 『鳴門秘帖 01 上方の巻』:新字新仮名 - 青空文庫
  2. 『鳴門秘帖 02 江戸の巻』:新字新仮名 - 青空文庫
  3. 『鳴門秘帖 03 木曾の巻』:新字新仮名 - 青空文庫
  4. 『鳴門秘帖 04 船路の巻』:新字新仮名 - 青空文庫
  5. 『鳴門秘帖 05 剣山の巻』:新字新仮名 - 青空文庫
  6. 『鳴門秘帖 06 鳴門の巻』:新字新仮名 - 青空文庫