ドラえもん のび太のパラレル西遊記

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ドラえもん
のび太のパラレル西遊記
監督 芝山努
脚本 もとひら了
原作 藤子不二雄Ⓕ
製作 シンエイ動画テレビ朝日小学館
出演者 レギュラー
大山のぶ代
小原乃梨子
野村道子
たてかべ和也
肝付兼太
ゲスト
水谷優子
池田勝
三ツ矢雄二
音楽 菊池俊輔
主題歌 君がいるから/堀江美都子こおろぎ'73
編集 井上和夫、渡瀬祐子
配給 東宝
公開 日本の旗 1988年3月12日
上映時間 93分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 13.6億円
前作 ドラえもん のび太と竜の騎士
次作 ドラえもん のび太の日本誕生
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ドラえもん のび太のパラレル西遊記』(ドラえもん のびたのパラレルさいゆうき)[1]は、1988年3月12日に公開されたドラえもん映画作品

原作は藤子・F・不二雄(当時は藤子不二雄Ⓕ名義)で、藤子不二雄コンビ解消後の『ドラえもん』映画第1作目である。

同時上映は『エスパー魔美 星空のダンシングドール』『ウルトラB ブラックホールからの独裁者B・B!!』

解説

本作は『西遊記』がモチーフであり、の時代の中国を舞台としている。脚本はもとひら了が担当したが、「西遊記の世界」というアイディアは藤子・F・不二雄本人から出されたものである[2]。映画ドラえもんシリーズの中では、特に恐怖的な演出が多くホラー要素が強い。内容は妖怪に支配されるパラレルワールドと化した世界を修正するため、のび太たちが『西遊記』の登場人物に扮して、ドラえもんと共に妖怪たちと戦うというもの(敵役が過失とはいえドラえもん自身が生み出してしまったというところが他の作品とは一線を画している)。この戦いの際、のび太孫悟空ジャイアン猪八戒スネ夫沙悟浄しずか三蔵法師の役に就いた。また、映画作品としてドラミが登場したのは『のび太の魔界大冒険』以来であり、本作でも同作と同様にのび太たちの危機を救う。

本作の製作時、藤子・F・不二雄が体調不良で入院していたため、存命時のドラえもん映画作品の中では唯一、原作漫画の大長編ドラえもんが描かれていない。このため、次作『のび太の日本誕生』以降は、大長編と映画で番号が1つずつずれることになった。その代わりとして、フィルムコミックが初めて発売され、上下巻とも表紙絵は藤子が描いている。これを皮切りに以後の作品でもフィルムコミックが発売され、本作以前の作品も後に発売されるようになった。またドラえもん映画の中で、作者名義が藤子不二雄となっている唯一の作品である。

東宝邦画系春のドラえもん映画シリーズで、藤子不二雄Ⓐが原作の作品と併映される最後の作品となった。

あらすじ

小学校の新入生歓迎会に際し、のび太の提案によって「西遊記」の劇をやることになった。孫悟空役をやりたかったのび太であったが、孫悟空役は出木杉に取られてしまい、のび太は提案者であるにもかかわらず「村人その1」という端役で、セリフも「助けてくんろー!」のみだった。

孫悟空が実在すると信じるのび太は、「本物に似ている人が孫悟空になるべきだ」と主張し、タイムマシン7世紀シルクロードへ向かう。そこでのび太そっくりの孫悟空を目撃し、そのことを他の者に告げるも、そもそも架空のキャラクターであるはずの孫悟空の目撃談など誰も信じない。このため、もし孫悟空がいなかったら「ドラえもんの道具を使い放題」との約束で仲間たちを連れ、再び唐へやって来たのび太だったが既に孫悟空はいない。仕方なくドラえもんのひみつ道具「ヒーローマシン」でのび太自ら孫悟空に成りすましたものの、調子に乗ってボロを出し、結局ばれてしまい、のび太は、嘘つき扱いされ、「ドラえもんの道具を使い放題」という無茶な約束に従わざるを得なくなり、ジャイアンが高笑いしながらタイムマシンを操縦する中、のび太とドラえもんは喧嘩になってしまう。

落胆して現代に帰ったところ、なんとのび太の家族も知人もみんな妖怪になっており、現代は妖怪の世界と化していた。原因は唐の時代でヒーローマシンを使った際、暫く起動状態で放置していたマシンからゲームソフト「西遊記」の敵役である妖怪たちが飛び出し、現実世界を荒らして三蔵法師を殺し、人類を滅ぼして人間に成り代ったためであった。こうしてパラレルワールドになってしまった歴史を元に戻すには、唐の時代へ戻って妖怪たちを1匹残らず倒すしかない。そこで5人は妖怪退治のため、ヒーローマシンで悟空たちに変身し、再び唐の時代へ向かう。しかしその時すでに本物の三蔵法師一行には、じわじわと妖怪たちの手が忍び寄っていた。

舞台

630年中国
実在の三蔵法師玄奘三蔵)が天竺への旅をしていた時代。『西遊記』に登場するような孫悟空や妖怪たちはいないはずが、ドラえもんのひみつ道具ヒーローマシン」によって金角、銀角、牛魔王などの妖怪が現れ、大混乱に陥ってしまう。
なお映画の音声では「636年」と聴こえるが、フィルムコミックには「630年」となっている。

声の出演

ゲストキャラクター

タイムマシン(音声)
- 三ツ矢雄二
今回の映画ではタイムマシンに音声制御装置が付けられており、ナビゲーションの役割をする。声を認識し、その指示に従って自動操縦となりナビゲートしてくれるのはいいのだが、自動操縦の精度が低い[3]上に操縦がやや乱暴で融通がきかないという欠点を持ち、結果、ジャイアンたちに孫悟空(後の歴史改変の修正をしているのび太)に会わせる約束を果たせなくなってしまう。このようなこともあって最終的にドラえもんは音声制御装置をオフにしてしまった。
三蔵法師
声 - 池田勝
実在する唐の時代の仏教の僧侶。経典を手に入れるため天竺への旅をしている。スパイ活動をしていたリンレイを責めなかったり、行き場を失ったリンレイを自ら引き取るなど、心が広い人物。
ドラえもん劇場版において初の実在した歴史上の人物であり、本作では史書の記述どおり体格の良い朴訥とした風貌で描かれている。
キャラクターデザインは、藤子・F・不二雄作品『T・Pぼん』の「白竜のほえる山」に登場する三蔵法師に基づいている。
リンレイ
声 - 水谷優子
三蔵法師の旅にお供する少年。人間と変わらぬ容姿をしているが、その正体は牛魔王と羅刹女の子供である紅孩児(こうがいじ)
三蔵を捕らえるためのスパイとして送り込まれたが、三蔵は初めからそれを見抜いており、妖怪と話をしている所を見ても、知らない振りをしてその上でお供として連れていた。三蔵やのび太との交流から罪悪感が生じ始め、最終的には両親のやり方に耐えきれず、捕らわれたのび太たちを助ける。戦いの後、両親を失った後は三蔵に引き取られ、正式に三蔵の弟子となった。
牛魔王
声 - 柴田秀勝
火焔山に棲む妖怪たちの王で牛の妖怪。羅刹女の夫でリンレイ(紅孩児)の父。自身の身体の大きさを自由自在に変えることが可能で、最終決戦では身長35m、体重2万トンと化した。
最終決戦ではヒーローマシンを踏みつけて壊したことで、妖怪たちの封印方法を封じ、ドラえもん、のび太、ドラミを追い詰めた。しかし、のび太が最後の力を振り絞って巨大化させた如意棒で壁に叩きつけられた際に心臓が停止して息絶える。これにより全ての妖怪たちは力を失い、自身の亡骸は噴火を起こした火焔山の溶岩に居城もろとも飲み込まれた。
捕らえたドラえもんたちを食べようとした際、最初に一番の目的である三蔵ではなく見た目が太った美味そうな青い狸ということでドラえもんを食べようとしたが、ドラミに阻止された。
羅刹女
声 - 栗葉子
牛魔王の妻で妖怪。リンレイ(紅孩児)の母。空を自在に飛ぶ妖力を牛魔王から与えられており、強風を巻き起こす「芭蕉扇」を持っている。リンレイの裏切りで捕らえていたドラえもんたちを解放されてしまうが、最終決戦の最中にしずか、スネ夫、ジャイアン、三蔵、リンレイを再度捕らえることに成功する。しかし、牛魔王がのび太に倒されたことで自身も力を失い、火焔山の溶岩の中に落下して最期を迎えた。形見となった芭蕉扇はスネ夫とジャイアンが火焔山の炎を消すために使用した。
部下には厳しいが、夫には従順であり、牛魔王が戦死した際には「あんた」と叫んだ。
実子・リンレイに対しては裏切りに戸惑う様子を見せ、フィルムコミックでは死の間際、自身のことよりもリンレイを気にかけると、母親らしい面が強調されていた。
金角
声 - 石森達幸
牛魔王の子分。名前を呼ばれた相手が返事をするとその相手を吸い込んでしまうというヒョウタンを持つ。幾度となく三蔵法師を狙うが、結局はヒーローマシンに戻される。
銀角
声 - 加藤精三
牛魔王の子分。金角の弟。金角がヒーローマシンに戻された後に兄の敵討ちのためにドラえもんたちを狙うが、降参したふりをしたドラえもんの機転でヒーローマシンに戻される。
モトヒラくん
声 - 難波圭一
のび太たちのクラスメート。冒頭における劇の練習シーンで登場。クラスの演劇の脚本と演出を担当している。モデルは、この作品の脚本を担当したもとひら了
吸血コウモリ
金角や銀角、牛魔王の手下。ドラえもん達が人間である事を気付きドラえもんとのび太を追いかけて来たが、ドラえもんの道具 こうもりホイホイ銃で傘にされて破れた。
ヒーローマシンのコンピューター
声 - 石井敏郎
ヒーローマシンの中でプレイヤーに音声で説明を行う。
声 - 原えりこ
本名「ピーチ姫」[4]。ドラえもんがプレイしたヒーローマシンの「バイキング」中の登場人物。ドラゴンに捕らえられていた。
お釈迦様
ヒーローマシンから妖怪が出た後に、ジャイアンがドラえもんの道具使い放題といって、ヒーローマシンの西遊記のゲームを行った際に妖怪が一匹も現れず、のび太、ジャイアン、しずか、スネ夫がお釈迦様の所に一気にワープし、お釈迦様が「三蔵一向よくこのゲームクリアして、天竹まで辿り着きましたね、またの機会を待っておりますぞ」と話して終了。
妖怪
声 - 田原アルノ島香裕
少年
声 - スイッチョン

登場するひみつ道具

スタッフ

主題歌

オープニングテーマ「ドラえもんのうた
作詞 - 楠部工 / 補作詞 - ばばすすむ / 編曲·作曲 - 菊池俊輔 / うた - 大杉久美子 / セリフ - 大山のぶ代ドラえもん
大杉久美子がドラえもんの映画のオープニングテーマを歌ったのは本作が最後である。次作の『のび太の日本誕生』からは山野さと子が歌っている。
エンディングテーマ「君がいるから」
作詞 - 武田鉄矢 / 作曲 - 山木康世 / 編曲 - 都留教博 / うた - 堀江美都子こおろぎ'73
ただしエンディングテーマ曲としてだけではなく挿入歌としても使用されており、本作の予告編でも流れる。この他、歌の入っていないアレンジバージョンが作中でBGMとして使用されている。

その他

  • 作中、ドラえもんが「ほかの3人(しずか、ジャイアン、スネ夫)の危険があぶない!」という重言を発している。
  • 岩山での金角・銀角との戦闘時、金角の呼びかけに応えてしまったドラえもんがヒョウタンに吸い込まれる。その後、困っているのび太に気づいたジャイアンとスネ夫が合流し、どこでもドアでヒョウタンからドラえもんが戻ってくる一連のシーンで、金角が銀角になっている作画ミスがある。これは販売用・レンタル用にかかわらずDVDなどでも確認できる。
  • ReBORNシリーズのCM(「ドラえもん お店で相談篇」)で本作同様、のび太が孫悟空・ジャイアンが猪八戒・スネ夫が沙悟浄・しずかが三蔵法師の役割を演じているシーンが存在する。ただし、本作のシーンを流用したわけではなくアニメは新規作成。キャストはテレビアニメ第2作第2期のものだが、BGMは本作で使用された菊池俊輔作曲のものとなっている。
  • 漫画「最遊記」の着想のもととなった。

脚注

  1. ^ 第1特報では『機械猫 乃比太的同次元西遊記』と表記されていた。
  2. ^ QuickJapan」64号、太田出版、2006年
  3. ^ ±24時間の誤差が出ると断りがある、タイムトラベラ規定他、何かしらの理由で同じ場所にも到達できない。
  4. ^ 「映画アニメドラえもん・エスパー魔美 《のび太のパラレル西遊記/ 星空のダンシングドール》」小学館<コロコロコミックデラックス (16)>、1988年。ISBN 4-09-101016-4

外部リンク