チェロ協奏曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

チェロ協奏曲(チェロきょうそうきょく)は、チェロを独奏楽器に用いた協奏曲

概要[編集]

チェロ協奏曲は、ピアノ協奏曲ヴァイオリン協奏曲に次いで一般的な協奏曲の形態として知られており、それ以外の協奏曲と比較して、レパートリーとして確立している作品の数は多い。

バロック[編集]

通奏低音を伴う形で、チェロが独奏になる形式の協奏曲は存在する。しかし、その「チェロ」とは、実は肩紐を伴った5弦のヴィオロンチェロ・スパッラを指した可能性が強く、ヴィヴァルディの協奏曲で指されている物は、この楽器のことである。ヴィオラ・ダ・ガンバヴィオローネピッコロ、あるいはAヴィオローネの音域と同一になるバロック・チェロが独奏楽器として通用したかどうかは、不明である。タルティーニの協奏曲はガンバでもチェロでもどちらでも演奏できるが、この時代の「チェロ」協奏曲は全て同一の音域を持つ弦楽器によって、代用は可能である。

古典派[編集]

通奏低音が廃される。肩紐が切られ、腿の肉に挟む形で演奏される「チェロ」は新しい奏法を得ることになった。古典派の黎明期は、ハイドンの作品が有名である。当時の弦楽パートは弦五部ではなく、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオローネの弦四部であった。ヴィオローネのユニゾンを仕方なく弾いていたチェロ奏者の求めに応じて、チェロパートが独立したのがチェロ協奏曲の誕生であった。これは後に近代弦五部の確立へとつながってゆく。

この時代のチェロは音量と音程ともに良くなく、大編成を好んでいたベートーヴェンはチェロ協奏曲を残していない。

ロマン派[編集]

協奏曲の主役がピアノとヴァイオリンに偏っていたロマン派の時代において、チェロ協奏曲はややマイナーなジャンルとみなされたが、この時代にドヴォルザークエルガー(時代的には近代)がこのジャンルを代表する傑作を残している。そのほか、シューマンサン=サーンス第1番)、ラロの作品もよく知られている。

近代弦五部の確立の後に作曲されたチェロ協奏曲は、チェロソロが名人芸を縦横に駆使する。指板の限界までの使用を要求されるシューマンのチェロ協奏曲は、21世紀の今日でも難曲の部類である。

近代[編集]

近代では、プロコフィエフ交響的協奏曲)、ショスタコーヴィチ第1番)、ブリテンチェロ交響曲、時代的には現代)などの作品が有名だが、いずれもロストロポーヴィチのために書かれている。

この時代は全てのチェロ奏者が、エンドピンを支点にして、てこの原理を完全に書き換えた近代奏法を確立する。しかし、この奏法に慣れない人々も多く、プロコフィエフのチェロ協奏曲第一番は完全な大失敗に終わった。

現代[編集]

ピアノの人気が衰えた20世紀に入ってから、チェロは新しく重宝される楽器に変貌した。ジークフリート・パルムフランチェス・マリー・ウィッティローハン・デ・サラームミヒャエル・バッハ堤剛などの現代チェロ曲の名手のために次々と協奏曲の傑作が書かれている。特に重要と思われるものにユン・イサン(パルムのために)、ジョナサン・ハーヴェイ(ウィッティのために)、ベルント・アロイス・ツィンマーマン(パルムのために)、ジェルジ・リゲティ(パルムのために)、ジョン・ケージ(バッハのために)の作品が挙げられる。

ユン・イサンは通常のピッチカートのほかにプレクトラムを用いた新しいピッチカートを導入するなど、チェロ奏者は伝統的な奏法以外の動作も頻繁に求められるようになっている。フランチェス・マリー・ウィッティは二本の弓を挟む奏法、ミヒャエル・バッハは鎌形の弓を用いる奏法を用いて、作曲家の新しい要求に答えている。

おもな作曲家と作品[編集]

協奏曲[編集]

作曲家の生年順に並べている。

協奏的作品[編集]

作曲家の生年順に並べている。

  • 1755年 ヴィオッティ - チェロと管弦楽のためのアダージョとロンド
  • 1778年 ニコラウス・クラフト - チェロと管弦楽のための序奏、変奏曲とロンドop.13、チェロと管弦楽のためのボレロop.6、チェロと管弦楽のためのポロネーズop.4
  • 1782年 オーベール - チェロと管弦楽のためのロンド
  • 1807年 アドリエン=フランソワ・セルヴェ - 「ヴェニスの謝肉祭」による幻想的ブルレスクop.9、演奏会用小品op.14、シューベルトのワルツによる幻想曲と華麗なる変奏曲op.4、スパでの思い出op.2、「セビリアの理髪師」による大幻想曲op.6
  • 1812年 リーツ - チェロと管弦楽のための幻想曲 op.2
  • 1815年 フォルクマン - セレナード第3番ニ短調op.69
  • 1819年 オッフェンバック - チェロと管弦楽のための協奏的ロンド(1851)
  • 1825年 ヨハン・シュトラウス2世:ロマンス第1番op.243、ロマンス第2番op.255
  • 1828年 バルギール - チェロと管弦楽のためのアダージョ ト長調op.38
  • 1828年 サン=サーンス - 組曲op.16、アレグロ・アッパシオナートop.43
  • 1835年 キュイ - 2つの小品op.36(1886)
  • 1837年 デュボワ - チェロと管弦楽のためのファンタジー・シュトック、チェロと管弦楽のためのアンダンテ・カンタービレ
  • 1838年 ブルッフ - コル・ニドライop.47、チェロと管弦楽によるカンツォーネop.55、ケルト旋律によるアダージョop.56、アヴェ・マリアop.61
  • 1840年 チャイコフスキー - ロココ風の主題による変奏曲op.33(1876-77) 、チェロと管弦楽のための「奇想的小品」
  • 1841年 ドヴォルザーク - 森の静けさop.68-5、ロンドop.94
  • 1842年 マスネ -チェロと管弦楽のための幻想曲
  • 1843年 ハメリク - チェロと管弦楽のための演奏会ロマンスop.27(1879)
  • 1843年 ポッパー - 3つのチェロと管弦楽のためのレクイエムop.66、組曲「森にて」op.50、ハンガリ−狂詩曲op.68
  • 1844年 リムスキー=コルサコフ - セレナード変ロ長調op.37
  • 1852年 スタンフォード - アイルランド狂詩曲第3番op.137、バッラータとバッラービレop.160、チェロと管弦楽のためのロンド ヘ長調、
  • 1856年 マルトゥッチ - アンダンテop.69-2、夜想曲op.70-1
  • 1860年 マクダウェル - チェロと管弦楽のためのロマンスop.35
  • 1862年 ディーリアス - チェロと室内オーケストラのための2つの小品
  • 1862年 ボエルマン - 交響的変奏曲op.23
  • 1863年 モール - チェロと管弦楽のための前奏曲ホ長調op.123
  • 1864年 グレチャニノフ - チェロと管弦楽のための組曲op.86
  • 1864年 R.シュトラウス - 交響詩『ドン・キホーテ』(ヴィオラとチェロの独奏を持つ交響詩)、ロマンス ヘ長調AV.75(チェロと管弦楽のための)
  • 1865年 グラズノフ - チェロと管弦楽のための「吟遊詩人の歌」op.71、チェロと管弦楽のための2つの小品op.20
  • 1865年 シベリウス - 2つの小品(厳粛なメロディ) op.77
  • 1865年 ジルソン - チェロと管弦楽のための「アンダンテとスケルツォ」
  • 1868年 マキュアン - チェロと管弦楽のための回想「ヒースの丘」(1918)
  • 1871年 ビアラン - チェロと管弦楽のための2つのソネット(ホセ=マリア・デ・エレディアによる)
  • 1872年 ユオン - 「神秘劇」op.59(チェロと管弦楽のための交響詩)
  • 1874年 ネドバル - チェロと管弦楽のためのロマンスop.12
  • 1874年 ホルスト - チェロと管弦楽のための「祈り」op.19-2
  • 1878年 カプレ - チェロと管弦楽のためのエチオピア狂詩曲「エピファニー」
  • 1879年 ゴーベール - チェロと管弦楽のための「物語詩」
  • 1879年 レスピーギ - アダージョと変奏
  • 1880年 ブロッホ - ヘブライ狂詩曲「シェロモ」、交響詩「荒野の叫び」(チェロと管弦楽のための)
  • 1883年 ダイソン - 前奏曲、幻想曲とシャコンヌ(チェロと管弦楽のための)
  • 1884年 ボウエン - チェロと管弦楽のための狂詩曲op.74(1924)
  • 1887年 ヴィラ=ロボス - チェロと管弦楽のための幻想曲(1945)
  • 1890年 マルタン - チェロと小管弦楽のためのバラード (1949)
  • 1890年 マルティヌー - 室内ソナタ(チェロと室内オーケストラのための)H.283(1940)
  • 1892年 アンドリーセン - チェロと管弦楽のためのカンツォーナ(1965)
  • 1892年 ゲディーニ - チェロと管弦楽のための「協奏的音楽」
  • 1892年 ハウエルズ - チェロと管弦楽のための幻想曲、チェロと管弦楽のための挽歌
  • 1892年 ミヨー - ピエモンテ地方の民謡による北イタリア組曲Op.332
  • 1894年 ピストン - チェロと管弦楽のための変奏曲
  • 1895年 ヒンデミット - 葬送音楽(1936)
  • 1895年 ボスマンス - チェロと管弦楽のための詩曲(1926)
  • 1899年 ユイブレシュト - 葬送の歌(1926)
  • 1899年 アレクサンドル・チェレプニン - チェロと管弦楽のための「グルジア狂詩曲」op.25(1922)
  • 1899年 ヴラディゲロフ - チェロと管弦楽のための協奏的幻想曲op.35(1941)
  • 1900年 クラミ - チェレミシアン幻想曲op.19(1931)
  • 1900年 クルシェネク - チェロと管弦楽のためのカプリッチョop.145(1955)
  • 1900年 ブッシュ - チェロと管弦楽のための演奏会組曲op.37(1952)
  • 1900年 モソロフ - チェロと管弦楽のためのエレジアック・ポエム(1961)
  • 1901年 ソーゲ - チェロと管弦楽のための協奏的メロディ
  • 1901年 ラッブラ - チェロと管弦楽のための「独白(Soliloquy)」
  • 1903年 ヴラソフ - チェロと管弦楽のためのインプロヴィゼイション
  • 1904年 ダッラピッコラ - チェロと管弦楽のための「対話」
  • 1904年 ポポーフ - チェロと弦楽合奏のための交響的アリアop.43(1945)
  • 1907年 グアルニエリ - チェロと管弦楽のためのショーロ(1961)
  • 1907年 マコンキー - エピリオン
  • 1907年 ロージャ - チェロと管弦楽のための狂詩曲 op.3
  • 1907年 コンスタンティネスク -チェロと管弦楽のための「ビザンツの主題による自由な変奏曲」(1961)、チェロと管弦楽のための「アウトローのバラード」
  • 1910年 ウィリアム・シューマン -「オルフェウスの歌」(1962)、朗読〜シェークスピア作「オルフェウスと彼のリュート」
  • 1911年 メノッティ - チェロと管弦楽のための幻想曲
  • 1912年 フランセ - コンセール形式の変奏曲、チェロと管弦楽のための幻想曲
  • 1913年 ドマジュリツキー - チェロと管弦楽のための交響的絵画「騎士ダルタニアンの春」op.40
  • 1914年 トルトゥリエ - 変奏曲「音楽が平和を守りますように」
  • 1915年 ダイアモンド - チェロと管弦楽のためのカディッシュ(1987)
  • 1917年 オスカル・モラヴェッツ - マーティン・ルーサー・キングの思い出に
  • 1918年 ツィンマーマン - 希望の歌
  • 1918年 バーンスタイン - チェロのための3つの瞑想曲(「ミサ曲」から作曲者自身が編曲)(1977)
  • 1919年 レオン・キルシュナー - チェロと管弦楽のための音楽
  • 1921年 ヤン・ノヴァーク - チェロと小管弦楽のためのカプリッチョ(1958)
  • 1922年 フォス - チェロと小管弦楽のためのカプリッチョ(1999)
  • 1924年 ケレメン - 変化(チェロと管弦楽のための)、ドラマティコ-サラエボのためのレクイエム-(チェロと管弦楽のための)
  • 1925年 テオドラキス - チェロと管弦楽のための狂詩曲
  • 1926年 モートン・フェルドマン - チェロと管弦楽(1972)
  • 1926年 ヘンツェ - 西風への頌歌(チェロと管弦楽のための)
  • 1927年 エークルンド - チェロと弦楽合奏のための幻想曲
  • 1928年 シャーマン - ガーデンズ・オヴ・エグザイル(1991)
  • 1929年 コピィトマン - カディッシュ
  • 1929年 ホディノット - ノクティス・エキ(チェロと管弦楽のためのシエーナ)
  • 1929年 レイトン - 組曲「Veris Gratia」op.9
  • 1930年 クリストバル・アルフテル - チェロと管弦楽のためのパルティータ(1957)
  • 1930年 ラウルシャス - 感情的な会話(チェロと管弦楽のための)(2003)、室内協奏曲(独奏チェロとチェロ・アンサンブルのための)(2007)
  • 1930年 下山一二三 - チェロ、弦楽器、打楽器、ハープとピアノのための『WAVE』(1972)、同曲チェロ、11の弦楽器と打楽器版(1998)
  • 1930年 武満徹 - オリオンとプレアデス(1984)、シーン(1959)
  • 1930年 マゼール - チェロと管弦楽のための音楽op.10(1994)
  • 1930年 ナンシー・ヴァン・デ・ヴェイト - チェロと室内オーケストラのための演奏会用小品(1985)
  • 1931年 グバイドゥーリナ - Detto Ⅱ(チェロと室内アンサンブルのための)(1972)
  • 1931年 林光 - オーケストラのための童話「セロ弾きのゴーシュ」(1980-81)
  • 1932年 ジョン・ウィリアムズ - チェロと管弦楽のためのエレジー(1997)、ハートウッド(2002)
  • 1932年 コーネル - ヨハン三部作(チェロのオブリガートを伴う管弦楽のための)、ワイン(チェロと弦楽合奏のための連作)
  • 1932年 ノアゴー - ビトウィーン(チェロと管弦楽のための3楽章)
  • 1933年 ペンデレツキ - チェロと管弦楽のためのソナタ(1964)、チェロと管弦楽のためのラルゴ(2003)
  • 1934年 タラカノフ - チェロと弦楽合奏のための協奏組曲「四季」op.24bis
  • 1935年 サッリネン - 室内楽第3番「ドン・ファンキホーテの夜の踊り」op.58(チェロと弦楽合奏のための)
  • 1935年 ポロラーニーク - チェロと管弦楽のためのカプリッチョ
  • 1935年 モー - ソナタ・ノットゥルナ
  • 1936年 スタホフスキ - アダージョ・リコルダメンテ(1999)、レチタティーヴォと祈り(1999)
  • 1936年 ツェンダー - Brado(チェロと管弦楽のための)(1999-2000)
  • 1937年 平井丈一郎 - 祝典序曲-皇太子殿下のご成婚を祝して-(1993)、イスラ・ヴェルデの詩(1983)、協奏風ロンド(1987)
  • 1938年 フッセル - 「ライト川」(チェロと弦楽合奏のための変奏曲)
  • 1941年 ハトゥルグリムソン - 「ヘルマ」op.17(チェロと弦楽合奏のための)(1995)
  • 1942年 シチェドロン - チェロと弦楽合奏のためのバナリッシモ
  • 1944年 タヴナー - チェロと弦楽合奏のための「奇蹟のヴェール」、チェロと弦楽合奏のための「永遠の記憶」
  • 1946年 リーバーソン - 6つの王国(1999-2000)
  • 1947年 ガニュー - チェロと管弦楽のためのトリプティック(1990-93)
  • 1948年 アンドルー・ロイド・ウェバー - ヴァリエイションズ
  • 1950年 エディス・キャナ・ドゥ・シズィー - モイラ(チェロと管弦楽のための)
  • 1950年 マルケス - 砂の中の鏡
  • 1953年 デ=メイ - チェロと吹奏楽のための「カサノヴァ」
  • 1953年 ジョエル・ホフマン - Gebirtigと一緒の自画像
  • 1953年 シエッラ - 4つの詩篇
  • 1957年 チャールズ・ローランド・ベリー - チェロと管弦楽のための「キルート序曲」
  • 1958年 サロネン - マニア(チェロ独奏とアンサンブルのための)(2000)
  • 1958年 リンドベルイ - Zona
  • 1952年 エブラハムセン - 秋の歌曲(チェロと13の楽器のための)
  • 1961年 ハフ - チェロと管弦楽のための悲歌「最深の孤独の荒野」

協奏的作品への編曲[編集]

(下記は全て録音のあるもの)

  • ヴィヴァルディ - ヴァイオリン協奏曲ニ長調RV.230(「調和の幻想」第9曲)、ヴィオラ・ダモーレとリュートのための協奏曲RV.540、チェロと通奏低音のためのソナタ ホ短調RV.40
  • J.S.バッハ - オルガン協奏曲第1番ト長調BWV.592
  • アルノルト・シェーンベルク- マティアス・ゲオルク・モンのチェンバロ協奏曲に基づくチェロ協奏曲 ニ長調
  • J.ハイドン - ヴァイオリン協奏曲第4番ト長調Hob.VIIa-4、ディヴェルティメント ニ長調(ピアティゴルスキー編曲)
  • W.A.モーツァルト - フルート協奏曲第2番K.314(ジョージ・セル編曲)、ホルン協奏曲第3番K.447(カサド編曲)、ヴァイオリン協奏曲第1,3,4番K.207,216,218(ノルベルト・ヒルガー編曲)
  • ウェーバー - クラリネット協奏曲第2番op.74(カサド編曲)
  • シューベルト - アルペジョーネ・ソナタD.821(カサド編曲)
  • ブラームス - ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲op.102(コルド・ガルベン編曲)
  • グリーグ - チェロ・ソナタop.36
  • タネーエフ - ヴァイオリンと管弦楽のための協奏的組曲op.28、クラリネットと管弦楽のためのカンツォーナ
  • バルトーク - ヴィオラ協奏曲
  • カサド - スペインの古典形式によるチェロ・ソナタ
  • ペンデレツキ - ヴィオラと室内オーケストラのための協奏曲