ケプラー (探査機)

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ケプラー (Kepler)
Kepler
ケプラーのイラスト
所属 NASA
主製造業者 Ball Aerospace & Technologies Corp.
公式ページ Kepler Mission
国際標識番号 2009-011A
カタログ番号 34380
状態 運用中
目的 太陽系外惑星の観測
計画の期間 3.5年
打上げ機 デルタ-II
打上げ日時 2009年3月6日 22時49分57秒(EST
物理的特長
質量 1071 kg(最大想定)
発生電力 771W(最大想定)
姿勢制御方式 3軸姿勢制御
軌道要素
周回対象 太陽
軌道 地球を追尾する太陽周回軌道
軌道半長径 (a) 1.01319天文単位
離心率 (e) 0.03188
軌道周期 (P) 372.5
観測機器
Kepler photometer 測光装置

ケプラー (: Kepler)は、地球型の太陽系外惑星を探すためにアメリカ航空宇宙局が運用している宇宙望遠鏡であり、ディスカバリー計画の10番目の衛星である。主製造業者はボール・エアロスペース社である。ケプラーは3年半にわたって10万個の恒星の明るさを測定し、惑星が主星を隠す時に生じる周期的な明るさの変動を検出すること(トランジット法)を目標としている。2009年3月6日に打ち上げられた。

NASAは、2013年8月15日に、ケプラー衛星の姿勢制御系のトラブルが復旧できないため、主観測ミッションを終了したことを発表した。今後は精密な姿勢制御を要求されない観測に転用出来ないか検討する予定[1]

本体[編集]

ケプラーは、直径140センチの反射鏡と、その焦点面に設置された9460万画素のCCDカメラであるPhotometerを装備している[2]。ケプラーの構造は、レンズと反射鏡を組み合わせたシュミット式の反射屈折望遠鏡であり、レンズのみを用いるケプラー式望遠鏡ではない。その意味で、ケプラー望遠鏡(Kepler telescope)と、ケプラー式望遠鏡(Keplerian telescope)とを、混同してはならない。

ケプラーのPhotometerは、225万画素(2200x1024 pixels)のCCDが42基並べて搭載されており、合計すると9460万画素のCCDカメラに相当する。ただしこのCCDは写真撮影に使われるのではなく、星の光度変化の計測に使われる。

「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機として「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」の打ち上げ計画もあるが、ケプラー望遠鏡はそれとは位置づけや目的が異なる。

目的[編集]

以下の記述はNASAケプラーミッションのウェブサイト[3]からの引用である。

ケプラーの目的は、惑星系の構造と多様性を探ることにある。具体的には、多数の星の明るさを測定することによって以下の点について明らかにすることである。

  • さまざまなスペクトル型の星について、ハビタブルゾーン内に地球型惑星やより大きな惑星がどれくらい存在するのか探査する。
  • 太陽系外惑星の軌道の大きさや形を決定する。
  • 連星系に惑星がどれくらいあるのかを推定する。
  • 公転周期の短い巨大惑星(ホットジュピター)について、その軌道、光度、惑星の大きさ、質量、密度に関する知見を得る。
  • 既に惑星が発見されている恒星について、さらなる惑星の発見を行う。
  • 惑星系を持つ恒星の性質について研究を行う。

惑星の軌道が中心の星と視線上偶然重なりを起こす確率は、恒星の視直径を惑星の公転軌道の直径で割った値に比例する。太陽のような星の周囲を軌道半径1天文単位で地球型惑星がまわっていた場合、食を起こす確率は0.47%、1/210である。もし軌道半径が0.72天文単位(金星の公転軌道と同じ)場合、その確率は0.65%とやや大きくなる。惑星が複数存在する系の場合、それらの惑星は同じ軌道面を取ることが多いため食を起こす確率はより大きくなる。例えば、宇宙人がケプラーのような宇宙望遠鏡で地球による食を観測できたとすると、12%の確率で金星が起こす食も観測できることになる。

現在の技術では、ケプラーは地球型惑星を発見する可能性が最も高いミッションである。ケプラーは10万個の星を一度に観測することができるため、惑星による食を検出できる可能性もその分大きい。さらに、1/210の確率で地球型惑星の食を観測できるということは、すべての星が地球型惑星を持っていると仮定した場合、ケプラーは480個の地球型惑星を発見できる計算になる。これと実際に検出される地球型惑星の数を比較することで、地球型惑星が存在する確率を推定することができる。

ケプラーによって得られるデータは、さまざまな種類の変光星の研究、特に日震学を多数の恒星に適用するためにも有用である。

経過[編集]

2009年[編集]

ケプラーが開発段階にあった2006年1月、NASAの予算削減のため計画の8カ月の延期が決定され、同年3月にさらに4カ月の延期がなされた。この間、経費削減のために高利得アンテナを可動型から固定型に変更した。ケプラーは2009年3月6日にフロリダ州ケープカナベラル空軍基地からデルタ-IIロケットで打ち上げられた[4]

2009年5月、ケプラーの本格的な運用が始まった[5]。6月15日と7月2日、探査機が意図せずにセーフモードに入る不具合が発生したが、すぐに正常な観測に復帰した。原因は電力の低下だった[6]。6月19日には観測データを初めて地球へ送信した[7]

8月、NASAは初期の成果を公表した。惑星の発見は報告しなかったが、既に知られていた系外惑星HAT-P-7bの観測結果を伝えた。ケプラーはHAT-P-7bが恒星の手前を通過する際の減光を捉え、惑星の「満ち欠け」や、惑星が恒星の奥に掩蔽された時の光度変化も検出した。これによりケプラーが地球型惑星の発見に十分な精度を持っていることが証明された[8]

11月、ケプラーのチームは7500個の変光星の光度曲線をインターネットで公開した[9]。これらは変光が観測の妨げとなるため、観測対象から除かれた。

2010年[編集]

2010年1月、NASAは最初の5つの惑星を報告し、惑星にケプラー4bからケプラー8bと名づけた。いずれも公転周期5.5日以下の高温の惑星で、ケプラー4bは25地球質量ホット・ネプチューン、他の3つは0.4から2.1木星質量ホット・ジュピターである[10]

3月、観測モジュールに障害が発生し、42個のCCDセンサーのうち隣接した2個が使用できなくなった。ケプラーは望遠鏡の視線方向を軸に90度ずつ回転しながら観測するため、視野の4箇所に観測時間の75%しか観測できない領域が生じることとなった。ただし障害は限定的で、探査機全体には影響しないと見られている[11]

8月、恒星ケプラー9に2つの惑星が報告された[12]。ケプラー計画で1つの恒星に複数の惑星を確認した最初の例となった。

2011年[編集]

2011年1月、ケプラー計画最初の地球型系外惑星ケプラー10bが報告された。この惑星は地球の4.5倍の質量と1.4倍の半径を持ち、地球と同様の岩石惑星と見られている。ただし恒星に近いため表面温度は1300度に達し、生命が存在する可能性はほとんど無い[13]

2月、恒星ケプラー11に6つの惑星が報告された。1つの恒星に6つ以上の惑星が確認されたのは2例目となる(最初の例はグリーゼ581)。惑星はいずれも地球より大きく、最大で天王星海王星並みである。また、同時にケプラーが未確認の惑星候補を1200個以上発見したことも明かされた。うち288個が地球に近い大きさで、ハビタブルゾーンを公転する地球サイズの候補も5個含まれる[14]

9月、NASAは連星ケプラー16の周囲に惑星ケプラー16bを発見したと発表した。ケプラーが連星の周囲の惑星(周連星惑星)を発見したのは初で、また周連星惑星が恒星の手前を横切る様子が観測されたのも初である[15]。周連星惑星の候補はケプラー以前にもいくつか発見されているが[15]、NASAは「明確に検出」された物としてはケプラー16bが最初としている[16]

12月には、地球サイズの惑星候補2つ(ケプラー20eとケプラー20f)がケプラー20という恒星を周回していることが確認された。

2012年[編集]

2月、NASAは、昨年の発表時点より、未確認の惑星候補が1091個追加で見つかったと発表した[17]

7月、ケプラーに装備された4つあるリアクションホイールのうちのひとつ(No.2)が故障して使用できなくなった。

2013年[編集]

2月21日、NASAなどの国際研究チームは、今までで最も小さい太陽系外惑星を発見したと発表した。発表によるとこの惑星は、はくちょう座付近の恒星「ケプラー37」を公転する3つの惑星のうちのひとつで、もっとも内側を回っている惑星だという。大きさは水星より小さく、月よりわずかに大きい、地球の約3分の1のサイズ。水星のように水や大気が存在せず、灼熱にさらされた岩石惑星とみられている[18][19]

4月19日、NASAは、地球と同規模の太陽系外惑星を3つ発見したと発表した。このうち2つは地球から約1200光年のこと座にある「ケプラー62e」と「ケプラー62f」で、 大きさはそれぞれ地球の1.6倍と1.4倍、中心にある恒星との距離が地球と太陽との距離のように適度に離れていて、生命の存在に必要不可欠な液体の水が存在する可能性が高い「ハビタブルゾーン」にあるという。3つ目は、地球から約2700光年のはくちょう座にある「ケプラー69c」で、大きさは地球の1.7倍、太陽に似た恒星は存在するものの、恒星との距離が地球と太陽との距離よりもやや近く、地表の温度は地球より高温だとみられている[20]

5月15日、NASAはケプラーの2つめのリアクションホイール(No.4)が故障して制御不能に陥っており、このままの状態が続けば運用を断念すると発表した。5月初め頃から、精密な姿勢制御が出来なくなっていた[21]。リアクションホイールによる姿勢制御の回復には失敗したが、スラスターの使用により姿勢制御を回復しており、NASAは残存している燃料により、スラスターによる姿勢制御を数ヶ月は継続できるとしている[22]

8月15日、NASAは4つあるリアクションホイールのうち2つ(No.2と4)が故障しており、修理は不可能と発表した。今後、正常な2つのリアクションホイールとスラスタ制御のみの姿勢制御で行える観測を募集し、コストを算出して他のミッションに使えないかを検討している。また、ケプラーによって得られた探査データは膨大で、分析に数年かかる見通しである[23][24][25]

ミッション詳細[編集]

ケプラーの探査予定領域。背景はジョン・ロンバーグによる銀河系のイラスト。

ケプラーは地球を周回する軌道ではなく、太陽を中心として地球の後を追いかけるような太陽周回軌道に投入されている。これは、観測対象の星が地球に隠れてしまうのを防ぐとともに地球からの迷光を避けるためである。太陽光の影響を避けるため、望遠鏡は黄道面から離れたはくちょう座の方角だけを向くようにして観測する。この方角は小惑星帯エッジワース・カイパーベルトからも離れているため、これらの領域にある小天体によって星の光が隠されてしまうこともない。

ケプラーは2012年1月現在、既に35個の太陽系外惑星を発見しており、他に2,326個を候補として観測している。短期間で多くの太陽系外惑星を発見したが、はくちょう座のごく一部の領域を観測しただけの成果であることに注目すべきである。

探査機本体の重さは1,039kgであり、望遠鏡の開口部は0.95m、主鏡口径は1.4mである。これは地球周回軌道の外にある宇宙望遠鏡の中では最大である。また視野は105平方度であり、これは腕を伸ばして握りこぶしをふたつ並べたほどの大きさに相当する。焦点面には1024×2200素子の冷却CCDが42枚並べられる。観測対象の星が位置する画素の情報だけが記録され、地上に転送される。ケプラーミッションの総予算は4億6700万ドルである。

成果[編集]

関連項目[編集]

参考資料[編集]

  1. ^ “NASA Ends Attempts to Fully Recover Kepler Spacecraft, Potential New Missions Considered”. NASA. (2013年8月15日). http://www.nasa.gov/press/2013/august/nasa-ends-attempts-to-fully-recover-kepler-spacecraft-potential-new-missions/#.UhB9bkCqM7N 2013年8月18日閲覧。 
  2. ^ 宇宙望遠鏡「ケプラー」
  3. ^ NASA's Kepler Mission Official Summary
  4. ^ NASA's Shuttle and Rocket Missions
  5. ^ Let the Planet Hunt Begin”. NASA. 2009年11月21日閲覧。
  6. ^ Kepler Mission Manager Update” (2009年10月14日). 2009年11月21日閲覧。
  7. ^ Manager's Updates”. NASA. 2009年11月21日閲覧。
  8. ^ Borucki, W. J. et al (2009). “Kepler's Optical Phase Curve of the Exoplanet HAT-P-7b”. Science 325 (5941): 709-. http://ads.nao.ac.jp/abs/2009Sci...325..709B. 
  9. ^ Kepler Dropped Targets now Public”. MAST (2009年11月4日). 2009年11月21日閲覧。
  10. ^ Borucki, W. J. et al. (2010). “Kepler Planet-Detection Mission: Introduction and First Results”. Science online. doi:10.1126/science.1185402. 
  11. ^ Rachel Courtland (2010年3月30日). “Alien planet hunter develops a blind spot”. New Scientist. http://www.newscientist.com/article/dn18718-alien-planet-hunter-develops-a-blind-spot.html 2010年4月4日閲覧。 
  12. ^ “ケプラー、1つの恒星から2つの系外惑星を発見”. sorae.jp. (2010年8月27日). http://www.sorae.jp/031003/4104.html 2011年2月4日閲覧。 
  13. ^ “ケプラー、地球型系外惑星を初めて発見”. sorae.jp. (2011年1月11日). http://www.sorae.jp/031003/4254.html 2011年2月4日閲覧。 
  14. ^ “最多6個の惑星系「ケプラー11」を発見、系外惑星候補も1200個以上見つかる”. AstroArts. (2011年2月3日). http://www.astroarts.co.jp/news/2011/02/03kepler/index-j.shtml 2011年2月4日閲覧。 
  15. ^ a b “まるでスターウォーズ、「太陽」が2つある惑星を発見 サイエンス誌”. AFP BB News. (2011年9月16日). http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2827872/7780089 2011年9月18日閲覧。 
  16. ^ “NASA's Kepler Mission Discovers a World Orbiting Two Stars”. NASA. (2011年9月15日). http://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/news/kepler-16b.html 2011年9月18日閲覧。 
  17. ^ http://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/news/kepler-newcatalog.html
  18. ^ 観測史上最小の太陽系外惑星を発見、地球の3分の1 AFP(2013年2月21日)
  19. ^ “水星より小さい惑星発見=太陽系外最小-ケプラー望遠鏡”. 時事通信. (2013年2月21日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013022100049 2013年5月9日閲覧。 
  20. ^ “地球と同サイズの3惑星発見=液体の水存在も―NASA”. 時事通信. (2013年4月19日). http://www.jiji.com/jc/zc?k=201304/2013041900184 2013年5月9日閲覧。 
  21. ^ “宇宙望遠鏡ケプラー、制御不能…運用断念も”. 読売新聞. (2013年5月15日). http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130516-OYT1T00481.htm 2013年5月16日閲覧。 
  22. ^ “Kepler Mission Manager Update”. NASA. (2013年5月15日). http://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/news/keplerm-20130515.html 2013年5月16日閲覧。 
  23. ^ 修復不能のケプラー、成果はこれから ナショナルジオグラフィック ニュース
  24. ^ ケプラー宇宙望遠鏡が故障、太陽系外惑星探査に暗雲 CNN.co.jp
  25. ^ ケプラー望遠鏡の復旧断念 NASA、限定運用模索 47News

外部リンク[編集]