軌道共鳴

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軌道共鳴
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関連項目 準惑星冥王星型天体
太陽系小天体
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軌道共鳴(きどうきょうめい、orbital resonance)とは、天体力学において、公転運動を行なう二つの天体が互いに規則的・周期的に重力を及ぼし合う結果、両者の公転周期が簡単な整数比になる現象である。公転周期がこのような整数比になっている状態を尽数関係 (commensurability) と呼ぶ。尽数とは有理数の古い呼び名である。

歴史[編集]

17世紀ニュートンの運動の法則が発見されて以来、惑星軌道の安定性の問題はピエール=シモン・ラプラスを始めとして多くの数学者を虜にしてきた。太陽系の惑星の軌道は太陽とその周囲を公転する1惑星という2体問題近似の下では安定な軌道をとるが、この近似では他の天体の影響は無視している。これに他の惑星との相互作用を加えると、たとえそれが非常に微小な摂動であっても、長い時間にわたって影響を与え続け、最終的には惑星の軌道要素を変化させて太陽系の惑星は全く異なる配置になるはずである。しかし実際にはそのようなことは起きていないことから、惑星の軌道を安定化させる何か別のメカニズムが存在すると考えられた。この問題の解答を最初に発見したのはラプラスで、彼はガリレオ衛星の運動に見られる変わった振動の原因をこの共鳴理論で説明した。これ以降、この分野の研究は今日に至るまで活発に行なわれており、現在でも未解明の問題が数多く残されている。例として、巨大惑星のの粒子と衛星とが相互作用して環の形状を維持する機構などはいまだに解明されていない。

共鳴の種類[編集]

軌道共鳴は一般に以下のような性質を持つ。

  • 一つもしくは複数の様々な軌道要素パラメータの間に生じる(例: 離心率軌道長半径の共鳴、離心率軌道傾斜角の共鳴など)。
  • 短い時間尺度、公転周期と同程度の時間尺度、永年的なもの(104~106 年)など、様々な時間尺度で起こる。
  • 長期間にわたって軌道を安定化させる方向に作用する場合もあり、軌道を不安定化させる方向に働くこともある。

平均運動共鳴 (mean motion orbital resonance) とは2つの天体の公転周期が簡単な整数比になっている場合の共鳴である。天体の詳細な状態によって、軌道が安定化する場合も不安定化する場合もある。軌道が安定化するのは、2つの天体が同期状態の下に運動していて決して近接遭遇を起こさないような場合である。例として以下のようなケースがある。

  • 冥王星冥王星族天体はより質量の大きな海王星の軌道と交差しているにもかかわらず、安定な軌道を持っている。これはこれらの天体と海王星の公転周期が 3:2 の共鳴状態にあり、海王星から常に離れた位置にあるためである。海王星と交差するが海王星との共鳴軌道を持たない数多くの他の天体は、トリトンのように海王星の衛星となってしまうか、海王星から強い擾乱を受けてこの領域から弾き出されてしまう。
  • トロヤ群に属する小惑星は太陽‐木星系のラグランジュ点に位置し、木星と 1:1 の共鳴にあるために安定した軌道を持つ。
  • 太陽系外惑星グリーゼ876bとグリーゼ876cは 2:1 の軌道共鳴の状態にある。

軌道共鳴は天体の軌道を不安定にする場合もある。小さな天体の場合は共鳴によって軌道が不安定化する場合の方が多い。例として以下のようなケースがある。

  • 小惑星のメインベルトにはカークウッドの空隙と呼ばれる小惑星のほとんど存在しない領域が存在する。この領域は木星との平均運動共鳴が起こる位置に相当している。この領域にある小惑星は木星からの摂動を繰り返し受けて領域外へ弾き飛ばされる。

3個またはそれ以上の天体の公転周期が互いに簡単な整数比になっている場合の共鳴をラプラス共鳴 (Laplace resonance) と呼ぶ。例えば、木星の衛星ガニメデエウロパイオの三つは互いに 1:2:4 の軌道共鳴の状態にある。

二つの天体の軌道の歳差(通常は近日点歳差)が同期している場合の共鳴を永年共鳴 (secular resonance) と呼ぶ。小天体がより大きな天体(惑星など)と永年共鳴の状態にあると、小天体は大天体と同じ割合で歳差運動を起こす。永年共鳴は約106年といった長期間にわたって天体の軌道に作用し、小天体の軌道の離心率や軌道傾斜角を変化させる。顕著な例として以下のものがある。

  • 小惑星と土星との間に ν6 永年共鳴と呼ばれる共鳴がある。土星に接近する小惑星はこの共鳴によってゆっくりと離心率が増加し、やがて火星軌道の内側に入るようになる。このような軌道をとる小惑星は火星との近接遭遇によって小惑星帯から弾き出される。この共鳴によって、メインベルトの小惑星分布には約2AU付近に内側の境界が作られ、また軌道傾斜角に対する分布でも約20度を超える小惑星が存在しないという境界が作られている。

太陽系の平均運動共鳴[編集]

木星(JUPITER)の三つの衛星、イオ(IO)、エウロパ(EUROPA)、ガニメデ(GANYMEDE)間にはラプラス共鳴が存在する。図の数字はイオの周期を1としたときの、それぞれの周期の割合。

太陽系の惑星や衛星の間には次の5つの平均運動共鳴のみが知られている。(より大きな整数比の共鳴は小惑星や惑星の環、小衛星などにのみ見られる。)

公転周期の整数比は共鳴の性質を簡潔に表す便利なものだが、実際には以下のようなより複雑な関係が存在している。

  • 会合点が共鳴によって定義される平衡点の周りを振動する。
  • 軌道の離心率が 0 でない場合、軌道の昇交点降交点近点が移動する。(共鳴に関係したこの種の移動は短周期のもので、永年的な歳差とは異なる。)

後者の例としてよく知られたイオとエウロパの 1:2 共鳴を考える。公転周期がこのような整数比になっていると、平均運動 n\,\!(公転周期の逆数の次元を持ち、度/日の単位で表されることが多い)は次の関係を満たす。

n_{\rm Io} - 2 n_{\rm Eu} = 0 \,

しかし実際にイオとエウロパの平均運動の値を上式の左辺に代入してみると、結果は -0.7395 °/日となって 0 にならない。

実際には共鳴自体は完全だが、ここに近木点(木星に最も近い点)の歳差が加わる。よって正しい式は以下のようになる(これはラプラス方程式の一部となっている)。

n_{\rm Io} - 2 n_{\rm Eu} + \dot\omega_{\rm Io} = 0 \,

すなわち、イオの平均運動は近木点の歳差を考慮に入れればエウロパの平均運動のちょうど2倍になる。もし移動する近木点からこれらの天体を観測すると、この二つの衛星は(近木点からの離角が)常に同じ位置で会合を迎えるのを見ることになる。上に挙げた他の平均運動共鳴の例でも同様の関係を満たしている。ただしミマスとテティスの場合は例外で、下記の式を満たす。

4 n_{\rm Th} - 2 n_{\rm Mi} - \Omega_{\rm Th}- \Omega_{\rm Mi}= 0 \,

この場合、会合点は両衛星の交点の中点を中心として振動する。

ラプラス共鳴[編集]

イオ-エウロパ-ガニメデの間に見られる最も注目すべき軌道共鳴では、以下の関係によって衛星同士の軌道上の位相が同期している。

\Phi_L = \lambda_{\rm Io} - 3 \lambda_{\rm Eu} + 2 \lambda_{\rm Ga} = 180^\circ \,

ここで \lambda は衛星の平均黄経である。この関係があるため、この系では3個の衛星の三重会合は決して起こらない。

「準」平均運動共鳴[編集]

太陽系の衛星の中には以下のような共鳴に近い関係のものも存在する。

土星系:

天王星系:

土星系や木星系に共鳴が存在するにもかかわらず天王星系に(完全な)共鳴が見られない理由は分かっていない。

また、海王星‐冥王星以外の惑星の公転周期についても以下のような準共鳴状態が存在していると主張する者もいる。

  • (2:1) 海王星‐天王星
  • (3:1) 天王星‐土星
  • (5:2) 木星‐土星

ティティウス・ボーデの法則を参照のこと)しかし、様々な研究が行なわれているにもかかわらず、これらの準尽数関係については有力な証拠は得られていない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

参考文献[編集]

Murray, Dermot, Solar System Dynamics, Cambridge University Press, ISBN 0-521-57597-4