自転と公転の同期

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

自転と公転の同期(じてんとこうてんのどうき)とは、互いの重力に引かれて共通重心の周りを公転している二つの天体の一方または両方が、常に相手に同じ面を向けて回転する現象である。すなわち自転周期と公転周期が等しくなっている現象である。このような状態を同期回転状態とも言う。身近な実例は地球衛星である。は自転周期と公転周期が同じ(約27.32日)になっているので、常に地球に同じ面を向けている。

同期回転の原因[編集]

自転角速度が公転角速度に対して卓越している場合(左)と同期回転状態(右)。黄矢印は衛星の自転を表す。2つの潮汐バルジ(BFとBN)にかかる重力には差があり、それによって生じるトルクは黄矢印の回転を打ち消す方向に働く。

このような同期は二つの天体の距離が比較的近く、相手の天体が及ぼす潮汐力が強い場合に起こる。こういった同期現象は惑星や衛星に限らず、公転運動する固体状の天体に於いて一般的に起こり得る現象である。

互いに重力で引き合う二つの天体には、それぞれ相手の天体から潮汐力が働く。この潮汐力は、2天体を結ぶ軸の方向では天体を引き伸ばし、この軸に垂直な方向では天体を圧縮する向きに作用する。天体がある程度以上の質量を持つと、自己重力が十分に強くなり、静水圧平衡の状態となるため、ほぼ球形をしている。しかし、このような潮汐力が働くと、天体は2天体の軸方向に力が加わってわずかに伸びた楕円体となり、引き伸ばす力に由来する膨らみ(潮汐バルジ)を生じる。

ここで、例として惑星-衛星系を考え、両天体の公転運動に合わせて回転する座標系に乗り、潮汐力による衛星の変形の効果によって衛星が同期回転する様子を見てみる。

衛星の2つの潮汐バルジは、その自転周期と公転周期の差に応じて、惑星とを結ぶ軸上から若干ずれたところにある。これは、衛星の粘性に応じて潮汐力による変形応答が遅延するためである。ここで、2つの潮汐バルジ部の質量が惑星から受ける重力を考えると、これらの合力は、潮汐バルジが惑星とを結ぶ軸への移動を起こすようなトルクとなる(潮汐トルク)。この潮汐トルクは、衛星の自転周期と公転周期の差を縮めるように働き、衛星はついに同期回転状態に落ち着く。

これと同様のことは、惑星にも起こりうる。衛星からの潮汐力の効果で惑星が変形し、惑星には、衛星に同じ面を向けるようなトルクが生じている。

同期回転の例[編集]

火星フォボスダイモス木星ガリレオ衛星を始め、太陽系の惑星にある、ほとんど全ての衛星は自転と公転とが同期している。また、惑星と衛星との距離が近く、両者の質量の差があまり大きくない場合には、衛星からの潮汐力によって惑星の自転周期も衛星の公転周期・自転周期と同期し、両者とも完全に相手に同じ面を向けたままの状態になる場合も考えられる。準惑星冥王星とその衛星カロンとはそのような同期の例である。地球とは現在、月のみ自転と公転が同期した状態にあるが、月との相互作用に起因する潮汐トルクによって地球の自転速度は徐々に遅くなっており、遠い将来には月の公転周期と同期するところまで遅くなって安定すると考えられる。

近接連星系の多くも互いの星の自転と公転が同期していると考えられている。また1990年代以降に多く発見されている太陽系外惑星のうち、ホット・ジュピターと呼ばれるような軌道半径が小さい巨大惑星はやはり自転と公転が同期していると考えられる。変わった例では、1997年うしかい座τ星に発見された系外惑星は、通常とは逆に恒星の自転周期が惑星の公転周期で強制され、同期しているらしいことが分かっている[1]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]