ヒペリオン (衛星)

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ヒペリオン
Hyperion
Hyperion PIA07740.jpg
仮符号・別名 別名 Saturn VII
発見
発見日 1848年7月16日
発見者 ウィリアム・ラッセル
ウィリアム・クランチ・ボンド
ジョージ・フィリップス・ボンド
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 1,481,009 km
離心率 (e) 0.1230061
公転周期 (P) 21.27661 日
軌道傾斜角 (i) 0.43° (土星赤道に対して)
土星の衛星
物理的性質
直径 360×280×225
半径 95-182km
質量 5.686×1018 kg
平均密度 0.6 g/cm3
表面重力 ~0.017 m/s2
脱出速度 ~0.022 km/s
自転周期 不規則回転
アルベド(反射能) 0.3[1]
表面温度
最低 平均 最高
-180[2]
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ヒペリオン (Saturn VII Hyperion) は、土星の第7衛星ハイペリオンと表記されることもある。ギリシア神話におけるティーターンの一人ヒュペリーオーンから名づけられた。土星の8番目に大きい衛星である。

1848年ウィリアム・クランチ・ボンドらにより発見された。

性質[編集]

カッシーニが撮影したヒペリオン。

土星からの平均距離は148万1100km。公転周期は21.3日だが、自転周期と自転軸は不規則に変化する。直径は190-364kmで、太陽系で2番目に大きな非球形天体である。表面には無数の深いクレーターが存在してスポンジのように見え、他には知られていない特徴的な外観を有している。古いクレーターの底の多くには他の表面より暗い物質が堆積している。

2005年9月26日土星探査機カッシーニによる接近観測が行われた。アメリカ合衆国コーネル大学などの国際チームが、この際に撮影された高精彩画像の分析結果を科学雑誌「ネイチャー」に発表した[3]。それによると、平均密度は0.5–0.6 g/cm3であり、例えばヒペリオンよりやや小さな土星の衛星フェーベの1/3しかない。 ヒペリオンが主に水が凍結した氷でできているとすれば、体積の40%が隙間と見られる。表面は直径2-10km、深さ400m以上のクレーターで覆われている。仮に小天体が衝突しても、この隙間のために飛び散る物質が少なく、クレーターが保存されやすい可能性があるとされている。

カオス的自転[編集]

1981年ボイジャー2号がヒペリオンのいびつな形を初めて間近に観測したとき、予想されたものとは違ってその最も長い軸は土星を向いていなかった[4]。 また、いびつな形にもかかわらず、多くの衛星で見られるように潮汐力によって同じ側を母星に向けて公転しておらず、自転周期公転周期と異なっていることが判明した[4]

この奇妙なヒペリオンの自転をボイジャーの画像から分析したウィズダムらは、すぐ内側をほぼ 3/4 の公転周期で周る巨大なタイタンの影響によって、自転が単純な回転ではなくカオス的運動になっていると予測した[5]。 すなわち自転は不規則で、一定の周期や軸を持たず、わずかな差が時間とともに急速に拡大するために長期的な予測が実質的に不可能なものであるとされた。 その後行われた地上からの光学的な観測でもこのカオス的な運動は裏付けられた[6]。 これは実際の天体においてカオス的ふるまいが具体的に示された初めての例となった[7]

他にカオス的自転をする衛星の例としては、冥王星ニクスヒドラがあり、また海王星ネレイドにもその可能性がある。

地形[編集]

ヒペリオンの地表。

現在、ボイジャーの写真を元に命名された地名が5つある。

ドルスム[編集]

  • ボンド=ラッセル・ドルスム (Bond-Lassell Dorsum) : 発見者のボンド親子とラッセルにちなむ。

クレーター[編集]

世界の神話の太陽神もしくは月の神にちなむ。

作品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ D.R. Williams (2011年2月22日). “Saturnian Satellite Fact Sheet”. NASA. 2015年8月14日閲覧。
  2. ^ About Saturn & Its Moons: Moons – Hyperion”. Cassini @ JPL/NASA. 2015年8月14日閲覧。
  3. ^ Thomas, P. C.; J. W. Armstrong, S. W. Asmar, J. A. Burns, et al. (2007年). “Hyperion's sponge-like appearance”. Nature 448: 50–53. doi:10.1038/nature05779. 
  4. ^ a b ピーターソン 1995, pp. 218–220.
  5. ^ J. Wisdom; S.J. Peale, F. Mignard (1983年). “The chaotic rotation of Hyperion”. Icarus 58: 137–152. doi:10.1016/0019-1035(84)90032-0. 
  6. ^ J.J. Klavetter (1989年). “Rotation of Hyperion. I — Observations”. Astron. J. 97: 570–579. doi:10.1086/115006.  (ADS); J.J. Klavetter (1989年). “Rotation of Hyperion. II — Dynamics”. Astron. J. 98: 1855–1874. doi:10.1086/115264.  (ADS)
  7. ^ ピーターソン 1995, pp. 232–234.

参考文献[編集]

  • アイバース・ピーターソン、野本陽代(訳)、1995、『ニュートンの時計―太陽系のなかのカオス』1版、 日経サイエンス社 ISBN 4-532-52044-4

関連項目[編集]