周連星惑星

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最初に確認された周連星惑星である PSR B1620-26 b の想像図。主星の PSR B1620-26中性子星白色矮星の連星系で、奥に小さく描かれている。

周連星惑星(しゅうれんせいわくせい Circumbinary planet)とは、単一の恒星の代わりに連星系の周囲を公転する惑星のことである。太陽は単一星なので、この用語は太陽系外惑星に対してのみ使われる。2009年12月までに、PSR B1620-26おとめ座HW星の2つの連星に周連星惑星を持つ惑星系が確認され、他にもいくつかの連星に周連星惑星の候補が観測されている。

観測と発見[編集]

確認された惑星[編集]

周連星惑星が最初に発見された系は、PSR B1620-26 である。これはミリ秒パルサー白色矮星から構成された連星で、M4球状星団に属している。最初に第3の天体が報告されたのは1993年のことで[1]、5年間の観測によりその正体が惑星であることが示された[2]。2003年には、この惑星は木星の2.5倍の質量を持ち、軌道長半径23AUの真円に近い軌道に沿って周回しているという研究が発表された[3]

2008年には、おとめ座HW星と呼ばれるB型準矮星赤色矮星からなる食連星の周囲に、複数の惑星が存在すると報告された。内側の惑星は最低質量が木星の8.47倍、外側の惑星は19.23倍、公転周期はそれぞれ9年と16年である。質量を基準とした定義[4]によると外側の天体は褐色矮星に分類されるが、発見チームは軌道の性質に基づき、この天体が惑星と同じように原始惑星系円盤で形成された可能性を主張している。これらの惑星は元はより質量の小さい天体だったが、連星の主星が赤色巨星になり質量を放出した際に質量が付け加わったと考えられている[5]

2011年には、ケプラーの成果として、2つの太陽を回るケプラー16bが発見された。この星系、当初は単純な食連星系と見られていたが、食が起きていないときにも光が減少する事が発見され、第3の星の可能性が検討された。その結果、229日周期で回る土星クラスの惑星が発見された。[6]

2012年には、2つの太陽を回る2つの惑星がケプラー47で発見された。

その他の観測[編集]

周連星円盤を持つ連星系 HD 98800 B の想像図。奥に描かれた別のペア (HD 98800 A) と共に4連星系を成している。

1999年、近接した連星系であるMACHO-1997-BLG-41の周囲に、重力マイクロレンズ法を利用して惑星を発見したことが報告された[7]。この惑星は連星から離れた軌道を公転していると考えられたが、惑星の存在の根拠とされた観測結果が連星自体の運動によって十分説明できることが分かり、報告は取り下げられた[8]

また、グリーゼ630.1と呼ばれる3連星系の一部を構成し、食連星としても知られるりゅう座CM星は、数度にわたって系外惑星探査の対象となった。食検出法による観測ではいくつかの惑星の存在が仮定されたが確証は得られず、最終的には全ての惑星候補の可能性が除外された[9][10]。その後、惑星の影響を受けて連星系が運動することで食の間隔が変動する様子を捉える方法が用いられるようになったが、2009年の時点では惑星の実証には至っていない。ただし連星の軌道は離心率が完全に0ではないため、外側に連星の軌道を楕円化するような巨大惑星か褐色矮星が存在する可能性がある[11]

周連星惑星自体の観測例が少ない一方で、周連星惑星の形成を示唆する周連星円盤は複数の星に見つかっており、恒星間の距離が3AU以下の連星系では一般的なものと考えられている[12][13]。例えば HD 98800 と呼ばれる多重連星系では、34AU離れた2つの連星系が4連星系を構成しているが、そのうち HD 98800 B と呼ばれるペアは0.70太陽質量と0.58太陽質量の恒星が軌道長半径0.983AUの長楕円軌道で共通重心を周回する連星になっており、周囲には周連星円盤が見つかっている。この円盤は互いに傾斜し離心率の高い連星の軌道によって歪められ、複雑な構造を有している[14][15]。一方で HD 98800 A のペアには有意な量のダストは存在しない[16]

周連星惑星の一覧[編集]

連星 惑星 質量
(MJ)
軌道長半径
(AU)
公転周期
発見年 状態
MACHO-1997-BLG-41 b ~3 ~7  ? 1999 取り下げ
PSR B1620-26 b 2.5 23 100 2003 確認済み
おとめ座HW星 b ≧19.23±0.24 5.30 15.84 2008 確認済み
c ≧8.47±0.42 3.62±0.52 9.08±0.22 2008 確認済み
へび座NN星 b ≧10.7 3.29 7.56 2009 確認済み
おとめ座QS星 b ≧6.4 4.2 7.86 2009 疑問
しし座DP星 b ≧6.28 8.6 23.8 2009 確認済み
ケプラー16 b 0.333 ± 0.016 0.7048 ± 0.001 0.626784 2011 確認済み
ケプラー47 b < 2.7 0.2956 0.1357 2012 確認済み
c < 17 0.989 0.8306 2012 確認済み
NSVS 1425 b 2.8 ± 0.3 1.9 ± 0.3 3.496 ± 0.211 2012 確認済み
c 8 ± 0.8 2.9 ± 0.6 6.866 ± 0.249 2012 確認済み
KIC 4862625 A b < 0.532 0.634 ± 0.011 0.37947+0.00029
−0.00025
2012 確認済み

フィクション中の周連星惑星[編集]

スター・ウォーズ』シリーズに登場する架空の惑星タトゥイーンは、近接した連星系の周囲を公転する周連星惑星である[12]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Backer, D. C. (1993). “A pulsar timing tutorial and NRAO Green Bank observations of PSR 1257+12”. In: Planets around pulsars; Proceedings of the Conference, California Inst. of Technology, Pasadena, Apr. 30-May 1, 1992: 11-18. http://adsabs.harvard.edu/abs/1993ASPC...36...11B. 
  2. ^ Thorsett, S. E. et al. (2003). “PSR B1620-26 - A binary radio pulsar with a planetary companion?”. The Astrophysical Journal 412 (1): L33-L36. doi:10.1086/186933. http://adsabs.harvard.edu/abs/1993ApJ...412L..33T. 
  3. ^ Sigurdsson, S. et al. (2003). “A Young White Dwarf Companion to Pulsar B1620-26: Evidence for Early Planet Formation”. Science 301 (5630): 193-196. doi:10.1126/science.1086326. http://adsabs.harvard.edu/abs/2003Sci...301..193S. 
  4. ^ Defintion of a "Planet"”. Working Group on Extrasolar Planets, IAU (2003年2月28日). 2009年12月18日閲覧。
  5. ^ Lee, J. W. et al. (2009). “The sdB+M Eclipsing System HW Virginis and its Circumbinary Planets”. The Astronomical Journal 137 (2): 3181-3190. doi:10.1088/0004-6256/137/2/3181. http://adsabs.harvard.edu/abs/2009AJ....137.3181L. 
  6. ^ “太陽”が2つある土星型の系外惑星
  7. ^ Bennett, D. P. et al. (1999). “Discovery of a planet orbiting a binary star system from gravitational microlensing”. Nature 402 (6757): 57-59. doi:10.1038/46990. http://ads.nao.ac.jp/abs/1999Natur.402...57B. 
  8. ^ Albrow, M. D. et al. (2000). “Detection of Rotation in a Binary Microlens: PLANET Photometry of MACHO 97-BLG-41”. The Astrophysical Journal 534 (2): 894-906. doi:10.1086/308798. http://ads.nao.ac.jp/abs/2000ApJ...534..894A. 
  9. ^ The TEP network”. The TEP network. 2009年12月18日閲覧。
  10. ^ Doyle, L. R. et al. (2000). “Observational Limits on Terrestrial-sized Inner Planets around the CM Draconis System Using the Photometric Transit Method with a Matched-Filter Algorithm”. The Astrophysical Journal 535 (1): 338-349. doi:10.1086/308830. http://ads.nao.ac.jp/abs/2000ApJ...535..338D. 
  11. ^ Morales, J. C. et al. (2009). “Absolute Properties of the Low-Mass Eclipsing Binary CM Draconis”. The Astrophysical Journal 691 (2): 1400-1411. doi:10.1088/0004-637X/691/2/1400. http://ads.nao.ac.jp/abs/2009ApJ...691.1400M. 
  12. ^ a b “Worlds with Double Sunsets Common”. SPACE.com. http://www.space.com/scienceastronomy/070329_double_sunsets.html 2009年12月18日閲覧。 
  13. ^ Trilling, D. E. et al. (2007). “Debris disks in main-sequence binary systems”. The Astrophysical Journal 658 (2): 1264-1288. doi:10.1086/511668. http://ads.nao.ac.jp/abs/2007ApJ...658.1289T. 
  14. ^ Akeson, R. L. et al. (2007). “The Circumbinary Disk of HD 98800B: Evidence for Disk Warping”. The Astrophysical Journal 670 (2): 1240-1246. doi:10.1086/522579. http://ads.nao.ac.jp/abs/2007ApJ...670.1240A. 
  15. ^ Verrier, P. E. & Evans, N. W. (2008). “HD 98800: a most unusual debris disc”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 390 (4): 1377-1387. doi:10.1111/j.1365-2966.2008.13854.x. http://ads.nao.ac.jp/abs/2008MNRAS.390.1377V. 
  16. ^ Prato, L. et al. (2001). “Keck Diffraction-limited Imaging of the Young Quadruple Star System HD 98800”. The Astrophysical Journal 549 (1): 590-598. doi:10.1086/319061. http://ads.nao.ac.jp/abs/2001ApJ...549..590P.