ヒドラジン
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ヒドラジン
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| 物質名 | |||
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Hydrazine | |||
別名
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| 識別情報 | |||
3D model (JSmol)
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| バイルシュタイン | 878137 | ||
| ChEBI | |||
| ChemSpider | |||
| ECHA InfoCard | 100.005.560 | ||
| EC番号 |
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| Gmelin参照 | 190 | ||
| KEGG | |||
| MeSH | Hydrazine | ||
PubChem CID
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| RTECS number |
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| UNII | |||
| 国連/北米番号 | 2029 | ||
CompTox Dashboard (EPA)
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| 性質 | |||
| H4N2 | |||
| モル質量 | 32.046 g·mol−1 | ||
| 精密質量 | 32.037448138 g mol-2 | ||
| 外観 | 無色の液体 | ||
| 密度 | 1.013(8) g cm-3 | ||
| 融点 | 1 °C (34 °F; 274 K) | ||
| 沸点 | 114 °C (237 °F; 387 K) | ||
| 酸解離定数 pKa | 8.10[1] | ||
| 屈折率 (nD) | 1.46044 (at 22 °C) [2] | ||
| 粘度 | 0.876 cP | ||
| 構造 | |||
| 1.85 D[3] | |||
| 熱化学 | |||
| 標準定圧モル比熱, Cp⦵ | 98.87 J mol-1K-1 | ||
| 標準モルエントロピー S⦵ | 121.21 J mol-1K-1 | ||
標準生成熱 (ΔfH⦵298)
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50.63 kJ mol-1(l)[4] | ||
| 危険性 | |||
| GHS表示: | |||
| Danger | |||
| H226, H301, H311, H314, H317, H331, H350, H410 | |||
| P201, P261, P273, P280, P301+P310, P305+P351+P338 | |||
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |||
| 引火点 | 52 °C (126 °F; 325 K) | ||
| 24 - 270 °C (75 - 518 °F; 297 - 543 K) | |||
| 爆発限界 | 1.8–100% | ||
| 致死量または濃度 (LD, LC) | |||
半数致死量 LD50
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59–60 mg/kg (経口, ラット, マウス)[6] | ||
半数致死濃度 LC50
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260 ppm (ラット, 4 時間) 630 ppm (ラット, 1 時間) 570 ppm (ラット, 4 時間) 252 ppm (マウス, 4 時間)[7] | ||
| NIOSH(米国の健康曝露限度): | |||
| TWA 1 ppm (1.3 mg/m3) [skin][5] | |||
| Ca C 0.03 ppm (0.04 mg/m3) [2-hour][5] | |||
| Ca [50 ppm][5] | |||
| 安全データシート (SDS) | ICSC 0281 | ||
| 関連する物質 | |||
| 関連物質 | |||
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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ヒドラジン (英: hydrazine) は、無機化合物の一種で、分子式 N2H4と表される弱塩基。
アンモニアに似た刺激臭を持つ無色の液体で、空気に触れると白煙を生じる。水に易溶。強い還元性を持ち、分解しやすい。引火性があり、ロケットエンジンの推進剤として用いられる。
常温での保存が可能であるため、非常用電源装置 (F-16) やミサイルの燃料としても広く用いられている。また人工衛星や宇宙探査機の姿勢制御用推進器の燃料としても使われている。プラスチック成形時の発泡剤、エアバッグ起爆剤、各種脱酸素剤として広く使用され、特に火力・原子力発電所用高圧ボイラーの防食剤として使用されている。水加ヒドラジンは水素に代わる燃料電池の燃料としても模索されている。
水と共沸し、55 mol%のヒドラジンを含む混合物を与える。化学実験で用いる際は通常、抱水ヒドラジン(ヒドラジン一水和物、N2H4•H2O)が用いられる。
毒性
[編集]人体へは、気化吸引、皮膚への接触ともに腐食をもたらす。また中毒症状をおこす。「毒物及び劇物取締法」により毒物に指定されている[8]。
動物において肝毒性が認められており、ラットおよびマウスで巨大ミトコンドリアの出現が報告されている。なお、アセチル転移酵素により代謝・解毒されるが、イヌはアセチル転移酵素を欠くため、特に毒性が発現しやすいことが知られている。
環境汚染
[編集]28日後のBOD分解度は2%であり、化審法の化学物質安全性点検結果では、ヒドラジンは難分解性と判断されている。一方で有酸素環境では自動酸化により分解される。有機物を多く含む河川水と池水 (いずれも硬水)中でのヒドラジンの半減期は 1 日未満だった。[9]
製法
[編集]アンモニアを次亜塩素酸塩で酸化するか、アンモニアを塩素で気相酸化して作る。
反応
[編集]ヒドラジンをカルボニル化合物と脱水縮合させると、ヒドラゾンが生じる。
ケトンを強アルカリ条件でヒドラジンとともに加熱すると、カルボニル基が還元を受けてメチレン基に変わる(ウォルフ・キッシュナー還元)。
- (強アルカリ条件)
カルボン酸ハロゲン化物などのアシル化剤と反応し、ヒドラジドを与える。
パラジウム触媒とともに用いると水素源となる。アルケンやニトロ基などを水素化してアルカンやアミノ基に変え、自身は窒素分子になる。このとき、中間体として生じるジアゼン(N2H2)が高い還元力を持つ。
- (パラジウム触媒下)
さまざまな酸とともに対応するヒドラゾニウム塩を生成する。2価の塩基として働き得るが、2段目のプロトン化は極めて弱い。
- , pKa1=-0.9
- , pKa2=8.10
脚注
[編集]- ^ Hall, H.K., J. Am. Chem. Soc., 1957, 79, 5441.
- ^ Pradyot Patnaik. Handbook of Inorganic Chemicals. McGraw-Hill, 2002, ISBN 0070494398
- ^ Greenwood, Norman N. [英語版]; Earnshaw, Alan (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). Butterworth-Heinemann. doi:10.1016/C2009-0-30414-6. ISBN 978-0-08-037941-8.
- ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
- ^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0329
- ^ Chemical Risk Analysis: A Practical Handbook. Amsterdam: Butterworth–Heinemann. (2004). p. 361. ISBN 978-1-903996-65-2. OCLC 939257974
- ^ “Hydrazine”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH). 2025年11月7日閲覧。
- ^ “毒物及び劇物指定令(昭和40年1月4日政令第2号)第一条 二十三の二”. 厚生労働省. 2018年11月4日閲覧。
- ^ “人健康影響及び生態影響に係る評価Ⅱ 物理化学的性状等の詳細資料 ヒドラジン”. 環境省. pp. 20-21. 2024年11月22日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]
ウィキメディア・コモンズには、ヒドラジンに関するカテゴリがあります。- “毒物および劇物の事故時における応急措置に関する基準”. 滋賀県庁 (2015年9月25日). 2021年5月9日閲覧。




