同人ゲーム

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同人ゲーム(どうじんゲーム)とは、

  1. 同人(=同好の士の集まり)により確立された、もしくはそれに由来する作品発表・流通形式のコンピュータゲーム。実際の製作者が同人か個人かは問わないことが多い。通販・即売・自販機・ショップ委託・オンライン(デジ同人)等。
  2. アマチュアの個人制作や同人サークルが開発したコンピューターゲーム全般。(1)との違いは雑誌投稿やオンラインソフト・Webゲーム等まで含むこと。「インディーゲーム」(英:Indie game)に類する・または同一の用語でもあるが、同人の意味から区別すべきとの意見もある。

コンピューターの同人・投稿・オンラインソフトのゲームは歴史的経緯よりそれぞれ独立・対等な概念として定着していたが(1)、90年代半ば以降、インターネット普及に伴う同人ゲームのネット進出で住み分けが崩れる等様々な要因で(2)の意で使われることが増え、またそれに伴う軋轢も生じている。詳しくは#歴史参照。

歴史

パーソナルコンピューター(マイクロコンピューター)黎明期 (1970年代〜)

個人レベル(1〜数人)でのコンピューターゲーム制作の歴史はパーソナルコンピューターの黎明期(70年代末期)よりも、さらに以前のワンボードマイクロコンピューターの時代にまで遡る。

元々、個人用のコンピューターは技術者やマニア向けのプログラム製作・学習の道具であり、市販ソフトも徐々には増えて行くものの、しばらくは「プログラム制作に興味のないパーソナルコンピューターユーザー」というのは考えにくい時代であった。またゲーム制作目的の者も多く、特にスペースインベーダー(78年)のブーム以降は大きく増えている。

ただし同人ソフト・同人ゲームを名乗る自主流通系ソフトが現れるのはしばらく後のことである。

理由としては、まず、業界がアマチュア制作ソフトの流通・発表を積極的に支えたために、漫画界のように「同人サークルが集まり流通ルートを切り開く」必要性が薄かったことがある。

漫画雑誌の投稿募集がほぼプロ予備軍の発掘目的であるのに対し、パーソナルコンピューター雑誌の場合は、初期の市販ソフトの乏しさを補う意味もあって、市販化を視野に入れたものから初心者でもアイデア次第で勝負になるショートプログラムまで幅広い発表の場が用意されていた。雑誌には黎明期の4大誌(『I/O』『 月刊アスキー』 『月刊マイコン』『RAM』)や『マイコンBASICマガジン』、『MSXマガジン』等がある。

また、後に大手となったゲームメーカーも、自社のパーソナルコンピューター販売部門の顧客が開発したゲームソフトを買い取って販売したり、エニックス(現スクウェア・エニックス)のように賞金つきのゲームプログラムコンテストを開催して公募したゲームを市販するといった事業形態から始まったメーカーも多く、プロ・アマの境目自体も曖昧であった。

もっとも自主流通自体が、パーソナルコンピューター普及率の低さに加え機種間の互換性がほとんどなかったために、紙媒体に比べると格段に難しかったと言う事情もある。

パーソナルコンピューター市場拡大と「同人ゲーム」の誕生(1980年代中盤〜)

同人ゲームと市場の誕生

80年代中盤になると、8ビット時代の主力機種が出揃いフロッピーディスクも普及、同時期のファミリーコンピュータの大ヒットでコンピューターゲーム人口が大幅に増えた影響もあり、パーソナルコンピューターのホビーユーザー数もゲームソフトの本格的な自主流通が可能な数になって行く。

また、ゲーム業界の成長に伴い市販ソフトの開発規模が個人レヴェルから多数のスタッフの参加する大規模なものになったこと、また、当初はほぼ野放しだった市販ソフトの表現内容についても様々な規制が行われるようになり、メジャーメディアである市販ソフトに対するインディーズとしてのソフト制作と流通の動きも出てくる。

最初に同人ソフトの名称を使ったのは84年のコミケットでの、サークル帝国ソフトの『人魚の涙』だとされる。ただし、最初にコミケにゲームソフトが持ち込まれたのはその前年のC25における、帝国ソフトの『ニ・コ・ニ・コ女の子パズル』。(ちなみにこのソフトは85年にASCIIから「Carrot」というタイトルで市販された)。しかし、他の大半の同人漫画即売会ではその場で内容確認が出来ない等の理由から同人ソフトは持ち込めず(→同人ソフト)、そのため1988年4月からは同人ソフトやハードが対象の即売会パソケットが開催されることになる。(なお、現在ではノート型パーソナルコンピューターを持ち込んで内容確認することで、この問題は解決されている)。

通販形態での自主流通の開始時期は不明だが、前述の即売会持ち込み不可の問題もあって、初期には有力な手段であった。

92年にはソフト自販機『ソフトベンダーTAKERU』での同人ソフト取り扱いが始まる。市販化とは違う、商業ルート上の同人ソフト流通の先駆けである。

パソコン通信と同人

80年代中盤はパソコン通信の黎明期でもあり、場所によっては同人ソフト・ゲームの話題や情報の交換も活発に行われた。

また、通信上でのソフトウェアの流通(オンラインソフト)も始まる。しかし、これは同人系とは独立して成立したものであり、当時はまず混同されることは無かった。

と言うのも、当初の通信速度(300〜1200bps程度)と従量課金下でフロッピー1枚分(2DDで約720KB、2HDでは約1.44MB)の容量を流すのは非現実的(最悪だと1時間半近くかかる計算)であり、また金銭のやり取りの不便さ等から、後期に少数の体験版等が流れたことを除けば同人(および商業)ソフトの流通路にはなり得ず、結果的にネットとリアルでの住み分けが為されたからである。

このため、オンラインソフトは小容量で無償のものを中心とした独自の文化を築くことになる。もっとも同時期のパーソナルコンピューター用同人や商業ソフトに比べれば小容量とは言え、同時期の家庭用ゲーム機並の容量は使えたため、ゲームボリュームとしてはかなりの大作も作られている。

それでも、有償のオンラインソフトが一般化するのはWin3.1(92年発売)の普及時期まで下る。金銭のやり取りの不便さに加え、開発費はともかく一旦アップロードしてしまえば製作者側に通信費は掛からず、むしろダウンロードする側が通信費を負担する形になるオンラインソフトでは、多額の印刷費+様々な流通経費の掛かりがちな同人誌に比べると、金銭負担の上乗せは理解を得にくかった。有償のオンラインソフトを指すシェアウェアという語も元々、「儲ける気は無いが、開発費を一部負担(シェア)してほしい」というような意味合いである。

さらに、当時のネットワークはいくつかの大手商用ネットと無数の草の根BBSに分かれ物理的に繋がっていなかったので、オンラインソフトの転載が広く行われ、転載の可否やその条件は重要な要素であり、これも無償ソフトの転載に比べ「宣伝活動」のイメージが付きまとう有償ソフトに不利な環境でもあった。

なお、同人ソフトのネット流通は容量的に無理でも、その逆にオンラインソフトをまとめて同人ルートで販売するというケースはあった。これはゲームよりむしろCGや音楽データーで顕著である。

あるいは市販ソフトが撤退した機種、特にMSXX68000では機種存続のために同人・投稿・オンラインソフト作者間の協力や、制作の掛け持ちが行われ、その一環としてまだ(パソコン通信の普及率が低かったために)マイナーであったオンラインソフトを、同人ルートを通して紹介するということも行われた。

ツクール』シリーズの登場

黎明期のパーソナルコンピューターはプログラミングによってソフトウェアを自作出来る、もしくはそれを学ぶ意思のあるマニア向けの道具であったが、パーソナルコンピューター市場拡大に伴い、市販ゲームを遊ぶだけのユーザーも増えてきた。しかしその中にも、出来ればゲームを作ってみたいと思う者は少なくなかった。

その需要に応える形で、アスキー1988年ツクールシリーズの元祖『アドベンチャーツクール』、1990年に『RPGツクール』の第一作を発表。さらに1995年からは、アスキーはアスキーエンターテインメントソフトウェアコンテストを開き、グランプリ賞金1000万円を掲げ、ツクールシリーズを利用したゲームを広く募集した。

もっともツクールシリーズはゲーム制作のハードルを下げはしたが、シリーズ初期作で可能だったのは「ツクールに予め用意されている素材を配置していくことで、ツクールに初めから用意されていたシステムの範囲内でのゲームを制作できる」というだけのもので、制作には限界があった。それでも需要は根強く存在した。後には、ツクラーと呼ばれる熱心なユーザーの希望の声に応えるように、制作者自身が用意した素材を自由に取り込めるツクールやその素材を制作するためのツクール、オリジナルのスクリプトを導入することでより自由にゲームのシステムを構成することができるツクールなどが発売され、制作可能な領域は徐々に広がっていった。そして、簡易さと自由度の両立を図りながら、2008年現在もツクールシリーズの新作は出続けている。

インターネット・デジ同人・ビジュアルノベル(1990年代中盤〜)

インターネット時代と、同人のネット進出

90年代半ばになると、パーソナルコンピューターを取り巻く環境は激変する。それまでマニアやホビーユーザー、あるいは一部の事業所向けだったパーソナルコンピューターが他の家電に近い扱いになって行き、一般層にも急激に普及を始めたのである。パーソナルコンピューターブームとセットになる形でインターネットもブームになり、マニアの中でさえ十分に普及していなかったネットワーク環境が当たり前のものになって行く。

ネット市場拡大に伴い、ソフトウェア代金の送金システムの構築も始まる。91年5月のNifty-Serveシェアウェア送金代行サービス開始で一定の改善はされていたが、当時の最大手ネットとは言えNifty-Serve非加入のユーザーも多く、現在に近い形が現れたのは、同人系で96年7月のソフトアイランド(現DLsite.com 01/1/25名称変更)運営開始、シェアウェア系で98年3月のベクター・シェアレジサービス開始時である(ただし、サイト開設・ソフトウェアダウンロードサービス開始自体は95年12月のベクターのほうが先)。

また、回線に流せる容量に関してもモデムの速度上昇と共に、95年8月22日には夜間限定とは言え定額接続サービスのテレホーダイが開始され、時間さえ掛ければ大容量のデーターもダウンロードできる環境になる。さらに、2001年頃には一般向けの常時接続・ブロードバンドネットサービスが開始し、実メディアに比べても遜色の無いデーター量を流せる環境になる。

そして、ネットワークがインターネットに一元化されたことにより、「転載」文化はWebのリンクに置き換えられる形でほぼ消滅。結果、オンラインソフト文化を特徴付けていた要素=同人及び市販ソフトのネットワーク進出の障壁…の大半は消失してしまい、必然的にそれらの大規模なネット進出が始まることになる。

こうなると、特にネット上に元々あったシェアウェアとネット上の同人ソフトは、歴史的経緯は違えど実質同形式であり、この時期に増えた新規ユーザーにはまず区別が付かない状態になってしまう。

結果、意図しない混同・意図的な主張の両面から、「非企業系のオンラインソフトは同人の一種」「商業以外は全て同人」と言う見解が台頭してくることになる。

同時期に雑誌投稿ゲームが雑誌そのものの休刊、あるいはオンラインソフト収録に置き換わる形で無くなって行き(マイコンBASICマガジンは2003年まで粘ったものの末期には新規読者はほとんど獲得出来なかった)、投稿ゲームの存在を知らない一般ユーザーの方が多い状態になってきたのも、定義の「単純化」を後押しする形になった。

さらにはオンラインゲームの普及も無関係ではない。と言うのも普及前には、オンラインソフトのゲーム全般が「オンラインゲーム」と呼ばれていた時期がある(スタンドアロンのゲームである『ロードモナーク オンライン』の名称等に名残が見られる)のだが、オンラインゲームが現在の意味で使われるようになると、「(企業系か否かを問わない)オンラインソフトのゲーム」は統一名称を失い、「商業対同人」の構図が取って代わりやすい状態になったのである。

だが、旧来のネットワーカーにとっては、時に協力者・時にライヴァルであった対等な立場のはずの「同人」の傘下に置かれるような分類は到底───立場を逆にすれば、「同人ゲームはシェアウェアの一種」と言われるのと同じくらいに───受け入れ難いものである。しかしこの反発が、(「同人=二次創作エロ」のような)同人への偏見・矮小化と混同される等して逆に同人側の反発を生み、さらに複雑な感情問題になることもある。

ビジュアルノベルの登場

1992年に「チュンソフト」はスーパーファミコンサウンドノベル弟切草』、1994年に『かまいたちの夜』を発表する。これにより文章背景音楽演出を組み合わせたビジュアルノベルが知られることになり、その後の同人ゲーム業界も大きな影響を受けることになる。

1996年以降、アダルトゲーム業界において、「Leaf」がビジュアルノベルシリーズ3部作『』(1996年)、『』(1996年)、『To Heart』(1997年)と立て続けに発表。サウンドノベルの登場人物は、などが描かれない輪郭のみのビジュアルだった。一方で、ビジュアルノベルシリーズは漫画的なデフォルメされたビジュアルを採用したため、消費者の同人活動が盛んになり、コミックマーケットで多くの二次創作が発表された。特に人気を2分していた「Leaf」(葉)と「Key」(鍵)の作品は葉鍵系と呼ばれ、同人サークル「渡辺製作所」の格闘ゲームTHE QUEEN OF HEART』シリーズ(1998年より)や「はちみつくまさん」のRPG『Kanon RPG』を始めとしたKey系RPGシリーズ(2000年より)により、二次創作としての同人ゲームが多くつくられた。これらコミックマーケットで販売される同人ゲームは、フリーソフトとは異なり、消費者から購入してもらうものであった。この頃から、同人ゲームの同人ショップへの委託販売が活発になる。

一次創作(オリジナル)のビジュアルノベルとしては、「王宮魔法劇団」(「オーガスト」法人化前の同人サークル)の『One Way Love~ミントちゃん物語』(2000年)などがあるが、当時は話題にならなかった。

『月姫』以降、商業作品並のヒットも(2000年〜)

同人サークル「TYPE-MOON」が2000年コミックマーケット夏に体験版『月姫(半月版)』、同年コミックマーケット冬に完全版『月姫』を頒布。

商業化された、あるいは商業ゲーム並のクオリティの同人ゲームは過去にも少なからずあったが、CD-ROMによる大容量化でメーカーが莫大な作業量と開発費を投入するようになった時代以降に、質的にも、さらには販売本数でも商業作品に遜色無いという点で『月姫』は歴史的な作品と言える。

『月姫』はインターネットや同人活動により話題が広まり、一次創作の同人ゲームとしては異例の話題作となり、さらに同人作品を題材にした二次創作物も多数生まれる現象まで起こった。その後、『月姫』はアニメ化・漫画化もされ、商業の場においてメディアミックス展開を見せることにもなった。

2002年コミックマーケット冬、「渡辺製作所」と共同開発する形で『月姫』の公式同人格闘ゲーム『MELTY BLOOD』を頒布する。『MELTY BLOOD』はアーケードゲーム化・コンシューマゲーム化・漫画化など、こちらも同人の枠を越えるヒットとなる。

「TYPE-MOON」は同人ゲーム第2段『Fate/stay night』の制作を発表したが、制作規模が大きくなり過ぎたために法人化(有限会社ノーツを設立)して商業作品第1段『Fate/stay night』として発売した。法人化により、サークルとしての「TYPE-MOON」は休止する(それ以降はノーツのアダルトゲーム用ブランドとして残されている)。

一方、「上海アリス幻樂団」は弾幕系シューティングゲーム東方Project』と呼ばれる一連の作品群を1996年から継続して発表していた。継続的に発表するうちに、商業作品に劣らない本数を売り上げるシューティングゲームとして徐々に話題になる。2004年コミックマーケット冬に、「黄昏フロンティア」と提携し、格闘ゲーム『東方萃夢想 〜 Immaterial and Missing Power.』を頒布する。

07th Expansion」は2002年コミックマーケット夏より『ひぐらしのなく頃に』シリーズを発表し始める。当初は同人ショップ委託をしなかったために話題にならなかった。2004年5月に体験版として第1話『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編』を丸ごとダウンロードできるようにすると、インターネットと口コミにより話題になる。『ひぐらしのなく頃に』は、アニメ化・漫画化・コンシューマゲーム化・ドラマCD化・書籍化・実写映画化され、同人の枠を飛び出たヒットに繋がる。『ひぐらしのなく頃に』は、性的な描写を含むアダルト作品が多い同人ゲーム界において、あえて性的描写を廃した一般向けとして扱い、ヒットした異色の作品であった。なお、性的描写は無いものの殺傷描写が多く含まれている。

2006年コミックマーケット冬に、「黄昏フロンティア」と提携し、対戦アクションゲームひぐらしデイブレイク』を頒布する。2007年コミックマーケット夏より、「07th Expansion」はノベルゲームシリーズ第2段『うみねこのなく頃に』シリーズを発表中。

『月姫』の商業的成功以後、漫画業界でのそれと同じく、市販ソフトのメーカーで働くプロが副業として同人ゲームを制作販売する例も見られるようになった。2006年、「FLAT」の『キラークイーン』は、シナリオにプロの健速、声優もプロを起用し、話題になった。2008年『キラークイーン』はコンシューマ化された。

流通

かつては個人で作って友人が遊んだり、コンクールなど定期・不定期なイベントへの投稿が主であった。しかし、発表の場が増えてきたことにより変化してきている。近年の頒布方式はネットでのダウンロードかCD-Rなどに焼いて同人即売会で販売するのが一般的である。人気があるゲームはプレスCD化や同人ショップでの委託販売も行われている。また、ダウンロード販売サイトで購入することも可能である。

価格は商業ゲームに比べ割安な物が多い。無料からせいぜい1000円ほどである。2000円を超えるものは少ない。販売により生計を立てようとするのは極めて少数であり、多くの人はメディア代やイベント参加費が回収できれば良いという程度に考えており、またその際発生する税金所得税など)を最小限に抑えようとするためである。

傾向

比較的少人数・短期間で作れるビジュアルノベルが一番多く、現在ではRPGアドベンチャーゲーム、シューティングやアクション等さまざまなジャンルの作品が多く作成されている。また、前述のRPGツクールの存在もあり、RPGが多く作られている。ただしシミュレーションやフル3Dのゲームになると、高スペックハードウェア・大容量のハードディスクを要求されることからかなり少ない。

シナリオやキャラクターなどを独自に考案したオリジナル設定のゲームもあれば、既存作品の二次創作、時事ネタを扱った不謹慎ゲームバカゲーなど方向性は多種多様である。

有料の場合、商業のゲームと比較されることから(極々一部のゲームを除いて)ほとんど売れない。そのため、手早く注目してもらう・売るために性的要素を強調したり、二次創作に走る開発者は多く、ダウンロード販売サイトで販売される有料作品はそれが多数である事もあり「同人ゲーム=二次創作のエロゲー」であるとの認識を持たれる事が多い。性的描写がなくオリジナル設定の同人ゲームも多数発表されているが、その多くはばらばらの個人サイトでの無料配布であるため、注目を集めにくい。

一方で、有料であっても、手の込んだ宣伝や高い品質などによって高い人気を集める作品も現れるが、そうした作品はユーザーサポートにおいても過度の期待が寄せられがちであり、また同人ソフトに対する知識の浅いユーザーの手に取られる機会も比較的多いことから、ユーザーサポートの需要に製作サークルの対応力が追いつかないことも往々に発生している。これについては、「そもそも、趣味で作られた同人ゲームにサポートを期待することが間違いである」「非営利とはいえ対価を払っている(まして、ショップ委託の場合に発生する委託料分は明らかに営利課金である)以上は極力対応すべきである」などの様々な意見が存在し、長年にわたり様々な場所で議論が繰り返されてはいるものの、未だ結論を見ない。同人ゲーム製作を語る上では非常に重要かつデリケートな問題の一つである。

開発ツール

同人ゲームの隆盛には開発ツールの充実が大きく影響している。

かつては0からプログラムを組まなければならなかったため、同人ゲームの開発で一番重要なのはプログラムテクニックであり、それに加えてゲームデザインやグラフィック、音楽といった表現内容全てを一人でこなせる高い能力が要求されていた。

しかし、ゲーム開発ツールの充実・ハードウェア・ソフトウェアの高性能・低価格化により専門的なプログラミングの知識がなくてもある程度のレベルでゲーム開発ができるようになり、ゲーム内容そのものの表現技術が重要視されるようになった。

代表的な開発ツールにはRPGツクールLiveMaker吉里吉里NScripterなどがある。また同人ゲーム開発を前提に、背景画像やBGM・効果音をフリー公開しているHPが増えたことも活動を後押ししている。 また、ブラウザからノベルゲーム開発を行える『まぜまぜのべる』、『同人game.jp』などが 登場し、こちらの今後の動向も注目される。

プレイステーション用ソフト開発ツールネットやろうぜ!のような例外もあるが、基本的に家庭用ゲーム機の開発ツールや仕様は一般に公開されず、また個人に対しては原則的にライセンスを行っていないため、同人ゲームのほとんどはパソコンゲームとなる(ただし、かつてはワンダースワンワンダーウィッチ、PC-FXのPC-FXGA、PC Engineのでべろ等のソフトウェアを開発できるツールがあったり、非公式ながら家庭用ゲーム機のソフトウェアを開発するツールも存在していた)。マイクロソフトは安価で家庭用ゲーム機Xbox 360向けのソフトウェアを開発できるMicrosoft XNAを公開しているが、あまり普及していない。

同人ゲーム開発サークル

同人誌などに比べると、作業量は格段に多い。全ての作業を単独でこなす人もいるが、大抵は4~5人で同人サークルを結成し、キャラクターデザイン・シナリオ・原画・プログラム・音楽などと分業して開発する(ゲームによっては、アダルトゲームを専門とするプロの声優に出演を依頼することもある[1])。

同人ゲームの中には、サークルが法人を設立して企業に移行するほど売れるケースもある。一方、それとは逆に一部商業のゲームメーカーは短期の資金繰りのために同人誌即売会などアマチュアの場で商業ゲームを販売することや、制約の多い大手ゲームメーカーからスピンアウトしたクリエイターが同人ゲームに移行するケースがあり、一部でプロとアマの逆転現象が起きている。

ヴィジュアルノベルのように高いプログラム技術力を必要とせずシナリオやグラフィックといった内容自体が問われるジャンルや、シューティングゲームのように市販ソフトが低迷する分野では商業ゲームより売り上げの多い同人ゲームなども存在することや、またNornのように(同人ゲームでありながら)CSAに審査を依頼[2] し、商業ベースに乗せる形で販売するケースも見られつつあるため、近年の大手サークルが制作する同人ゲーム(一次創作物)と商業ゲーム(主にアダルトゲーム)の境目が再びあやふやとなりつつある。

将来的に法人化を目指す同人サークルは多いが、現実は厳しく法人化どころか最初の一作すら完成せず崩壊するサークルがほとんどである。また、中には上海アリス幻樂団のように「プロではない」事を重視し「商業で出来ない物を作る」事を主眼とする開発元もいる。

なお、クリエイターとして活躍したい場合、既存のゲームメーカーに就職するよりも、アマチュア(同人)で身を立てる方が成功する割合は高い。

また、異例であるがゲームフリークのように同人サークル製作のソフトをメーカーに持ち込み、商用ソフトデビューを果たしてソフトハウス立ち上げを成し遂げた例もある。なお、ゲームフリークは元々はゲーム製作サークルではなく、アーケードゲーム等の攻略を同人誌で主に発表していたサークルである。詳しくはゲームフリークを参照。


商業流通へ

『月姫』の成功以降、同人ゲームの中には、同人の枠を超えて商業移植やアニメ化、漫画化などメディアミックス的展開を見せるものもある。単純に移植、もしくはある程度手を加えて(2次使用のキャラを別のものに置き換える場合も稀に有り)商品化するタイプも出て来ている(フリーゲームでも同様のものがある)。

以下は、日本でのものを挙げる。

ビジュアルノベル

月姫
TYPE-MOON」制作。伝奇恋愛ゲーム。月姫が漫画化・アニメ化された。
ひぐらしのなく頃に
07th Expansion」制作。謎の連続怪死事件を題材にした連作式のサウンドノベルビジュアルノベル)。漫画化・アニメ化PS2移植・ドラマCD化・実写映画化をした。
うみねこのなく頃に
「07th Expansion」制作。前作「ひぐらしのなく頃に」同様の「不可解な怪現象」を盛り込んだミステリー仕立てのサウンドノベルビジュアルノベル)。同じく前作同様、漫画化・小説化・アニメ化・コンシューマーゲーム移植(PS3)等、メディアミックス展開を果たしている。
花帰葬
HaccaWorks*」制作。2006年7月、PS2専用ソフトとして女性向けゲームとしては初のコンシューマ化。PS2に移植されたのとほぼ同時期にトレーディングカード化や漫画化もされた。
アパシー・シリーズ
七転がり八転がり」制作。元は商業ゲーム「学校であった怖い話」から派生したサウンドノベル恋愛シミュレーションシリーズ。商業ゲームと並立して、猟奇的描写等からの規制から逃れるために同人ゲームが存在しているのが特徴である。うち、2008年12月にシリーズの一編である「送り犬」の携帯アプリ移植が発表された。

シューティングゲーム

東方Project
上海アリス幻樂団」制作。キャラクターや世界設定のみならず、その開発スタンスにもファンは多く、ファンブック・小説・漫画などが商業作品としてリリースされている。
トラブル☆ウィッチーズ
アーケードにも移植されており、シューティングゲームで同人ゲームから純粋な移植が行われたのはこの作品が初である。アーケード版のタイトルは「トラブル☆ウィッチーズAC」。

格闘ゲーム

MELTY BLOOD
渡辺製作所」・「TYPE-MOON」制作。『月姫』の公式スピンオフ作品。「MELTY BLOOD Act Cadenza」として、アーケードゲーム化およびPS2へ移植。
アカツキ電光戦記
SUBTLE STYLE」制作。移植時の題名は「アカツキ電光戦記Ausf.Achse」。2008年2月にアーケードゲームとして稼動。
黄金夢想曲
「07th Expansion」制作。『うみねこのなく頃に』の公式スピンオフ作品。2010年12月31日コミックマーケット79にて頒布予定。

アクションゲーム

ひぐらしデイブレイク
黄昏フロンティア」・「07th Expansion」制作。『ひぐらしのなく頃に』の公式スピンオフ作品。PSPへ移植。2008年11月発売。

脚注

  1. ^ 『ELEMENTAL BATTLE ACADEMY』、『黄金夢想曲』、『紅魔城伝説II 妖幻の鎮魂歌』など、近年はアダルトゲームを専門とする声優に限らない傾向も見えはじめている。
  2. ^ 初作「使い魔様は魔界プリンセス ~勘違いするな!中に出すのはただの魔力補給だ!!~」のみ、ソフ倫による審査を受けており、2作目以降から)CSAの審査を受けている。

関連項目