萌え
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萌え(もえ)とは本来の日本語では、草木の芽が出る(伸びる)様を言う(→#古典的な用法における「萌え」にて解説)。
一方でオタク文化におけるスラングとしては、主にアニメ・漫画・ゲーム等における、対象へのある種の感情を表す言葉として使用されている。
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[編集] 概要
隠語としての萌え(もえ)とは、一部文化において、アニメ・漫画・ゲーム等様々な媒体における、対象への好意・傾倒・執着・興奮等のある種の感情を表す言葉である。同種の感情をあらわす「好き」という言葉を使うのに語弊がある場合に用いられる。原初は異性・小動物等の愛玩的対象に対して、恋愛感情や性的欲求に近い感情が「燃え上がる」という意味のスラングから来たものであるとみられている。
日本にて1980年代後半から1990年代初頭頃に成立した説が有力だが、その成立の経緯は不明な点が多い。また、現在は様々な分野で使用されているが、元は隠語・俗語であるため、使用法や解釈を巡る議論は絶えない。
2000年以降オタク用語としてマスメディアを中心に取り上げられるようになり、2005年にはユーキャン流行語大賞に選出された。
[編集] 古典的な用法における「萌え」
この節では、日本語の古文の文法・用法における「萌え」を解説する。
古典文法では、「萌え」は、ヤ行下二段活用の動詞である「萌える(萌ゆ)」の連用形である。また語義は「芽が出る」「きざす」「芽ぐむ」を示す。文学的な雅語の文脈などではこの用法で用いられる。
- 古典における「萌え」の使用事例
また、「萌え出づ」、「萌え立つ」、「萌え渡る」、「若草萌ゆる」等、草木が芽吹く様を表現する際に用いられる場合が多い。
また萌黄色(もえぎいろ、萌葱色とも書く)と呼ばれる色は、葱(ネギ)の芽が出た時に見られる薄青と緑の中間色のことを指す。言い換えれば薄い緑に近い色である。
人名にも「萌」の字が用いられることがあるが、この場合の意味はこの古典的用法としての「萌え」であり、現代的なスラングとしての「萌え」の意味ではない(但し、オタク向けのアニメやゲーム等の登場人物の場合はこの限りではない)。
なお、現代日本語ではこれに由来するモヤシ(萌やし)など一部の成語や雅語、東北の農村の一部でイネの種(種籾)を発芽させることを「萌やす」ということなど除いて、この用法ではほとんど使われていない。
[編集] 「萌え」の統語論・形態論
「萌え」は古語の用法から推測して本来は動詞の語幹であったが、現在では用法が拡張し、名詞としても普通に用いられるようになっている。さらに形容動詞の語幹や感動詞としても用いられることも珍しくない。
「萌え」を動詞として使う場合、活用はア行下一段活用となり、元来の日本語に存在する「萌える」(「芽生える」の意)という動詞と同一となるが、芽生えるの意の「萌える」は自動詞であり、他動詞的用法で使用されることは皆無だと言える。
動詞「萌える」の意味は、文脈によって微妙に変化する。以下の例文において、「A」を「私、私達、彼」などの人称(主体)、「B」をその対象(客体)とする場合、以下のような形で表現される。
- 「AはBに萌える」の場合
- 「AはBに萌えを感じる」という、「“萌える”という感情」を指した他動詞に近い使われ方になるが、他動詞では対象に対する能動的な表現(例:「AはBを萌やす」)になり、文法的にも不自然になるため、ほぼ全ての場合において、対象に対する受動的な表現となる自動詞的用法で使用されている。
- 「Bは(Aにとって)萌える」の場合
- 「Bは萌えを感じさせる」という、「萌える対象」を指した自動詞的用法となる。
ただし、特定の客体(「何に萌えるのか?」という目的語)や主体(「誰にとって萌えるのか?」という修飾語)を明らかにしない用法も多く、「萌える」という概念自体を自立化したものとして扱う傾向も見られる。これは、「泣く/泣ける」や「笑う/笑える」などの情動を表す動詞が、目的語や修飾語の有無を問わないことに類似する。
更に、日本語の常として主語は省略されがちであり、他動詞と自動詞の区別を曖昧にしたまま用いるケースも多い。書籍タイトルなど(『もえたん』など)で多用される「萌える」は、特にそうした用例の一つである。
[編集] 「萌え」の意味論・語用論
「萌え」の現代的用法における語義・用法を、意味論・語用論を踏まえながら解説すると、「萌え」は様々な対象に対して向けられる好意的な感情を表すと同時に、それらを総称する用語であると言える。
- 代表的な「対象」
- 代表的な「感情」
ただし、上に挙げられた「対象」および「感情」はほんの一例にすぎず、これだけの説明で全ての用法を要約することは難しい。結果として、話者各々の後付け解釈などによって様々な分野に浸透していった結果、さまざまな意図・意味での用い方をされる傾向にある。(文脈によって意味が異なる感情を表した語の例としては、愛しさ(感情の一覧)などを参照)
基本的に、その対象は「架空の二次元女性キャラクター」に限るが、俳優やアイドルなど実在の人物であったり、また人以外の動物や無生物(「工場萌え」「鯨萌え」「中華鍋萌え」など)、さらには無形の概念(音楽等)にも及ぶなど氾濫している。よって、主体的に感じる感情の内容は、強いて一般的な言葉で言い換えるなら「何かに魅力を感じること」や「魅力を感じることで興奮すること」とも説明できるが、その用例が「架空のキャラクターへの恋愛感情」に代表(集約)されることも多いため、フィクション寄りでセクシュアリティ寄りのイメージが込められやすい、という一面も存在する。このため、オタクに対する偏見や理解不足などによって「萌え」が使われてしまう(例:フィギュア萌え族)場合もある。また、メディアミックス的販売戦略(メディア戦略)によって派生した萌え絵や萌え属性などの概念についても、萌え要素や『データベース』消費という用語を造語する形で、東浩紀の著作『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』(2001年)で明文化されている。
また、「感情」を表す言葉としてだけではなく、注目を集めようと露骨に「お色気」を強調するケースや、宣伝などのために「対象そのもの」や「ジャンル(文化、業界など)」を指す代名詞として使用されるケースもあるが、発言者の好みや先入観、対象のイメージに左右されやすいため意味合いは一定せず、その対象やジャンルに対して「萌え」を感じるユーザーが限定される(好みが分かれる)という基本的な問題も常につきまとっている。また、「統語論・形態論」でも扱ったような、自動詞としての「萌える(=魅力を感じさせる)」を名詞化したような用法となるケースも見られるが、「萌え」という言葉が「ユーザー個人の趣味・嗜好に対する好意的感情」として定着しつつある現状を考慮する限り、このような使用法は「○○こそが“萌え”だ」と他のユーザーに強制するような印象を与えかねず、上記の問題とは別に、先入観や誤解を広める誤った使用法だとする見方もある。ただし、マスメディア(もしくは特定の著名人など)が先導するような形で「萌え」という言葉が用いられていることも広く視野に入れた上で考慮しなければならないのが現状であるとも言える。
既述のように、「萌え」が使用されうる対象は「感情」、「感情を促す対象」、「萌えにまつわる文化」の三種類に大別される。この分別を「可愛い」という単語で喩えるなら、「可愛いと感じる感情」と「可愛いもの」と「可愛さにまつわる文化」をそれぞれ「可愛い」の一言で表現(通用)しているのと同じような表現法(「可愛い」は形容詞あるいは感嘆詞であり、感情や対象を表す「名詞」としてではなく、「統語論・形態論」で扱った自動詞的表現に近い)であると言える。
上記のように認識・解釈・使用法について著しい個体差があり、適用範囲が広範・多岐にわたるため、現状では「萌え」の明確な定義を導くことは困難であると言える。
[編集] 「萌え」の成立・普及
「萌え」の起源に関する主要な説は概ね1980年代末~1990年代初頭頃に集約されることから、成立時期はこの前後と推測されているが、「萌え」の現代的用法の成立・普及については様々な説や主張があり、その起源や成立の過程は特定には至っていない。
これは、「萌え」が大筋では当時のネット(パソコン通信)上のコミュニティ、またはそれらと構成人員の多くが共通する周辺コミュニティで発生したものと推察される用語・用法であることから、「成立から流行に至る過程」や「“萌え”という単語の意味・概念」について客観的な根拠や物証、統一された見解を呈示することが困難であり、また、それらが拡散することで世間に認知され普及するに至った状況を分離せず、多数の論者が「個人的に支持する作品やコミュニティにまつわる説」を起源や語源などとして主張してきたため、結果的に多数の説が乱立することになり、この混乱をより複雑かつ面倒なものとしている事も確かである。
オタク評論家岡田斗司夫が紹介した、NHK教育テレビ番組『天才てれびくん』の枠内で放映されたSFアニメ作品『恐竜惑星』のヒロイン「萌」を語源とする説[1]が、有力な説として語られている[2]。当該作品の制作サイドの中心人物の一人であった金子隆一が自著において、当該作品の発表以前に既に「萌え」概念は存在しており、この説は事実ではないと主張している。なお、岡田がヒロインの名字を誤って記述していることも指摘している[3]。他に出版物で確認できるものには、精神科医の斎藤環が友人から教わった知識として紹介した、漫画・アニメ『美少女戦士セーラームーン』のキャラクター「土萠(ともえ)ほたる」を語源とする説がある[2]。該当作品の発表年月を検証すると、『恐竜惑星』の後に公開された作品のため、『恐竜惑星』説を退けることができない。
[編集] 「萌え」の社会現象化
- 認知度・利用状況
2002年に萌える法律読本こと「コンピュータユーザのための著作権&法律ガイド」が刊行されており、これ以降出版界において萌え本という形で萌えの露出が拡大してゆく。
2004年、「電車男」がヒットしアキバ系文化が注目を集める。2004年には「メイド・コスプレ」「アキバ系」「萌え」「電車男」がユーキャン流行語大賞にノミネートされ、2005年にはユーキャン流行語大賞の上位10作品に選ばれた。この時期から、先述の「メイド」や「電車男」などに代表されるアキバ系文化の代名詞として広く認識されるようになる。
TBSテレビ系『王様のブランチ』「萌え特集」や 読売新聞夕刊・毎月最終金曜日掲載「OTAKUニッポン」など、テレビ・新聞等でも紹介されている。
社団法人コンピュータエンターテイメント協会(CESA)は2006年4月24日、一般消費者を対象とした「2006年CESA一般生活者調査報告書」を発刊した。「萌え」の認知度・利用状況については、全国の3~79歳の1103人を対象とし、萌えに関する調査を行った。CESAにおける萌え定義は「マンガ・アニメ・ゲームの登場人物(キャラクター)などに愛情を抱くこと」とされる。この定義で認知度を測ってみたところ男女性別平均の認知度は男性548人中66.4%、女性555人中65.6%であった。「よく知っていて自分でも使っている」と答えたのは男性の場合20~24歳の8.9%、女性の場合15~19歳の12.1%が最高であった。
- 経済的価値への注目
浜銀総合研究所(横浜銀行グループ)の調査によると、2003年度のコミック・ゲーム・映像などの「萌え」関連商品の市場規模は888億円に達した。また、地域おこしのPRとしても利用されるようになったケースもある。しかし、「萌え市場はあくまでもオタク向け。オタクが増えない限り成長はなく、数年で数倍、という伸び方はしない。10人に1人がオタクになる時代は来ないだろう」という否定的分析もあり、萌え市場がこれ以上は成長しないとされている。
[編集] 萎え
萎え(なえ)は「萌え」の対義語として使用される語。
- 意図的に「萌え」を煽ろうとする露骨な演出・行動などに対して嫌悪感を抱くようになる場合
- キャラクターの性格や言動、態度などによって気分を害され、そのキャラに対して嫌悪感を抱くようになる場合
- 「萌え」を前面に押し出した作品であるにも関わらず、その対象となるキャラにまつわる描写・作画といった表現が破綻しているなど、鑑賞に堪え得ない状態
これらの状態に対して、「萌え」に該当する感情が湧かず、興醒めしてしまうという意味で、インターネット上などで用いられる。しかし殊更に「萌え」と対置する使用例はそれほど多くなく、対義語としての解釈は人によって変化するだろうと言える。
また、一部には「萌え」の対義語として、同音異義語「燃え」を位置づける論者もいるが、この場合は「好意的感情(萌え)」から来るものか、「闘争心(燃え)」から来るものかの違いで、対象(となるもの)が併せ持つ性格が正反対となるケースが大半を占めており、両方とも「ある種の興奮を誘う」という意味合いで使用されている点では共通しているため、この場合対義語というよりは、むしろ類似した言語に近いと言える。
[編集] 注
- ^ 岡田斗司夫. "◆『オタクの迷い道』#41 「へきへき!」「萌え萌え!」な話" 5. 2009-09-29 閲覧。
- ^ a b 斎藤環 「第一章 おたくの精神病理」『戦闘美少女の精神分析』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2006年5月、60。ISBN 4-480-42216-1。
- ^ 金子隆一 『知られざる日本の恐竜文化』 詳伝社、2007年、124-125。
[編集] 関連項目
- 「萌え」で始まる項目
- 「萌え」を含む項目
- その他