二次創作物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

二次創作物(にじそうさくぶつ)とは、原典となる創作物(以下、「原作」という)に登場するキャラクターを利用して、二次的に創作された、独自のストーリーの漫画小説フィギュアポスターカードなどの派生作品を指す[1]。原作の媒体は、小説漫画アニメ映画など多岐にわたる[要出典]。主として同人誌の分野において1990年代後半から[要出典]使用されている用語であり、著作権法上の用語である二次的著作物とは異なる。

概要[編集]

一つの二次創作物について原作は一つとは限らず、複数の(ときには全くジャンルの異なる)原作のキャラクターや世界を混在・交流させて新しい物語を創ることもある(クロスオーバースター・システム[要出典]。また、原作の世界観に基づいて独自キャラクターを追加することや、原作のキャラクターを用いて別世界の話を構築することもしばしばであり、これらは「パラレルもの」と呼ばれる[要出典]

その他、原作から触発されたイメージによって制作された音楽や、キャラクターのコスプレも二次創作に含むこともあり、その内容・表現は多岐に渡っている[要出典]

現在、漫画アニメに関する同人誌やWeb上のファンサイトの内容の多くは二次創作物が用いられている[要出典]

また中には、他人もしくは自己の二次創作物を元にした「三次創作物」「四次創作物」と呼ばれる作品なども見られる[要出典](⇒同人の同人)。

二次創作物と「生モノ」[編集]

同人誌などの活動の中には、実在の有名人(主に俳優、邦楽アーティスト、スポーツ選手などが対象であるが、歴史上の人物や果ては犯罪者に至るまでおよそ有名であれば見境なく対象となる)をモデルとして創作を行うものもある[要出典]。これらは「生モノ」と俗称されている[要出典]。二次創作物と生モノは本質的に全くの別物であるが、現在の同人活動は二次創作物も生モノも包括して一つの活動形態となっており、しばしば「二次創作物」を語る際には無意識に生モノもその中に含んでいることがある[要出典]

しかし、生モノについては、法的な位置づけなどが二次創作物とは全く異なるため(存命している実在人物は著作物ではないのだから、生モノに著作権法は関与せず、問題となるのは肖像権パブリシティ権である[要出典])、解説の混乱を避けるため、本項の記述においては生モノを二次創作物に含めない。これについての詳細は生モノの項目を参照されたい。

二次創作物の現状と問題[編集]

二次創作物については、著作権法やアダルト表現規制の動きなど、さまざまな問題を抱えている。

主に同人誌などにおける二次創作物は権利者の許可なくしては販売が行えず著作権法違反となる可能性があるものの、一般的に許諾を取ることは行われていないとされる[2]

しかし、著作権者が二次創作物について刑事告訴ないし民事訴訟を行うことは極めて少ない。これについては

  • 発行部数が少なく、社会的影響が弱い。
  • もとの著作物への好意をもとにしたファン活動の一環なので、完全否定しにくい。
  • もとの著作物の宣伝になる可能性がある。

といった理由が指摘されている。[3]

また、民法上での損害賠償の扱いは実損害分しか賠償されず、そのため著作権者が訴えるほどに赤字になる可能性があり、訴訟とならないことが多い[4]

著作権法上の位置づけ[編集]

著作権者の許諾を得ていない場合を仮定して、二次創作物を作成した場合、次の著作権侵害となる可能性がある。

より具体的には、原作を利用して作成された作品は次の4つに分類される[5]

  1. 著作物そのままを用いた作品(複製権の侵害)
  2. 著作物を改変しているが創作性が認められない作品(複製権+同一性保持権の侵害)
  3. 著作物を改変しており創作性が認められる作品(翻案権+同一性保持権の侵害)
  4. 著作物を改変し創作性が認められ、原作の本質的特徴を失っている作品(別個の著作物とみなされるため合法)[要検証 ]

原作の絵や構図についてトレース、機械によるコピーなどを行っている、いわゆる「パクリ同人誌」は1に該当すると思われる。コラージュなどもこれに該当することとなる。また、表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ新たな著作物を創作する行為は翻案とみなされ、原作の表現上の本質的な特徴が感得されることが侵害の要件となる[6][7]

具体的表現から離れ抽象概念として存在するキャラクターの著作物性は最高裁の判示で否定されている[8][9]。しかし、キャラクターを表した絵は「美術の著作物」に該当し、絵画の模写は著作権法上の複製に含まれるが、原作の特定の場所ではなくても複製と一見して分かる絵を描いた場合は原作の絵の複製権(創作性のある改変が行われた場合であっても、翻案権)の侵害とみなされる[8]。一方、媒体が文章である場合はキャラクターの性格や設定を利用しても著作権の侵害にあたらないとされる[10]

許諾と黙認[編集]

著作権者の許諾(63条)があれば、許諾の範囲内で二次創作物を作成する限りにおいて著作権侵害となることはない。公式ウェブサイトなどで、頒布方法や性表現の有無など一定の条件において二次創作を認めるガイドラインの提示を行っている法人[11][12]個人の著作権者もおり、ガイドラインに従って権利者に認められた範囲内で利用する場合は侵害にはならない。個々に許諾申請を求める者もおり、許諾の条件として金銭を求める場合もある[要出典]。クリエイターの収入に関する問題にも絡むことがあり、二次創作を広く認める立場であっても、何らかの利益の還元を必要とする意見がある[13]。このように著作権については様々な立場や考えなどがある。

このような具体的な許諾を受けていなくても、著作権者が二次創作物を法的手段で規制しようとせず、黙認の姿勢を示すことがある[要出典]。このような黙認は許諾であると独自に解釈している同人活動者もいる[要出典]。ただし、「権利を行使しない」ことが「許諾」に自動的に変わることはなく、「権利を放棄する」ことと法的に混同されることもありえない[要出典]。著作権者はいつでも自らの著作権を守るための行動に出ることができる[要出典]。また、一部の出版社は公式ウェブサイトにおいて二次創作を含む著作物使用が著作権侵害にあたることを明記しつつ、Twitterなどにおいて健全なファン活動は規制しないと説明している[14]

また、古典作品などをはじめとしたパブリックドメインに属する著作物など著作権フリーの物は、許諾をそもそも必要としない[要出典]

赤松健の漫画作品UQ HOLDER!のタイトルロゴの左下に配置された同人マーク。本作が初の採用例

2013年、二次創作同人誌作成や同人誌即売会での無断配布を有償・無償問わず原作者が許可する意思を示すための同人マークという新たなライセンスがコモンズスフィアによって公開された[15]。これは環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) 交渉で著作権侵害が非親告罪化される可能性が言及され[16]、実際に非親告罪化された場合に第三者による告発などで権利者が黙認したいケースでも訴訟に発展するなどの事態を防ぐことを目的に漫画家赤松健が発案したライセンスであり[17]、赤松自身の漫画作品で『週刊少年マガジン』2013年39号(同年8月28日発売)より連載開始のUQ HOLDER!で採用されている[18]

注釈[編集]

  1. ^ 田川隆博 「オタク分析の方向性」、『名古屋文理大学紀要』 (名古屋文理大学)第9号73-80頁、2009年3月31日NAID 110007543597http://ci.nii.ac.jp/naid/1100075435972013年7月9日閲覧 
  2. ^ パロディワーキングチーム 報告書(平成25年3月) (PDF)”. 文化庁文化審議会著作権分科会パロディワーキングチーム. p. 25 (2013年3月). 2013年6月23日閲覧。
  3. ^ 『まるわかり著作権ガイド』(2006年 彩図社)pp.127
  4. ^ 福井健策 (2011年10月31日). “福井弁護士のネット著作権ここがポイント”. 2013年6月23日閲覧。 “通常の損害賠償は、著作権侵害で権利者などがこうむった実損害分しか賠償を求められない。通常たいした金額にはならず、しばしば弁護士費用にも足りない。日本の著作権は厳しいという一般の印象もあるようだが、現実にはこの賠償金相場などが原因で、大半の著作権侵害は訴訟に至らず終わっている。”
  5. ^ 京都地方裁判所判決 平成7年10月19日 、平成6(ワ)2364
  6. ^  最高裁判所第一小法廷判決  平成13年06月28日 第55巻4号837頁、平成11(受)922、『江差追分事件』。判決全文(PDF)
  7. ^ 駒田泰土 「著作物と作品概念との異同について」 (PDF)、『知的財産法政策学研究』第11号145-161頁、2006-04-00NAID 20002277604http://www.juris.hokudai.ac.jp/coe/pressinfo/journal/vol_11/11_7.pdf2013年7月9日閲覧 
  8. ^ a b 最高裁判所第一小法廷判決 平成9年07月17日 民集 第51巻6号2714頁、平成4(オ)1443、『著作権侵害差止等』。
  9. ^ 後藤憲秋・植村元雄 『知的財産法概論』 名古屋知的財産法研究会、2005年10月15日、第二版、581-582頁。NCID BA74258065
  10. ^ 堀越総明. “ハリー・ポッターの続編小説を勝手に執筆してもいいの!?~小説の登場人物の著作権にまつわる話”. 2013年6月23日閲覧。
  11. ^ 著作権について|AQUAPLUS”. アクアプラス (2006年9月1日). 2013年6月23日閲覧。
  12. ^ 製品内の素材の使用に関するQ&A|Key Official HomePage”. ビジュアルアーツ (2012年11月14日). 2013年6月23日閲覧。
  13. ^ 作り手を“やる気”にさせる著作権とは――島本和彦氏など語る (1/3) - ITmedia News
  14. ^ “「けいおん」「まどマギ」もアウト? 芳文社が二次創作を禁止か、と話題に”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年3月21日). http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1303/21/news147.html 
  15. ^ “二次創作の同人活動を認める意思を示す「同人マーク」のデザインが決定”. マイナビ. (2013年8月18日). http://news.mynavi.jp/news/2013/08/18/050/index.html 2013年9月1日閲覧。 
  16. ^ 「TPPで同人誌は消えるのか?」シンポジウムで激論”. BLOGOS (2011年11月7日). 2013年9月1日閲覧。
  17. ^ “「警察の萎縮効果狙う」 赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案”. ITmedia. (2013年3月28日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1303/28/news093.html 2013年9月1日閲覧。 
  18. ^ “二次創作OKの意思を示す「同人マーク」運用開始 - 許諾範囲も公開”. マイナビ. (2013年8月29日). http://news.mynavi.jp/news/2013/08/29/121/ 2013年9月1日閲覧。 

関連項目[編集]