人生劇場

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人生劇場』(じんせいげきじょう)は、尾崎士郎の自伝的大河小説愛知県吉良町(現・西尾市)から上京し、早稲田大学に入学した青成瓢吉の青春とその後を描いた長編シリーズ。

1933年(昭和8年)に都新聞に「青春篇」が連載され[1]1959年(昭和34年)までに「愛慾篇」「残侠篇」「風雲篇」「離愁篇」「夢幻篇」「望郷篇」「蕩子篇」が発表された。1935年(昭和10年)に竹村書房から「青春篇」が刊行され、川端康成が絶賛するベストセラーとなった[2]1960年(昭和35年)から1962年(昭和37年)にかけて集英社で「新人生劇場 星河篇」「狂瀾編」が出版された。作品は自伝要素を混じえ創作されたが、「残侠篇」は完全な創作である。その後、尾崎の生前に「望郷篇」までが新潮文庫で全11巻で出版されていた。2008年(平成20年)に角川文庫で「青春篇」のみ、弘兼憲史のイラストによる表紙で新版が刊行。なお角川でも約半数が文庫化され、映画公開に合わせ新版を再刊していた。

この作品を手本としたものに、同じ早稲田大学の後輩である五木寛之の自伝的な大河小説『青春の門』がある。

あらすじ

映画

これまでに14回映画化されている。戦後の作品では1968年版と1972年版が有名。

日活・内田吐夢監督版

人生劇場 青春篇
監督 内田吐夢
脚本 亀屋原徳
原作 尾崎士郎
出演者 小杉勇
飛田喜美雄
吉田一子
山本礼三郎
撮影 横田達之
製作会社 日活
公開 1936年2月13日
上映時間 118分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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人生劇場 青春篇』の題名で、1936年(昭和11年)2月13日に公開。日活多摩川撮影所製作、日活配給。モノクロスタンダード、117分(現存49分[3])。第13回キネマ旬報ベスト・テン第2位。

スタッフ

キャスト

日活・千葉泰樹監督版

人生劇場 残侠篇
監督 千葉泰樹
脚本 吉田二三夫
原作 尾崎士郎
出演者 片岡千恵蔵
小杉勇
山本礼三郎
高木永二
撮影 長井信一
製作会社 日活
公開 1938年7月1日
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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人生劇場 残侠篇』の題名で、1938年(昭和13年)7月1日に公開。日活多摩川撮影所製作、日活配給。モノクロスタンダード

スタッフ

キャスト

東映・佐分利信監督版

人生劇場 第一部 青春愛欲篇
人生劇場 第二部 残侠風雲篇
監督 佐分利信
脚本 八木保太郎
棚田吾郎
舟橋和郎(第二部)
原作 尾崎士郎
製作 大川博
出演者 佐分利信
北林谷栄
舟橋元
加藤与一
音楽 早坂文雄
撮影 藤井静
編集 河野秋和
製作会社 東映
配給 東映
公開 1952年11月6日(第一部)
1953年2月19日(第二部)
上映時間 78分(第一部)
112分(第二部)
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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全2部作。東映東京撮影所製作、東映配給。モノクロスタンダード

  • 1.人生劇場 第一部 青春愛欲篇』(1952年(昭和27年)11月6日公開、78分)
  • 2.人生劇場 第二部 残侠風雲篇』(1953年(昭和28年)2月19日公開、112分)

スタッフ

キャスト

東映・萩原遼監督版

人生劇場 望郷篇 三州吉良港
監督 萩原遼
脚本 岡本力司
原作 尾崎士郎
出演者 宇野重吉
佐野周二
堀雄二
宇佐美諄
音楽 伊福部昭
撮影 永塚一栄
製作会社 東映
配給 東映
公開 1954年9月14日
上映時間 107分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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人生劇場 望郷篇 三州吉良港』の題名で、1954年(昭和29年)9月14日に公開。東映東京撮影所製作、東映配給。モノクロスタンダード、107分。

スタッフ

キャスト

東宝・杉江敏男監督版

人生劇場 青春篇
監督 杉江敏男
脚本 椎名文
原作 尾崎士郎
製作 佐藤一郎
出演者 池部良
森繁久彌
志村喬
滝花久子
音楽 神津善行
撮影 完倉泰一
編集 岩下廣一
製作会社 東宝
配給 東宝
公開 1958年11月23日
上映時間 108分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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人生劇場 青春篇』の題名で、1958年(昭和33年)11月23日に公開。東宝製作・配給。カラー東宝スコープ、108分。

スタッフ

キャスト

大映・弓削太郎監督版

新人生劇場
監督 弓削太郎
脚本 舟橋和郎
原作 尾崎士郎
出演者 藤巻潤
叶順子
浦路洋子
川口浩
音楽 池野成
撮影 石田博
製作会社 大映
配給 大映
公開 1961年5月31日
上映時間 85分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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新人生劇場』の題名で、1961年(昭和36年)5月31日に公開。大映東京撮影所製作、大映配給。カラー大映スコープ、85分。

スタッフ

キャスト

東映・沢島忠監督版

全3作。東映東京撮影所製作、東映配給。カラーシネマスコープ

スタッフ

キャスト

日活・舛田利雄監督版

人生劇場
監督 舛田利雄
脚本 棚田吾郎
原作 尾崎士郎
出演者 高橋英樹
松原智恵子
宍戸錠
小池朝雄
音楽 伊部晴美
主題歌 高橋英樹「人生劇場」
撮影 間宮義雄
編集 辻井正則
製作会社 日活
配給 日活
公開 1964年2月23日
上映時間 105分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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人生劇場』の題名で、1964年(昭和39年)2月23日に公開。日活製作・配給。カラーシネマスコープ、105分。

スタッフ

キャスト

東映・内田吐夢監督版

詳細は「人生劇場 飛車角と吉良常」を参照
1968年(昭和43年)10月25日公開。東映東京撮影所製作、東映配給。カラーシネマスコープ、109分。監督は内田吐夢、脚本は棚田吾郎。主な出演は鶴田浩二辰巳柳太郎松方弘樹藤純子高倉健

松竹・加藤泰監督版

人生劇場 青春篇 愛欲篇 残侠篇
監督 加藤泰
脚本 野村芳太郎
三村晴彦
加藤泰
原作 尾崎士郎
製作 三嶋与四治
野村芳太郎
杉崎重美
出演者 竹脇無我
森繁久彌
津島恵子
田宮二郎
音楽 鏑木創
主題歌 美空ひばり「人生劇場」
撮影 丸山恵司
編集 大沢しづ
製作会社 松竹
配給 松竹
公開 1972年7月15日
上映時間 167分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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人生劇場 青春篇 愛欲篇 残侠篇』の題名で、1972年(昭和47年)7月15日に公開。松竹製作・配給。カラービスタ、167分。

スタッフ

キャスト

東映・深作欣二、佐藤純彌、中島貞夫監督版

詳細は「人生劇場」を参照
人生劇場』の題名で、1983年(昭和58年)1月29日に公開。東映京都撮影所製作、東映配給。カラーワイド、138分。 監督は深作欣二佐藤純彌中島貞夫、脚本は深作、佐藤、中島に野上龍雄。主な出演は三船敏郎永島敏行松坂慶子中井貴恵

舞台化作品

劇作家の宮本研の脚色により「残侠篇」が『今ひとたびの修羅』の題で舞台化されている。

歌謡曲「人生劇場」

人生劇場
村田英雄シングル
リリース
録音 日本の旗 日本
ジャンル 演歌
レーベル 日本コロムビア
作詞・作曲 佐藤惣之助(作詞)
古賀政男(作曲)
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「続々― 残侠篇」が刊行された翌年の1938年(昭和13年)には本作品を題材とした、佐藤惣之助作詞、古賀政男作曲の歌謡曲「人生劇場」が楠木繁夫の歌として発表され、広く知られている。特に早稲田大学出身者や学生に愛唱され、「第二の早稲田大学校歌」とも云われている。後年には中島孝村田英雄によっても歌われた。特に村田版は名唱として知られ、1965年版テレビドラマ(製作 フジテレビ日本電波映画、監修 渡辺邦男)の主題歌にも使われ、今では[いつ?]村田英雄が本楽曲のオリジナル歌手だと認識されることも多い。

映画監督・古澤憲吾が『軍艦行進曲』に次いで映画に使用する曲で、『日本一のホラ吹き男』や『日本一のゴマすり男』といったクレージー映画を始め、『続・若い季節』や『幕末てなもんや大騒動』でも使用している。

モデルとの相関関係

登場人物の一人である飛車角は、「ぶったぐりの彦」もしくは「ぼったくりの彦」と呼ばれた戦前ヤクザ石黒彦市がモデルとされる。しかし、石黒は昭和17年(1942年)9月2日に右翼団体大化会村岡建次(後の暴力団北星会会長・岡村吾一)の舎弟・水原新太郎(本名は菊池貞雄)に、東京市麹町区(現在の東京都千代田区)の政友会本部近くで銃撃され、翌日死亡している。石黒彦市が自分の恋人を売り飛ばした女衒を殺したのは事実だが、小説映画の勇ましい侠客ぶりとは異なり、恐喝を繰り返し、身内の高橋一家(生井一家灘竹三代目の高橋林太郎の舎弟分)の人間から意見されると殺して、親分の女房まで傷つける凶悪な人物とされ、戦後になっても、映画監督の石井輝男安藤昇から「飛車角ってのは本当は悪いやつでね」と教えられたとしている[4]

その他、南喜一茂木久平宇野千代などが登場人物のモデルとして著名。

脚注

  1. ^ 挿絵は中川一政が担当した
  2. ^ 人生劇場、世界大百科事典 第2版、コトバンク、2015年10月24日閲覧
  3. ^ 人生劇場東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵映画フィルム検索システム、2015年10月24日
  4. ^ 飯干晃一狼どもの仁義』(角川書店)、猪野健治実録・人生劇場』(双葉社

関連項目