人斬り与太 狂犬三兄弟

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人斬り与太 狂犬三兄弟
監督 深作欣二
脚本 松田寛夫
神波忠男
出演者 菅原文太
音楽 津島利章
撮影 仲沢半次郎
編集 田中修
制作会社 東映東京
製作会社 東映
公開 日本の旗 1972年10月25日
上映時間 86分
製作国 日本の旗 日本
前作 現代やくざ 人斬り与太
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人斬り与太 狂犬三兄弟』(ひときりよた きょうけんさんきょうだい)は、1972年10月25日に公開された日本映画。監督は深作欣二、主演は菅原文太。「人斬り与太シリーズ」第2作[1][2]

概要[編集]

前作と設定や登場人物に関連性はない[3]。前作『現代やくざ 人斬り与太』がヒットしたため、岡田茂東映社長から「すぐ次作れ」と指示が出た[4]。主演・菅原文太、監督・深作欣二コンビによる次作『仁義なき戦い』へなだれ込む重要作である[5][6]。『仁義なき戦い』の深作監督起用は、菅原が俊藤浩滋プロデューサーに「『現代やくざ 人斬り与太』『人斬り与太 狂犬三兄弟』を見て下さい」と頼み、この二作を観た俊藤が深作に「『仁義なき戦い』の監督をやらないか」と打診したとされる[7]。菅原文太と田中邦衛の初顔合わせでもあり、本作の田中は『仁義なき戦い』の槙原政吉のキャラ設定で[3]、手持ちカメラによる撮影シーンなどもあり、『仁義なき戦い』のプロトタイプ満載の映画といえる[3]。本作のプロデューサー・吉田達によれば、劇団俳優座所属の田中がよく東映で出たのは、俳優座代表の佐藤正之が岡田茂と親友で[4]、東映からお金を借りているのになかなか返さず、その肩代わりで俳優座所属の俳優が東映映画に出るようになったと話している[4]。また脚本の松田寛夫神波史男のコンビにとっても「女囚さそりシリーズ」へなだれ込む作品となる[3]。本作の渚まゆみも「女囚さそり」の梶芽衣子同様、一言もセリフを発しない[3]

"狂犬三兄弟"という題名は、岡田東映社長が命名に難航し、自宅の便所に長らく籠り、便所から飛び出し「出た! 狂犬三兄弟や!」と叫び、本来出すべきものと一緒に出したものである[8]。深作もこの題名を聞いて一発で受け入れたという[9]

あらすじ[編集]

スタッフ[編集]

出演者[編集]

製作[編集]

イタリアマフィアを描いたジョルジュ・シムノン小説「『リコ兄弟』(Les Freres Rico)をネタに出来ないか」と深作に前々から聞いていた脚本の神波史男が松田寛夫と同作をベースに脚本を書いた[9]。深作は神波と松田と話しているときに「石川力夫でやろうとなった」[5]、本作は「『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』『仁義の墓場』につながっている」などと話している[5]。また俊藤プロデューサーが話してくれた実在するヤクザのエピソード、三谷昇博奕場で金がなくなり、掛け金の代わりに懐からを出すシーンなどを取り入れられた[9][10]。また暴力シーンは脚本にはない深作が現場で思いついたアイデアが幾つかあるという[9]1986年湯布院映画祭で本作が上映され[11]、上映後、深作と神波、三谷昇で、パネルディスカッションがあった[9]。男性ファンは喜んでくれたが、女性を蔑視する内容があるため、女性からは顰蹙を買い、白人女性から「観るに堪えなかったので途中で出ました」などと言われたため、深作と神波は黙り、代わりに三谷が縷々擁護したという[9]

作品の評価[編集]

加藤典洋は「私は『人斬り与太 狂犬三兄弟』は、テルアビブ空港乱射事件を念頭に作られた映画だと思います」と論じている[12]。加藤は本作をリアルタイムで観たと話し、観客は数えるほどしかおらず、一週間ほどで打ち切られた、と述べている[12]

同時上映[編集]

銀蝶流れ者 牝猫博奕

脚注[編集]

  1. ^ 人斬り与太 狂犬三兄弟 | 東映ビデオオフィシャルサイト
  2. ^ 「菅原文太 一番星になった男」『キネマ旬報』2015年2月上旬号、キネマ旬報社、22頁。 
  3. ^ a b c d e Hotwax2 2005, pp. 178–179.
  4. ^ a b c 追悼番組・映画馬鹿一代吉田達の番組再放送致します「ユーストリーム公式番組」Gアクション – 公式YouTubeオーファクトリーエンターテイメント
  5. ^ a b c 映画監督深作欣二 2003, pp. 244–247.
  6. ^ 追悼・菅原文太 “未公開肉声”ドキュメントから紐解く「反骨の役者人生」(6)深作監督と結びついた「人斬り与太」- アサ芸プラス
  7. ^ 映画監督深作欣二 2003, pp. 18–19.
  8. ^ 光芒 2012, p. 196.
  9. ^ a b c d e f 光芒 2012, pp. 196、333–334.
  10. ^ 深作欣二の軌跡 2003, pp. 74–76.
  11. ^ 湯布院映画祭過去の映画祭ラインナップとゲスト記録
  12. ^ a b 加藤典洋『耳をふさいで、歌を聴く』アルテスパブリッシング、2011年、368–369頁。ISBN 978-4-903951-45-4 

参考文献[編集]

外部リンク[編集]