ブドウ

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ブドウ属
種なしのオータムロイヤル種
種なしのオータムロイヤル種 (Autumn Royal)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: クロウメモドキ目 Rhamnales
: ブドウ科 Vitaceae
: ブドウ属 Vitis
  • 本文を参照
ブドウ
100 gあたりの栄養価
エネルギー 288 kJ (69 kcal)
18.1 g
糖類 15.48 g
食物繊維 0.9 g
0.16 g
0.72 g
ビタミン
チアミン (B1)
(6%)
0.069 mg
リボフラビン (B2)
(6%)
0.07 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.188 mg
パントテン酸 (B5)
(1%)
0.05 mg
ビタミンB6
(7%)
0.086 mg
葉酸 (B9)
(1%)
2 µg
ビタミンC
(13%)
10.8 mg
ミネラル
カリウム
(4%)
191 mg
カルシウム
(1%)
10 mg
マグネシウム
(2%)
7 mg
リン
(3%)
20 mg
鉄分
(3%)
0.36 mg
亜鉛
(1%)
0.07 mg
マンガン
(3%)
0.071 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

ブドウ葡萄、学名 Vitis spp.)は、ブドウ科 (Vitaceae) のつる性落葉低木である。また、その果実のこと。

概要

は両側に切れ込みのある15 - 20cmほどの大きさで、穂状のをつける。果実は緑または濃紫で、内部は淡緑であり、房状に生る。大きさは2 - 8cm程度の物が一般的である。ブドウ属の植物は数十種あり、北米、東アジアに多く、インド、中東、南アフリカにも自生種がある。日本の山野に分布する、ヤマブドウエビヅルサンカクヅル(ギョウジャノミズ)もブドウ属の植物である。

現在、ワイン用、干しぶどう用または生食用に栽培されているブドウは、ペルシアカフカスが原産のヴィニフェラ種(V. vinifera, 英 common grape, vine)と、北アメリカのラブルスカ種(V. labrusca, 英 fox grape)である。

生産

日本で古くから栽培されている甲州種は、中国から輸入されたヨーロッパブドウの東アジア系が自生化して、鎌倉時代初期に甲斐国勝沼(現在の山梨県甲州市)で栽培が始められ、明治時代以前は専ら同地近辺のみの特産品として扱われてきた[1](ヤマブドウは古くから日本に自生していたが別系統にあたる)。

北アメリカ原産のブドウはフィロキセラ(Phylloxera、ブドウネアブラムシ)に対する耐性を持つが、1870年頃に北アメリカの野生ブドウの苗木がヨーロッパにもたらされ、この根に寄生していたフィロキセラによって、耐性のないヨーロッパの固有種の殆どが19世紀後半に壊滅的な打撃を受けた[2]。以後フィロキセラ等による害を防止するの理由で、ヨーロッパ・ブドウについては、アメリカ種およびそれを起源とする雑種の台木への接ぎ木が行われている[3]

利用

果実は、そのまま生食されるほか、乾燥させてレーズンに、また、ワインブランデーなどのアルコール飲料ジュースゼリー缶詰の原料となる。

ワインを製造する地域では、残った種子を搾油の原料としてグレープシードオイルが製造される。また、種子にはプロアントシアニジンという成分が含まれ、健康食品用などに抽出も行われている。

紫色をした皮にはアントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、赤ワインやグレープジュースにも多い。絞った後の皮などの滓は、肥料として処理することが多い。

葉を食用にする地域もある。

分類

ブドウ属

ブドウ属 (Vitis) には、主に次のような種がある。  

西アジア種群

ヨーロッパ・ブドウ(European grape、学名 ヴィティス・ヴィニフェラ Vitis vinifera

中近東が原産であるとされる。ヨーロッパに自生する唯一の種である。乾燥した気候とアルカリ性の土地によく育ち、フィロキセラ耐性が無い。

北米種群

アメリカ・ブドウ(Fox grape、学名 ヴィティス・ラブルスカ Vitis labrusca
北アメリカを原産とする種のひとつ。湿った気候でよく育ち、ヨーロッパ種よりも寒さにも強い。この系統の品種は独特の香りを持ち、それに由来する香りのワインを、(特にヨーロッパの)ワインの専門家は「フォクシー (Foxy)」と形容し忌み嫌う。

東アジア種群

ヴィティス・アムレンシス (V. amurensis)
アジアを原産とする種のひとつで、朝鮮半島、中国東北部、ロシアに自生する。寒さに強い。和名はチョウセンヤマブドウまたはマンシュウヤマブドウ。中国名は山葡萄。本種は当初北海道に自生していると考えられていたため、北海道で醸造されている「アムレンシス・ワイン」の原料は北海道産アムレンシス種だとされていた。しかし、その後、アムレンシス種の北海道での自生は誤認だとわかり、アムレンシス・ワインの原料はヤマブドウの1系統かタケシマヤマブドウVitis coignetiae var. glabrescensだと考えられている。
ヴィティス・コワネティー (V. coignetiae)
日本に自生する。和名はヤマブドウで、上記アムレンシスと同じく寒さに強い。北海道では平地で普通に見られるが、東北地方では低山地、関東以西では高山地に自生し、四国にも分布するが、現在のところ九州地方での自生は確認されていない。東北地方、信州、岡山などでは、ヤマブドウワインが造られている。
ヴィティス・シラガイ (V. shiragai)
岡山県・高梁川流域の限られた地域に自生する野生ブドウで、和名はシラガブドウ。自生地での個体数が減少していて、絶滅が危惧されている。アムレンシスと同種とする分類学者もいるが、アムレンシスは寒冷地に自生するのに対し、シラガブドウは温暖な地域に自生することから生態的相違点が大きいので、全くの別種であると考えた方が合理的である。和名および学名は植物分類学者・牧野富太郎が、情報提供してくれた白神寿吉に因んで命名した。

その他、クマガワブドウ、アマヅル、リュウキュウガネブ、ヨコグラブドウ、ケナシエビヅルなど、日本では15種類の野生ブドウの自生が確認されている。また、アジア大陸には中国を中心に、約40種の野生ブドウが確認され、日本の野生ブドウと同種または近縁種も確認されている。

ヨーロッパ・ブドウの台木に使われるブドウの原種

全て北米原産でヨーロッパ・ブドウと違ってどれもフィロキセラ耐性を持つ。

ルペストリス種 (V. rupestris)
台木の品種の一番基本になる種。砂地に生えるため比較的乾燥に強く、交雑や繁殖が容易である。
リパリア種 (V. riparia)
川の土手に生える("ripa" とはラテン語で川の土手の意)。そのため湿った土地で良く育つ。酸性土を好む。繁殖は容易。
Berlandieri (V. berlandieri)
石灰岩の丘に生えることから、アルカリ性の土壌を好むとされる。繁殖は難しい。
Champini (V. champini)
ルペストリス種と V. mustagenesis の天然の雑種と考えられている。強い (Root-knot) ネマトーダ耐性を有する。繁殖は難しい。

マスカダイン属

ブドウ属に含められる場合もあるが、形態や染色体の数等の違いから、一般に別の属 (Muscadinia) とされる。2–3種が属す。

マスカダイン
マスカダイン(Muscadine、学名 ムスカディニア・ロトゥンディフォリア Muscadinia rotundifolia
北アメリカを原産とする種のひとつで、アメリカ合衆国南部の亜熱帯から熱帯の地域で栽培される。温暖湿潤な気候と酸性土壌を好む。ヨーロッパ・ブドウと異なりフィロキセラに対する免疫を持ち、他の病害に対しても強い耐性を持つ。しかしヨーロッパ・ブドウと接ぎ木も交雑も困難なことから、ワイン用ブドウの栽培にはほとんど利用されない。栽培品種の育種は、両全花を持つ次のスカッパーノンの発見により飛躍的に向上した。アメリカでは通常、房ではなく粒単位で売られる。マスカダインの皮は、普通のブドウよりも厚みがあり、芳醇な香りで甘い。果皮色は紫、緑、銅色の3種類に分けられ、生食以外に加工(ジュース、デザート・ワイン、ゼリー等)に用いられる。
スカッパーノン(Scuppernong)
マスカダインの1品種で、アメリカ合衆国南部の亜熱帯から熱帯の地域で栽培される。色は、緑で温暖湿潤な気候と酸性土壌を好む。普通のブドウよりも一粒一粒が丸い。名前の由来は、ノース・カロライナ州にあるScuppernong Riverから来ている。17世紀にアメリカ開拓者たちがスカッパーノン川周辺で発見し、その後、栽培促進された。名前の由来をさらに辿ってみるとアメリカ先住民のアルゴンキン族の言葉「アスコポ」からきており、意味は「甘い月桂樹」である。

品種

ブドウ品種の一覧も参照。また、ワイン用品種についてはワイン用葡萄品種の一覧項がある。

  • カルディナル
  • 甲州
  • 巨峰・種無し巨峰
  • 藤みのり(藤稔)
  • 紫玉
  • ピオーネ
  • あづましずく
  • ナガノパープル
  • 高妻
  • 紅瑞宝
  • 紅伊豆
  • 多摩ゆたか - 芦川考三郎によって作出された緑系ブドウ。
  • 安芸クイーン
  • 竜宝
  • コリンス
  • コールマン - コーカサス地方原産の黒系ブドウで、正式名はグロー・コールマン。日本では冬(11月から1月頃)に収穫される。
  • コンコード - グレープジュースで有名。
  • ブラックオリンピア
  • シャスラ
  • レッドグローブ(Red Globe)
  • リビエラ(Ribier)
  • クリムゾン・シードレス(Crimson Seedless)
  • トムソン・シードレス(Thompson Seedless)
  • サルタナ(Sultana) - レーズンで有名。トムソン・シードレスと同一種とされる。
  • マスカット・オブ・アレキサンドリア(Muscat of Alexandria)
  • マスカット・ベーリーA(Muscat Bailey A)
  • シャインマスカット
  • デラウェア
  • キャンベル・アーリー(Campbell Early)
  • 瀬戸ジャイアンツ(桃太郎ブドウ)
  • ナイアガラ
  • ポートランド
  • スチューベン (Stuben)
  • 旅路(タビジ)
  • 甲斐路(カイジ)
  • ロザリオビアンコ (Rosario Bianco)
  • ロザリオロッソ (Rosario Rosso)

など。

種無しぶどう

食紅で着色されたジベレリン溶液(デラウェアに対して)山梨県甲府市(2010年5月撮影)

植物ホルモンを利用した方法で、ホルモンの作用により果実内部の種を形成させない方法である。

1970年頃からはジベレリン水溶液が使用されているが、近年ではサイトカイニン水溶液を添加することにより処理時期が拡大している。

デラウェアなどの小粒種が主であるが、最近では技術の向上により巨峰などの大粒種にも種無しが現れている。種が無い為、種有りに比べ脱粒しやすい。また、収穫時期は種有りに比べて早まる。なお、ジベレリン水溶液は元々無色透明であるが、ジベレリン処理をした果実を色で判別するために水溶液に食紅などを混ぜ着色している。

生産国

日本国内の主な産地

ブドウ畑(大阪府)・2006年8月撮影
実は袋がけされている

日本国外の主な産地

など。

脚注

注釈

出典

  1. ^ 中川 (2002)、p.131
  2. ^ 中川 (2002)、pp.179-180.
  3. ^ 中川 (2002)、p.183

参考文献

  • 中川昌一『ブドウを知ればワインが見える:新しいワインの誕生を夢見て』大阪公立大学共同出版会、2002年。ISBN 4-901409-02-6 

関連項目

外部リンク