ニック・マーケイキス

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ニック・マーケイキス
Nick Markakis
アトランタ・ブレーブス時代
(2018年9月30日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 ニューヨーク州ナッソー郡グレンコーブ
生年月日 (1983-11-17) 1983年11月17日(40歳)
身長
体重
6' 1" =約185.4 cm
190 lb =約86.2 kg
選手情報
投球・打席 左投左打
ポジション 外野手
プロ入り 2003年 MLBドラフト1巡目
初出場 2006年4月3日
最終出場 2020年9月27日
年俸 $11,000,000(2018年)[1]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム ギリシャの旗 ギリシャ
五輪 2004年

ニコラス・ウィリアム・マーケイキスNicholas William Markakis, 1983年11月17日 - )は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ナッソー郡グレンコーブ出身の元プロ野球選手外野手)。左投左打。

メディアによっては「マーカーキス」と表記されることもある。

経歴[編集]

プロ入り前[編集]

1983年にニューヨーク州グレンコーブでギリシャ系ドイツ系の両親の間に誕生。子どものころは本人曰く「本当に野球一筋」で「大好きだったから、他のスポーツは一切しなかった」といい、またニューヨーク州出身でありながら好きなチームはニューヨーク・ヤンキースではなく、そのライバルのボストン・レッドソックスであった[2]。後にジョージア州ウッドストック英語版に移住する。

2001年ウッドストック高等学校英語版野球をしていたマーケイキスは、MLBドラフトシンシナティ・レッズから35巡目(全体1056位)指名を受けたが[3]、「プロに入る前にもう少し自分自身が成熟する必要があると感じたし、経験も必要だと思った」と[2]、入団の誘いを断ってヤング・ハリス・カレッジ英語版へ進学した。

カレッジの舞台でマーケイキスは投手と外野手の二刀流として活躍し、ベースボール・アメリカ誌選出の短期大学最優秀選手に2002年2003年の2年連続で選出された[4]。特に2年目には投手として12勝0敗、160奪三振、打者として打率.439、21本塁打、92打点という成績を残している。多数のメジャー球団が左投手としてのマーケイキスに注目していたが、その中でオリオールズは打者としてのマーケイキスの才能を評価していた[5]

プロ入りとオリオールズ時代[編集]

ボルチモア・オリオールズ時代
(2014年4月26日)

2003年のMLBドラフトボルチモア・オリオールズから1巡目(全体7位)で外野手として指名され、プロ入りする。同年にはマイナーリーグのA-級アバディーン・アイアンバーズ英語版で59試合に出場。地元を離れたことによるホームシックや投手への未練、さらには金属バットから木製バットへの対応など様々な要因に苦しむが[6]、打率.283を記録した。

2004年には、ギリシャ系とドイツ系のハーフであることから、8月のアテネオリンピックギリシャ代表に選出された。同大会ではギリシャが大会唯一の勝利を挙げた21日のイタリア戦では、3打数2安打4打点と活躍した[7]。22日の日本戦では「5番・指名打者」として先発出場した後に9回表には投手としても登板。高橋由伸死球を与えたが、続く城島健司を一邪飛に、中村紀洋を内野ゴロ併殺打に打ち取った[8]。本人は「あの大会に出場したので一皮むけた」と振り返っている[2]

2005年はA+級フレデリック・キーズ英語版、AA級ボウイ・ベイソックスの2球団合計で打率.311、15本塁打を記録。

2006年はAAA級オタワ・リンクスでプレーする予定だったが、スプリングトレーニングで首脳陣から高い評価を受け、開幕メジャー入りを果たした[9]。4月3日の開幕戦でメジャーデビュー後、他選手との兼ね合いもあり序盤は外野3ポジションを転々としていたが、その後右翼のレギュラーに定着して147試合に出場。前半戦こそ打率.268、2本塁打、21打点と低調だったものの、後半戦は、打率.311、14本塁打、41打点と好成績を記録。8月の月間最優秀新人に選出され、シーズン終了後には新人王投票で6位に入った。

2007年は開幕戦から3番打者として出場し、打率.300、23本塁打、112打点(同8位)の成績でチーム三冠を達成。

2008年は打率・本塁打数を維持し、出塁率を自身唯一の4割台を記録、守備では外野手として両リーグ最多の補殺数17を記録[10]

2009年1月には6年6610万ドルという大型契約を締結し、球団社長アンディ・マクフェイルから「ニックはまだ25歳だというのに既にメジャー最高の外野手のひとりになっている。しかも彼の全盛期はまだこれからじゃないか」と高い期待をかけられた[11]。その2009年は、いずれも2年連続で記録し続けていた打率3割と20本塁打のどちらにも到達しなかったが、打点は2年ぶりに100の大台を突破した。

2010年は自己最低の12本塁打、60打点に終わるなど、打撃面で精彩を欠いたが、打率はメジャーデビュー以来5年連続で2割9分以上の数字を残した。また、四球の数が、2008年に記録した自己最多の99四球に次ぐ数字(73四球)を記録した為、出塁率も自身で2番目に高い数字となった。

2011年は自身初となるゴールドグラブ賞を受賞した。

2012年5月29日のトロント・ブルージェイズ戦の後に右手首の痛みで離脱し[12]オールスター後に復帰した。9月8日のヤンキース戦でCC・サバシアから死球を受けて左手親指を骨折してシーズン終了となった[13]。チームは15年ぶりにポストシーズン進出を果たしたが、登録メンバーから外れた。

2014年は3年ぶりとなるゴールドグラブ賞を受賞した。オフに契約の球団オプションが行使されず、FAとなった。

ブレーブス時代[編集]

2014年12月3日にアトランタ・ブレーブスと4年4400万ドルの契約を結んだ[14]

2015年は正右翼手として起用された。二塁打こそ38本放ったものの、本塁打は3本のみだったが、4年ぶりの180本以上となる181安打を放ち、打率.296を記録した。6月18日のボストン・レッドソックス戦で連続無失策の試合数が393となり、ダレン・ルイスの外野手としての歴代記録を更新し、その1週間後の6月25日のワシントン・ナショナルズ戦で約3年ぶりの失策を記録したことにより連続試合記録は398で途切れた[15]

2016年は158試合で38二塁打、13本塁打、89打点を記録した。

2017年8月3日のロサンゼルス・ドジャース戦でアレックス・ウッドから通算2000本安打を達成した[16]

2018年オールスターに初選出された。ドジャースとのプレーオフではOPS.350と完全に沈黙し、チームも敗退した。

オフにFAとなったが、2019年1月22日に1年600万ドル(2020年のオプションあり)で再契約した[17]

2019年7月26日のフィラデルフィア・フィリーズ戦でコール・アービンから死球を受けて左手首を骨折し、自身7年ぶりに故障者リストに登録された[18]。8週間(44試合)欠場した後、9月13日に復帰した。カージナルスとのプレーオフでは、前年に引き続きOPS.372と沈黙し、チームも敗退した。

2020年オフの10月28日にFAとなった[19]

2021年3月11日に現役引退を発表した[20]

詳細情報[編集]

年度別打撃成績[編集]

















































O
P
S
2006 BAL 147 542 491 72 143 25 2 16 220 62 2 0 3 2 43 3 3 72 15 .291 .351 .448 .799
2007 161 710 637 97 191 43 3 23 309 112 18 6 1 6 61 5 5 112 22 .300 .362 .485 .848
2008 157 697 595 106 182 48 1 20 292 87 10 7 0 1 99 7 2 113 10 .306 .406 .491 .897
2009 161 711 642 94 188 45 2 18 291 101 6 2 0 10 56 0 3 98 12 .293 .347 .453 .801
2010 160 709 629 79 187 45 3 12 274 60 7 2 0 5 73 9 2 93 18 .297 .370 .436 .805
2011 160 716 641 72 182 31 1 15 260 73 12 3 0 6 62 6 7 75 16 .284 .351 .406 .756
2012 104 471 420 59 125 28 3 13 198 54 1 1 0 5 42 3 4 51 11 .298 .363 .471 .834
2013 160 700 634 89 172 24 0 10 226 59 1 2 0 8 55 3 3 76 17 .271 .329 .356 .685
2014 155 710 642 81 177 27 1 14 248 50 4 2 0 2 62 4 4 84 10 .276 .342 .386 .729
2015 ATL 156 686 612 73 181 38 1 3 230 53 2 1 0 1 70 11 3 83 17 .296 .370 .376 .746
2016 158 684 599 67 161 38 0 13 238 89 0 2 0 9 71 9 5 101 16 .269 .346 .397 .744
2017 160 670 593 76 163 39 1 8 228 76 0 2 0 3 68 8 6 110 16 .275 .354 .384 .738
2018 162 705 623 78 185 43 2 14 274 93 1 1 0 9 72 10 1 80 18 .297 .366 .440 .806
2019 116 469 414 61 118 25 2 9 174 62 2 0 0 6 47 1 2 59 11 .285 .356 .420 .776
2020 37 141 130 15 33 15 0 1 51 15 0 1 0 0 10 0 1 23 5 .254 .312 .392 .704
MLB:15年 2154 9321 8302 1119 2388 514 22 189 3513 1046 66 32 4 73 891 79 51 1230 214 .288 .357 .423 .781
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績[編集]



左翼(LF) 中堅(CF) 右翼(RF) 一塁(1B)
















































2006 BAL 26 59 1 1 0 .984 9 15 0 0 0 1.000 127 240 7 1 0 .996 -
2007 - - 161 303 13 2 4 .994 -
2008 - - 156 327 17 3 3 .991 -
2009 - - 161 298 13 6 1 .981 -
2010 - - 159 332 7 3 1 .991 -
2011 - - 157 311 14 0 3 1.000 3 15 1 0 2 1.000
2012 - - 102 187 3 2 0 .990 -
2013 - - 155 312 7 0 1 1.000 -
2014 - - 147 295 11 0 1 1.000 2 23 1 0 1 1.000
2015 ATL - - 153 295 4 1 0 .997 -
2016 - - 150 311 5 4 2 .988 1 10 0 0 0 1.000
2017 - - 156 286 6 1 1 .987 -
2018 3 1 0 0 0 1.000 - 158 312 9 2 0 .994 -
2019 9 17 2 0 1 1.000 - 103 174 3 1 0 .994 -
2020 7 12 0 0 0 1.000 - 29 42 0 0 0 1.000 -
MLB 45 89 3 1 1 .989 9 15 0 0 0 1.000 2074 4025 119 26 17 .994 6 48 2 0 3 1.000
  • 各年度の太字はリーグ最高、赤文字はMLB歴代最高
  • 各年度の太字年ゴールドグラブ賞受賞

表彰[編集]

記録[編集]

背番号[編集]

  • 21(2006年 - 2014年)
  • 22(2015年 - 2020年)

代表歴[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Nick Markakis Contract Details, Salaries, & Earnings” (英語). Spotrac. 2018年5月8日閲覧。
  2. ^ a b c 阿部太郎 「インタビュー ニック・マーケイキス[オリオールズ] 『再建はこの男に託された』」 『月刊スラッガー』2009年7月号、日本スポーツ企画出版社、2009年、雑誌15509-726-29頁。
  3. ^ "2001 Cincinnati Reds Picks in the MLB June Amateur Draft," Baseball-Reference.com. 2010年7月18日閲覧。
  4. ^ John Manuel, "Host Greece Sports Unlikely American Roster," Baseball America, July 30, 2004. 2010年7月18日閲覧。
  5. ^ 福島良一 「FACE IN THE CROWD」 『週刊ベースボール』2007年3月12日号、ベースボール・マガジン社、2007年、雑誌20442-3/12、85頁。
  6. ^ Benjamin Hill / MLB.com, "Path of the Pros: Nick Markakis / Adjustments helped speed ascent to Camden Yards," The Official Site of Minor League Baseball, December 23, 2009. 2010年10月9日閲覧。
  7. ^ 8月21日(土) 第4試合」 『スポーツナビ』、2004年8月29日。2010年7月18日閲覧。
  8. ^ 日本、投打にギリシャを圧倒! 予選リーグ1位通過を決める」 『スポーツナビ』、2004年8月22日。2009年5月15日閲覧。
  9. ^ 石山修二 「2006 通信簿 File:088 ニック・マーケイキス」 『月刊スラッガー』2006年12月号、日本スポーツ企画出版社、2006年、雑誌15509-12、43頁。
  10. ^ MLB Player Fielding Stats: 2008” (英語). ESPN.com. 2009年5月30日閲覧。
  11. ^ Spencer Fordin / MLB.com, "MacPhail: Markakis was top priority / Orioles right fielder pleased with direction club is headed," orioles.com, January 22, 2009. 2009年5月15日閲覧。
  12. ^ Now the concern shifts to Markakis - School of Roch”. www.masnsports.com (2012年5月29日). 2018年4月21日閲覧。
  13. ^ Nick Markakis breaks his thumb, will miss rest of regular season”. Baltimore Sun (2012年9月9日). 2018年4月21日閲覧。
  14. ^ Markakis coming home to play for Braves
  15. ^ a b マーケーキスがエラー メジャー記録の連続無失策が398試合で途切れる”. Full Count (2015年6月26日). 2018年4月21日閲覧。
  16. ^ Steady Markakis collects 2,000th career hit MLB.com (英語) (2017年8月4日) 2017年8月4日閲覧
  17. ^ Mark Bowman (2019年1月11日). “Markakis 'extremely happy' after re-signing” (英語). MLB.com. 2019年3月12日閲覧。
  18. ^ ブレーブス・マーケイキス外野手が手首骨折で離脱”. 日刊スポーツ (2019年7月28日). 2019年10月7日閲覧。
  19. ^ Manny Randhawa and Paul Casella (2020年11月11日). “2020-21 free agents, position by position” (英語). MLB.com. 2020年11月17日閲覧。
  20. ^ Nick Markakis retires after 15 MLB seasons with Atlanta Braves, Baltimore Orioles”. ESPN (2021年3月12日). 2021年5月14日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]