アメリカンフットボール
アメリカンフットボール | |
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ボールを持って走ろうとしたところを、タックルで潰された瞬間 | |
通称 | アメフト、フットボール |
起源 |
1869年 アメリカ合衆国、ニュージャージー州 |
特徴 | |
身体接触 | 有 |
選手数 | グラウンド上:11人 |
男女混合 | 無 |
カテゴリ | 屋外競技 |
ボール | 楕円形 |
アメリカンフットボールとは、フットボールの一種であり、楕円形のボールを用いて、2つのチームで得点を競い合うスポーツ(球技)である。
ゲームの目的は、ボールを相手陣内のエンドゾーンに向けて前進させ、得点することである。ボールを前進させるには、主にボールを持って走る方法(ランプレー)と、味方にパスを投げる方法(パスプレー)がある。得点を得るには、主にボールを持ってゴールラインを通過する、エンドゾーン内でパスを捕球するほか、キックしたボールをゴールポスト上に通過させるなどの方法がある。試合終了時に得点の多いチームの勝ちとなる。
アメリカおよびカナダで単にfootballというときは、アメリカンフットボールのことを指す場合がほとんどである(ただしカナダでの場合はカナディアンフットボールを含む)。他の国では、American footballという呼び方のほか、オーストラリアでは主にgridiron football(「gridiron」とは焼き網という意。フィールドのラインがそのように見えることから)とも呼ばれている。日本では、一般的にアメフトと略される。また以前はアメラグ(アメリカンラグビーの略)とも呼ばれた。日本語表記では、アメリカンフットボールを直訳した米式蹴球、または、鎧(よろい)を髣髴させる装備をしていることから鎧球(がいきゅう)と表記される。
他のスポーツとの類似点・相違点
アメリカンフットボールは、楕円形のボールを使う、タックルにより相手の前進を止めるなど、ラグビーと共通するイメージを持ち、実際に混同される原因ともなっている。しかしラグビーとはほとんどまったく別の競技であるので注意が必要である。「ルール上では、攻守交替制である点、前方へのパスが認められている点が、ラグビーとの最大の違いである。」との記述が見られる場合もあるが、それ以外の点を最大の違いと主張することも可能であり、攻守交替制と前方へのパスがラグビーとの最大の違いと言い切る根拠は無い。その他の主な特徴については、他のスポーツとの比較と併せて下記に示す。
なお、具体的なルールについては、試合とルールの項で詳述する。
- 2チームがそれぞれ、ボールを確保する攻撃側(オフェンス)と、守備側(ディフェンス)に分かれ、攻守を交代しながらゲームが進行する。特殊な場合を除き、得点する機会は攻撃側だけにある。
- 基本的にすべてのプレーがセットプレーであり、両チームが向かい合った静止状態からひとつのプレーが始まり、タックルなどによりボールの前進が止まったときに当該プレーが終了する。1プレイはだいたい10秒以内で終了し、また仕切り直して次のプレーを開始する。このような短いプレーの積み重ねによりゲームが進行する。
- 自由交替制を採用しており、一度交替した選手が再びプレーに参加することができる。このことから、選手はポジションごとに明確な役割があり、ポジションに応じたパワー、スピード、スタミナ、捕球力などが要求される。ポジションごとの役割が明確なので、選手の体格や運動能力が非常にバラエティに富んでいるのもこの競技の特徴である。特に日本では、アメリカンフットボール選手はとりわけ大きな体格の選手ばかりと勘違いされる向きもあるが、実際は小柄な選手も数多く活躍している。
- 各プレーの結果により、試合時間の計測(時計)がそのまま進行する・停止されるパターンが明確にされている。よって、特に試合終盤において時間進行が勝負の行方を左右する重要な要素となることから時計と勝負するスポーツとも言われた。
- タックルやブロックなど、激しいコンタクトが多い。このため、選手はヘルメットやプロテクターなどの防具を装備することが義務づけられている。
- ビデオ判定の導入が比較的容易であり、NFLなどでは判定に不服がある場合、コーチ(監督)が審判団にビデオ判定を求めることができる。これをチャレンジという。但し、日本の高校、大学、社会人リーグでは現在、チャレンジシステムは採用されていない。
人気
アメリカの世論調査
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順位 | 最も好きなスポーツ
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1 | プロアメリカンフットボール | ||
2 | 野球 | ||
2 | 大学アメリカンフットボール | ||
4 | モータースポーツ | ||
5 | 男子プロバスケットボール | ||
出典:ハリス・インタラクティブ (2012年1月)[1] |
プロリーグであるNFL(ナショナルフットボールリーグ)は、メジャーリーグベースボール(野球)やNBA(バスケットボール)などを凌ぎ、アメリカで最も人気のあるプロスポーツリーグである。
NFL王座決定戦であるスーパーボウルは全米歴代TV視聴者数トップ10の全てを占め、カレッジフットボールの全米王座決定戦も、メジャーリーグのワールドシリーズやNBAファイナルの視聴率を上回ることがほとんどである。
アメリカ大手世論調査会社のギャラップによると、一番人気スポーツは圧倒的にアメリカンフットボール (41%) であり、2位が野球 (10%)、3位がバスケットボール (9%) である[2]。事実上、アメリカ合衆国で最も広範にわたる人気を持つスポーツであると言うことができ、いわゆるジョックの象徴たるスポーツでもある。
日本では、スーパーボウルをはじめとしたNFLの主要ゲームや、国内でも学生・社会人のチャンピオンシップ戦である甲子園ボウルやジャパンXボウル、日本一のチームを決定するライスボウルといったボウルゲームでは地上波やBS中継放送が行われている。またその他のNFL、NFLヨーロッパ、社会人のXリーグ、関西学生リーグ、高校選手権クリスマスボウルのCS中継、関西ローカルではあるが学生・社会人の主要ゲームの地上波TV中継もある。国内試合は伝統的に関西地区での人気が高く、80年代の京都大学ギャングスターズの全国制覇以後は、秋期の関西地区の主要ゲームには万単位の観客が集まっている。
また、NFL JAPANの協力もあり、週刊少年ジャンプでアメリカンフットボールを扱った漫画「アイシールド21」が連載され(「フットボール鷹」など、これ以前からも存在するがそれほど有名ではなかった)、テレビ東京系列でアニメ化もされた。この影響もあってか、小学生におけるタッチフットボールの経験者数は増加傾向にあり、徐々にではあるが、競技人口の裾野が広がりつつある。
歴史
大学における発展
アメリカに初めて英国のフットボールが紹介されたのは、1867年であるとされている。始めたのはプリンストン大学で、サッカールールのゲームであったが、プレーヤーの数は各チーム25人の計50人だった。続いてラトガーズ大学でも、やはりサッカータイプのフットボールを始めたのだが、プリンストン大学とはルールが異なっていた。
アメリカにおける最初のフットボールの大学対抗試合(インターカレッジ・フットボール)は、やはり25人ずつのプレーヤーによるサッカータイプのゲームで、プリンストン大学とラトガーズ大学の間で、1869年にニュージャージー州のニューブランズウィックで行われた。この時にルールの統一を図り、ボールを持って走ることと投げてパスすることが認められた。しかし、この時点ではまだボールは丸いサッカーボールであった。そして、コロンビア大学、プリンストン大学、ラトガーズ大学、およびエール大学から成るインターカレッジエイト・(サッカー)フットボール・アソシエーションが、ルールを標準化するために1873年に作られた。
一方、ハーバード大学はこのグループに参加することを拒否。他の相手を求めてカナダのモントリオールのマギル大学からの挑戦を受け、1874年5月14日、ラグビールールの試合を行った。ラグビーに限りなく近かったが、これが事実上、初めてのアメリカン・フットボールの試合だったと言えるのかもしれない。そしてその後も2校は、ラグビールールの下で、1874年から1875年にかけてシリーズ戦を行った。
ラグビータイプのゲームはまもなく他の学校にも流行りだし、そしてその後十年以内にアメリカンフットボール特有のゲーム形式は発展した。そして19世紀後半以来、アメリカンフットボールは大学のスポーツとして人気を博している。
ルールの整備
この節の加筆が望まれています。 |
アメリカンフットボールの発展
現在の形式のアメリカンフットボールは、1874年に行われたハーバード大学とマギル大学の試合に由来する。当初は原始フットボールのルールで行われていたが、ボールの所有権の曖昧さなどから、アメリカ独自のフットボール開発の気運が高まった。ラグビー選手として活躍していたウォルター・キャンプを中心に1880年にはラグビーでの「スクラム」から「スクリメージ」への革命的な変更がなされ、ボール所有権の明確化、1882年の「ダウン」制の導入がなされ、初期のアメリカンフットボールが形を成した。1885年9月3日に最初のプロフェッショナル・フットボールゲームがプレーされた。
1913年、アメリカ陸軍士官学校対ノートルダム大学戦において、ノートルダム大学のガズ・ドライズ(en:Gus Dorais)とヌート・ロックニー(en:Knute Rockne)がパスプレーを繰り出し、ランプレーと効果的に織り交ぜ、それまでほとんどランプレーだったアメリカンフットボールの戦術において革命を起こした。40ヤードのタッチダウンパスを皮切りに、ノートルダム大学が得た5TDはすべてパスプレーによるもので、35-13で圧勝した。パスプレー(1回のみ前方にパスができるルール)は、1906年から認可されていたが、それまでは限定的にしか使用されていなかった。この歴史的ゲームは陸軍士官学校を舞台とした映画「長い灰色の線」の中で、当時最強チームの陸軍士官学校が無名のノートルダム大学に、まさに見たこともない新戦術によって大敗して呆然とするというエピソードで取り上げられている。
1930年代になって、このスポーツでの負傷や事故の多さ(死亡例まであったという)から非難の声が高まり、ルールの転換、さもなくば廃止という事態に直面した。しかし、時のフランクリン・ルーズベルト大統領の「このアメリカ独自の男らしいスポーツを、消滅させてはならない」との決断により、負傷軽減のための防具の整備(プロテクター類。初期のものは薄手で軽いものだったが、時代とともに頑丈になって行った)や、さらなるルールの改定が行われた。
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日本における発展
日本では、岡部平太が1917年(大正6年)留学先のシカゴ大学でスタッグ教授よりバスケット・水泳・陸上競技と共にアメリカンフットボールを学んだ。実際に岡部は大学や近くのクラブチームでプレーを経験した(シカゴの地元新聞に顔写真付きの記事がある)。
岡部は1920年(大正9年)に帰国すると、陸上競技コーチに就任した第一高等学校 (旧制)の「陸上運動部」や、東京高等師範学校附属中学校(現・筑波大学附属中学校・高等学校)の学生らにアメリカンフットボールを教えた。3チームが結成され、練習試合も多く行われたらしいが、翌年に岡部が新設の水戸高等学校 (旧制)に赴任したことや、当時は国内にボール製造メーカーが無く、輸入も難しかったこともあり、本格的な継続活動には至らなかった。 また、岡部は1925年出版の自著「世界の運動界」の中で、日本で最初と思われるアメリカンフットボール解説を書いている。
1934年(昭和9年)になって、立教大学教授ポール・ラッシュと明治大学教授松本瀧藏ら、日本に留学した日系二世が中心となり、立教大学・明治大学・早稲田大学が参加した「東京学生アメリカンフットボール連盟」(現日本アメリカンフットボール協会、当事は東京学生米式蹴球競技連盟)を設立[3]。同年11月29日には明治神宮外苑競技場にて、学生選抜軍と横浜外人チームによる、日本で最初の公式戦が行われた。公式にはこれが日本に紹介された嚆矢とされている。ライスボウルで最優秀選手に贈られる「ポール・ラッシュ杯」はラッシュにちなむ。
第二次世界大戦の影響で一時国内競技が中断された時期もあったが、戦後復活して現在に至る。日本はアメリカンフットボールの強豪国であり、1999年にイタリアで行われた第1回ワールドカップイタリア大会で優勝、2003年の第2回ドイツ大会でも優勝、2007年の第3回日本大会でも準優勝を飾っている。2011年の第4回オーストリア大会では、初参加のカナダにシーソーゲームの接戦で敗れ、三位決定戦でメキシコに辛勝し3位を確保している(優勝:USA)。
これら日本での発展の記録は、 立教大学アメリカンフットボール部の選手であった服部慎吾が手記として残しており、日本アメリカンフットボール協会のサイトで公開されている。
試合とルール
アメリカンフットボールの試合は、全ての年代において、NCAAが定める公式規則(NCAAルール)を基本として行われる。団体の年代や地域事情などを考慮して、ローカルルールが採用される場合もある。例えばNFLでは、プロの試合としての面白みを加えるための独自ルール(NFLルール)が採用されている。この節では、NCAAルールを基本として、NFLルールについても併記する。なお、反則については反則の項に詳述する。
なお、アメリカンフットボールでは長さの単位としてヤード、フィートが用いられる。1ヤード=0.9144メートル、3フィート=1ヤードである。
フィールド
アメリカンフットボールのフィールドは、長辺120ヤード(約109.73m)のサイドラインと、短辺53ヤード1フィート(160フィート、約48.78m)のエンドラインで囲まれた長方形からなる。
フィールドの内側の地域をインバウンズ、外側の地域をアウト・オブ・バウンズという。他の多くの競技と違い、ライン上はアウト・オブ・バウンズである。
エンドラインから10ヤード中央寄りに、エンドラインと平行してゴールラインが引かれる。サイドライン、エンドライン、ゴールラインで囲まれた、フィールド両端の領域をエンドゾーンという(図の濃緑部分)。 両方のエンドライン上には、高さ10フィート (3m) のクロスバーで連結された、幅18.5フィート (5.6 m) のゴールポストが設置される。
サイドラインの内側に1ヤードごとにエンドラインに平行で24インチ (61cm) の白線(ヤードライン)を引く。 5ヤードごとにエンドラインに平行な白線を引く。
両サイドラインから内側60フィート (18.29m)(NFLではゴールポストと同じ幅)のラインを、インバウンズラインと呼び、実線ではなく、1ヤードごとにエンドラインに平行で外側に24インチ(61センチ)の白線(ヤードライン)を引く(ハッシュマークと呼ばれる)。 また、両サイドラインから内側9ヤード (8.23m) のラインを、9ヤードラインと呼ぶ。
フィールドは、50ヤードライン(他のスポーツとの類似からしばしばハーフウェーラインと呼ばれるが、50ヤードラインあるいはミッドフィールドと呼ぶのが正しい)で二つの陣地(エンド)に区切られ、それぞれ自陣と敵陣(または○○チーム陣)に区別される。フィールド上のボールの位置は、「陣地+その陣のゴールまでの距離」(○○陣△ヤード;ball on △yards)と表される。
10ヤードごとに9ヤードラインを上端とするように、ゴールまでのヤード距離の数字を表示する。
両サイドライン際、両25ヤードラインの間に、選手の待機場所(チームエリア)が設置される。スタンドのあるフィールドの場合、メインスタンド側にホームチーム、バックスタンド側にビジターチームが待機する。
試合時間
試合時間は60分である。これを前半、後半30分ずつに分け、さらに15分ずつの節(クォーター、Qと略すことがある)に分けることで、合計4つの時間帯となる(quarter - 4分の1)。第1・第2と第3・第4のクォーターの間では、陣地を交換するが、クォーター終了時の結果は持ち越す。しばしば計時が止められ、前後半の間に15分程度の休憩(ハーフタイム)を挟むため、実際の時間は3時間を超えることも珍しくない。
日本の場合、選手の体力保全や会場運営のスケジュール上の都合を考慮して、大学生・社会人(Xリーグ)のリーグ戦では、1クォーター12分であり、試合全体では48分となる。高校生の場合は1クォーター10分で行われる。ただし、甲子園ボウルやジャパンXボウル、ライスボウルといったボウルゲームでは1クォーター15分の計時で行なわれる。
第4Q終了時に同点の場合、原則、引き分けとする。勝敗を決める必要がある場合には、「タイ・ブレイク・システム」という特殊なルールにより決定する。
NFLでは、15分間のオーバータイム(延長戦)を行い、どちらかが得点した時点で、そのチームの勝利(サドンデス)となり、15分間でどちらも得点をあげなかった場合は引き分けとなる(実際に引き分けが発生するケースは、多くても数シーズンに1-2回である)。プレーオフなど、必ず勝敗を決める必要がある場合には、さらに延長戦を行うことが定められている。
チームの人数
1チームの人数(1つのプレーにおいてフィールド上に存在する人数)は11人である。ただし、プレーとプレーの間であれば、一度に何人でも交替できる。一度プレーから外れた選手が再びプレーに参加することも可能である。このため、選手の専門化が著しく、オフェンスチーム、ディフェンスチーム、スペシャルチーム(キッキングチーム)の選手に分かれることが多い。ただし、場合によっては1人の選手が複数のポジションを兼ねることもある。NFLにおいては、フィールド上と控え選手を合わせて1チーム53人まで登録できる。
審判の人数
審判の人数は、レフェリー (Referee)、アンパイア (Umpire)、ヘッド・ラインズマン (Head Linesman)、ライン・ジャッジ (Line Judge)、バック・ジャッジ (Back Judge)、フィールド・ジャッジ (Field Judge) および、サイド・ジャッジ (Side Judge) の7名である。 ポジションによって呼び名と職務が変わるが、反則の指摘などの権限は平等に持っている。反則などの問題が起こると、審判団が集まり協議を行い、協議の結果、反則はなかったことになることも多い。協議の結果を告知する職務を持つチーフ格の審判 (Referee) によって、両チームと場内に説明がされる。
コンタクト(タックルとブロック)
アメリカンフットボールにおけるコンタクトとは、身体の接触を行うことである。アメリカンフットボールのコンタクトは非常に激しく、直ちに負傷につながるおそれがある。このため、安全確保を目的として、コンタクトには厳しい規制がある。
コンタクトはタックルとブロックに大別される。しばしば混同されるが、アメリカンフットボールにおけるタックルとは、ボールを保持する選手(ボール・キャリア)の前進を止めるために体やジャージをつかむことであり、ブロックとは、相手選手の体やジャージをつかむことなく、自らの体を使って相手の進路を妨害する(前に立ち塞がる)ことである。状況により、手を開いて相手を押すことはブロックとして認められる。
原則として、ボールを持っていない選手に対するタックルは認められない。ボールを持っていない選手の体やジャージをつかむと反則(ホールディング)となる(例外的に、守備の選手が、タックルのために他の選手を払いのける目的でつかむことは許されている)。
なお、蹴る・殴るなどのラフプレイ、暴力行為は当然禁止されている。
装具
アメリカンフットボールの装具とは、防具とユニフォームに大別される。このうち防具は、選手の負傷軽減を目的として装着するものであり、様々な改良を積み重ねながら現在に至っている。「間違いやすいジャッジがひと目でわかる! アメリカンフットボールのルールとスコアのつけ方」(笹田英次 監修)によれば、全ての防具の重さを合計すると、スパイクを含んで5kgほどにもなる。
装着が義務付けられた装具に不備があると反則となるので、全ての選手は正しく装具を装着しなければならない。装着が義務付けられた装具は以下のとおりである。
- ヘルメット:頭部を保護する。表面はプラスチックで、中にウレタン製のパッドと、ゴムチューブが内蔵されており、ゴムチューブ内の空気圧の調整により、フィット感を向上させる。また、顔面を保護するフェイスマスク(またはフェイスガード。格子の形はポジションにより数種類ある)と、顎に当ててヘルメットを固定するチンストラップ(頚部へのベルトではなく顎そのもので固定する「チンカップ」がある)が必須である。ヘルメットは1平方cm当たり1トンもの衝撃に耐えるとされている。
- ショルダーパッド(プロテクター):胸、背中および肩を保護する。各部位を保護するパッドを、プラスチックのカバーで覆ってつなぎ合せたもので、ポジションごとに形状が異なる(例えばクォーターバックやワイドレシーバーなど、パスに関与するポジションでは、肩の稼動域が広く、軽くて薄いが、ラインポジションではその逆など)。
- ニーパッド・サイパッド・ヒップパッド:それぞれ、膝、太腿前面、尻を保護するパッド。ユニフォームのパンツの下に装着。
- マウスピース:頭部への衝撃を緩和するために装着。スナップする直前に口に入れて噛み締める。プレーしていない時は会話に差し障りがあるのでフェイスマスクにストラップで吊ってある。過去、マウスピースを使用せずに頭部でコンタクトを行った結果、頸椎損傷などの重大事故が発生し、死亡したケースもあるため、着用に関する規定が年々厳しくなっている。
- ユニフォーム:上半身を覆うジャージと、下半身を覆うパンツに分かれる。
- ジャージは、各チームとも、チームカラーを基調とするカラージャージと、白を基調とするホワイトジャージの2種類用意し、ホームチームがカラージャージ、ビジターチームがホワイトジャージの着用を原則とする。両チーム、審判の事前の了解があれば、カラー/ホワイトを入れ替えて着用することもある。また、対照的な色であれば、カラージャージ同士の着用もありうる。
- ジャージもパンツも、防具の上から着込み、体にぴったりとフィットするよう、現在では非常に伸縮性に富んだ素材を使用する。
- ジャージは、各チームとも、チームカラーを基調とするカラージャージと、白を基調とするホワイトジャージの2種類用意し、ホームチームがカラージャージ、ビジターチームがホワイトジャージの着用を原則とする。両チーム、審判の事前の了解があれば、カラー/ホワイトを入れ替えて着用することもある。また、対照的な色であれば、カラージャージ同士の着用もありうる。
セレモニー(コイントス)
セレモニーは、試合の開始に先立って、両チームのキャプテンと審判がフィールド中央に集合して行う手続きである。ルール上、試合開始予定時刻の3分前に開始するとされている。
両チームのキャプテン(1名以上4名以内)がフィールド中央に集合し、審判から試合上の諸注意を受けた後に、コイントスを行う。ボウルゲームなどでは、両チームの記念品(ペナントなど)交換が行われることもある。
コイントスは、試合開始時にボールと陣地の所有権を決めるため、以下の手順で行う。
- ビジター側のキャプテンが、審判が持つコインの裏表を選択する。
- 審判がコインが回転しながら落下するように投げる(ボウルゲームなどでは、特別のゲストにコインを投げる役割を与えることもある)。
- 結果が当たった(コイントスの勝者)チームは、前半もしくは後半のいずれかのハーフを選択する。
- コイントスの勝者が選択しなかったハーフを選択する。
- コイントス勝者は、前半を選択するのが通例であり、後半を選択(前半を辞退)した場合、審判はその旨をコールする。
- 各ハーフを選択したチームは、そのハーフが始まる前に以下のいずれかを選択し、対戦チームは残りの選択をする。通常は、レシーブを選択し、対戦チームは、陣地を指定する。
- レシーブまたはキック
- 陣地
通常、コイントスの勝者は、先に攻撃権を得るため、前半を選択し、レシーブを選択する。 ただし、守備に自信があったり、後半からの巻き返しを想定したりした場合、後半を選択する。
スクリメージ・プレー(ボールの前進)
スクリメージ・プレーとは、フリーキック以外でデッドの状態から開始するすべてのプレーである。
ボールが地面にある状態で、攻撃側と守備側が小競り合いするスクリメージの状態になるプレーを指す。
スクリメージ・プレーは、開始前に審判によってボールをサイドラインに平行に置かれる。
ボールの両端には仮想のライン(スクリメージ・ライン、英語ではLine Of Scrimage)が存在すると見なされる。
攻撃側のスナップ(地面に置かれたボールを後方の味方選手に渡すこと)により開始する。スナップ時には、両チームの選手は自陣に近いスクリメージ・ラインより手前に位置しなければならない。
攻撃側の選手は、スナップ直前1秒以上は静止(少なくとも1秒間)していなければならない(例外:マン・イン・モーション)。
ボールを前進させる方法は、主にランプレーとパスプレーに大別される。それぞれのプレーにおいて、選手は予め決められた動き方(アサイメント)に従って動く。通常、どのチームでも複数のプレーにおけるアサインメントを用意しており、状況に応じて使い分ける。このアサイメントをまとめた戦術書をプレーブックと言う。
通常、スクリメージ・プレーの前には、両チームの選手はそれぞれ集合し、次のプレーの戦術確認を行う。これをハドルと呼ぶ。ハドルでは、コーチからの指示を確認したチームリーダー(攻撃側では主にクォーターバック、守備側ではそれぞれ決められたチームリーダー)が状況を判断し、他の選手にアサイメントを伝達する。
コーチからの指示には、交代選手を伝令とする、チームエリアからサインを送るなどの方法がある。NFLでは、無線通信によりリーダーに直接伝達する方法がとられる場合がある。
ダウンとシリーズ
攻撃側のチームには、当初4回連続のプレーを行う権利(シリーズ)が与えられる。また1回1回のプレーはダウンと呼ばれる。
この4つのダウンを順にファースト (1st) ダウン、セカンド (2nd) ダウン、サード (3rd) ダウン、フォース (4th) ダウンという。4回以内のダウンで(フォースダウン終了までに)10ヤード以上前進すると新たなシリーズを与えられる。すなわち攻撃が継続することができ、次の攻撃は再びファーストダウンとなり、あらためて4回の攻撃権が与えられる。これを「ファーストダウンの獲得」あるいは「ファーストダウンの更新」という(日本では「フレッシュ」と呼ぶことがあるが、和製英語である)。
逆に、10ヤード前進できなければ攻守交替となり、プレー終了地点で相手チームがファーストダウンを獲得する。つまり、4回の攻撃権に対して10ヤード前進のノルマが課せられており、この10ヤードの前進が達成できている限り連続して攻撃を行うことができる。なお、相手ゴールライン(エンドゾーン)までの距離が10ヤード未満となった場合には、4回以内のプレーでエンドゾーンまで前進する、つまりタッチダウンすることが必要となる。
攻撃側のチームは、攻撃権を維持したままプレーを繰り返し、最終的にはタッチダウンなどによる得点を目指す。もちろん、一度のプレーでタッチダウンを行うことも可能である。
逆に、守備側のチームは、相手の前進を食いとどめ、あるいはボールを奪って、攻守交替に持ち込むことを狙う。
なお、攻撃側には4回の攻撃権があるが、3回以内に10ヤード進むことができなかった場合、つまりフォースダウンになった場合には、ファーストダウンの獲得をあきらめてフィールドゴールまたはパントを行うことが多い。
ランプレー
ランプレーとは、手渡し(ハンドオフ)または後方へボールを投げること(バックパス)でボールを受けた選手(ボール・キャリア)が、走って前進を狙うプレーである。比較的短い距離を確実に前進するために行われることが多い。
通常、ボール・キャリアとなるのはランニングバックである。また、パスプレーを企図したクォーターバックが、パスの受け手を探したものの適切な受け手が見つからずに、自らボールを持ったままランプレーによる前進を図ることもある(このプレーは特にスクランブルと呼ばれる)。
多くの場合、ボール・キャリアはプレーによって予め決まったコースを走り、ボール・キャリア以外の攻撃側の選手は、ボール・キャリアの走路を確保する、あるいは守備の選手がボール・キャリアをタックルするのを防ぐため、守備の選手をブロックする。ただし、ボール・キャリアが自分の判断で走るコースを任意に変えることもある。また、ボールキャリアと見せかけているプレーヤー(ランナー)がいることもある。
ランプレーによる獲得距離は、プレーが終了した時点で、スクリメージラインからボールが最も前進した地点までの距離で現される。たとえ、守備の選手によって押し戻されても、押し戻された距離は考慮されず、ボールが最も前進した位置から次のプレーが開始される。 ただし、スクリメージラインの手前で前進が止まった場合は、マイナスの獲得距離として表される。
パスプレー
パスプレーとは、前方へのパスを使ったプレーである。アメリカンフットボールで「パス」と言った場合は、前方へのパス(フォワード・パス)を意味することがほとんどである。フォワード・パスは、1ダウンにつき1回のみ、スクリメージラインの手前から行うことが認められている。
パスプレーは、投げられたボールを攻撃側の選手がノーバウンドで捕球したときに成立する。ボールの位置がフィールド外であっても、フィールド内に片足(NFLでは両足)が着地すればパス成功となる。これにより、相手のエンドゾーン内でパスを捕球すれば、その時点でタッチダウンとなる。
捕球した選手は、ボールを持ったままさらに前進することができる(ラン・アフター・キャッチ)。パスプレーによる獲得距離は、プレーが終了した時点で、スクリメージラインからパスを捕球した地点(足が最初に着いた地点)までの距離と、捕球後に前進して獲得した距離の合計で表される。
投げられたボールが、誰にも捕球されずに地面に落下した場合は、接地した時点でプレーが終了し(インコンプリート、パス不成功)、同時に計時も止まる。たとえ空中で選手がボールに触れたとしても、捕球されずに接地した場合はパス不成功となる。またパス不成功の時は、攻撃側は全く前進できずに、元のスクリメージラインから次のダウンとなる。
ランプレーと比べると、成功する確率は低いが、長距離の前進が期待できる。このため、パスプレーは比較的ハイリスク・ハイリターンの攻撃ということができる。
通常、パスを投げるのはクォーターバック、パスを受けるのはワイドレシーバーである。スナップ後、ワイドレシーバーはプレーによって定められたコースを走る。クォーターバックは、守備の状況を判断して、捕球可能と判断したワイドレシーバーにパスを投げる。
パスが成功するには、適切なスピード・距離・タイミングでパスが投げられることと、ワイドレシーバーの捕球技術が必要である。その他の選手は、クォーターバックがタックルを受けないように、またパスを投げるまでに必要な時間を稼ぐために、数人の攻撃側の選手が、クォーターバックの周りを取り囲むようにして、守備選手の侵入を防ぐ。特に、オフェンスラインの選手は、ルール上、パスを受けることができず、またパスが投げられるまではスクリメージラインを超えることが出来ず、パスプレーではクォーターバックを守ることに専念する。
また、パスされたボールを守備側の選手が捕球することをインターセプトと言う。インターセプトが発生した瞬間に攻守交替(ターンオーバー)となり、捕球した選手は、ボールデッドとなるまで、相手方のエンドゾーンに向けて前進(リターン)することができる。ボールデッド後、リターンしたチームがファーストダウンを獲得する。リターンした選手がボールデッドの前に直接敵陣のエンドゾーンに入った場合には、そのままタッチダウンが認められる。これを、特にリターン・タッチダウンという。パスプレーでは、ボールが空中にある間、常にインターセプトのリスクが伴う。
プレーの終了(ボールデッド)
上記と一部重複するが、プレーの終了(ボールデッド)となる場合を以下に示す。
- 得点が成立したとき。
- ボールを持った選手が倒れたとき。厳密には、足の裏および手のひら以外が地面に触れたとき。なおNFLルールでは、相手チームの選手の接触により倒れた場合(ダウン・バイ・コンタクト)のみボールデッドとして扱い、ボールを持った選手が自ら転倒したような場合は、相手チームの選手と接触せずに再び起き上がれば、プレーは続行する。ただし、明らかに故意に膝をついた場合(ニーダウン)は、相手チームの選手と接触していなくてもデッドとして扱われる。
- ボールを持った選手が他の選手に取り囲まれて密集状態となり、それ以上前進できないと審判が判断したとき。
- ボールを持った選手がサイドラインの外に出たとき(アウト・オブ・バウンズ)。ファンブルしたボールがサイドラインの外に出た場合も同様。
- 前方へのパスが失敗したとき。
ダウン&ディスタンスとチェーン
攻撃側の状況は、ダウン数とファーストダウン獲得に必要な前進距離(ダウン&ディスタンス)で表される。TV放送やスタジアム内のスコアボードなどでも表示される。
ファーストダウンを新たに獲得した場合には「1st&10」(ファーストダウン・テン)と表示される。これは「現在ファーストダウンで、次のファーストダウン獲得までの残り距離は10ヤード (1st down, 10 yards to go)」であることを意味する。なお、ここでいう残り距離は実測ではなく目分量であり、1ヤード未満は切り上げられる。
同様に、「2nd&7」(セカンドダウン・セブン)「3rd&2」(サードダウン・ツー)と表示された場合は、それぞれ「セカンドダウンで残り7ヤード (2nd down, 7 yards to go)」「サードダウンで残り2ヤード (3rd down, 2 yards to go)」という意味である。
直前のプレーで後退してしまったような場合には、「2nd&15」など、10ヤードを超える残り距離が示されることもある。このように10ヤードを超える距離が残っている場合には大まかに「2nd&Long」という表現を用いることがある。
残り距離が1ヤードに満たない場合には、「2nd&Inches」ないしは「2nd&Short」などと表されることもある。
なお、エンドゾーンまでの残り距離が10ヤードに満たなくなった場合には「1st&Goal」などと表されることが多い。「ゴールまで残りXヤード (X yards to goal)」という表示もある。
なお、フィールド上ではチェーンによってダウン&ディスタンスが表される。チェーンとは、フィールド上でプレー開始の地点とファーストダウン獲得の地点を示す目印であり、長さ10ヤードのチェーンの両端に棒をつけた形のもので、ビジター側のサイドライン際のアウト・オブ・バウンズに設置する。先端にダウン数を示す数字の板をつけた棒である、インジケーター(ダウンボックス)とセットで使う。
いずれかのチームがファーストダウンを新たに獲得したときに、プレー開始地点のライン上(サイドライン際)にインジケーターを設置する。インジケーターの地点にチェーンの一端を設置し、もう一端はチェーンをぴんと張った状態で、攻撃方向10ヤード先に設置する。この一端が、次のファーストダウン獲得地点の目印となる。
インジケーターは、プレー終了の都度、プレー終了地点(次のプレーの開始地点)のライン上に設置される。ファーストダウンが新たに獲得されたときには、インジケーターとチェーンをあらためて設置しなおす。
ファーストダウンを獲得したかどうかが微妙な時には、審判の判断、あるいはチームからの要求により、メジャーメントを行う。メジャーメントとは、チェーンをサイドラインからボールのある地点まで移動し、実測によりファーストダウンを獲得したかどうか判定することである。ただし、プレーの終了地点、すなわちそもそものボールを設置する地点は、あくまで審判の目測による。
4thダウン・ギャンブル
4thダウン・ギャンブルとは、4thダウンでパントあるいはフィールドゴールをせずに、ランプレーまたはパスプレーによりファーストダウンの獲得を試みることである。4thダウン・コンバージョンと呼ぶこともある。一か八かの賭けなので「ギャンブル」と付く。
4thダウン・ギャンブルの結果、ファーストダウンが獲得できれば攻撃を継続できる。しかし、4thダウン・ギャンブルに失敗し、ファーストダウンを獲得できなかった場合は、ボールデッドの地点で相手側がファーストダウンを獲得するためリスクが高い。
4thダウン・ギャンブルを選択するのは、主にファーストダウンまでの獲得距離が残り少なく、フィールドゴールの得点またはパントでは満足できない場合である。通常は、少なくとも敵陣に入ってから4thダウン・ギャンブルを選択する。ただし、残り時間が少ない状態でリードを許している場合は、たとえ自陣であっても、4thダウン・ギャンブルを選択することもある。
パント
パントとは、ボールを地面に接地させることなくボールを蹴ることである。
パントを行うと攻撃権を失うが、代わりに大きくボールを前進させることができる。このため、フォースダウンで、ゴールまでの距離が比較的遠い場合には、相手の攻撃をできるだけ不利な位置(自陣エンドゾーンから離れたところ)から開始させる意図から、通常はパントを行う。
パントを行う場合、スクリメージライン上にロングスナッパーと呼ばれる選手、後方約15ヤードにパンターと呼ばれる選手が配置される。その他の選手は、通常、パンターを守るために選手1名をパンターの数ヤード前に配置するほかは、ロングスナッパーを挟んでスクリメージライン上に1列にセットする。
ロングスナッパーがパンターに対しボールをスナップすることによりプレーが開始される。パンターはボールを受け取ると、軽く助走しながら自分の前方にボールを落とし、そのボールが地面に接地する前に、高く蹴り上げる。パントチームの選手は、エンドの2名を除いて、ボールが蹴られるまで、スクリメージラインを超えることはできない。
パンター以外のパント側の選手は、パントに必要な時間を確保するため、レシーブ側の選手の侵入をブロックし、パントの後はレシーブの選手のタックルに向かう。リターンの距離を少しでも短く抑えるためには、出来るだけ早くリターナーに近づく必要があるため、パントは遠くまで飛ばすだけでなく、できるだけ高く蹴って滞空時間(ハングタイム)を伸ばす必要がある。
蹴られたボールをレシーブ側の選手が捕球した場合、捕球した選手はボールを持って前進(リターン)することができる。レシーブ側は、リターン終了地点でファーストダウンを獲得する。当然、リターンの結果相手側のエンドゾーンに達すれば、タッチダウンとなる(パントリターン・タッチダウン)。
パントのボールにレシーブ側が誰も触れない場合は、ボールが止まった地点またはアウト・オブ・バウンズ地点で、パントしたチームの選手がボールに触れた場合は、(触れた地点が、ボールが止まった地点よりもパントチーム寄りであれば)触れた地点で、レシーブ側がファーストダウンを獲得する。タッチバックの場合は、レシーブ側の20ヤード地点でレシーブ側がファーストダウンを獲得する。
パントしたチームの選手が先にボールに触れるのは反則であり、オフィシャルはイエローフラッグを投げるが、罰則はない(ヴァイオレーション)ので、エンドゾーンに入らない(=タッチバックにならない)ようにするのも、パントチームの戦術の一つである。
レシーブ側の選手は、パンターに突進してプレッシャーをかけるか、パント側の選手がレシーブの選手をタックルするのを阻止する。
攻守交替
上記の内容と一部重複するが、以下に攻守交替となるケースをまとめて示す。
- ファーストダウンの獲得に失敗したとき。具体的には、フォースダウンが終了し、10ヤード前進が達成できなかったか、シリーズ中にファンブル・インターセプトが発生し、守備側がボールを確保してプレーが終了した場合。後者は攻守交替の中でも、特にターンオーバーと呼ばれる。
- フィールドゴールを失敗したとき。
- パントを行い、レシーブ側がボールを確保してプレーが終了したとき。
なお、タッチダウン後のポイントアフタータッチダウンのプレーが終了したとき、またはフィールドゴールにより得点したときは、次のプレーは得点したチームのフリーキックとなるため、事実上、攻守交替となる。
得点の方法
タッチダウン
得点は6点。選手がボールを持って敵陣エンドゾーンに入る、または、敵陣エンドゾーン内で味方からのパスを捕球する。とにかく敵陣エンドゾーンまでボールを運べば成立する。さらに、トライの権利が与えられる。
ラグビーと異なり、ボールを接地させる必要はない。ルール上、ゴールラインそのもの及びその上空はエンドゾーンであり、プレイ中に、選手に確保されているボールがエンドゾーンに一瞬でも接触すればタッチダウンが認められることになる。そのため、選手の体のほとんどはエンドゾーンの外にあるが、ボールを持った手だけがエンドゾーンに入ってタッチダウンというシーンも見受けられる。
具体的には、スクリメージがゴールラインのごく近くのために両チームの選手が密集した状態で、攻撃側の選手がボールをエンドゾーンに「ねじ込む」といったプレイや、サイドライン際に追い詰められた選手がサイドラインの外に逃げながら、サイドラインを出る直前にボールを持った手だけはエンドゾーンに入れてタッチダウンといったプレイが見られる。
トライ
タッチダウン後、敵陣ゴール前3ヤード(NFLでは2ヤード)の地点から、1回のみの攻撃権が与えられる。ポイント・アフター・タッチダウン (Point After Touchdown)、トライ・フォー・ポイントまたはエクストラ・ポイントとも呼ばれることもある(ルール上の用語は トライ)。ポイント・アフター・タッチダウンを略して、PAT と表記されることも多い。
フィールドゴールおよびセーフティーは1点、タッチダウン(ツーポイントコンバージョン)なら2点が与えられる。
一般に、ツーポイントコンバージョンに比べ、キックの方が成功の確率が高いため、通常はキックによる1点を狙うことが多い。ツーポイントコンバージョンは比較的リスクが高いプレーであるが、リスクをとってももう1点追加したいケースに選択される。試合終盤にリードを許している場合や、得点差を調整したい場合がこれにあたる。
例えば、
- キックの1点を加えて3点差が残った場合、次のドライブでFGの3点では同点だが、ツーポイントコンバージョンで2点差にしておくとFGで逆転できる(失敗すれば、TDが必要になる)。
- キックの1点を加えて3点リードした場合、FGの3点で追い付かれるが、ツーポイントコンバージョンで4点差にすれば逃げ切れる(失敗すれば、FGで逆転されてしまう)。
- どちらも、タッチダウンした時点で試合の残り時間が 3 - 5 分程度、或いはそれ以下の場面を想定したもの。コンバージョンに失敗した場合は、タッチダウンするのに必要な時間を確保するため、フィールドゴールトライをさせないために、成功した場合は、タッチダウンで逆転されないために、ディフェンスは全力を尽くすことになる。
なお、トライ中のプレーで、インターセプトまたは守備側によるファンブルのリカバーが発生し、守備側がリターンして攻撃側のエンドゾーンに到達すると、守備側に2点が与えられる(NFLではターンオーバーとなった時点でプレーが止まり、守備側には得点が入らないようになっている)。ただし、次のフリーキックはタッチダウンしたチーム側が行う。
フィールドゴール
得点は3点。スナップされたボールを地面に置いてキックし、敵陣のゴールポストの間、かつクロスバーの上方に通す。また滅多に見られないが、スナップされたボールを捕球後、前方に落として地面に接触させた後に蹴ってポストを通す(ドロップキック)ことも認められる(地面に接触させずに蹴るのはパントであり、パントの結果ポストを通しても得点は認められない)。
フィールドゴールを狙うプレーにおいては、スクリメージライン上にロングスナッパーと呼ばれる選手、後方約7ヤードにホルダーと呼ばれる選手、さらに後方にキッカーと呼ばれる選手がセットする。その他の攻撃選手は、ロングスナッパーを挟んでスクリメージライン上に一列にセットする。
ロングスナッパーがホルダーに対しボールをスナップすることによりプレーが開始される。ホルダーは受け取ったボールを素早く、蹴りやすいように地面に立てる。スナップと同時に助走を始めたキッカーがタイミングよくこのボールを蹴る。蹴ったボールが敵陣のゴールポストを通過すれば成功である。なお、他の選手はスクリメージライン付近でブロックを行い、ホルダーやキッカーを保護するとともに、キックまでの時間稼ぎを行う。相手チームの選手はキッカーに対しプレッシャーをかけるが、蹴ったボールに直接触れることでフィールドゴールを失敗させる(フィールドゴール・ブロック)というケースもある。
記録上のフィールドゴールの距離は、蹴った地点からゴールポストまでの距離で表される。すなわち、ゴールラインからスクリメージラインまでの距離に、スクリメージラインからキック地点までの7ヤードおよびゴールラインからゴールポストまでの10ヤード、合計17ヤードを加算したものとなる。
なお、フィールドゴールに失敗し、そのままボールがデッドになったときは、ゴールラインから20ヤード以上の地点から蹴った場合は蹴った地点から、20ヤード未満の場合は20ヤードラインから相手側の攻撃となる。エンドライン手前で捕球できればリターンすることも可能である。
プロの場合、40ヤード以内のフィールドゴールはほとんど成功するが、50ヤードを超えるような長距離の場合はプロでもなかなか成功しない。なお、フィールドゴールの世界最長距離記録は1970年11月8日にトム・デンプシーが決めた63ヤードで、1998年10月25日にジェイソン・イーラムも63ヤードのフィールドゴールを決めている。2008年にはセバスチャン・ジャニコウスキーが64ヤードに挑んで失敗しているが、2011年9月12日に63ヤードフィールドゴールを決めた。
セイフティー
2点が与えられる。自殺点ともいえる、守備側に得点が入る特殊な得点。
- 攻撃側の自陣エンドゾーン内で、守備側のプレーによってボールデットになった場合
- 攻撃側の自陣エンドゾーン内で、攻撃側が反則を犯した場合
この場合にはセイフティーとなり、守備側に2点が与えられる。
またセイフティー後は、得点を与えた側による自陣20ヤードからのフリーキックで試合再開となる。つまり攻撃側は、相手に得点を与えてしまう上に攻撃権を失う。
セイフティーとなる要件は以下の通りである。
- ボールが片方のゴールラインの後方でデッドとなり
- ボールの所有しているのがゴールラインを守る側の選手にあるか、ルースボールの状態であり、
- ボールがゴールライン後方に移動した原動力がその守備側にある。
上記の1から3の要件について具体的な事例は以下の場合である。
- スナップやバックワードパスによって、もしくはボールを持った選手(ボール・キャリア)が自らの意志で自陣のエンドゾーンに入り、
- ボールが自陣エンドゾーンにある状態でデッドになる。
- ボール・キャリアがエンドゾーンの側方、後方へアウト・オブ・バウンズに出る。
- スナップしたボールが、キャッチされず、エンドライン後方からアウト・オブ・バウンズに出る。
- ファンブルしたボールが、誰に押さえらることもなく、エンドライン後方からアウト・オブ・バウンズに出る。
原動力は分かりづらいが、以下の場合、自チームの原動力となってゴールライン後方に移動したと判断される。
- ボールを持った選手(ボール・キャリア)が自らの意志でエンドゾーンに入った場合
- スナップやバックワードパスを受けた選手がゴールラインを超えることなくボールデッドになった場合。
- 自チームの選手がファンブルして、誰にも確保されないまま、エンドゾーンに入った場合。
- パントやフィールドゴールをブロックされて、跳ね返った勢いでエンドゾーンに入った場合。
以下の場合は原動力は相手チームと見なされ、プレー結果は異なる判断がされる。
- インバウンズにいるボール・キャリアが相手選手に押し返されて、エンドゾーンに入ってデッド
- →もっとも前進した位置でデッド。
- ゴールライン前方で、インターセプトしたり、相手がファンブルしたボールを確保したりしてその勢いでエンドゾーンに入りデッド。
- →確保した位置でデッド。
- 相手のパスをエンドゾーンでインターセプトして、膝をついた。
- →タッチバック。
- 相手がファンブルしたボールが誰にも確保されないまま、自チームのエンドゾーンまで転がり、自チームの選手がエンドゾーンで押さえた。
- →タッチバック。
- 相手チームのキックオフやパントをタッチしたが、取り損なって、エンドゾーンまで転がり、
- キックしたチームが確保して、デッド。
- →タッチダウン。リターンチームの選手が触れた時点でフリーボールとなるため。
- 誰も確保できないままエンドゾーンの外へ出るか、タッチした(リターン)チームが確保して、デッド。
- →タッチバック。フリーボールではあるが、エンドゾーンに入った原動力はキックである。
また、攻撃側の反則によるセイフティーの具体例は次の場合がある。
- 攻撃側が、ボールが自陣エンドゾーンにある状態で、ホールディングなど反則を犯す。
- パッサーがエンドゾーンにいて、インテンショナル・グラウンディングの反則を犯す。
なお、セイフティー後は、得点を与えた側による自陣20ヤードからのフリーキックで試合再開となる。つまり、得点を与えた上に、さらに攻撃権を失う。
これだけをみるとセイフティーは、発生したくないところだが、故意に行う「インテンショナル・セイフティ」という戦術もある。
2点を相手チームに献上するが、以下のメリットもあり、天秤にはかって問題なければ「インテンショナル・セイフティ」を選択する。
- 変にプレーしていれば、インターセプトやファンブルをリターンされてTDとなり、6-7点を与えていた可能性があるところを2点で済んだ。
- パントなどをすれば相手にブロックされる危険はあったが、セイフティーの次はフリーキックであり、ブロックされずに安全にキックできる。
- 時間を使いたいと思っていれば、プレーすることで数秒でも時間を潰せる。
フリーキック(キックオフ)
フリーキックとは、前後半の開始時および得点後の試合再開のために行われる特殊なプレーである。キックオフとは、厳密には、前後半開始またはトライ、フィールドゴールの後のキックを言う。つまりセイフティ後のキックはキックオフではないが、セイフティというプレー結果自体がまれなため、キックオフと言えばフリーキック全てを指す場合が多い。
得点後の試合再開のフリーキックは、得点が成立した時点でボールを保持していたチームが行う。
具体的には、
- トライ後のフリーキックは、タッチダウンした側がキックする。
- フィールドゴール後のフリーキックは、フィールドゴールをした側がキックする。
- セーフティー後のフリーキックは、セーフティーを献上したチーム(失点したチーム)がキックする。
キックオフでは、キック側のチーム(キッキングチーム)は、自陣30ヤード(NFLでは自陣35ヤード)上の地点から、セーフティ後のフリーキックでは自陣20ヤードからボールをキックする。
キックの方法はプレースキックまたはドロップキック、パントいずれかでおこなう。
ただし、キックオフはパントが禁止されており、安定して蹴られないドロップキックを用いることは稀なため、キックオフはボールを置いて蹴るプレースキックが一般的である。
セーフティ後のフリーキックの場合、NFLでは滞空時間を求めてパントを採用することが多い。日本では練習量の問題からプレースキックで行うことが多い。
キックオフにおいて、ボールをキッキングティー(キックティー)と呼ばれるプラスチック製の台に立てて置いて蹴ることが通常である。
風が強い場合などはボールが倒れやすいため、キック側のチームの選手がホルダーとしてボールを支えても構わない。また、審判がキックチームに指示する場合がある。キッキングティーは、プレーの終了後、キック側のチームが回収(NFLでは専門の係員が回収)する。
ボールが蹴られるまで、キック側の選手はボールの後方にいなければならない。また、レシーブ側の選手はボールの位置から10ヤード以上自陣側にいなければならない。NFLでは、キッキングチームは、キッカーを除いて、全員がボールの位置から5ヤードの間にいなければならない。
ボールを敵陣に向けて蹴ることにより、フリーキックのプレーが開始する。その後、相手チームがキックしたボールをレシーブ側の選手が捕球(レシーブ)し、敵陣に向けボールを持って走る(キックオフ・リターン)。タックルなどによりリターンが終了した時点でフリーキックのプレーが終了する。リターンにより相手(キックした側)のエンドゾーンに到達すれば、タッチダウンが成立する(キックオフ・リターン・タッチダウン、フリーキック・リターン・タッチダウン)。
フリーキックのボールは、10ヤード超えると フリーボール(どちらのチームも確保することが出来る)であり、確保したチームが攻撃権を得ることができる。通常はレシーブ側のチームの攻撃になる(キック側のチームがボールを確保するために行うキックを特に:オンサイドキックという)。
キックされたボールが、ゴールラインより手前で、他の選手に触れられることなくアウト・オブ・バウンズとなった場合は、キック側の反則となる。(反則の項で詳述)
タッチバック
タッチバックとは、ボールが相手チームが原因で自チームのゴールラインを超えて、相手チームがボールを確保してない状況でエンドゾーンまたはエンドライン後方でボールデッドとなることである。
タッチバックが成立すると、次のプレーはゴールラインを守備している側のチームに、自陣20ヤードからのファーストダウンが与えられる。
タッチバックが成立するケースは、以下のとおり。
- パントまたはフリーキックのボールが、レシーブ側のゴールラインを超えてボールデッドとなる。具体的には、捕球した選手がエンドゾーンでタックルを受ける、ニーダウンをする、ゴールライン後方でアウト・オブ・バウンズとなる。パントに限っては、レシーブ側の選手が触れないままエンドゾーン内でボールが静止したり、キック側の選手が触れた場合。
- 攻撃側がファンブルしたボールが、守備側が触れることなく、守備側のゴールラインを超えて、守備側の選手がリカバーしてボールデッドとなる、またはアウト・オブ・バウンズとなる。
- エンドゾーン内でインターセプトしたプレーヤーが、守備側のゴールライン手前でボールデッドとなる。
オンサイドキック
フリーキックにおいて、キック側が攻撃権の確保を狙って、わざとボールを遠くへ蹴らずゴロを転がすように蹴るプレーをオンサイドキックと言う。ボールをキック地点より10ヤード以上転がすかリターン側の選手が触れれば、フリーボールとなりキック側にもボールを確保する権利が発生する。
オンサイドキックを行う場合、キッカーはボールを弾ませるようにサイドライン方向に目掛けて蹴る場合が多い。これは、不規則なバウンドによりレシーブ側が取り難くなることと、キック側がボールに到達する時間を稼ぐねらいがある。
ただし、オンサイドキックの意図はレシーブ側も察知しやすいうえ、ボールがキック側の意図する動きをするとは限らないので、成功率はかなり低い。さらに、オンサイドキックのボールをレシーブ側が確保した場合は、キック側は通常のフリーキックよりも不利な地点から守備を行わなければならないことが多い。これらのことから、オンサイドキックは非常にリスクの高いプレーであるが、キック側が負けていて、残り時間が少ないが、逆転を狙う必要がある場合などに行われる。
計時
アメリカンフットボールの計時は、プレーの開始時に始まる。原則として、プレー開始後は、下記に示す場合を除き、計時は止まらない(ランニングタイム)。残り時間が無くなった時点でクォーターは終了するが、プレーが開始しているときは、そのプレーは有効となる。また、ロスタイムの概念はないが、第2または第4クォーター終了時のプレーで、守備側に反則があった場合は、攻撃側はもう1プレーを行う権利がある(超過節)。
計時の開始、停止と再開
前・後半の開始時は、キックオフのボールを受けたリターナーが走り始めた時から計時が開始される。
下記の場合、計時を停止し、規定のタイミングで計時が再開される。
- 得点が成立したとき。なお、ポイントアフタータッチダウンのプレー中は、計時は停止したままである。
- 直後のフリーキックで、リターンを開始した時点で計時を再開する。
- 反則が起きた時。
- クォーターが終了したとき。
- チーム・タイムアウトを取得したとき。
- 攻守交替のとき。
- ボールを持った選手がサイドラインの外に出たとき(アウト・オブ・バウンズ)。ファンブルしたボールがサイドラインの外に出た場合も同様。
- パス不成功のとき。
- フリーキックのプレーが終了したとき。
- 次のプレーのスナップと同時に計時を再開する。
- ファーストダウンを獲得したとき(NCAAルールのみ)。
- レフリー・タイムアウトを取得したとき。
- 上記の計時の停止条件に該当しない限り、レディー・フォー・プレーと同時に計時を開始する。
なお、キックオフ、フリーキックで、フェアキャッチやタッチバックが成立した際は、時計は動かない。
チーム・タイムアウト
チーム・タイムアウト(タイムアウト)とは、いずれかのチームにより申告される計時の停止である。両チームは前後半それぞれ3回ずつのタイムアウトの権利を有している。これらのタイムアウトは選手またはコーチが審判に申告し、申告が認められた時点で計時が止まる。タイムアウトの時間は90秒である。
タイムアウトの時間中、選手は水分補給や、コーチと戦術の確認を行うことが出来る。
レフリー・タイムアウト
レフリー・タイムアウトとは、審判が試合の続行に支障があると判断した場合に、審判の権限で計時を停止することである。審判は試合の再開が可能と判断するまで、任意の時間、計時を停止することが出来る。
レフリー・タイムアウトが取得される主な場合を、以下に示す。
- 攻撃側が連続してファーストダウンを獲得したとき(NCAAルールのみ)。チェーンを設置し直す必要があることから。
- 反則が発生したとき。反則の結果、次のプレーの地点が確定するまで、計時を停止する。
- インバウンズにおいて負傷者が発生したとき。負傷者がアウト・オブ・バウンズの安全な位置まで移動するまで、計時を停止する。
- メジャーメントを行う必要があると判断したとき。メジャーメントの結果が確定しするまで、計時を停止する。
- NFLには、テレビCM が終了するまで計時を停止する CM タイムアウトがある。ツーミニッツウォーニングもその一つ。
タイムマネジメント
タイムマネジメントとは、時間を消費し、あるいは停止することにより、自チームに有利となるように試合の残り時間をコントロールすることである。アメリカンフットボールでは、得点差と残り時間の兼ね合いを常に意識しながら、タイムマネジメントを行う。
一般的に、リードしているチームが攻撃権を有している場合には、相手の攻撃時間を極力減らすために、計時が止まらないプレーを主に選択する。具体的には、インバウンズでプレーが終了するよう、確実なランプレーや成功率の高いパスを中心に選択する。サイドライン際ではアウト・オブ・バウンズに出ないよう、わざとボールデッドにすることもある。さらに、終了間際、攻撃側がリードしている場合などは、スナップを受けたクォーターバックがその場に膝をついて(ニーダウン)プレーを終了させる場面(イート・ザ・ボール)がある。前進しなくても、ファンブルなどの危険を冒さずに時計を進めるためのプレーである。場合によってはディレイ・オブ・ザ・ゲームの反則を行ない、罰退を受けてでも時計を進めることも行われる。
逆に、攻撃側がリードを許している場合には、攻撃の時間を確保するために、タイムアウトも消費しながら、計時を有効に止めるプレーを選択する。具体的には、サイドライン際へのランプレーやパスプレーで、成功後すぐにアウト・オブ・バウンズに出るなどである。タイムアウトを使い切っており、なおかつ計時を止めたい場合には、スナップを受けたクォーターバックが、すぐにボールを地面にたたきつける(スパイク)ことがある。スパイクした場合はパス不成功として扱われプレー終了となり、計時は止まる。もちろん1回のダウンは消費するが、ハドルや選手交代の時間を確保するために行われる。
特に、僅差でリードを許すチームが後半の終了間際に逆転を行うためには、このタイムマネジメントが不可欠であり、このことによって、試合終了まで緊張感のあるゲーム展開が楽しめることから、アメリカンフットボールの醍醐味の一つにもなっている。
ツー・ミニッツ・ウォーニング
NFL特有のルール。第2及び第4クォーターの残り時間が2分になると、自動的に(プレー中の場合はプレー終了と同時に)試合時間が止められ中断させられる。これがツー・ミニッツ・ウォーニングであり、アメリカンフットボールにおける特徴的なシステムの一つである(「ツー・ミニッツ・ウォーニング」は、映画『パニック・イン・スタジアム』の原題にもなっている)。
このルールはテレビメディアの要請により採用された(クライマックスの直前にCMを入れるため)が、試合の最終局面においてタイムアウトを消費せずに作戦を立てることができるため、大変重宝されている。なお、ツー・ミニッツ・ウォーニング後、クォーターが終了するまでは、チャレンジはできない。
インスタント・リプレイ
インスタント・リプレイとは、直前のプレーの結果について、審判が下した判定をビデオ判定によって再考するシステムのことである。インスタント・リプレイは、NFLで1999年に導入された。なお、1980年代後半から1990年初頭にもNFLにはビデオ判定制度は存在していた。だが、その頃は回数や判定対象の制限が緩く、ビデオの解像度も悪く、試合時間が延びる問題が顕著となり、一時的に中止された。
インスタント・リプレイは、レフリーがフィールド脇に設置されたリプレイ・モニターの映像を見ることによってなされ、特設室のリプレイ・アシスタントと無線で交信しながら慎重に検討される。最終的な判定はフィールドにいるレフリーが下す。判定を覆すに足る明確な証拠があると認められれば判定が覆るが、明確な証拠がない限りは当初の判定が優先される。
インスタント・リプレイが試合の遅延となることを防ぐため、NFLでは、2007年シーズンからは、判定にかける時間が90秒から60秒に短縮された。また、リプレイの確認にハイビジョン映像が導入され、より鮮明に証拠の有無を確認できるようにしている。
チャレンジ
NFLおよびアメリカの大学リーグ特有のルール。日本では採用されていない。
審判のジャッジに不服がある場合、ヘッドコーチが次のプレーが始まるまでに、赤いフラッグをフィールドに投げ入れて“異議”をアピールし、インスタント・リプレイを要求することができる。これをチャレンジあるいはコーチ・チャレンジとも言う。チャレンジは、得点やターンオーバーなど、試合を決定付ける重要な場面で行われることが多い。
チャレンジの対象は、プレーの成否に関わるいくつかの事項(得点、ターンオーバー、パスの成功・不成功など)についてのみ認められており、反則の有無についてチャレンジを行うことはできない。
チャレンジは1試合につき3回(大学の場合は2回)まで行うことができる。ただし、3回目の権利はそれ以前に2回続けてチャレンジに成功しないと与えられない。判定が覆らなかった場合はチャレンジ失敗となり、タイムアウトの権利を1回分失う。つまり、チャレンジはタイムアウトの権利を賭けて行うものなので、タイムアウトを使い切った状態では行うことはできない。
なお、チャレンジはツー・ミニッツ・ウォーニング以降、およびオーバータイム中には行うことが出来ない。また、NFLでは2011年より得点プレーについてもできない。ただし、このような時期に疑義のあるプレーが発生した場合、特設室にいるリプレイ・アシスタントと呼ばれる専門の審判がビデオ映像を検証し、インスタント・リプレイが必要かどうかレフリーに指示することがある。これをオフィシャル・レビューという。この場合でも、最終判断は、レフリーが行う。
ポジション
戦術
攻撃側
攻撃側のチームの代表的な戦術(プレー)を下記に示す(主にIフォーメーションの場合)。
ランプレイ
- エンド・アラウンド (end around)
- テイルバックが、タイトエンドの外側を走り抜けるプレー。大きく回り込むため、俊足のランナー向きである。
- リバース (reverse)
- ワイドレシーバーがボールをキャリーするランプレー。サイドライン付近にセットしたワイドレシーバーが、スナップ直後にスクリメージライン手前のエリアを逆サイドに向けて走り、その途中でクォーターバックからハンドオフを受ける。プレー展開は遅くなるが、ディフェンスの裏をかくトリックプレー。クォーターバック以外のプレーヤーから最終的なボールキャリアーがハンドオフを受けた場合は、ボールの進行方向が逆転するためリバースと呼ばれるプレーになる。両サイドのワイドレシーバーが互いに逆サイドに向けて走り、クォーターバック→ワイドレシーバー→ワイドレシーバーとつなげるダブル・リバースというプレーもある。
- オフタックル、パワーオフタックル (off-tackle, power off-tackle)
- テイルバックが、タックルおよびタイトエンドにより開けられたタックルの外側のホールを走るプレー。フルバックはリードブロッカーになる。スイープと違い、オフタックルではタックルとタイトエンドがホールをつくる。さらに逆サイドのガードがリードブロックに参加する場合はパワーオフタックルと呼ぶ。一方のサイドに数的優位を作り出すパワープレーである。
- オプション (option)
- 守備側のキープレーヤーを定め、そのプレーヤーの動きによって、クォーターバックが持って走る(キープする)か、テイルバックまたはフルバックに渡す(ピッチ)か選択するオープンプレイ。キープレーヤーの候補はディフェンスエンド、ラインバッカー、セーフティー、コーナーバックと色々ある。またフルバックにダイブのふり(フェイク)をさせ、オプションを展開する「フリーズオプション(インサイドを見るラインバッカーを一瞬止める(フリーズ)させることから)」や「トリプルオプション(クォーターバックはダイブさせるか、キープするか、ピッチするかの3つの選択をする)」などがある。オプションが得意なQBを「オプションQB」と言う。かつて法政大学が最も得意としていたプレイである。
- カウンター (counter)
- オフェンスラインや他のバックスのプレイ方向と一人逆向きに走らせたプレーヤーにハンドオフするプレイ。ランプレイへの守備側の反応が早いときに相手のオーバーパシュートを誘いやすく有効とされる。特に、フェイクしたプレイにおいて優位であるほど、そのプレイに対するカウンターは効果が高い。フェイクするプレイ一般にテイルバックが逆方向に走る場合が多いが、ハンドオフのフェイクも加えるなどしてクォーターバック自らが逆方向に走る「クォーターバックカウンター」や、上記のオプションと合わせた「カウンターオプション」もある。
- クォーターバックスニーク (sneak)
- スナップを受けたクォーターバックがそのままボールを保持し前進するプレー。1ヤード前後の短い距離を確実に進めたい場合に選択される。
- スイープ (sweep)
- ボールを受けたテイルバックがまず横方向に走り、フルバックや逆サイドのガードなどが守備側選手を掃く(スイープ)するようブロックし、できた走路をテイルバックが走るオープンプレー。
- ダイブ (dive)
- クォーターバックからボールを受け取った(ハンドオフ)ランニングバック(主にフルバック)が一直線に飛び込むインサイドプレイ。主に短い距離を確実に進めたいときに選択する。1回につき3ヤード以上進めば攻撃側が優勢とされる。
- ドロー (draw)
- クォーターバックがパスをすると見せかけて下がった(ドロップバック)後、ランニングバックにハンドオフして、真ん中を突くインサイドプレイ。パスラッシュしてきたディフェンスとランニングバックが入れ違いになることを狙う。ランニングバックが「線を描く」様に真直ぐ走るところから名付けられた。
- ブラスト (blast)
- クォーターバックはテイルバックにハンドオフし、フルバックがリードブロッカーとなって中に通路を作るインサイドプレイ。
パスプレイ
- スクリーン・パス (screen pass)
- パスレシーバーの前に、1人以上のブロッカーを幕(スクリーン)を張るように展開するプレー。もっとも一般的なスクリーン・パスでは、クォーターバックが大きくドロップバックし、ディフェンスがパスラッシュした背後のスペースにブロッカー(ガード、フルバック、タイトエンドなど)とレシーバーが展開し、パスを投げる。
- ハーフバック・パス (halfback pass)
- クォーターバックがランニングバックかワイドレシーバーにハンドオフかバックパスし、それを受けたランニングバック/ワイドレシーバーがフォワードパスを投げるトリックプレー。プレイアクションパスに比べて、守備側がランプレーへの対応をより進めた時点でパスに切り替えるため、成功した場合には大きなゲインを望むことができる。;フリー・フリッカー (flea flicker)
- クォーターバック→ランニングバック→クォーターバックとハンドオフまたはバックパスを行い、クォーターバックがフォワードパスを投げるトリックプレー。効果としてはハーフバック・パスと同様であるが、フォワードパスを投げるのが専門職であるクォーターバックであるため、パスの精度を期待することができる。
- プレイアクションパス (play action pass)
- ランプレーと見せかけてハンドオフのフェイクを入れた(=play、ここでは「演技する」の意)後にパスを投げるプレー。相手がランプレーを警戒している場合、その効果は高い。
- (例)インサイドが有効な相手(オフェンスラインが相手ディフェンスライン、ラインバッカーに勝っている)に対して仕掛けると、相手はインサイドに注意が行くため、その裏を通すショートパスが有効である。
その他
- オーディブル・コール (audible call)
- 通常、プレイ前のハドルにおいて今回のプレイについて打ち合わせを行うが、スクリメージラインに着いた際に相手側の陣形を見てハドルで取り決めたプレイが成功する見込みが低いと判断された時、クォーターバックが暗語を発しプレイヤーにフォーメーションの変更を伝えること。残り時間が少ない時にはハドルを省略し、オーディブル・コールだけでプレイを進めることも多い。
- シグナル・コール (signal call)
- スクリメージラインについた後、スナップカウントをコールすること。ディフェンスのフォーメーションやアサイメントの確認をチームに伝えることもある。この時に、プレーの変更を伝えるのが、オーディブル・コール。
- トラップ(トラップ・ブロック)(trap, trap block)
- オフェンスラインが通常の真正面のブロックとは異なって交差(クロス)するようにブロックし、そこで開いた道を通らせるプレー。相手ディフェンスラインは予期せぬ方向からブロックが来るため効果が高く、どのプレーにも合わせられるという有効な戦法である一方、センターと両ガードがぶつからないようにする交差するタイミングが難しく、特にガードの機動力が問われるプレーである。センターとガードで行われるものを「ショートトラップ」、センター、ガード、タックルで行われるものを「ロングトラップ」という。
- ブーツレッグ (bootleg)
- クォーターバックがランフェイクをした後、弧を描くように逆サイドに回りこみ(=ロールアウト)、パスするかそのままキープして走るプレー。通常はオフェンスラインを一人クォーターバックの走る側に残してリードブロッカーとするが、これも置かずにクォーターバックが一人でオープンサイドを走る場合はネイキッド (naked) と呼ぶ。
- フェイク (fake)
- 相手を騙すこと。クォーターバックの戦術的には、パスを投げると見せかけてランナーにボールを渡す、ランナーにボールを渡すと見せかけて渡さずパスを投げるなどがある。フォーメーションでは、次のようなものがある。
- フェイク・パント (fake punt)
- フォースダウン時にキッキングチームを出して、パンターがパントを蹴ると見せかけて受け取ったボールを投げる、あるいはそのままボールを持ってランするプレー。ギャンブルプレーの一種で、失敗すると相手に攻撃権が移ってしまう。
- フェイク・フィールドゴール (fake field goal)
- フォースダウン時にキッキングチームを出して、キッカーがフィールドゴールを蹴ると見せかけて受け取ったボールを投げる、あるいはそのままボールを持ってランするプレー。僅差で残り時間がない時に、しばしば用いられる。ギャンブルプレーの一種で失敗すると相手に攻撃権が移ってしまうが、相手側ゴールに近い場所で攻撃権を渡すので、まだ反撃の可能性は残る。
- サードダウン・パント (3rd down punt)
- 後2回攻撃権が残っているのに、キッキングチームを出す戦術。フェイク・パントの可能性が高いため、守備側はパントに対する守備フォーメーションを取ることができない。すると、パントを蹴った時に相手陣内深く蹴り込めるメリットが生まれる。戦力が圧倒的劣勢に立たされ、自陣に押し込まれている時に用いられる。NFLではまず見られないが、日本の大学選手権などではしばしば奇襲策として用いられる。
- フェイク・パント (fake punt)
- ブラフ (bluff)
- はったり。例えば、クォーターバックが今にも突撃を行うかの如く大声を発して合図を送るもの。守備側が動揺して前に出てくれれば反則が稼げるし、まだ攻撃してこないと油断させれば機先を制することができる。
- ワイルドキャット (wild cat)
- ランニングバックまたはワイドレシーバーがクォーターバックの位置に、クォーターバックがワイドレシーバーの位置に着く体形のトリックプレー。クォーターバックの位置にクォーターバック経験があるワイドレシーバーを配置することによって守備を混乱させる。NFLでは、カレッジでクォーターバックをプレイし、プロ後にワイドレシーバーに転向するプレイヤーは少なくないため、2009年にマイアミ・ドルフィンズがを使用したのをきっかけに、瞬く間に流行していった。
守備側
守備側のチームの代表的な戦術(プレー)を下記に示す。
- ゾーン・ディフェンス (zone defence)
- パスプレーにおいて、守備側選手が攻撃側選手を1対1で守備するのではなく、割り当てられた守備エリアに侵入してきた選手をカバーする。
- ゾーン・ブリッツ (zone blitz)
- ラインバッカーがブリッツし、ディフェンシブラインメンの一部が後退してパスカバーを行う。通常ラインバッカーのブリッツが行われると、そのラインバッカーのいたエリアにスペースができる場合が多く、ブリッツを察知したクォーターバックはそのスペースへショートパスを投げるというセオリーがあるが、ディフェンシブラインメンがそのエリアのパスカバーに入る。
- タックル (tackle)
- ボールを持っている攻撃側選手を捕らえ倒すこと。守備側の基本戦術のひとつ。ボールを持っていない選手にタックルすると反則となる。
- パス・インターセプト (pass intercept)
- クォーターバックが投げたボールを守備側が捕球すること。その瞬間に守備側と攻撃側が交代し、元の守備側が攻める事ができる。
- ブリッツ (Blitz)
- ラインバッカーまたはディフェンシブバックが攻撃側のラインメンによる壁を突破し、クォーターバックへタックルを仕掛けるプレー。主にクォーターバックがパスを投げる前に倒す、クォーターバックサックを狙う。第二次世界大戦時のドイツ軍の急襲戦法を語源にしている。
- マン・ツー・マン・ディフェンス (man-to-man defence)
- パスプレーにおいて、守備側各選手が割り当てられた攻撃選手を1対1でカバーする。
その他
- フェアキャッチ (fair catch)
- 相手側がキックしたボールを捕球する際、相手側選手が近くまで突進してきているなど、それ以上のリターンが望めない時やリターンするとファンブルなどの危険を感じる時には、捕球する前に「フェア」と叫び、手を振るなど合図を出すとフェアキャッチが成立する。リターンの権利を放棄する代わりに安全を確保するものであり、フェアキャッチした捕球者にタックルを行うと反則となる。但し、捕球する義務はなく、見送った場合には、通常のルールが適用される(ゴールライン近くで宣言しておいて、見送ってタッチバックにする等)。
反則
反則を発見した場合、審判は直ちにおもり付きの黄色い布(イエローフラッグ)を投げる。スナップ前の反則(デッドボール・ファウル)はその時点でプレーが中断され、反則についての協議が開始される。
スナップ後の反則(ライブボール・ファウル)については、プレイヤーの各自判断によりその時点でプレーを中断しても、あるいはプレーを継続してもよい。これはアメリカンフットボールが動きの激しいスポーツのため、一旦プレーが開始された後、急にプレーを中断させることは危険を招きかねないためである。プレーを継続した場合、ボールデッドとなった時点で、反則についての協議が開始される。
審判団が協議を開始し、審判から協議結果について、両チームおよび場内に報告される。協議の結果、反則との結論に至らなかった場合、反則はなかったものとして取り扱い、プレーはやり直しとなる。反則との結論に至った場合、反則を受けたチームが罰則を適用するかどうか選択することが出来る。他のスポーツにおけるアドバンテージと似たような措置である。
攻撃側が反則を犯した場合は、スクリメージラインを後退させ、逆に守備側が反則を犯した場合は、スクリメージラインを攻撃側有利に前進させる。これを罰退(ペナルティ)という。罰退距離は、反則の軽重により、5ヤード、10ヤード、15ヤードの3種類に区別される。重大なパーソナルファウル(暴力行為(アンネセサリー・ラフネス)やアンスポーツマンライク・コンダクトなど)の場合は、罰退に加えて、その選手を退場処分とする場合もある。
反則を受けた側は、罰退を適用する(アクセプト)か無視する(ディクライン)かの選択権を持つ。アクセプトされた場合には、罰退を適用したうえで、原則として同じダウンをやり直す。ただし、守備側が反則を犯した場合、軽度の反則を除き、10ヤード前進の達成を問わず攻撃側にファーストダウンが与えられる(オートマティック・ファーストダウン)。オートマティック・ファーストダウンが適用されない場合でも、守備側の反則による罰退の結果、10ヤード前進が達成された場合はファーストダウンが与えられる。なお、攻撃側の特定の反則については、罰退を適用したうえで次のダウンに移る(ロス・オブ・ダウン)。ディクラインした場合には、反則がなかったものとして、次のダウンを開始する。
罰退の適用の判断は、プレーの結果との兼ね合いで決まる。たとえば、ロングパスが成功したが、そのプレーの最中に守備側が反則を犯していた場合、パス成功による獲得距離が反則による獲得距離よりも多い場合、攻撃側はディクラインを選択することが多い。罰退よりも有利に働くからである。また、パス不成功や攻撃側の前進が少なかったプレーにおいて、攻撃側が反則を犯していた場合で、罰退を適用するとダウンをやり直すことになる場合は、守備側がダウンを進めることを優先してディクラインを選択することがある。これらも他のスポーツにおけるアドバンテージと同様の意味を持つ。
反則位置がゴールラインに近い場合(例えばゴールまで8ヤードの位置で守備側が反則を起した場合など)は、パスインターフェアランスなど特に別の規定がある場合を除き、規定のヤード数とゴールまでの距離の半分(ハーフディスタンス)を較べ、短い方の罰退が適用される。守備側の反則でハーフディスタンスが適用された場合、次のダウンはファーストダウンとなる。また、自陣ゴールライン近くに押込まれている状況で、攻撃側が反則を犯した場合もハーフディスタンスが適用される場合がある(例として第23回スーパーボウルにおけるジョー・モンタナの最後のドライブ前のキックオフリターンがある)。
複数の反則が競合する場合
一つのダウン中に複数の反則が発生した場合、以下のような判断が下される。
一方のチームに複数の反則が発生した場合、反則の起こった順に判断される。例えば、
- 守備側がオフサイドの反則(5ヤード罰退)を犯したが、そのままプレー続行
- 次いで攻撃側がフォワードパスを投げたが、守備側がパスインターフェアランス(15ヤード罰退)の反則を犯した
この場合、攻撃側は1の反則をディクラインし、2の反則に対する罰則適用を求めたほうが攻撃側にとって有利となる。
さらに、パスが成功し15ヤード以上前進していれば、2つともディクラインすればよい。
また、1の反則と2の反則の間に攻撃側の反則があった場合には、攻撃側は1の反則に対する罰則適用を求めれば、自身の反則については問われない。
両チームに反則が発生した場合は、状況により適用が異なる。
- 「攻撃側がホールディング(10ヤード罰退)、守備側がパスインターフェアランス(15ヤード罰退)を犯す」等、ライブボール(プレー中)であれば、罰則の軽重にかかわらず相殺され(オフセッティング・ファウル)、ダウンをやり直す。
- 双方がオフサイド・エンクローチメントを犯した場合は、「一方の動きに他方が誘発された」と判断されれば、先に動いた側のフォルススタートとされる。双方の動きに関連が認められなければ、オフセッティング。
攻撃側の主な反則
- オフサイド
- ボールがスナップされる前に、攻撃側の選手がニュートラルゾーンに侵入すること(5ヤードの罰退)。
- フォルス・スタート
- センターがスナップする前に攻撃側のラインの選手が攻撃開始と同じように動くこと(5ヤードの罰退)。
- イリーガル・モーション
- センターがスナップする前にバックスが2人以上動くこと、あるいはモーションする以前より前方に動くこと(5ヤードの罰退)。
- イリーガル・シフト
- スクリメージラインメンがシフト後1秒以上静止しないこと(5ヤードの罰退)。
- イリーガル・フォーメーション
- スクリメージラインに6人以下の選手しかいないこと(5ヤードの罰退)。
- 無資格レシーバーによるダウンフィールドへの侵入
- パスプレー時、エンド以外のラインメンがスクリメージラインより3ヤード以上前に出ること(5ヤードの罰退。さらに、ラインメンがパスにタッチした場合は、15ヤードの罰退)。
- 不正なフォワードパス
- スクリメージラインより前から投げられた前方へのパス、または一回のプレイで二度目の前方へのパス、パントやフリーキックのリターン側による前方へのパスなど(5ヤードの罰退)。
- ホールディング
- ブロックの際に不正に手や腕を使って相手選手をブロックすること(10ヤードの罰退)。
- パス・インターフェアランス
- ボールではなく、パスを捕ろうとしている選手に対して妨害すること(15ヤードの罰退)。ボールが投じられた後、チップされるなどして誰かが1度触れた場合は適用されない。
- インテンショナル・グラウンディング
- サックを避けるため、故意に誰も捕れないパスを投げること(5ヤードもしくはパスを投げた地点まで罰退、ロス・オブ・ダウン)。パスを投じる選手がポケット(ルール上は左タックルから右タックルの間)を出た場合で、パスがスクリメージラインを超えた場合は適用されない。なお、スパイクはサックを避けるために行われるものではないため、この反則は適用されない。
- クリッピング、イリーガル・ブロック、スピアリング
- クリッピングは、腰より下部で背後からのブロック、イリーガル・ブロックは背後からのブロック、スピアリングは故意にヘルメットで体当りするなどの危険な行為(15ヤードの罰退)。いずれも不正なブロック。
- キックオフのアウト・オブ・バウンズ
- キックオフされたボールがプレーヤーに触れられることなくサイドラインを割ること(キックオフ地点から30ヤード進んだ地点から、レシービングチームのファーストダウン、あるいは、5ヤード下がった位置から蹴り直し)。
- ヘルピング・ザ・ランナー
- 攻撃側の選手がボールキャリアーを後ろから押すなどして直接的に助けること(5ヤードの罰退)。
守備側の主な反則
- オフサイド
- ボールのスナップ前に攻撃側の選手に触れたり、ボールがスナップされた時点でニュートラルゾーンに侵入していること(5ヤードの罰退)。攻撃の選手に触れず、スナップ前にニュートラルゾーンから戻れば反則ではないが、ニュートラルゾーンへ侵入したことで攻撃側の選手が反応して動いた場合は、守備側の反則となる。
- エンクローチメント
- ボールがスナップされる前に、守備側の選手がニュートラルゾーンを越え相手選手と接触すること(5ヤードの罰退)。
- パス・インターフェアランス
- ボールが投げられた後に、ボールではなく、パスを捕ろうとしている選手に対して接触すること。ボールが投じられた後、チップするなどして、1度誰かが触れた場合は適用されない(罰退はリーグにより違う。NFLでは反則のあった地点(守備側陣エンド・ゾーン内で発生した場合、守備側陣1ヤード地点)からファーストダウン。カレッジなどではスクリメージラインから15ヤード以上の距離で発生した場合は、15ヤードの罰退と攻撃側にファーストダウン、15ヤード未満では反則地点から攻撃側にファーストダウン)。
- イリーガル・コンタクト(NFLルール)
- スクリメージ・ラインから5ヤード以上越えた地点でレシーバーに接触すること。パスを投じる選手がポケットから出た場合、適用外となる(5ヤードの罰退)。
- ホールディング
- ボールを持った選手以外をつかむこと。レシーバーがパスコースを走られないようにつかんだ場合など(10ヤードの罰退。NFLでは5ヤードの罰退と攻撃側にファーストダウン)。
- パイリング・オン
- ボールデッドになった後に、攻撃側選手の上にどのような状態であろうが乗っかること(15ヤードの罰退)。
- パーソナルファール
- 以下の反則は全て15ヤード罰退。
- ラフィング・ザ・キッカー
- キックの後でキッカーにタックルすること。なお、フィールドゴールまたはエキストラポイントが成功した場合は、直後のキックオフにおいて罰則が適用される。
- ラフィング・ザ・パッサー
- パスプレイにおいて、パスを投げた後の選手(クォーターバックに限らない)にタックルすること。リーガルなタイミングであっても、必要以上の乱暴行為(ヘルメットにヘルメットで当る、抱え込んで投げるなど)があった場合は適用される。
攻撃側、守備側の双方に適用される主な反則
- ディレイ・オブ・ゲーム
- レディー・フォー・プレーから25秒(NFLではプレー終了から40秒)以内にスナップを行わないこと。守備側においては大声を出してスナップカウントを邪魔したり、時計が進んでいるのにボールを抱え込んで放さないなどの著しい遅延行為があった場合に適用される。NFLにおいては、過剰なセレブレーション(ボールをフィールドに叩きつける、スタンドに飛び込む等)も対象となる(5ヤードの罰退)。
- 不正なプレー参加(交替違反)
- 1チーム12人以上の選手でハドルを組むこと(15ヤードの罰退)。
- パーソナルファール
- 以下の反則は全て15ヤード罰退、守備側の反則の場合、オートマチックファーストダウン。
- グラスピング・ザ・フェイスマスク
- フェイスマスク(ヘルメットの網の部分)を掴むこと。過去は故意の場合15ヤードの罰退、偶然指が引っかかった場合は5ヤードの罰退だったが、2008年シーズンより故意・偶然にかかわらず15ヤードの罰退に改正された。相手のフェイスマスクを掴まず単に触っただけの場合は反則ではない。NFLルールにおいてこの反則が故意・偶然に関わらず厳しい理由は、勢いのある動きでフェイスマスクに触れられた場合、頚椎損傷に結びつく可能性が極めて高く、プロ選手としては偶然であっても許されない行為であると判断されているからである。
- アンネセサリー・ラフネス
- 必要以上に乱暴なプレイ。
- アンスポーツマンライク・コンダクト
- 非スポーツマン行為。具体的には相手選手や審判への暴言、得点後の過剰なパフォーマンス。特に侮辱的なものはトーンティング(taunting、愚弄の意)と審判によりコールされることも多いが、基本的には同じ反則。
- レイトヒット
- 明らかにボールを持ってサイドラインを割った選手にタックルすること。
主なリーグ
アメリカ
- ナショナルフットボールリーグ (NFL)
- カレッジフットボール (NCAA)
- XFL
- アリーナフットボールリーグ (AFL)
- ランジェリー・フットボール・リーグ (LFL)
カナダ
- カナディアンフットボールリーグ (CFL)
日本
ヨーロッパ
- NFLヨーロッパ (NFL Europa)
- ジャーマン・フットボール・リーグ - ドイツ (GFL - German Football League)
主な大会
国際試合
アメリカ
日本
- ライスボウル
- 甲子園ボウル
- クラッシュボウル
- ウエスタンボウル
- シトロンボウル
- 四日市ボウル
- JAPAN X ボウル
- クリスマスボウル
- ヨコハマボウル
- パールボウル
- NEW ERA BOWL(ニューエラボウル)
- SAMURAI BOWL
- カレッジボウル
- バーシティーボウル
- 神戸ボウル
アメリカンフットボールを扱った作品
映画
- 邦画
- 洋画
- ロンゲスト・ヤード(1974年、2006年にリメイク)
- ジョーイ(1977年)
- ブラック・サンデー(1977年)
- 天国から来たチャンピオン(1978年)
- スーパータッチダウン(1991年、原題「Necessary Roughness」)
- ルディ/涙のウイニング・ラン(1993年)
- フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年)
- ウォーターボーイ(1998年)
- メリーに首ったけ (1998年)
- バーシティ・ブルース(1999年)
- タイタンズを忘れない(2000年)
- リプレイスメント(2000年)
- エニイ・ギブン・サンデー(2001年)
- 僕はラジオ(2003年)
- マーシャルの奇跡 (2006年)
- インヴィンシブル/栄光へのタッチダウン (2006年)
- かけひきは、恋のはじまり (2008年)
- しあわせの隠れ場所 (2009年)
漫画
- アイシールド21(村田雄介・稲垣理一郎 / 集英社)
- フットボール鷹(川崎のぼる / 講談社)
- ノーハドル(西山優里子 / 講談社)
- 5ヤーダー(小堀洋・守谷哲巳 / 秋田書店)
- 明日へキックオフ(梶原一騎・前田俊夫 / 少年画報社)
ゲーム
- 「マッデンNFL」シリーズ (エレクトロニック・アーツ)
- 「NFL2K」シリーズ(セガ(現セガサミー)、2K Games)
- NFL2K (セガ、5,800円、DC、2000年)
- NFL2K1(セガ、5,800円、DC、2001年)
- NFL2K2(セガ、5,800円、DC、2002年)
- 「テクモボウル」シリーズ(テクモ)
- テクモボウル(テクモ、2M、6,900円、1990年、FC)
- テクモボウルGB(テクモ、1991年、GB)
- テクモスーパーボウル(テクモ、9,800円、SFC、1993年)
- テクモスーパーボウルII SPECIAL EDITION(テクモ、SFC、9,980円、1994年)
- テクモスーパーボウルIII FINAL EDITION(テクモ、12,800円、1995年)
- テクモスーパーボウル(テクモ、PS、1996年)
- テクモボウル キックオフ(北米版DS、2008年)
- 『NCAA Football』シリーズ(エレクトロニック・アーツ)
- 『バックブレーカー』シリーズ (505 Games)
- 『バックヤード フットボール』シリーズ(アタリ)
- 「アイシールド21」シリーズ(任天堂・コナミ)
- 10ヤードファイト (アイレム、アーケード、1983年)
- 「タッチダウン」(ウィンキーソフト、1984年)
- 「エレクトリック・フットボール」(マギー・トイズ)
- グレートフットボール(セガ、1Mカセット、5,000円、セガ・マークIII、1987年)
- アメリカンフットボール タッチダウンフィーバー(ケイ・アミューズメントリース、FC、1988年)
- 「Black College Football Xperience」(Aspyr Media)
- アメリカンフットボール タッチダウンフィーバー(ケイアミューズメントリース、1.25M、5,500円、ディズニースポーツ : アメリカンフットボール(コナミ、6,800円)1988年、FC)
- クォーターバックスクランブル(ファミリーコンピュータ、ポニーキャニオン、1989年12月19日、5,900円)
- プレイメーカー・フットボール(以前はBroderbund、現在はPlaymaker.inc、過去の日本語版はシステムソフト、PC-9801、1990年)
- レッスルボール(ナムコ、5,800円、MD、1992年)
- TVスポーツフットボール(PCエンジンHuCARD、ビクター音楽産業、1991年3月29日、6,700円)
- フットボールフレンジー(SNK、23,800円、ネオジオ、1992年)
- ジョー・モンタナ フットボール(セガ、6,000円、メガドライブ、1991年)
- ジョー・モンタナ フットボール(セガ、3,800円、ゲームギア、1992年)
- ジョー・モンタナII スポーツフットボール(セガ、7,000円、MD、1992年)
- ウルティメイトフットボール(サミー、8,700円1992年)
- プロフットボール(イマジニア、7,900円、1992年、SFC)
- プロフットボール(エレクトロニック・アーツ・ビクター、7,800円、MD、1992年)
- プロフットボール'93(エレクトロニックアーツビクター、8,900円、1993年、SFC)
- ミュータントリーグ・フットボール(エレクトロニック・アーツ・ビクター、8,900円、MD、1993年)
- NFLフットボール(コナミ、9,000円、1993年、SFC)
- ABCマンデーナイトフットボール(データイースト、9,000円、1993年、SFC)
- NFLプロフットボール'94(エレクトロニック・アーツ・ビクター、9,800円)(メガドライブ,SFC)
- NFLクォーターバッククラブ'95(アクレイムジャパン、8,800円)(メガドライブ)
- NFLクォーターバッククラブ'95(アクレイムジャパン、4,800円、ゲームギア、1995年)
- ディズニースポーツ:アメリカンフットボール(コナミ、6,800円、GC、2002年)
アニメ
サブページ
脚注
- ^ ハリス・インタラクティブによるアメリカでの人気スポーツの世論調査(2012年1月公表)
- ^ ギャラップ社の世論調査 好きなスポーツ 1位アメリカンフットボール (41%)、2位野球 (10%)、3位バスケットボール (9%)、4位アイスホッケー (4%)
- ^ 「限りなき前進 日本アメリカンフットボール五十年史」(1984年9月)日本アメリカンフットボール協会、32、33、74、75、90頁
「1934フットボール元年 父ポール・ラッシュの真実」井尻俊之、白石孝次共著、ベースボール・マガジン社、1994年、21、41-43、50-58、97、98、107頁
山梨県清里高原 キープ協会|日本アメリカンフットボールの殿堂 | 日本アメリカンフットボールの熱き継承
関東学生アメリカンフットボール連盟:75周年記念特集
川口仁「日本アメリカンフットボール史-フットボールとその時代
スポーツ発展のカギとなった人物 - 牛木素吉郎のビバ!スポーツ時評
歴史が眠る多磨霊園 小川徳治
関連項目
- カナディアンフットボール - アメリカンフットボールに酷似したスポーツ
- アリーナフットボール - 室内版アメリカンフットボール
- 日本アメリカンフットボール協会
- 女子アメリカンフットボール
- ジョック
外部リンク
- 公式
- IFAF - 国際アメリカンフットボール連盟 (英語)
- JAFA - 日本アメリカンフットボール協会 (日本語)
- リーグ
- NFL JAPAN - ナショナル・フットボール・リーグ (日本語)
- Xリーグ (日本語)
- その他
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