居飛車穴熊

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91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
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居飛車穴熊

居飛車穴熊将棋戦法の1つ。居飛車が対振り飛車戦で穴熊囲いを目指す戦術である。英語名称はStatic Rook Anaguma。

概要[編集]

居飛車振り飛車の将棋に於いて、古くからある持久戦策としては玉頭位取り左美濃などが指されていた。居飛車穴熊はこれらに比べバランスが悪く指しづらいとされていたが、田中寅彦が体系化を進め高勝率をあげたことで昭和50年代頃から流行した[1]

初期の居飛車穴熊では振り飛車側が居飛車に四枚穴熊を許しているケースが多かった[2]。しかし、居飛車側が圧倒的な勝率をあげていたため向かい飛車立石流四間飛車のような振り飛車から動く順が模索された。いずれも対策がたてられ居飛車穴熊の隆盛を止めるには至らなかった[3]。振り飛車側からの策としては藤井システムが一時期猛威を振るったものの、これも居飛車側の対策が編み出されており確実な戦法とはなっていない。2013年現在、角道を止めている従来の振り飛車はこの居飛車穴熊により第一線から退けられている状態である。とはいえ、一目散に穴熊に組めば前述のような積極策に対し形勢を損ねてしまうのは事実であり、振り飛車の出だしによっては穴熊以外の囲いを選んだり、舟囲いからの急戦が有力である[4]

対角道を止める振り飛車[編集]

角道を止めている振り飛車に対して大抵の場合、居飛車陣は飛車先を伸ばしているために穴熊とのバランスは悪く、もし振り飛車側が馬を作り自陣に引き付ければ守備陣形に厚みができ、終盤の一手争いで玉が広くなることが予想され優位に立てる。端(攻め駒側)を突きあっているなら、香交換に持ち込みながら角を捌き攻勢に移れば振り飛車側がペースを握る。居飛車陣に浮き駒が多いときは、飛車交換に持ち込んだりするのも有効となる。

逆に言うなら、穴熊側が有利に戦うためには嵐のような攻めで圧倒することである。上記の文章のような戦い方になることも多いが、将棋は相対的なものであり居飛車側が自陣の飛車と敵陣の角を交換すれば、自陣に馬を作り相手の二枚の飛車の攻撃を穴熊プラス馬で受ける展開にもなりうる。

対四間飛車[編集]

1990年代以降、振り飛車の手順も洗練されており前述のような振り飛車側の積極策に無理せず対応できるよう理想的な四枚穴熊は放棄する[5]。居飛車側としては、振り飛車の飛車先が通っていなければ松尾流穴熊への組み替えを見せる駒組みをする(組みきれば勝率8割)ことで、振り飛車への牽制を行う[6]

先手が居飛車側の場合、後手が△4四銀~△5五歩などの動きを見せれば▲同歩△同銀から▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲3四歩と5筋で得た歩を用いて、相手の角を追いつつ飛車を捌く。四間飛車は角を4二に引けない(飛車がいる)為、角頭を攻めるのが居飛車の狙い筋となる。振り飛車が待機策に出た場合、居飛車側は▲7八飛から7筋の歩を手持ちにしたり[7]角を▲5九角~▲3七角[8]や▲2六角[9]と転換して使用するなどの打開策がある。

四間飛車側も穴熊に組む相穴熊の場合でも、飛車先突破を狙う為の狙い筋が大きく変わる訳ではない。四間飛車よりも銀を穴熊に引きつけやすい利点を活かし(四間飛車は飛車が邪魔して左銀を4二〜5三と使えない)、相手が穴熊に組む間に理想的な4枚穴熊へ囲いに行くことが1つの狙いである[10]

対三間飛車[編集]

3筋からの捌きに備えて、右銀を4八に保留し▲5六歩~▲5七銀と活用する2手を省略して穴熊の完成を急ぐ。対四間飛車のように4筋を右銀で受ける必要がない為安定して穴熊に組みやすいが、その分居飛車側から仕掛けるのが難しい。三間飛車側は中田功XP石田流への組み替えが狙い筋であるが、居飛車側は相手の陣形に右銀で圧力をかけつつ振り飛車側から動かさせて戦いを起こすのが狙い筋。石田流には▲6八角~▲4六銀と3五の地点にプレッシャーをかけていく。

相穴熊になった場合は互いに固め合うことが多い[11]

対中飛車[編集]

四間飛車のような藤井システムや三間飛車のような石田流への組み換えを持たない為、居飛車に四枚穴熊を許しやすい。しかし、四間飛車より銀を玉に引きつけやすい利点を活かした矢倉流が用いられている。

対角道を止めない振り飛車[編集]

21世紀に入り、すっかり主流になっている角道を止めない振り飛車の長所は居飛車穴熊に組まれにくい点である。しかし、それでも居飛車穴熊は有力な作戦とされている。

対ゴキゲン中飛車[編集]

従来ゴキゲン中飛車に対して、居飛車穴熊に囲うのは袖飛車にされて損と思われており、角道も止める為作戦負けになりやすいとされていた。しかし、袖飛車対策として▲8八銀を保留して、角の退路を確保するのが有効で居飛車も戦えることが分かってきた[12]。居飛車側は浮き飛車に構えたり▲8六角などと大駒を細かく使いながら袖飛車を警戒し[13]、揺さぶりをかけつつ手を作り玉型は松尾流穴熊を目指し、中飛車側も穴熊に組む相穴熊が有力視されている[14]

中飛車側は他にも石田流に組み替えたり[15]平凡に5四銀型から高美濃に組む形も有力であるが[16]、松尾流穴熊に堅さ負けしやすい[17]。また、△5四銀~△4五銀から△5六歩という一直線の攻めは▲6八角で無理筋となる[18]。先手中飛車に対しては、居飛車穴熊でも5筋の位を取らせるか否かで大きく意味が変わってくる。5筋の位を取らせた場合は袖飛車が厳しいとさせていたが[19]、居飛車側が勝つ例もあり難解である[20]

対石田流三間飛車[編集]

居飛車側がやや損とされるも、村田顕弘[21]野月浩貴らによって研究・実戦が重ねられている。石田流側に一方的な捌きや抑え込みを許さないのが肝要で、戦いさえ起きれば玉形の堅さと遠さを活かせる。特に先手が居飛車側の場合、後手は一手損で石田流に組む必要があり、その分穴熊に囲いやすいとされる。後手番でも千日手を視野に入れるなら、考慮する価値はある。

対角交換振り飛車[編集]

銀を8八−7七へと組み替え、へこみ矢倉の形から穴熊に組み替えることがある。常に相手の角の打ち込みに気を使うのが短所となる。

「居飛車穴熊戦法」訴訟[編集]

将棋の戦法「居飛車穴熊」の元祖が誰かをめぐり、支部名人戦優勝1回・赤旗名人戦優勝3回の実績を有するアマチュア強豪の大木和博が「考案したのは自分」として、プロ棋士の田中寅彦を相手に300万円の慰謝料の支払いと、元祖を名乗らないよう求めた訴訟。

1999年6月、一審の東京地裁は「二人とも元祖や創始者と呼ばれるにふさわしい」と指摘し、慰謝料支払いの請求を棄却。

2000年3月、二審の東京高裁も一審判決を支持した。

2001年2月22日最高裁第1小法廷は、同件を上告審として受理しないことを決定した(上告棄却)。この棄却決定により、二審の東京高裁判決が確定することとなった。

なお1968年の第27期名人戦(大山4-升田0)第2局で先手番の升田幸三実力制第四代名人が居飛車穴熊のコンセプト[22][23]を後手番の大山康晴十五世名人の四間飛車相手に実践していた。しかし、実際に居飛車穴熊を現代戦法として再編・体系づけてプロ棋士の間に大流行させて本格的な対振り飛車攻略として定着させたのは田中寅彦の功績である。小倉久史著下町流三間飛車戦法の一節によれば、当人のコメントとして「訴えられたから戦った」そうである。また、田中以前には西村一義が居飛車穴熊戦法を何度も実戦で採用しており、田中はこの西村にも少なからず影響を受けている。

脚注[編集]

  1. ^ 『現代に生きる大山振り飛車』p.125を参照。
  2. ^ 『四間飛車破り(居飛車穴熊編)』p.12を参照。
  3. ^ 『現代に生きる大山振り飛車』p.129を参照。
  4. ^ 『四間飛車破り(急戦編)』p.10を参照。
  5. ^ 『四間飛車破り(居飛車穴熊編)』p.47を参照。
  6. ^ 『四間飛車破り(居飛車穴熊編)』p.81,83を参照。
  7. ^ 『四間飛車破り(居飛車穴熊編)』p.242を参照。
  8. ^ 『四間飛車破り(居飛車穴熊)』p.164,234を参照。
  9. ^ 『四間飛車破り(居飛車穴熊編)』p.118,146を参照。
  10. ^ 『ホントに勝てる穴熊』p.178を参照。
  11. ^ 『ホントに勝てる穴熊』p.177を参照。
  12. ^ 棋譜。第22期竜王戦5組ランキング戦準決勝豊島将之戸辺誠戦を参照。
  13. ^ 『NHK将棋講座テキスト2011年4月号』p.63を参照。
  14. ^ 『ゴキゲン中飛車の急所』p.212を参照。
  15. ^ 『ゴキゲン中飛車の急所』p.208を参照。
  16. ^ 『ゴキゲン中飛車の急所』p.204を参照。
  17. ^ 『ゴキゲン中飛車の急所』p.212を参照。
  18. ^ 『ゴキゲン中飛車の急所』p.200を参照。
  19. ^ 『遠山流中飛車持久戦ガイド』p.104を参照。
  20. ^ 棋譜。第71期A級順位戦1回戦谷川浩司渡辺明を参照。
  21. ^ 『最新戦法マル秘定跡ファイル』第3章を参照。
  22. ^ 当時の棋戦解説では「珍しい左穴熊」と記された。
  23. ^ 棋譜は週刊将棋編「不滅の名勝負100」(毎日コミュニケーションズ)で確認できる。

参考文献[編集]

関連項目[編集]