中田功XP

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中田功XP(なかたいさおエックスピー)は、将棋三間飛車戦法。居飛車穴熊対策の戦法。コーヤン流と称されることもある(後述)。

プロ棋士中田功が創案し、島朗が自著『島ノート 振り飛車編』で紹介して広まった[1]。「XP」は同書が書かれた2002年当時、Windowsの最新バージョンであった「Microsoft Windows XP」から取ったものであり、この戦法を「中田功XP」と呼んだのも『島ノート』が最初である。

概要[編集]

居飛車穴熊は三間飛車を含む振り飛車の天敵と言われてきた。従来のように、振り飛車側が美濃囲いに組んでから攻め合う展開においては、居飛車側の穴熊の堅さと遠さが生きる展開になることが多かった。

もちろん、他の振り飛車勢も穴熊によって衰退を余儀なくされていたが、四間飛車においては「藤井システム」の開発により居飛車穴熊対策が進むことになる。しかし、三間飛車にはなかなか穴熊への対抗策が現れず、同じ振り飛車でも穴熊への明確な対策がある藤井システムへ移ったりした[2]

そこに、三間飛車を得意とする中田功が一石を投じた。要点としては、玉将を美濃囲いに収めず3九に留め(後手番の場合は6二)、端攻めと角行の利きを両用して穴熊を崩す。玉を美濃囲いに収めないのは、駒組みの手数を削減して素早く攻撃陣を整備するため、そして何より、端攻めを行った際の反動を見越して自玉を戦場から遠ざけておくためである。

島朗はこの戦法が優秀なものであると認識しており、著書『島ノート』で取り上げ、「居飛車穴熊さえ克服できれば、三間飛車は最強の戦法になりうる」(同書153頁)、「三間飛車で居飛車穴熊を粉砕する画期的な新戦法」(同書154頁)と評価している。

第31期竜王戦において藤井聡太四段が36手目5五歩という新手を披露した。この手が中田功XP対策の決定版となり、現在のプロ棋戦では同戦法は用いられていない。

「中田功XP」と「コーヤン流」[編集]

中田の三間飛車は、ニックネームを取って「コーヤン流」と呼ばれる。この場合の「コーヤン流」は中田功XPに限らず、中田の棋風による三間飛車全般を指して呼ばれることが多い。コーヤン流では相手が駒組みに入る前に仕掛ける超急戦の変化や、穴熊に組ませてから対応する持久戦の変化まで考えられ、単なる穴熊崩しだけではない[3]。 「中田功XP」という名称が島朗が自著で解説するためにつけられた造語である[4]。「中田功XP」という表現はあまり用いられず、中田功XPを含んだ「コーヤン流」の表現が多く用いられている[5]

脚注[編集]

  1. ^ 島朗『島ノート 振り飛車編』153- 162頁。
  2. ^ 藤井猛は「いまの居飛車党は三間飛車に対しては穴熊さえ知ってれば対応できる」と発言したことがあるという(勝又『最新戦法の話』232頁)
  3. ^ 2003年発行の中田功本人の著書である『コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編』では、「3枚穴熊なら端攻め、4枚穴熊なら中央制圧」を「基本路線」としている(16頁)。
  4. ^ 『島ノート』でも中田功XPについては9ページ分の解説にとどまっている。
  5. ^ 勝又清和『最新戦法の話』(2007年)でも7一玉型による三間飛車の居飛車穴熊対策にも言及しているが(241頁)、「中田功XP」という名称は用いていない。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 島朗『島ノート 振り飛車編』(講談社、2002年12月、ISBN 978-4062116336
  • 中田功『コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編』(毎日コミュニケーションズ 、2003年4月、ISBN 978-4839909406
  • 中田功『コーヤン流三間飛車(実戦編)』(毎日コミュニケーションズ、2004年9月、ISBN 9784839915872
  • 勝又清和『最新戦法の話』(浅川書房、2007年4月、ISBN 9784861370168)※「コーヤン流」として1章を割いて紹介されている