面ファスナー
面ファスナー(めんファスナー)は、面的に着脱できるファスナーである。布に特殊な加工をし、主に衣類用に、再び脱着可能な状態で結合したい場合に用いられる。商標に由来する俗称としてマジックテープ (Magic Tape)、ベルクロ (Velcro) がある。
名称
日本では、一般にマジックテープとして知られ、株式会社クラレがこの商標で1960年から製造、販売している。
ベルクロ (Velcro) も商標である。ベルクロはフランス語の velour(ビロード)+ crochet(鉤)の合成語である。商標権者は、1952年にスイスで Velcro S.A. として設立され、現在はアメリカ合衆国ニューハンプシャー州マンチェスターを根拠地とする、ベルクロUSA社(Velcro USA Inc.)である。
商標でない名称としては、面ファスナー以外にもパイルアンドフックがあり、ミリタリー関係で用いられている。英語では hook-and-loop fastener とも呼ぶ。
概要
もっとも一般的な面ファスナーは、フック状に起毛された側とループ状に密集して起毛された側とを押し付けるとそれだけで貼り付くようになっており、貼り付けたり剥がしたりすることが自在にできる。
それ以外にも、フックとループ両方が植え込まれており、フック面とループ面との区別のないタイプ(フック面とループ面との取り付け間違いが起きない)やマッシュルーム状に起毛されていて結合力が強いクリックタイプ、鋸歯状のシャークバイト(鮫歯)タイプなどバリエーションがある。
歴史
面ファスナーは、スイスのジョルジュ・デ・メストラル (George de Mestral) が1941年にアルプスを登山したとき、自分の服や愛犬に貼り付いた野生ゴボウの実にヒントを得て、1948年に研究を開始した。1951年に特許出願し、1955年に認定された。
1952年にはスイスに Velcro S.A. が設立され、面ファスナーを生産する一方で、各国企業にライセンスしたり現地法人を設立したりしてベルクロの名で生産させた。
日本では日本ベルクロ(現在のクラレファスニング)とYKKをはじめとした会社で製造している。
利用例
- アメリカ陸軍の戦闘服
- 従来、国籍章、階級章、部隊章、名前などのワッペンはミシンで戦闘服に縫い付けられていた。戦闘服はその性格上頻繁に洗濯されるが、丈夫な戦闘服は頻繁な洗濯に耐えてもワッペンが傷みやすく、ワッペンを取り替える手間とコストがかかってしまう。現代のアメリカ陸軍戦闘服においては、洗濯時にワッペンだけを取り外せるように、ワッペンは面ファスナーで戦闘服に貼り付けるようになっている。この影響を受けて、世界各国の戦闘服にも各部分に採用される傾向が強くなってきている。日本では自衛隊の戦闘服も現在は面ファスナーが多用されている[1]。
- 宇宙機
- NASAで宇宙用の面ファスナーが開発され、広く使用されている。アポロ宇宙船では無重量の宇宙空間で物を壁や計器板に固定しておくのに使われた。また、無人機の外側を覆う断熱シートなどを留めるためにも使われている。
関連項目
脚注
- ^ 主にポケット類・袖口・襟元やネーム類に使用されているが、米軍等と違って階級章は縫い付ける必要がある