ウェストコート
ウェストコートは、男性の洋装において上衣の下に着用して胴体部分を覆う被服である。主に正装や礼装用の上着、或はスーツの下に着る、袖の無いベストを意味する。チョッキや胴着、胴衣とも呼ばれている。
目次 |
[編集] 来歴
17世紀後半以来紳士服はジュストコール(上着)、長袖のベスト、キュロット(半ズボン)、クラヴァット(ネクタイの原型)から構成されていたが、18世紀に入るとジュストコールが細身になり、ルイ15世の時代にはベストの袖が無くなった。そして、この袖の無いベストが ウェストコート(Waistcoat)(フランスではジレ(gilet))と呼ばれるようになった。
詳細は「ベスト」を参照
現在では、単に「ベスト」といえば、男女問わず丈が短めで袖が無い上着の下に着る胴着という意味で用いられることが多い。毛糸で編まれたウェストコートと同じ形のもの(ニット系ベスト)は「チョッキ」とも呼ばれ、主に普段着の防寒用として使用される。また、ジレー(gilet)と呼ばれる装飾的な前飾りをつけた婦人用の胴着もある。
[編集] 特徴
ウェストコートを着用するときは、伝統的にはベルトを用いず、サスペンダー(ズボン吊り)を用いていた。
最も典型的には正面を縦1行で5ないし6個のボタンで留め、前身の生地は背広と同じもの、後身の生地は裏地同様のものか、表地と同様の物が用いられる形状である。襟部分は折返し襟がないものと折返し襟があるものとがある。ウェストコートは背広(ダークスーツなどの折襟や、マオカラースーツなどの立襟)の種類やブレスト(シングル・ダブル)や礼服の種類、無地かストライプの有無、スーツの色、ボタンの数とVゾーンの深さによって外観が異なる。
背広は2つ掛け以上の場合は最下部のボタンを外すのが正式。ウェストコートは5つ掛けなら全てボタンを掛け、6つ掛け以上ならボタンが一直線に並んでいる状態なら全て掛け、最下部のボタンが離れているなら最後のボタンは掛けないで外しておく。カーディガンの場合も同様にする。ボタンとボタンの間隔は5センチ(体型により上下する)。
2つボタンのスーツの場合は第一ボタンをかけた状態でヴェストの上のボタンが二個のぞくくらい、三つボタンの場合は一個~一個半覗くくらいで仕立る。ダブルスーツの場合はシングル・ダブル問わずにウェストコートを見せないとされている。
一番下のボタンは外して着用するのが正しいが、燕尾服等夜間の礼装の内着として用いられる物(一般的にボタンが3ないし4個と少なく、ゆえにVゾーンが深いデザインとなる)は、全てのボタンを留めるのが通例となっている。
股上が深いスラックスの場合は、ウェストコートの丈を短くし、股上が浅いスラックスの場合、丈を長くする必要がある。ベルトとサスペンダーを共用する場合は、スラックスの股上を浅くしウェストコートの丈を長くする必要がある。
[編集] 用いられる衣服
正装・礼装に於いては燕尾服、フロックコート、モーニングコート及びディレクターズスーツ等の下にウェストコートを着用するのが正式とされている。TPOにより共布、黒、灰、白が用いられる。ブラックタイ(夜間の準礼装)の場合はウェストコートの代わりにカマーバンドを着用する。
最近の軍服では、ドレスコードがホワイトタイ(燕尾服)の場合はウェストコート、ブラックタイ(タキシード)の場合はカマーバンドを同じメスジャケットの下に着用するよう規定されている場合もある(例:アメリカ陸[1]・海軍[2]・海兵隊、イギリス海軍)。
また、ウェストコートはスーツ、ズボンと共に男性の3つ揃い(スリーピースともいう)を構成し、ワイシャツ・ネクタイの上、上着の下に着用される。第二次世界大戦前後を境に余り着用されなくなった(ツーピースという)。
伝統的にはウェストコートは紳士の服装に必須のものと考えられ、例えば1914年2月28日以前の日本海軍の将校服制では、決して胴衣部分が見えない立襟型の正服等においても「胴衣」という名称でウェストコートの着用が定められていた(「軍服 (大日本帝国海軍)」を参照)。
[編集] 参考資料
- 佐々井 啓、水谷 由美子ほか 『ファッションの歴史―西洋服飾史 (シリーズ「生活科学」)』 佐々井 啓、朝倉書店、2003年4月。ISBN 978-4-254-60598-3。
- ハーディ・エイミス 『ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服』 森 秀樹訳、大修館書店、1997年3月。ISBN 978-4-469-24399-4。