郵便事業

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郵便事業株式会社
Japan Post Service Company, Limited
郵便事業株式会社本社(日本郵政ビル)
種類 株式会社
市場情報 非上場
略称 日本郵便
本社所在地 日本の旗 日本
100-8798
東京都千代田区霞が関一丁目3番2号
(日本郵政ビル)
設立 2007年10月1日
業種 陸運業
事業内容 郵便事業、国際・国内物流事業
代表者 代表取締役社長鍋倉眞一
資本金 1,000億円
売上高 1兆7,798億7,000万円
(2011年3月期)
営業利益 △1,034億7,300万円
(2011年3月期)
純利益 △354億3,500万円
(2011年3月期)
純資産 1,915億4,600万円
(2011年3月期)
総資産 1兆8,634億3,300万円
(2011年3月期)
従業員数 94,110名(2010年3月31日現在)
決算期 毎年3月31日
主要株主 日本郵政 100%
主要子会社 日本郵便輸送
JPエクスプレス 86%
外部リンク http://www.post.japanpost.jp/
特記事項:経営指標は全て2008年3月期決算より。
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郵政省時代のホーロー看板
「JP 日本郵便」のステッカーが貼り付けられた郵便ポスト
郵便配達用自転車

郵便事業株式会社(ゆうびんじぎょう)は、東京都千代田区に本社を置く、郵便事業を運営する日本の会社である。愛称は「日本郵便」(英語表記の愛称はJP POST)。「郵便事業会社」ともいう。コーポレートカラーは「ゆうびんレッド」。

概要

2005年(平成17年)10月21日に公布された郵政民営化関連6法の中の郵便事業株式会社法で規定されている、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むことを目的とする株式会社(特殊会社)として民営化当日の2007年(平成19年)10月1日、グループの持株会社である日本郵政株式会社により、郵便局株式会社とともに設立され、旧日本郵政公社から主に郵便事業等並びに所要の施設・職員等を承継した。

日本郵便では郵便の取集、区分、差し立て、配達並びにゆうゆう窓口に係る業務を行い、郵便の窓口業務は日本郵便の単独店及びゆうゆう窓口を除き郵便局会社が担当する。

初代の最高経営責任者(CEO)兼会長北村憲雄トヨタ自動車奥田碩取締役相談役が日本郵政の社外取締役となった関係でイタリアトヨタ会長から抜擢された。最高執行責任者 (COO) 兼社長團宏明は、旧公社副総裁兼日本郵政副社長として民営化の準備にあたり、会社設立とともにいずれも退任して“社業”に専念している。

2009年(平成21年)11月20日付で、團が退任し、團と同じく旧郵政省出身で、総務審議官を経て、在ハンガリー大使であった鍋倉眞一が社長に就任した。北村憲雄会長は留任となったが、事実上CEO職からは解かれたことから、2010年(平成22年)3月末を以て、会長職を辞任した。

愛称の「日本郵便」はこの企業が提供する郵便サービスの愛称でもある。なお、郵便切手の表面に「日本郵便」と表示されているように、「日本郵便」の語そのものは日本政府直営の時代から使用しており、郵政民営化以降に新たに用いられたものではない。

また、2012年(平成24年)5月に「郵政民営化法等の一部を改正する等の法律」(平成24年5月8日法律第30号)が公布された(完全施行は公布から1年以内)。この法律が完全施行されるとき、郵便事業株式会社は郵便局株式会社に吸収合併されて消滅し、郵便局株式会社は名称を日本郵便株式会社と改める。

沿革

支社

なお、和歌山県北山村は民営化時点では東海支社のエリアであったが、村内の集配事務を行っている大沼集配センターが2008年11月1日より東海支社熊野支店から近畿支社紀伊勝浦支店の管轄に変更されたことにより、例外扱いは解消された。

統括支店・その他の支店と集配センター

民営化に向けた施策の一環で旧公社時代から集配拠点の再編を行っている。それが集配郵便局の「統括支店・支店」化と「集配センター」化で、4,696(2006年6月現在)あった集配局を、統括支店・支店(民営化前の統括センター)1,093と、集配センター(民営化前の配達センター)1,048に統廃合した。これは集配郵便局が分社化で郵便局会社と郵便事業会社に分離されたのと、郵便事業会社の効率化を行う必要があったからである。

統括支店や支店では、郵便物の区分や取集・配達作業を行い、集配センターは統括支店や支店で配達順に区分された郵便物の配達を行う。しかしながら、統括支店・支店にならなかった郵便局ではゆうゆう窓口の廃止や、営業時間の短縮といった影響が出てきている。なお、集配センター域内で郵便ポストに投函しても消印は支店のものとなるため、広域な配達区域を持つ支店の場合、どの市町村で投函されたのか判らないことも生じる。

また、地形上の理由・運送上の理由により、他県の支店が管轄している場合がある。

  • 青森県十和田市のうち十和田湖周辺(018-55XX、秋田県花輪支店
  • 群馬県吾妻郡嬬恋村のうち鎌原小字高峰高原(384-0097、長野県小諸支店)
  • 群馬県安中市のうち松井田町峠(389-0121、長野県佐久支店)
  • 愛知県北設楽郡豊根村のうち富山(431-41XX、静岡県天竜支店)
  • 三重県桑名郡木曽岬町(498-XXXX、愛知県弥富支店)
  • 京都市左京区のうち久多(520-04XX、滋賀県堅田支店)
  • 兵庫県伊丹市のうち小阪田小字食田(563-0801、大阪府池田支店)
  • 大阪府三島郡島本町(618-XXXX、京都府山崎支店)
  • 大阪府東大阪市のうち上石切町の一部・山手町の一部(632-02XX、奈良県生駒支店)
  • 三重県熊野市のうち紀和町上川地区・奈良県吉野郡十津川村のうち竹筒・瀞地区(647-1XXX、和歌山県紀伊勝浦支店)
  • 奈良県吉野郡野迫川村の大半(648-03XX、和歌山県橋本支店)
  • 島根県隠岐諸島(684-0XXX及び685-XXXX、鳥取県米子支店)
  • 長崎県壱岐市・対馬市(811-5XXX及び817-XXXX、福岡県新福岡支店)
  • 長崎県松浦市のうち福島町(848-04XX、佐賀県伊万里支店)
  • 福岡県築上郡吉富町(871-XXXX、大分県中津支店)
  • 福岡県築上郡上毛町(871-0XXX、大分県宇佐四日市支店)
  • 福井県あわら市のうち吉崎(922-06XX、石川県加賀支店)
  • 石川県羽咋郡宝達志水町のうち沢川(939-01XX、富山県高岡支店)
  • 長野県下水内郡栄村のうち秋山郷地区(949-83XX、新潟県十日町支店)

かつては、下記の地域でも地形上の理由・運送上の理由により、他県の支店が管轄していた。

民営化後は統括センターは70の「統括支店」、1,023の「支店」に分けられ、配達センターは支店の下に属する「集配センター」に組織変更された。

なお、ゆうちょ銀行かんぽ生命保険では支社を設けず各地域に直営店をその代わりとして設置したが、郵便事業会社は郵便局会社とともに旧公社からそれぞれ支社を引き継ぎ、「本社-支社―統括支店―支店―集配センター」の4ないし5階層の組織となっている。地域によっては、統括支店が直接集配センターを統括する場合もある。

2010年7月1日付でJPエクスプレスの事業を譲受したことに伴い、ゆうパック専門の拠点となる「ターミナル支店」が新たに設置されたが、当該拠点にはゆうゆう窓口は設置されず、ターミナル支店自体の多くも2011年8月28日に廃止となった(下記「民営化後に新設された支店」参照)。

民営化後に支店が郵便局との同居形態から分離したケース

民営化後に郵便局が支店との同居形態から分離したケース

民営化後に支店、集配センターが廃止されたケース

2010年7月1日に新設されたターミナル支店については、後述。

民営化後に支店の名称が変更されたケース

民営化後に管轄の支店が変更された集配センター

  • 北海道・日高集配センター:富良野支店(北海道)→苫小牧支店(北海道)
  • 和歌山県・大沼集配センター:熊野支店(三重県)→紀伊勝浦支店(和歌山県)
  • 茨城県・石下集配センター:下館支店(茨城県)→下妻支店(茨城県)

民営化後に新設された支店

以下は、JPエクスプレスの事業の譲受に伴い、2010年7月1日に新設されたが、2012年5月現在、埼玉ターミナル支店のみ郵便事業新岩槻支店として存続。千葉西ターミナル支店は2012年2月12日、それ以外は2011年8月28日にすべて廃止。

また、上記の他にも、同様の経緯により2010年7月1日をもって日本通運・JPエクスプレスから郵便事業に承継されたターミナル施設で、単独の支店ではなく近隣の統括支店の「分室」等として開設されたものもあったが、これらの多くも2011年8月28日以降廃止となった。

日本通運との事業統合について

民営化から間もない2007年10月5日、日本郵政と宅配便業界第3位の日本通運が、宅配便事業の統合を含めた包括的な業務提携を結ぶことで合意し、基本合意書を締結したことを発表した[1][2]

その時点での合意事項は以下の通り。

  • 2009年4月1日を目処として郵便事業会社と日通の出資により新会社を設立し、両社の小包・宅配便事業(「ゆうパック」「ペリカン便」)を移管
  • 出資比率とブランドの扱いについては法人発足までに日本郵政と日通の間で調整
  • 日本郵政と日通の間で相互に株式を持ち合うことも検討

2008年8月28日には、株主間契約の締結について合意に達したことが発表された[3]。それによると、

  • 既に折半出資で設立(2008年6月2日付)されている「JPエクスプレス株式会社」を承継会社とする吸収分割により2009年4月1日に「ゆうパック」事業と「ペリカン便」事業を統合する。
  • 出資比率は郵便事業66%、日本通運34%とする(2009年4月1日時点)。

この事業統合の狙いは、効率化を図り業界内での競争力を高め、圧倒的なシェアを誇るヤマト運輸佐川急便と対抗する点にある。両社は旧公社時代からコンビニエンスストアでの「ゆうパック」の集荷やスキー・ゴルフ用具の配送などで連携してきた経緯がある。

日本郵便は全国各地の郵便局ネットワークを生かした物流網を持ち過疎地などでの配送に強い一方、郵政三事業が解体されたことで貯金・保険の儲けで郵便の赤字を埋めることができなくなり、新たな収益源を求めていた。他方、日通は企業向けの配送に強いが宅配便事業では遅れをとり、会社全体の足を引っ張る格好となっていた。今回の統合は互いの長所で互いの短所を埋め合わせるものとなったが、ヤマト運輸などは民営化された現在でも「民業圧迫だ」としてJPグループを批判しており、公正取引委員会などに異議申し立てが行われた場合、統合が白紙撤回される可能性もあるだけに今後具体化される統合計画の中身が注目されている。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の場合と異なり、郵便事業・郵便局に関しては現時点では完全民営化の予定は無く、一定の割合で国が関与することになっている。

しかし、システム統合などに手間取ることから、2009年4月1日のJPエクスプレス (JPEX) の事業開始時点では、日通の当該部門のみを移管し、JPEXでの約半年間の暫定ブランドとして「JPエクスプレス宅配便・ペリカン便」を使用し、2009年5月末までを目処に統一ブランド名を設定した上で(ただし、2009年5月31日時点で、統一ブランドを含めた10月以降の対応については公表されていない)、2009年10月1日までに郵便事業側の荷物の部門を移管し、「JPエクスプレス宅配便」としての統合ブランドでサービスを行うことを予定していたが、2009年9月11日の時点で総務大臣の裁定が見込めないことから、同時点では統合スケジュールは未定となっていた。ただし、2009年10月より、ペリカン便に関わる一部の集配業務を郵便事業が受託する方式をとる形となったため、それを統括するJPエクスプレスの「広域支店」という組織が新たに各地に配置され、概ね郵便事業の統括支店(一部地域では、JPEXのターミナル店である「統括支店」)に併設されていた。なお、北九州支店や川崎港支店など、郵便事業の統括支店であっても、JPEXの広域支店を併設せず(かつ、JPEXの統括支店にも併設しない)、別の郵便事業統括支店に併設された広域支店が管轄(北九州支店の集配エリアであれば、新福岡支店に併設する「福岡統括支店福岡広域支店(福岡)」、川崎港支店の集配エリアであれば、横浜神奈川支店に併設する「神奈川統括支店神奈川広域支店(横浜)」がそれぞれ管轄する、等)する事でカバーするケースもあった。

その後、統合のスキームは、JPEXの事業を郵便事業会社に統合する形に変更され、2010年7月1日付でJPEXの宅配便事業と郵便事業の「ゆうパック」との統合を実施。同年8月31日付でJPEXは解散し、清算法人に移行した。

詳細はJPエクスプレス及びゆうパックを参照。

郵便物輸送委託会社

郵便物の輸送は、国営当時から郵便物運送委託法等に基づき各地の輸送機関への委託が行われていた。郵便自動車最大手だった日本郵便逓送は、太平洋戦争勃発に伴う戦時体制下で郵便トラック事業者の統合が進められ、1942年に発足したもの。民営化後に子会社化が図られ、完全子会社である日本郵便輸送となった。また、日本郵政公社時代の2003年4月からは委託業者選定に競争入札を導入し[4]、応札内容の審査についても価格面を重視する方針とした[5]。その結果、新規参入事業者の増加を見ている[6]

委託事業者の状況については、関連法人に関する日本郵政株式会社の報道発表資料[7]及び各事業者の公式ウェブサイト等も参照。

おもな輸送委託会社

過去に存在した輸送委託会社

  • JPエクスプレス(一部地域でのゆうパックの集配業務[8])(2010年8月31日解散)
  • 日本高速物流(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 東北高速道郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 東京郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 千葉郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 関東郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 神奈川郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 北陸高速道郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 東海高速郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 北海道高速郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 大阪郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 近畿高速郵便輸送(2008年6月30日解散)
  • 大阪エアメール(2008年6月30日解散)
  • 中国高速郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 四国高速道郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 九州高速郵便輸送(2009年1月1日付で日本郵便逓送に合併)
  • 鹿児島郵便逓送(いわさきグループ。2004年3月解散[9]。同グループの千石西濃運輸が業務を承継)

提供番組

各年度業績

(単位:億円) [10] [11] [12] [13] [14]

決算期 営業収益 営業利益 経常利益 法人税 純利益
2008年3月 10,536 1,037 1,137 431 694
2009年3月 18,652 448 589 268 298
2010年3月 18,130 427 569 241 △474
2011年3月 17,798 △1,034 △890 △529 △354

平成22年3月期の利益が474億円の損失となっているのはJPエクスプレス株式の評価損及びJPエクスプレスに対する融資等に係る貸倒引当金繰入額等を特別損失として計上したことによる[15]

関係項目

脚注

  1. ^ 日本郵政株式会社と日本通運株式会社との基本合意書の締結に関するお知らせ日本通運・2007年10月5日
  2. ^ 日本郵政株式会社と日本通運株式会社との基本合意書の締結について日本郵政・2007年10月5日
  3. ^ 郵便事業株式会社と日本通運株式会社との宅配便事業統合に係る株主間契約締結に関するお知らせ郵便事業・2008年8月28日
  4. ^ 2003年6月18日付日本経済新聞の記事より。
  5. ^ 2003年7月15日付日本経済新聞の記事より。
  6. ^ 2003年8月9日付朝日新聞の記事より。
  7. ^ 2007年11月13日付プレスリリース「『郵政事業の関連法人の整理・見直しに関する委員会』第三次報告について」及び2010年5月7日付プレスリリース「いわゆる『ファミリー企業』と報じられている法人への対応について」を参照(いずれも2012年5月26日閲覧)。
  8. ^ 上記のように郵便事業に対しペリカン便に関わる集配業務の一部を委託していた他、事業統合が進捗していない段階では、都市部等、従来より郵便事業が委託を行っていた地域を中心に、郵便事業からのゆうパック集配業務の受託も行っていた。
  9. ^ 2004年3月18日付西日本新聞の記事より。
  10. ^ 第1期は平成19年10月1日から平成20年3月31日までである。
  11. ^ 第1期決算公告[PDF]
  12. ^ 第2期決算公告[PDF]
  13. ^ 第3期決算公告[PDF]
  14. ^ 第4期決算公告[PDF]
  15. ^ 平成22年3月期 郵便事業株式会社決算概要.pdf

外部リンク