ザクI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Nnken (会話 | 投稿記録) による 2016年1月19日 (火) 07:08個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎機体名: 誤字)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ザクI (ザク・ワン、ZAKU I)は、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器モビルスーツ」(MS)の一つ。初出は、1979年放送のテレビアニメ機動戦士ガンダム』。

作中の敵側勢力である「ジオン公国軍」の量産機で、後継機の「ザクII」に主力の座を譲った旧式機という設定。機体色は主に藍色と濃緑色。『機動戦士ガンダム』劇中では「ガデム」大尉の乗機として登場し、テレビアニメを再編集した劇場版第三作『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』では端役として登場する。

『機動戦士ガンダム』劇中ではザクIIと一括して「ザク」と呼ばれるが、基本的にはザクIIの方を指す場合が多いため、設定資料やプラモデルガンプラ)などの商品パッケージには「旧ザク」(きゅうザク)と表記され区別されていた。「ザクI」「ザクII」の呼称は、さらに後年に発表された書籍などで後付けされた呼称である(詳細は後述)。

メカニックデザイン大河原邦男

当記事では、各バリエーション機の解説も記述する。ザクII直系の発展機については当該項目を参照のこと。

機体名

『機動戦士ガンダム』第3話「敵の補給艦を叩け!」で補給艦パプア」の艦長ガデムが搭乗したのが本機の初出であり、また同番組中では唯一の登場エピソードである。劇中では本機に対して特有の名前も背景説明もなく、シャア・アズナブル少佐がガデムに対して「貴様のザク」と呼ぶのみであった。番組オンエア当時の講談社『月刊テレビマガジン』、放映終了後1980〜1981年にかけて制作編集され1981年前半に発行された書籍『講談社ロボット百科シリーズ 機動戦士ガンダム』(講談社)、『機動戦士ガンダム大百科』(ケイブンシャ)では、愛称は「ザク(旧タイプ)」、型式番号はザクIIと変わらない「MS06」(エムエスゼロロク)と一貫した統一表記で紹介、その用途を「作業用」としていた。

1981年9月発行の『ガンダムセンチュリー』(みのり書房)にて、「MS-05」という本機独自の型番と開発背景設定が創作され、「MS-05ザクI」「MS06ザクII」という呼称区別が確立した[1]。この設定は『コミックボンボン』(講談社)に連載され後に単行本化、プラモデル商品化に至るコンテンツ『MSV』シリーズや、1982年に発行される大河原邦男のオリジナルイラスト及びモデラー集団ストリームベースの作例集『リアルタイプカタログ』(講談社)の内容でも小田雅弘らにより準用されて記事の執筆がなされ、定着していくことになる。

シリーズアニメ作品中では、ほぼザクと呼ばれる。OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話では、映像作品内では初めて「ザクI」と呼ばれた。

『機動戦士ガンダム』公式ページでは「旧ザク」、「MS-05 ZAKU I」が併記されている[2]。『機動戦士ガンダム第08MS小隊』公式ページでは「ザクI」のみ記載されている[3]。漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の「公式ガイドブック」での記述は「旧ザク[4]」と「ザクI[5]」の双方が使用されている。

『機動戦士ガンダム』放送後に設定された劇中の時系列では、開発当初はザクと呼ばれていた[6]が、MS-06が開発されたことにより、MS-05をザクI、MS-06をザクIIと区別されるようになった[7]

商品化の際『機動戦士ガンダム』放送直後は、旧ザク旧型ザクと呼ばれたが[8]、ザクIの設定が浸透し、近年はザクIと呼ばれることが多い[9]

機体解説

諸元
ザクI(旧ザク)
ZAKU I
型式番号 MS-05B
所属 ジオン公国軍
製造 ジオニック社
生産形態 量産機
全高 17.5m
本体重量 50.3t
全備重量 65t
装甲材質 高張力スチール
出力 899kW
推力 40,700kg
センサー
有効半径
2,900m
武装 105㎜ザクマシンガン
120㎜ザクマシンガン
280mmバズーカ
ガス弾銃[3]
ヒートホーク
Sマイン
搭乗者 ガデム
ランバ・ラル
トップ
黒い三連星
エリオット・レム
ジオン公国軍一般兵
諸元
ザクI(旧ザク)
(『ガンダムセンチュリー』での非公式設定)
所属 ジオン公国軍
製造 ZIONIC社[10]
生産形態 量産機
全高 17.5m
本体重量 34.2t
全備重量 63.2t
装甲材質 超硬スチール合金
出力 4,300kW(5,700馬力)
推力 210,400kg
武装 105mmマシンガン(弾数100)
280mmザク・バズーカ
GGガス弾
ヒート・ホーク
搭乗者 ジオン公国軍一般兵士

ジオン公国軍は、地球連邦軍との開戦に向けて本格的な軍事用MSの開発を決定した。量産型MSの正式採用に際して競作が行われ、ジオニック社は先に開発した試作機 (MS-04) を大幅に改良、量産化を見据えて装備類を簡略化した「YMS-05 ザク」を提出した。一方、ツィマッド社はそれよりも高性能な「EMS-04 ヅダ」を開発したが、トライアル中に空中分解事故が発生、その結果安定した性能を発揮したザクが採用された。OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話の劇中では、この決定にはジオニック社の政治的な働きもあったとの主張が台詞として語られている。

宇宙世紀0074年2月に試作機が完成、翌年7月に量産化が決定し、8月には第1号機がロールアウトしている。開発にはジオニック社からジオン公国軍に佐官待遇で出向したエリオット・レムが携わっている[11]。 宇宙世紀0075年11月には初期生産型 (MS-05A) 27機によって教導大隊が編成。グラナダに配備され、開戦に向けての搭乗員育成や戦技研究、各種試験が行われ、MSという兵器体系を確立。このデータを基にコクピット、装甲の材質・形状などの一部改良を施され、MS-05Bとして本格的な量産化が行われ、総生産数は793機に及んだ。なお、これらの数字や設定などは『MSV』などで語られた後付設定で、例えば『ガンダムセンチュリー』では初期生産型27機のロールアウトは宇宙世紀0076年5月となっており、いずれにせよ非公式なものである。

しかし機体各部の動力パイプをすべて装甲内へと内蔵したことやジェネレーター出力の低さから十分な運動性能を発揮することができなかった[3]。その結果、出力向上と冷却装置の強化、それに伴い性能全般が向上した「MS-06 ザクII」が完成、この機体と区別するためMS-05は「ザクI」と呼ばれるようになった。本機はザクIIの登場で開戦時には二線級兵器となっていたものの[3]、ザクIIの配備数の少なさから、生産されたほぼすべての機体が実戦参加した[3]。ザクIIの配備が進むと、補給作業などの二線級任務に回されることとなる。ただし、大戦後期になってもザクIを継続して愛用したベテランパイロットも多く、最終決戦の舞台となったア・バオア・クーでも新鋭機と共に配備され、実戦参加している。また地上戦線にも数の不利を補うべく多数が投入された[3]

武装

ザクIの標準装備としては以下のものがある。

105mmマシンガン
電気作動方式の専用マシンガン。型式番号はZMP-47D[12]。試作型のものとは異なり、ドラム式マガジンは横付けとなっている。
MS-06の120mmマシンガン(ザク・マシンガン)と異なり、円盤型マガジンが銃体機関部の上面水平でなく右側面垂直装着となっている。装弾数は145発。宇宙空間での使用を前提として開発されたため重力下での使用では給弾に不具合が発生する恐れが指摘されていたが、のちに問題ないことがわかった[13]
デザインの初出は『講談社ポケットカード(8)機動戦士ガンダム/モビルスーツカード』で大河原邦男が描きおろした「旧ザク」の手にしている「旧ザク用120mmマシンガン」である。しかし、ザクのデザイナーである大河原自らが描いたにも関わらずこの「旧ザク用」のマシンガンの口径が120mmという設定は失伝してしまい、その外観デザインはそのままに『ガンダムセンチュリー』が記す「105mm」という設定が代入されて以後継承されていった。1989年発行の『ENTERTAINMENT BIBLE.1機動戦士ガンダムMS大図鑑【PART.1一年戦争編】』(バンダイ)でもMS-05のマシンガンは105mm、MS-06のマシンガンはその破壊力向上させた120mm、と記し分けられている。「MS-05」「旧ザク」「ザクI」のマシンガンが120mmという設定が再び登場するのは、2000年代に入ってからであり、プラモデル1/100マスターグレードシリーズの付属解説書等で言及されるようになる。MS-05用マシンガンの口径105mm、120mmをめぐる設定重複ないし矛盾については、開発当初は口径105mmの砲弾だったが、開戦直前にはより高い攻撃力が求められ口径120mmへとボアアップされている、という説明で解決がはかられた。なお、この105mmマシンガンが映像作品内で登場したのは、『MS IGLOO』シリーズ(2004〜2006)が初であり、それ以前、セルアニメーション作品には一切登場していない。『機動戦士ガンダムIIIめぐりあい宇宙』で使用していたのはMS-06用の120mmマシンガン、『機動戦士ガンダムZZ』で使用していたのはRMS-106用の「新型ザクマシンガン改」である。また105mmマシンガンは『MS IGLOO』でザクIの他に、ジオン軍試作機動戦車ヒルドルブが本銃のショート・バレル・カスタムを鹵獲のうえ装備[12]した例がある。
280mmバズーカ
対艦攻撃用装備。砲弾は先込式で[14]開戦当初は核砲弾も用いられたともいう[15]。射出の際、反動で肩関節へ負荷が掛かることがあったため、予備右肩部にはバズーカラックが増設されている。発射ガスを後方に逃すバズーカでは反動はほとんどないはずであるが、MSVやHGUCインストの記述では負荷云々の記述がある。ただし、この装備は劇中未登場の非公式なもの。
ヒート・ホーク
白兵戦用装備。開戦当初は対MSより、敵の艦や戦闘機に肉迫した際に使用された。これはザクIIでも継続して採用されている。一方では、開発されたのはMS-06Aのロールアウト以降とする説もある。
Sマイン
対人近接防御兵器。機体各所から発射され空中で爆発、小型鉄球の雨を降らせて至近に迫った敵兵を駆逐する。『第08MS小隊』第8話のトップ機が装備していた。後の映像作品では陸戦型ザクIIも装備している。モデルになったのは第二次大戦でドイツ軍が使用した跳躍地雷S-マイン」。
その他
『第08MS小隊』第6話の回想シーンではガス弾銃を装備し、第8話のトップ機は120㎜ザクマシンガンを装備している。プラモデルなどではザクIIのシールドを流用したスパイクシールド[16]シュツルムファウストなども付属しているが、アニメの劇中には登場していない。

劇中での出演

機動戦士ガンダム
初登場はテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の第3話で、補給部隊の老艦長ガデム大尉が自分の補給艦「パプア」を護衛するためにこの機体に乗って出撃する。補給任務自体は成功するも、パプアは沈没。ガデムは手持ち武器を持たないまま本機でアムロ・レイの乗るガンダムに肉弾戦を仕掛ける。だがガンダムには通用せず、ビーム・サーベルで反撃されて撃破される。なお、劇中では単なる「ガデム専用ザク」でしかなく、詳細な説明は一切なかった。
劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』では、ア・バオア・クー要塞に120mmザク・マシンガンを持って立つ新作画のシーンが追加されている。これにより、テレビシリーズ当時の「旧式化により作業用に転用されていた」という設定に代わり、「旧式化した後も一年戦争末期まで実戦運用されていた」という後付設定が公式なものとなった。
機動戦士ガンダムΖΖ
テレビアニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』では、タイガーバウムを支配するスタンパ・ハロイの民間払い下げMSコレクションの一つとして登場。内部はリニアシート化による改修を施してあり、操縦系統は最新機に近くなっている。機体色はザクIIと同系統のものになっていた。第40話でジュドー・アーシタが搭乗するズゴックと交戦。やはり武器は何も持たず肉弾戦で挑む。タックルでズゴックを倒した後、ニードロップを仕掛けるが回避されアイアンネイルの一撃を受け倒される(撃破シーンはなし)。その後、ハイザック用のザク・マシンガン改で再びジュドーのズゴックを襲う。また、スタンパの館の門にはこれとは別に仁王像を思わせる装飾された二体のザクIがそびえ立っていた(機体色は灰色と赤色)。
機動戦士ガンダム第08MS小隊
OVA『機動戦士ガンダム第08MS小隊』では、第6話でのシロー・アマダの回想場面にて、サイド2に乗り込み毒ガス弾を発射した機体として登場する。また、第8話にてゲリラの村に迷い込むトップ小隊長機もザクIであり、こちらの機体には隊長機を示す角も付けられている。左肩の球形アーマーに、スパイクを装着するためのアタッチメントがついている点が特徴。第5話にはザクIベースのザクタンクが登場する。
機動戦士ガンダム MS IGLOO
OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第2話では、地上の物資集積所の警備用として登場。連邦軍特殊部隊セモベンテ隊の奇襲を受け、ツァリアーノ中佐の鹵獲陸戦型ザクIIに撃破される。時系列的には0079年5月8日であるため、このザクIが史上初の「MSに撃破されたMS」になる[17]。『MS IGLOO -黙示録0079-』第3話では、最初にア・バオア・クーに取り付いた2機のジム改を105mmマシンガンで攻撃、撃破する場面がある。
漫画『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』第4話「蝙蝠はソロモンにはばたく(中編)」では、義勇兵としてジオン軍に加わったエンマ・ライヒらの搭乗機として登場。多くのトラブルを抱えた旧式機であるザクIを与えられ冷遇されている姿が描かれている。第7話「南海に竜は潜む(後編)」ではギュンター・ローズマン曹長が搭乗。偽装船に搭載され、連邦軍の貨物船を拿捕するが、フィッシュアイによる攻撃で海中に落下する。また、第8話「軌道上に幻影は疾る(前編)」ではヅダとの主力機評価試験においてYMS-05が登場する。
機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線
OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線』第3話に登場。後方の敵に気を取られたドロバ・グズワヨ曹長の陸戦強襲型ガンタンク3号機を大破させるも自爆システムを作動させたドロバの機体につかまり道連れにされる。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、高性能だがコスト高により採用が見送られたMS-04の替わりとして量産されている。月面でのミノフスキー博士の亡命を巡る連邦MS部隊との初衝突「雨の海海戦」(連邦側では「スミス海の虐殺」と呼称)において、1機のMS-04を含む5機で、ガンキャノン初期型2個中隊(12機)を一方的に全滅させる。これは、ランバ・ラル、シャア・アズナブル、黒い三連星といったのちのエースパイロットたちによって隊が編成されていたこともあるが、ほかの兵器を火力支援することを目的に設計されたガンキャノンに対し、同じMSを接近戦で駆逐することを目的としたザクの設計思想の勝利でもあった。なお映像作品ではその逆で、ザクの方がMS以外の敵と戦うことを想定して設計されている。ほかにランバ・ラル隊に合流したタチ中尉が搭乗した機体は、アニメではMS-06だったものがMS-05に変更されている。
機動戦士ガンダム 宇宙のイシュタム
漫画『機動戦士ガンダム 宇宙のイシュタム』では、ジオン側の主人公エリザ・ヘブンの乗機として登場。頭部に追加の装甲板が貼り付けられ、メインカメラを閃光等から守る防護シャッターが取り付けられている。また、腰のウェポンラッチには手放した武器を巻き取るウィンチが装備されている。通常の105mmマシンガンやヒートホークに加え、対人榴弾も使用する。
Developers 機動戦士ガンダム Before One Year War
漫画『Developers 機動戦士ガンダム Before One Year War』では、ジオニック社の下請け工場「ホシオカ」の技術者たちがザクIの試作機を開発するために奮闘する姿が描かれている。のちにジオニックのテストパイロットエリオット・レムとホシオカ社長令嬢にして同社テストパイロットの主人公ミオン・ホシオカとのコンペティションを経て、ザクI(劇中ではザク)が完成。ジオニック社本社工場にてロールアウト初号機が作業機械として発表されている。
ゼロの旧ザク
漫画『ゼロの旧ザク』では、主人公・ニルスの搭乗機として活躍。本格的な主人公機としての扱いを受けている。

他作品での出演

漫画『魔法の少尉ブラスターマリ』では、「1日ザク」(いちにちザク、愛称「1日号」)なる機体が登場する。サイド3のあるコロニーのジオン軍基地で、戦力として数えられることなく格納庫に保管されていたが、謎の女性士官ブラスターマリ少尉が搭乗し、数度にわたりコロニーの危機を救っている。胴体部がザクII改風のボディになっているのが特徴。従来の武装はなく、おかしな格好をした魔法使いからもらった「魔法の布団叩き」「魔法のハエ叩き」を武器に戦う。なお「1日 - 」の名称はブラスターマリの正体であるマリコ・スターマインが子供向けMS図鑑の「旧ザク」という記述を読み違えたことに由来する。

テレビアニメ『∀ガンダム』では、ルジャーナ・ミリシャにより発掘されたボルジャーノン(頭部の左右の支柱がない)として登場する。作中ではザクIとザクIIの双方がこの名で呼ばれているが、ルジャーナ・ミリシャのスエサイド部隊の隊長だったギャバン・グーニーの専用機として、黒く塗装されたザクIが活躍する。

対戦アクションゲーム機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』では、第1作では格闘攻撃は(ある程度オリジナルはあるものの)原作通りショルダータックル程度だったが、続編の『DX』以降のシリーズでは多くの格闘攻撃が八極拳のようなモーションへと変化している。

ガンダム世界とは全く趣きを異にするが、吾妻ひでおの漫画『スクラップ学園』では、酒が切れると転がる生首の群れが見えるアル中教師が登場し、その生首の中にガンダムと中隊長仕様ザクIの頭部が混じっている。ザクIといえば旧型のマイナー機だった当時としては、非常に珍しい登場であった。

設定の変遷

MS-05AザクIがテレビ版『機動戦士ガンダム』中に登場したのは、第3話のみである。この時は搭乗者のガデムもシャアも単純に「ザク」と呼称している[18]。「旧型ザク」の名称は『月刊ホビージャパン』の本誌及び別冊『HOW TO BUILD GUNDAM』における「1/144シャア専用ザク」の改造による模型作例で使用され、その後バンダイによりプラモデル商品化された際にも「1/144旧型ザク」が商品名とされたことで普及が進んだ[19]。この当時、講談社、ホビージャパン等の出版物では「動力パイプが内蔵されているため動きが鈍く、戦闘には向いていない作業用MS」などと解説されており、上記『HOW TO BUILD GUNDAM』では「初期戦闘型とも作業用ともいわれるがはっきりした用途も不明」としている他、ストリームベースの勝呂国弘製作によるダークブルーに塗装され黒い三連星専用機だという「旧ザクと量産型ザクの中間試作品」は、後に『MSV』においてMS-05Bと位置づけられた。劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』ではマシンガンを装備した姿が新規に描かれ、必ずしも戦闘に使えないわけではないことになった。そもそもガデム自身がザクIを操縦して実戦を経験したという趣旨の発言をしている。

「ザクI」というネーミングは「MS-05」の型番同様、1981年発行のムック『ガンダムセンチュリー』が初出の非公式設定だったが、OVA『MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話において初めてこの愛称がセリフ上で「ザクワン」と表音され、四半世紀を経て公式の名称となった。

ザクIとIIとの相違点としては、機体各部の動力パイプが内装、右肩のシールドを欠く、モノアイスリット真正面の支柱の存在。左肩球状方向にスパイクを欠く、頭部後方に小さなトサカ状のパーツがある、後頭部下端及び両脚ふくらはぎ下端の裾が円状にえぐれている、等がある。さらに設定画においてIのほうが機体各部が角張っているというものがあり、特に膝下に顕著だったが、FZ型やF2型の設定画の影響からIIの膝下部も角張って描かれることが増え、MGやHGUCの模型にも反映されるに至った。

ザクマシンガンの弾倉はドラムマガジンと呼ばれているが、実際にはパンマガジンであり、トンプソンM1928PPsH-41などが使用している現実世界における円筒型のドラムマガジンとは構造が異なる。『ガンダムセンチュリー』以来この名称で呼ばれ続け、未だに改められていない。なお105mmザクマシンガンのような、縦にパンマガジンを装備する機関銃は実在するもので[20]重力下での使用に問題云々の非公式設定があるが、『MS IGLOO』の劇中では地球上で問題なく使用されている。

バリエーション

YMS-05
ヅダとの主力機評価試験を争った試作機。
MS-05A ザクI(前期生産型)
ザクIの初期型として生産された機体。訓練用に27機生産された。B型と比べて胸部装甲やカラーリングが若干異なっている[21]
MS-05Aは元々、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』第3話、及び映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』の宇宙要塞ア・バオア・クーの場面で登場し、いわゆる「旧型ザク」とされる設定画の機体[22]であった。『モビルスーツバリエーション(1)』(講談社・1984)によれば、MS-05の内初期生産分27機が該当し、宇宙世紀0076年5月に編成された教導大隊を構成する機体だとされている。また、開戦から終戦まで使われ続け、戦闘部隊でも輸送部隊でも使われたが、特に輸送部隊で好評だったという。
しかし、バンダイがプラモデル「マスターグレード」シリーズ及び「HGUC」シリーズで、本機と金型を完全に共用させて「黒い三連星」のMS-05を商品化しようとした際、映像作品や既存のプラモデルなどで姿を見せているMS-05は全て「黒い三連星」乗機も含めて同じMS-05Bであることになった。結果05Aは05Bにデザインを奪われた格好となり、以降、05Aはデザイン画稿が存在しない事態となっている。また、勝呂国弘が模型製作でデザインを発案し、小田雅弘が『MSV』にて記述した、旧ザクとザクIIの中間型としてのMS-05Bも無かったことになっている。
MS-05B ザクI
生産ラインに乗ったという意味での初の実戦型量産機。
MS-05Bとは本来、『HOW TO BUILD GUNDAM』(1981・ホビージャパン)に「黒い三連星専用機」として掲載された勝呂国弘の模型作例「ザク武装旧タイプ」(「ルウム戦役仕様」)を、製作集団ストリームベースのメンバー小田雅弘が同誌の他のザク系バリエーション機と共に『MSV』において設定に取り入れ、型番を与え、MS-06Cの前の「黒い三連星」乗機であるとした「旧ザク〜ザクII中間試作機」のことである。『MSV』では「黒い三連星」がブラックとパープルのチームカラーを用いたのはMS-06Sに乗った時からであり、MS-05Bでの彼らの機体カラーはダークブルーであるとされていた。形状的には右肩に薄型シールド、左肩に単棘ショルダーアーマー、後頭部トサカの撤去、腹部にのみ露出型動力パイプを装備、といった点でMS-05A〜MS-06の中間的形状を呈する。また胸部中央には、MS-05Aのコクピットパネルの「へ」の字モールドと上下逆に幅広「V」の字モールドを有するデザインであった。テレビアニメや劇場版アニメにおいて登場する所謂「旧ザク」(ザクI)はMS-05Aであると位置づけられている。
しかし、時が流れ21世紀、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』及びプラモデル『1/100マスターグレード』シリーズの解説では上記の既存設定が失伝され、従来05Aとされていたデザインが05Bだということになり、『MSV』における「黒い三連星」乗機の他、映像作品登場の機体も、それらMS-05、ザクIは全てMS-05Bであることとされた。また結果としてこれらの作品では、MS-05AとB型の外観の差も無いことになっている。
MS-05B ザクI・作業装備
玩具『ガンダム ロウバストシルエットコレクション』に登場。
MS-05HS プロトザク/ミノフスキー粒子散布ユニット装備型
漫画『STAMPEDE ミノフスキー博士物語』(沖一作)に登場。
MS-05L ザクI・スナイパータイプ
諸元
ザクI・スナイパータイプ
ZAKU I SNIPER TYPE
型式番号 MS-05L
所属 ジオン公国軍
開発 キャルフォルニア・ベース
全高 17.5m
重量 67.9t
装甲材質 超硬スチール合金
出力 899kW (+700KW)
推力 8,400kg
武装 頭部バルカン
ビーム・スナイパー・ライフル
ザク・マシンガン
搭乗者 ヨンム・カークス
メカニックデザイン企画『ハーモニー・オブ・ガンダム』に登場。
旧式化したザクIを長距離狙撃用に改修した機体。本国からの支援がほぼ打ち切られたキャリフォルニア・ベースにおいて、ゲルググで実用化されたビーム兵器の携帯技術を転用し開発された。サブジェネレーターを搭載した大型のランドセルに換装することで長射程のビーム・スナイパー・ライフルが使用可能になっている。頭部は狙撃用にザク強行偵察型のカメラアイを使用、右膝には狙撃姿勢を保つため特殊なギアが設置されている。近接戦闘に至った際に生還率を高めるために頭部にバルカンが装備され、ザク・マシンガンを使用する場合もある。
機動戦士ガンダムUC』では、ジオン軍残党のヨンム・カークス少佐の愛機として登場。頭部にブレードアンテナが装備されている。OVA版ではさらにビーム・スナイパー・ライフル用の予備バレルの収納ケースがランドセルに2本、機体固定用フックが胸部前面と背部上面に計4箇所追加された。またコクピットは前面の上下左右にモニターパネルが配され、一年戦争末期に導入された統合整備計画に準じた仕様となっている。
ゲーム等のメディアミックス作品では、それまでジオン軍に不在だった一年戦争初期から扱うことが出来る、いわゆる"低コスト"な機体として、連邦軍のジム・スナイパーに対応する立ち位置の狙撃型MSとして登場することが多い。
劇中の活躍
『機動戦士ガンダムUC』小説版でのトリントン基地襲撃では、ガランシェールの上層デッキからラー・カイラムを狙撃後に降下し、コロニーの残骸からの狙撃を行なっている。OVA版のトリントン基地攻防戦においては、ファットアンクル改のMS格納庫に機体を固定し、高空からの狙撃により友軍のMSを援護しつつトリントン基地内の地球連邦軍の兵器を多数撃破した。しかし連邦軍トライスター隊の反撃に追い詰められ、自ら核融合炉を撃ち抜いて核爆発を起こそうとするが、直前に防がれ討ち果たされた。
漫画『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』では、ガンダム試作2号機とその回収のために降下してきたコムサイの合流ポイントの守備機体として登場するが、ガンダム試作2号機の奪還を目的とした第404空挺部隊のジム・スナイパーカスタムの狙撃によって撃破される。
MS-06 ザクII
ザクIをより実戦向けにするため、改良を施された機体。詳細はザクIIを参照。
MS-05 ザクI(コロニー制圧戦仕様)
機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場。ブリティッシュ作戦のため、海兵隊がコロニー制圧用としてGGガス弾を装備したザクI。ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオン独立戦争記』ではシーマ・ガラハウがこの機体のパイロットであるとされた。
ランド・ザック
漫画『機動戦士ガンダムMSV戦記 ジョニー・ライデン』に登場。
戦後民間で改修された農地開拓用のザクI。ベース機は戦場跡に破棄されていた物であり、ベース機や機能は地域によって異なり、同じ仕様の物は一切存在しない。作中登場した機体は地面を耕すためのドリルとスコップを装備している。なお、ドリルはEMS-05 アッグのもの。両肩のシールドには放水機能もある。

パーソナルカスタム機

MS-05B ザクI(トップ機)
OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場するトップ小隊隊長トップが使用した現地改修機。左肩にはザクII仕様のショルダーアーマーがらスパイクを除去したものを装備しており、また機体の各所に地上戦闘に適した改良が施されている。基本的な武器や仕様はほかの隊長機と変わらないが、Sマインランチャーを装備しているなどより対歩兵に意識を持った兵装が目立つ。シロー・アマダの発射したロケットランチャーでトップが死亡し機体も停止した。
MS-05B ザクI(ランバ・ラル専用機)
書籍『機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑』において、ランバ・ラルが開戦当初に乗っていたとされる機体[23]。このときから青のカラーリングとされている。『機動戦士ガンダム ギレンの野望』では胸部のデザインがOVA『第08MS小隊』に登場したガス弾銃装備機のものを踏襲しており、両肩もショルダーアーマーとされて、マスターグレードでキット化される際もこの形となった。後にドズル・ザビ中将専用ザクIIに装備される大型ヒートホークを標準装備している。
MS-05B ザクI(黒い三連星専用機)
ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』が初出。MS-06R-1Aと同様のブラック、パープル、グレーの3色に塗装されている。ゲーム中では、地球侵攻作戦でこの機体に搭乗したとされている。プラモデル『マスターグレード MS-05B ザクI 黒い三連星仕様』の取扱説明書では、のちの黒い三連星が開戦以前より愛機としていた機体を、開戦後の0079年3月の教導機動大隊の特別演習[24]でレストアして再塗装した機体とされる。演習の最中に連邦軍の偵察部隊と遭遇し、これを撃破している。
黒い三連星の機体は短い期間にダークグレー、ダークシーブルーなどの数回のカラーリング変更が確認でき、彼らはMS-05BのあとにMS-06C、MS-06S、MS-06R-1Aと機体を乗り換えるが、ブラック、パープル、グレーの3色になったのはMS-06Sからである[25]
MS-05B ザクI(エリク・ブランケ専用機)
ゲーム『機動戦士ガンダム戦記』に登場。紫のカラーリングで、左肩にザクIIのスパイクアーマーがついており、また武装にはグフ・カスタムのヒートサーベルを装備している。イフリート・ナハトの奪還作戦で、エリクがイフリート・ナハトの奪取成功に伴い、機体は放棄された。
MS-05S ザクI(ゲラート・シュマイザー専用機)
ゲーム『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』に登場。通常のザクIと違い両肩にショルダーアーマーを装着している。カラーリングはザクⅡ系統のもの。闇夜のフェンリル隊独自のセンサーを導入したMS戦術と共に、視神経に戦傷の後遺症を抱えたシュマイザー用に音響センサーを増設したカスタム機。スモーク等によって敵を欺きガンダム6号機を撃破した。小説版は肩にバズーカ砲を固定装備として搭載している。
MS-05Q ザクI(ノリス少佐機)
メカニックデザイン企画『MSV-R』に登場。核熱反応炉の換装などにより性能を向上させたザクIの改良型。頭部に動力パイプが装備されたのが特徴で、ザクIIとほぼ同様の火器使用が可能。中でも紫と赤のカラーリングのノリス・パッカード少佐機は、両腕のスパイクを内蔵した拳や防盾付きザク・マシンガンを装備するなど独自のカスタマイズが施された。

脚注

  1. ^ MSの型番に「-」(ハイフン)を入れるようになったのもこの『ガンダムセンチュリー』の記述が初である。
  2. ^ 機動戦士ガンダム公式Web | MECHA
  3. ^ a b c d e f 機動戦士ガンダム第08MS小隊WEB「MS-ジオン軍-ザクI」
  4. ^ 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック』94頁。
  5. ^ 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック 2』153頁。
  6. ^ 機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』310頁。
  7. ^ 『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』313頁。
  8. ^ 初期プラモデルなど。
  9. ^ プラモデルMGやHGUCなど。
  10. ^ 『ガンダムセンチュリー』において、製造メーカー名が非公式ながら設定された。現在では「ZEONIC」と綴られ、映像作品『MS IGLOO』に登場したことで公式の存在となった。
  11. ^ 模型企画『モビルスーツバリエーション』、漫画『Developers 機動戦士ガンダム Before One Year War』より。
  12. ^ a b 書籍『機動戦士ガンダム MS IGLOO Mission Complete』33頁。
  13. ^ OVA『MS IGLOO -1年戦争秘録-』第2話、セモベンテ隊とヒルドルブの交戦より。
  14. ^ Ark Performance『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』第1巻、59頁。
  15. ^ 映像作品中で、核砲弾の使用例はない。
  16. ^ 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』において、シーマ艦隊ゲルググM(マリーネ)が装備している。
  17. ^ 特殊部隊の戦果であるため、公式記録としてカウントされなかった。
  18. ^ 1980年5月1日発行の「機動戦士ガンダム 記録全集2」においては「モビルスーツ・ザク」(124ページ)「ザク(ゲスト・キャラクター)」(168ページ)と記載されている。
  19. ^ 1981年3月1日発行の「アニメック第16号 機動戦士ガンダム大事典」で「旧ザク」「ガデム搭乗ザク(旧型ザク)」と記載されている。
  20. ^ [1]
  21. ^ 『機動戦士ガンダム MSV コレクションファイル[地球編]』084 ザクI(前期生産型)より。
  22. ^ 『モビルスーツバリエーション(1)』(講談社・1984)
  23. ^ 画稿はなく、文章設定のみ。
  24. ^ 「教導機動大隊の特別演習」は『マスターグレード MS-05B ザクI 黒い三連星仕様』の取扱説明書が初出。
  25. ^ MSV』での設定。

関連項目