コロニー落とし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コロニー落とし( - おとし)は、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する架空の戦術のひとつ。スペースコロニーラグランジュポイントより離脱させ、コロニーそのものを質量兵器として地球の目標地点に落下させて目標を含む一帯を破壊する。

落着の瞬間を地上から目撃した者は「空が落ちてくる」と表現し、後々まで恐怖や強迫観念に駆られる[1]。後代には地上の住人にとって共通の畏怖対象となる。

コロニー以外の重量物(人工天体・小惑星・大型艦船等)を質量兵器として用いる戦法についても、本稿で取り扱う。


注意以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。


目次

[編集] 概要

コロニーそのものを巨大な質量兵器として地球上ないし月面上の目標に落下させ、その運動エネルギーで大規模な破壊を行う。コロニーの移動・軌道変更には核パルスエンジンなどの推進手段が用いられる他、別のコロニーと衝突させて、その反動で目的の軌道に投入する手段もとられる。

落下軌道に乗ったコロニーの落着を阻止するには、推進剤等があれば内部からの制御でコロニーの進路を変える他、核兵器を含む火力による攻撃を加えたり、ソーラ・システムの照射によって物理的に破壊する方法が取られる。ただし、コロニーの軌道要素と核パルスエンジンなどの駆動手段の性能によって決定される阻止限界点(コロニーが宇宙空間に留まれる軌道に変更できる限界)を超えると、目標への直撃は回避できても地上や月面への落下は免れない。

作戦に味方のコロニーを供する場合には住民を疎開させれば良いが、敵方の有人コロニーを用いる場合には毒ガスなどを用いて住民を虐殺し、コロニー内の抵抗を排除して作戦に供する。

[編集] 宇宙世紀でのコロニー落とし

宇宙世紀最初のコロニー落としは、『機動戦士ガンダム』で描かれた、一年戦争冒頭の宇宙世紀0079年1月4日、ジオン公国軍により発動されたブリティッシュ作戦として行われた。以後、コロニー落としの過程でルウム戦役が勃発したほか、ガンダムシリーズで数度にわたりコロニー落とし、並びに小惑星を落下させる戦法が登場する。

[編集] ブリティッシュ作戦

目的は地球連邦軍総司令部ジャブローの破壊である。発案者は、ギレン派で知られるエギーユ・デラーズ大佐(当時)であったと言われている。連邦側に立ちジオン公国に敵対したサイド2の8バンチコロニー アイランド・イフィッシュ を作戦に供すべく、シーマ・ガラハウが率いる部隊がコロニーに毒ガスを注入して住民を虐殺した上で核パルスエンジンを装着し、ジャブローに落下させる軌道に投入したが、連邦軍艦隊の必死の抵抗を受けて損傷していたことから大気圏突入の約40分後に崩壊した。

崩壊したアイランド・イフィッシュの前端部分はオーストラリアシドニーを直撃し、厚さ10kmの地殻を貫通し造山運動を促してマグニチュード9.5の大地震を発生させ、後にシドニー湾とも呼ばれる最大直径500kmの巨大なクレーターを作った。『機動戦士ガンダム』のアニメの冒頭やゲーム『ギレンの野望』『0079カードビルダー』などのムービーで描かれているシーンはこの落着の瞬間である。小説『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY[2]および『機動戦士ガンダムUC』ではその際の破壊力をヒロシマ型原爆約300万発分、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』では6万メガトン級と説明している[3]。残りの部分の3分の1は太平洋上、3分の2は北米大陸に(後の漫画『THE ORIGIN』ではシベリアと北米に)それぞれ落着。これによってオーストラリア大陸の16%は消滅し、崩壊の際に発生した無数の破片は地球全土に降り注いだ。そして2次被害として衝撃波津波、気象変動などが発生し、地球に対して長年にわたって多大な悪影響を及ぼし続けた。また、地球の自転速度が一時間当たり1.2秒速められたという。人的被害は、バンダイ『ENTERTAINMENT BIBLE.1機動戦士ガンダムMS大図鑑【PART.1一年戦争編】』(1989)によれば、23億人に及ぶとされる。

なお、宇宙世紀0203年を描いた作品『ガイア・ギア』では一年戦争時のコロニー落としによりパリが壊滅しており、パリ湖という湖が形成されている。

ブリティッシュ作戦自体は当初の目的を達成できずに失敗となったが、地球規模の多大な被害を起こしたことから、後に結ばれる南極条約では「大質量兵器の使用禁止」という条項が盛り込まれている。

ブリティッシュ作戦という作戦名と上記の詳細な設定は1981年のムック『ガンダムセンチュリー』に初出の非公式設定であった。この資料によると、作戦名は第二次世界大戦後に多くの植民地を失い衰退していったイギリス連邦に準えたものとされる。また、作戦に供するコロニーの改造と護衛のため、長時間行動用の推進剤と冷却タンクを背負ったザクが機動性を損ない大きな損害を出したとする記述もある。後に『機動戦士ガンダム0083』の劇中で語られたことで公式の設定となった。本作戦における毒ガスの使用についても本編放映当時には設定が無く、小説版におけるGG(ダブルジー)ガス使用の記述や、同様に『機動戦士ガンダム0083』の小説版等で描写され、さらに後年『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』においてシロー・アマダの回想シーンの中で映像化された。

[編集] ルウム戦役

ブリティッシュ作戦でジャブローの破壊という目的を達成できなかったジオン軍は、再度のコロニー落としに着手し、サイド5 ルウムの第11番コロニーワトホートに狙いを定めた。これを察知した連邦軍は作戦を阻止すべく総力戦を挑み、ジオン側は核パルスエンジン装着の途中で作戦の中断を余儀なくされた。この攻防戦をルウム戦役と呼ぶ。なお、『MS IGLOO』では本作戦は連邦軍艦隊を誘い出す為の罠であるという説明がある。

[編集] 星の屑作戦

宇宙世紀0083年のデラーズ紛争にて、ジオン残党軍デラーズ・フリートがコロニー再建計画で移動中のアイランド・イーズアイランド・ブレイドを乗っ取り、2基のコロニーを衝突させて軌道を変え、イーズを月周回軌道経由で北米大陸穀倉地帯に落下させた(ブレイドのその後の消息は不明)。

デラーズ・フリートの目的は、北米の穀倉地帯を壊滅させることで地球への食糧供給をスペースコロニーに依存せざるをえない状況を作り出し、スペースノイドの連邦政府に対する発言権を強化することにあったが、連邦政府は後に「コロニー移送中の事故」と発表して真実を隠蔽し、ジャミトフ・ハイマンら連邦軍内部のタカ派の発言権が強化されティターンズ結成の大義名分として利用された(『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』)。

[編集] 月面都市グラナダへのコロニー落とし

宇宙世紀0087年のグリプス戦役の最中、ティターンズはアポロ作戦によって占領した月面都市フォン・ブラウンエゥーゴの反攻作戦によって奪還されたため、エゥーゴの本拠地である(地球から見て)月の裏側の月面都市グラナダを攻略するための橋頭堡を失った。そこで、フォン・ブラウン失陥時に同市に駐留していたティターンズ部隊の指揮官であったジャマイカン・ダニンガンは、一年戦争において著しく損傷したため廃棄された無人コロニーであるサイド4の27バンチコロニーを月のグラナダへ落下させて一気にエゥーゴを殲滅しようとしたが、この作戦を知ったパプテマス・シロッコサラ・ザビアロフをエゥーゴに差し向けて作戦内容を密告したためエゥーゴの対処が素早く、コロニーはグラナダから180kmほど離れた地点に落着した(『機動戦士Ζガンダム』)。

なお、劇場版ではアポロ作戦を省略していきなりグラナダへのコロニー落とし作戦が行われている。この際にティターンズ前線部隊司令官バスク・オムがティターンズ総帥ジャミトフ・ハイマンに対して送った電文にはバスクがジャマイカンを始めとする前線の将兵を抑えきれなかったとの内容が書かれていたが、ジャミトフやアレキサンドリアのブリッジにおけるジャマイカンらの発言からはむしろバスクがコロニー落とし作戦を立案したように受け取れ、少なくともこの作戦に対して積極的に反対しなかったことがうかがわれる。

TV版においてはこの作戦に対してバスクがどれほど関与していたかは定かではないが、コロニー移動用の核パルスエンジンやその燃料は普段の作戦行動では必要のないものであることから、バスクもこの作戦におけるジャマイカンの行動を承認ないし黙認する形でかかわった可能性がある。

[編集] ネオ・ジオン軍のダブリンへのコロニー落とし

宇宙世紀0088年にはネオ・ジオン軍のマシュマー・セロ率いる部隊により、アイルランドダブリンにコロニーが落とされた。この時は落下速度が低かったのか、コロニーが落着後もしばらく原形をとどめたまま直立していた。対岸のイギリス本土でも、ブリティッシュ作戦時のオーストラリアに比べて被害は少なかったようである(『機動戦士ガンダムΖΖ』)。

[編集] 隕石落とし

宇宙世紀0093年、シャア・アズナブル率いるネオ・ジオン軍は「地球に居残る人々を粛清する」として地球寒冷化を目論み、当時地球連邦軍本部のあったチベットラサ小惑星5thルナを落下させた。更に小惑星アクシズを地球に落下させようとするが、ロンド・ベル隊の必死の攻撃により阻止された(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』)。一説によれば、この時はミノフスキー物理学的な現象によってアクシズの軌道を変化させたのではないかという。

[編集] その他の質量兵器

雑誌企画『ガンダム・センチネル』において、全長200mを越える大型モビルアーマー「ゾディ・アック」を質量兵器として用いている。

宇宙世紀のif要素を盛り込んだ戦略シミュレーションゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』では、ジオン側の作戦としてルナツー攻略後にサイド7のコロニーを用いた「第二次ブリティッシュ作戦」を実行できる。また、続編の『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオン独立戦争記』では、コロニー落としの代わりにルナツーからマスドライバーによってジャブローを攻撃することができる。

[編集] 宇宙世紀シリーズ以外の作品

[編集] アフターコロニー(新機動戦記ガンダムW)

アフターコロニー195年、ホワイトファング軍と世界国家軍の決戦のさなか、主砲を発射しようとするホワイトファングの旗艦リーブラにガンダムチームの母艦ピースミリオンが激突。ミリアルド・ピースクラフトはリーブラを地球へ落下させようとしたが、五人の博士とヒイロ・ユイによって阻止された(『新機動戦記ガンダムW』)。

アフターコロニー196年、マリーメイア軍は本来のオペレーション・メテオ(L1~5までの各ラグランジュポイントにあるコロニーを地球に落下させる)の再現を目論み、L3コロニー群のX-18999コロニーを地球に落下させようとした。ただし、これは同コロニー内に潜入したヒイロ・ユイデュオ・マックスウェルトロワ・バートンの三名により阻止された(『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』)。

[編集] アフターウォー(機動新世紀ガンダムX)

第七次宇宙戦争末期、宇宙革命軍は意見を違える他のコロニーを毒ガスによって殲滅。さらにそのコロニーをもってコロニー落としを強行する。40基近くのコロニーが南米大陸を中心に地上各地へ落着し、地球圏の総人口が開戦前の百億から一億程度にまで激減するほどの惨劇をもたらした(ガロード・ランの言葉によれば、その後「3年間核の冬だった」という)。地球統合連邦政府と革命軍はともに継戦能力を失って事実上の停戦に追い込まれ、この年はアフターウォー元年と呼ばれる事になる(『機動新世紀ガンダムX』)。

[編集] コズミック・イラ(機動戦士ガンダムSEED)

コズミック・イラ73年、血のバレンタイン事件の復讐を誓うサトーザラ派のザフト軍脱走兵が、同事件により破壊されたユニウスセブンの残骸を地球へ落下させた。ザフト軍は可能な限り破砕作業を続けたが、多数の破片が燃え尽きる事なく地上へ落着し、ローマアテネ、ラサ、万里の長城上海北京東京グランド・キャニオンケベックなどに直撃した。また、一部が太平洋に落ち津波を引き起こした事で、太平洋に面する都市が巻き込まれるなど、世界各地に大きな被害を与えた(「ユニウスセブン落下テロ事件」)(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』)。

[編集] 現実的な影響

コロニー内部は実際には空洞になっており、仮に大型コロニーが建造され地球に落とされたとしても、大気圏内で飛散し完全に燃え尽きるのではないかという説がある[4]。しかし、想定されるコロニーの外壁はスペースデブリが衝突しても耐えられるほどの強度は当然備えているであろうし、推定50億t近くになるとされるコロニーが、たとえ分散したとしても完全に消失するとは考えがたい[5]

実際、1979年に大気圏に突入したスカイラブの破片の一部が地上に(奇しくもオーストラリアに)落下したのをはじめ、大きなスペースデブリの破片が燃え尽きずに落下した事例が数件あることから、地球全体に大規模な影響が及ぶほどではないとしても、全く被害が出ない可能性は低いと思われる。

より巨大なダメージを地上に与える手段としてはシャアが実行した隕石落しの方が効果的であると考えられる。直径数-数10kmの小天体は質量面でコロニーを大幅に上回っており、地球に落下するとその損害は計り知れない物となる。なお、実際に起こったとされる小天体の落下事件としては恐竜絶滅原因の一説としても知られるK-T境界層事変が著名である。

[編集] 脚注

  1. ^機動戦士Ζガンダム』のロザミア・バダムなど
  2. ^ 巻末の「ミナカ・ユンカース講演録」より。
  3. ^ 広島に投下された原爆の正確な核出力は不明だが、おおむね12キロトンから18キロトン、または20キロトンと推定されている。
  4. ^ 柳田理科雄空想科学読本3』(メディアファクトリー
  5. ^ 山本弘が『こんなにヘンだぞ! 空想科学読本』にて、『空想科学読本3』の説を批判している。

[編集] 関連項目